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エスニックグループの活動と米アジア関係:アジア系アメリカ人の経験(5)

5.連帯、分裂および立ちはだかる障壁

5.連帯、分裂および立ちはだかる障壁

分裂

アジア系アメリカ人の間には、出身国や政治的党派、社会経済的地位、文化、信仰面について大きな差異がある。外交問題についての意見がその多様性を際立たせ、時には多様性を際立たせるのは当然のことである。アジア系アメリカ人コミュニティで外交問題をめぐって生じる差異は、世代間のギャップ、支持する政治勢力、および地域の違いといった多くのことを反映している。

事実、外政および内政はしばしば敵対関係を長引かせた。おそらく、ダーリクの言う「出身本国によって規定されたエスニックグループの自己認識」という考え方を広めたのは外交以上にはあるまい(1999, 36)。根深い歴史的対立や一般にいわれている民族的差異のせいかどうかはともかく、アジア系アメリカ人は一般的に外交に関心を持ち関与するが、それは集団的、つまりアジア系アメリカ人全体としてのものではなく、中国系、韓国系、ベトナム系といった個々のアジア系アメリカ人組織としてのものである。したがって、そこに架け橋をつくるとなると、アジア系アメリカ人は外交政策に生じる差異を埋めるため相当の努力が必要である。

更に、国外問題は、特定のアジア系アメリカ人グループ間、または特定のグループ内における対立をもたらしうる。アジア系移民にとって、深く根付いた相違というものは、移民先の新世界においても存続し続ける。Him Mark Laiは、中国国民党の米国における機能を分析する中で、「同党が中国における出来事に対して関心を抱くことで、しばしば本国の政治対立や紛争が中国系アメリカ人コミュニティに持ち込まれることとなった」と考えている(1991, 199)。また、Yen Le Espirituは「中国系、フィリピン系、韓国系、インド系およびベトナム系アメリカ人のコミュニティにおいては、出身本国の政治をめぐる内部対立が存続し続けている。こうした政治的不和が暴力に発展することもある」と述べている(1992, 60)。

しかし、Espirituは、国際的な問題が引き起こした分裂は、今後もアジア系アメリカ人の間に修復し難い溝を残し続けるとする考え方には異議を唱えており、時が過ぎ、米国での経験が積み重なることで、こうした対立は収まっていくであろうとの考えを示している。「米国においていくつものグループが相互に交流したように、アジア系アメリカ人も、個々の偏狭な利害や歴史的な対立を克服し、グループ共通の問題および目標を認識するに至るであろう」(1992, 30)。

硬直した雰囲気のもとでは、政治影響力や政策決定力は確実に弱まる。アジア系アメリカ人の団結を阻害している数多くの要因が根強く残っていることが、外交問題をめぐる一致を一貫して図ることをより困難にしてきた。一部の政治運動で提唱されたようなアジア系アメリカ人としての意識統合が、同コミュニティが「成熟」するにしたがい明確になっていくかどうかは分からない。しかし、米国の対アジア外交問題ではなく、明らかに米国内のアジア系アメリカ人に関わる問題である場合、今後、より大きなまとまりが築かれる可能性はあると言える。

連帯の経緯

様々な出身国のアジア系アメリカ人が共通の外国目的のために一致団結することは、これまでほとんど無かった。とはいえ、複数のエスニックグループが支援しあった例もある。20世紀初頭の日本による帝国主義政策に対する長きにわたる抵抗を通じて、時には中国系および韓国系アメリカ人コミュニティが共通の目的と相互支援のために団結した。1940年代には、インド系および韓国系コミュニティが中国系アメリカ人と共にアジア系移民の帰化制限の撤廃を要求した。その何十年後には、様々なコミュニティのアジア系アメリカ人青年層の団結が見られたが、その理由の一つには、東南アジア地域における米国の軍事介入続行への反対があった。最近の事例としては、国家安全保障の名の下で南アジア系等のアジア系アメリカ人を標的とした強引な措置への反対運動の先頭に立っている。例えば、日系アメリカ人市民連盟(JACL)は、右運動において特に積極的な働きかけを行なってきた。

アジア系アメリカ人による外交を中心とした問題共有の推進は容易ではなかったが、様々なコミュニティの団結を促すような土壌ができていることは感じとれる。時には問題も生じた長きにわたる歴史そして近年の痛ましい出来事は、アジア系アメリカ人はその出身国に関わりなく、本質的に共通の利害を抱えており、米国と本国の関係も類似しているということを示している。例えば、いずれのアジア系アメリカ人も全く同様に、出身本国の行動や米国が関与した国際的対立が引き金となって、偏見や迫害を受けてきた。それぞれの原因は明らかに別個の外交、国際政治にあるのだが、それにより受けた不当な扱いはアジア系アメリカ人全体に広く共通する要素となってきた。

