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エスニックグループの活動と米アジア関係:アジア系アメリカ人の経験(1)

マサチューセッツ大学ボストン校政治学助教授
アジア・アメリカ研究所所長 ポール・Y・ワタナベ

1.はじめに−エスニックグループ、外交政策および民主主義のジレンマ
5.連帯、分裂および立ちはだかる障壁

1.はじめに−エスニックグループ、外交政策および民主主義のジレンマ

かつてロバート・ダールは、「民主主義者にとっての問題は、理性と責任の両立である」と述べた(1950, 181)。おそらく、外交政策決定プロセスほど、米国の民主主義に対してこの「問題」を突きつける分野も他にないであろう。外交フォーラム誌で中西寛がいみじくも描写しているように、これは「古くて新しいジレンマ」である(2005, 3)。

外交政策決定が民主主義にとって極めて難解な課題を提起する一方で、エスニックグループの活動に関する問題が民主主義のジレンマを特に深化させた。エスニックグループの活動は、合理的な国益追求と民主主義の責任を両立しようと長らく苦心してきた米国という、もっと大きな背景のもとで理解すべきである。

米国への移民数は、1990年代から現在にかけて劇的に増加し、それに伴い、より多様化したエスニックグループによる米国外交活動の広がりとその影響に対する憶測が盛んになされるようになった。1997年度の外交問題評議会報告書の中で、レスリー・ゲルブ同評議会会長(当時)は、エスニックグループの活動が及ぼしうる結果について述べている。

「現在の人口動勢の予測は、21世紀の米国が以前よりずっと大規模で複数のマイノリティ集団を抱えるようになることを示している。こうしたグループが社会に加わることで、米国の世界との関与および外交政策方針は影響を被るであろう。この流れは、将来の米国外交の決定要因として同国が新たに直面している課題の一つである(1977, vii)。」

多くの著名な学者、政治家および政府官僚が、外交の領域におけるエスニックグループの活動は高まっていくとするゲルブ氏の意見に賛同している。但し、こうした現象の拡大が望ましいかという点をめぐっては、往々にして強い反対がある。トーマス・アンブロージアは少なくとも「排他的な利益追求」対「正当な影響力」という二つの対立した視点があるとの的確な指摘を行った(2002, 199)。この二つの立場をそれぞれ代表するのが、サミュエル・ハンティントン・ハーバード大学教授とYossi Shainテル・アビブ大学教授である。

ハンチントンは、上記ゲルブの報告書とほぼ同時期に「フォーリン・アフェアーズ」誌に掲載された論文の中で、エスニックグループの活動は軽視すべからざるものであり、こうした排他的なエスニックグループの利益追求が、より大きな国益に取って代わる危険があるとの考え方を示している。

「現在、世界におけるアメリカの役割を規定しているのは、経済的、民族的個別主義である。冷戦時代、国家の大計に資するべく設置されたはずの政治、軍事、経済、情報等の機関や装備は、今では狭い下位国家の目的や、トランスナショナルな目的、また時には非国家的目的を果たすべく抱き込まれ変質させられてしまっている。(中略)エスニックグループはアメリカ合衆国外部の人や組織に利するように動く。(中略)外交政策決定におけるエスニックグループの役割拡充を後押ししているのは、近年の移民流入および多様性や多文化主義を主張する声である。それに加えて、こうしたグループが以前と比べて富裕化し、通信・輸送技術の大幅な向上により、本国とのつながりを保つことが容易になったこともその背景としてあげられる。結果として、エスニックグループは、かつてのような一国内に収まった文化的共同体から、国境を越えるディアスポラへと変容した。」

更に、ハンチントンは「ディアスポラ集団は、移民受け入れ先の国策や行動に影響を及ぼし、自らが有する手段や影響力を彼らの本国の国益のために行使する恐れがある。アメリカ史においては、諸エスニックグループが積極的に政治に関与してきたが、現在はディアスポラ集団が拡大し、活発化していると同時に、より高い自意識、正当性および政治力を持っている」としている(1997, 37〜39)。

他方、「正当な影響力」を主張する側は、エスニックグループの活動が果たした建設的と言われる役割に力点を置く。Shainは「フォーリン・ポリシー」誌の中で次のように述べている。