最近の例をあげると、国籍は問わずアジア人に対して行なわれる無差別な暴力の背景には、ある特定のアジアの国への敵意や不和があるケースが多く見られる。遺憾なことではあるが、「グーク」というアジア系アメリカ人全体に対する蔑称の濫用、反日感情の犠牲となって殴殺されたデトロイト在住の中国系アメリカ人ヴィンセント・チン事件、そして反アジア系アメリカ人主義者による暴力の明らかな増加は、たいてい、アジア系アメリカ人の間の違いを区別できない無知な人間か人種差別主義者によって引き起こされている。

アジア系アメリカ人の政治的な団結と分裂のメカニズムは、アメリカにおける経験は彼らが団結するきっかけとなりうるが、その一方で出身本国とアジアの歴史がその団結を妨げているという構図に簡略化できるであろう。更に、多様なアジア系アメリカ人の間に共通のアイデンティティが生まれるかどうかは、彼らの安寧にそれほどの意味をなさず、むしろ、外部から課せられたアイデンティティこそが決定的となる。

意見が一致している問題であるほど、活動や組織が拡大しやすい。したがって、外交の領域に問題の的をしぼり、調整、活動するのであれば、かなり成功の見込みは高くなるであろう。一つの政治問題の分野にしぼって、意識、ネットワークおよび関係を築くことで、その他の問題においても同様の組織立てが可能となる。

これまでの点をまとめると、個別のコミュニティであれ全体としてであれ、アジア系アメリカ人による外交活動は、政策の結果がアジア系アメリカ人の安寧に広く影響を及ぼす場合に特に必要とされる。アジア系アメリカ人は、部分的とはいえ運命を共にしているという現実があり、それが共に小さな活動を行なっていくための基盤となる。とはいえ、参加を呼びかけたとしても、常に一致団結で応える訳ではない。成功を目指す唱道者の前には、恐るべき障壁が立ちはだかっている。

障壁

アジア系アメリカ人の政治参画は、厳しい移民・帰化制限によって長い間阻まれてきた。こうした構造的障壁のため、アジア系アメリカ人が積極的に活動することは極めて困難であり、政治に対する自信の欠如がそれを助長していた。自ら政治力がない、役に立たないと思い込み、参加に消極的であった。

多くのアジア系アメリカ人が、様々な理由により、外交問題に関与することに二の足を踏んだ。例をあげると、アジア系アメリカ人組織は、いわゆる「アメリカニズム」という急速な同化促進には取り組み、アジア系アメリカ人のメンバーの政治参画も大いに支援してきたが、米国の外交形成への積極的関与については、慎重な態度を通してきた。こうした組織による政治関与は、ぎりぎりのところで姿を消すのである。第二次世界大戦中、日系アメリカ人の組織的収容が行なわれたにもかかわらず、日系アメリカ人市民連盟(JACL)は、米国政府の政策に対して強く反論することに及び腰であった。

アジア系アメリカ人コミュニティ側において、外交活動に関与することへの躊躇があった背景には、本国および地方の問題こそが政治参画の場であるという思い込みがあった。この見方に則ると、アジア系アメリカ人コミュニティの活動家にとって活用できる手段があまりなかったことで、本国に近い問題に時間と精力を割くのが最も賢明なやり方であったということになる。

これとは逆の見方をすると、一般的にアジア系アメリカ人の外交への関与は、内政への影響を及ぼそうとする思惑を抑えるどころか、むしろ促進する。外交問題への関心や活動は、予想以上の成果をもたらす。こうした問題への関心や活動を認識し、注意することは、明らかに内政に関わる分野における努力にも役立つ。

活動の擁護

アジア系アメリカ人コミュニティ内部にも、米国外交に関与し影響を与えることを主張する強い声がある。こうした意見は、この種の政治的活動に対してしばしば生じる反発の標的になっていることを忘れてはならないが、にもかかわらず、参画する権利を堂々と主張している。更に、こうした層は、意識の高い、責任感ある外交を形成する上で、アジア系アメリカ人がいかに寄与できるかを明確にすることができる。以下に、こうした観点から筆者に寄せられた声を紹介したい。

シカゴ在住のアジア系アメリカ人女性より:
「私はベトナム出身ということもあって、自分にとって外交問題は米国とアジアの関係において最も重要です。なにしろ、私達が今米国にいるのも、同国の対外政策の結果なのです。米国の政治は様々な利益団体が動かしていることは紛れもない事実であり、私達がアジア人として独自の利害を持っているからには、外交問題を含めたあらゆる領域において、この利害関係を反映させていかなければならないと考えています。日系アメリカ人については第二次世界大戦中の辛い経験もあり、祖国の問題についてリーダーシップを取ることに尻込みしてしまうのでしょうが、他の移民の歴史が浅いコミュニティについては、米国と出身本国の政治について意見するのは当然だと思われます。」

別のシカゴ在住者は、一部のアジア系アメリカ人の知識や考え方が政策決定プロセスに寄与できると述べている。
「冷戦後の米国および国際社会全体に対する私の考え方は、ここに住む我々のプレゼンスを利用すべきということです。過去における外交問題における過ちの多くは、アジア諸国に関するいわば無知がもたらしたものと考えています。こうした国々に関して直接知識を持つ者を利用すべきでしょう。何らかの偏見はあるでしょうが、こうした問題について学術的に学び、米国でも出身本国人でもない第三国人として生きる、冷戦時に利用されるといった直接の経験を持たない人々もまじえて、こうした偏見について議論すべきだと思います。こうした経験を、外交に採り入れ、議論、解決策または政策方針の一部となるようにすべきです。」

アジア系アメリカ人コミュニティに属さない人々も、アジア系アメリカ人の政治参画、知識および洞察による寄与、関心を強く示すことを主張してきた。アジア系アメリカ人は大体において、こうした感情を歓迎した。しかし、こうした声を自身の偏狭な政治的目的に利用した政治家等がいたことも確かである。例えば、中国系アメリカ人はかつて中国たたきに従事すべく、連邦議会に召集されていた。中国政府を告発してきたハリー・ウーといった反体制派に対して喝采を送った人々の中には、右派の独裁者との交友と軍事政権が問題化した際には人権問題について何一つ行動を起こさなかった者が数多くいる。

結論

アジア系アメリカ人は米国外交に大きく影響されてきたが、外交決定においては重要な役割を果たせずにきた。したがって、一部で主張されるとおり、アジア系アメリカ人の地位が主に当事者というよりは駆け引きの駒に甘んじていたのは、様々な理由において彼ら自身の責任であると結論付けるのは容易い。この理屈づけは、「軍事的必要性」や国家安全保障の名のもとに、アジア系アメリカ人に厳しい措置を講じてきた人々にとっては、都合が良く、おそらくは自己満足でさえある。しかし、たとえ一部にとっては魅力のある意見であれ、これは根本的に欠点のある主張である。アジア系アメリカ人にとって、外交への影響力は、自らが望むと望まないに関わらず、むしろ発言が許容されたかどうかに大きく左右されたのである。

アジア系アメリカ人は、外交政策が自らに及ぼす影響について無関心であった訳でもなければ、無知であった訳でもない。彼らはしばしば過酷な扱いを受けてきたことで、少なくとも二つの点で活動を拡大することができなかった。一つは、多くのアジア系アメリカ人は意識的にも体制的にも政治に関わることを阻まれていた。もう一つは、大きな障壁をおして外交に関与し、異なる政治的意見を主張しようとした者は、その活動ゆえに更に弱い立場に追い込まれた。

したがって、これまでのアジア系アメリカ人と米国の対アジア諸国外交の関わりを見た上では、外交領域における活動が拡大する見込みを楽観視することはできない。他方、アジア系アメリカ人コミュニティの規模および構成が変化したことに加え、アジアの重要性が高まったことで、アジア系アメリカ人コミュニティの政治的利害および政治関与を拡大する可能性は大きくなった。コミュニティによって牽引力は異なり、参画に際しての大きな障壁があるとはいえ、こうした変化による機会は、否が応にも高まっている。

一部のアジア諸国の重要性と信頼度が上昇したことで、アジア系アメリカ人の自尊心と自らの有用性に対する自信がつき、徐々に政治的、心理的に良い結果を及ぼすであろう。アジア系アメリカ人の自尊心、関心および自信が急速に成長した背景には、出本国の台頭が関わっている。

とはいえ、アジアの発展によるアジア系アメリカ人コミュニティの勢力拡大と活性化は、最近再び猜疑心を呼び覚ましている。1996年の選挙時やウェンホー・リー事件を始めとするアジア人およびアジア系アメリカ人の政治関与をめぐる論争で明らかになったことは、政治家とマスコミは、何かといえばすぐに「アジアン・コネクション」と呼ばれるイメージの悪い暗部を持ち出そうと待ち構えていることであった。

結局、アジア、米国およびアジア系アメリカ人の経験における大きな変化や根強く残る状況を見るだけでは、同コミュニティの今後の外交問題活動の行く末を予想することは難しい。過去のしがらみや強力な反対により後足を踏むことになるかもしれない。あるいは、本稿の冒頭で引用したゲルブによる予想が指し示すとおり、アジア系アメリカ人は「世界における米国の関与および外交に強い影響を与えるかもしれない」。

以上で、ポール・ワタナベ氏による論文掲載は終了いたします。
本論文は、2005年3月にワタナベ氏が日米センターにて行なった講演の資料(原文英語)を本人のご了解のもと和訳・転載したものです。

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