「米国の外交におけるエスニックグループの働きかけは悪影響を与えるという考え方が従来誇張されてきた。しかし、公民権を持たない集団にとって、外交への関与は、アメリカ社会および政治への入場券を手にする重要な手段と見ることができる。事実、米国外交における発言権を得ることは、エスニックグループがアメリカでの生活において然るべき地位を獲得したという指標の一つとなっている。(中略)更に言えば、冷戦後、民主主義と自由市場経済のイデオロギー体制の一極化に向かう時代が到来したことで、エスニックグループのロビー活動はディアスポラ集団を動員することになっていくであろう。この勢力は、アメリカの価値観を外国へ伝え、保護することを、米国の政策決定者から『委任』されているのである。(中略)こうした委任によって、エスニックグループの意見は米国外交内で一層正当化されていき、たとえ、一時的に戦略的利害を損なうにせよ、ディアスポラ集団は米国の政策決定者に対して、民主主義および開放主義を世界中で促進するというアメリカの新ウィルソン主義的価値観を遵奉させるよう圧力をかけることが可能となる。

(中略)エスニックグループの新たなる外交における役割は、国内においては民主主義および多元主義の価値観の強化につながり、アメリカの市民文化に良好な影響を及ぼすことになろう。従来の考え方とは相対するが、ディアスポラ集団による政治関与は、彼らの本国の文化への執着を募らせるものではなく、むしろ薄めることができるであろう。というのも、こうすることで、アメリカ国内のバルカン化を防止することができるのだから。従って、様々な意味で、米国の外交政策決定におけるエスニックグループ・ディアスポラの参画は、まったく建設的な現象なのである(1995, 87)。」

民主主義および外交政策についての論争ならびにエスニックグループの外交政策に関する活動がもたらす結果は、総じて留意すべき重要なテーマではあるが、本稿においては特にアジア系アメリカ人の活動の広がりおよびその結果について取り上げる。アジア系アメリカ人は、前述のゲルブが言及した人口統計推移における中心的な要素となっている。その大部分が移民出身であり、1960年から10倍以上の増加を遂げている。また、グループ内の多様性も拡大しており、アメリカ系アメリカ人のコミュニティの実質は、出身国も広範になっている。また、1960年代には最大のアジア系コミュニティであった日系アメリカ人が、2000年にはアジア系エスニックグループの中で6番目の大きさとなったという注目すべき変化も看守できる。

移民数の増加は即ち移民による活動の高まりという等式が正しいとすれば、アジア系アメリカ人が外交の領域により活発に参加する上での機は熟していると思われる。故チャンリン・ティエン元カリフォルニア大学バークレー校学長は、「アジアとの架け橋−米国のアジア系アメリカ人」という講演の中で、「アジア系アメリカ人は、対アジア外交においてより重要な役割を果たす上で、適切な立場にある」と述べている(1996)。また、「ノースウェスト・アジアン・ウィークリー」誌の社説で、「アジア太平洋系アメリカ人は、米国の外交政策決定に関わるに相応しい役割を有している」と表明している(1995)。

アジア系アメリカ人が外交の政策決定プロセスにおいて「相応しい役割」を果たす「適切な立場」にあるか否かについては、これから本文でも見ていくが、相当の論議を呼ぶテーマである。エスニックグループの活動についての主張を概観すると、アジア系アメリカ人の中には外交への関与を行っていくべきとする意見があるが、その他は危険をはらんでいると警告する立場であるというのが実際のところである。後者は、昔から流布している典型的な考え方に基づき、外交が突飛な方向に走ったり、外交政策に働きかけようとした者が反発を喰らうといった被害を、アジア系アメリカ人が受けやすいと考えている。

外交政策という分野におけるアジア系アメリカ人の尽力とそれに対する反応は、米国および世界の情勢における大きな変化によって左右されがちである。とりわけ注目すべきは、少なくとも次の三点における変化の力学の複合である。

1.アジア系アメリカ人コミュニティの規模と構成

2.国際社会におけるアジアの役割

3.米国の外交政策目標および政策決定プロセス

>>2.変化と機会


本論文は、2005年3月にワタナベ氏が日米センターにて行なった講演の資料(原文英語)を本人のご了解のもと和訳・転載したものです。
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