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CGP-マンスフィールド財団 共催シンポジウム
『地球温暖化とわたしたちの未来~CO2削減に向けての日米の貢献:新戦略と次世代技術~』
パネリストエッセイ

「地球の気候変動:問題を引き起こしているのは中国か」

 

サラ・ローレンス大学地理学部教授・ジョシュア・モルダビン


1ヶ月前、私は国際交流基金日米センターが東京で開催した催しに招かれ、中国が気候変動に与えている影響について話した。私は過去25年間にわたり中国について研究してきたが、そのテーマは、中国における改革の遂行とこれにつぐ世界経済への一体化がもたらした急激な変化が環境および社会に与える影響についてである。私は安倍フェローとして、日本の対中国援助プログラム、とりわけ環境支援プログラムに関して長期的な政策研究を続けている。

私はこのシンポジウムでパネリストを務めたが、ブッシュ政権から参加したエネルギー省の専門家も私とともにパネリストを務めた。この専門家は、まず人間が引き起こした気候変動という見方に疑問を投げかけたうえで、ブッシュ政権はこれまでCO2削減に関して世界を「リードしてきた」と主張した。そして、「この問題に関して米国から中国に教えられること」について論じた。私なら、米国は日本とは異なり、この問題に関していかなる他者をも導く立場にはない、と言いたいところだ。米国は過去何十年間にもわたって温室効果ガスの最大の排出国であり、現状から最大の利益を得てきたし、今後しばらくこの状況は続くだろう。

中国との関連でこの点を理解するために、北京で目にした誰の目にも明らかな景色と一つの見解を以下に記したい。北京で窓を開けば、世界最悪のスモッグ、粉塵、致命的な大気汚染が原因で濃いモヤがこの活気ある町をすっぽり包んでいるのを目の当たりにし、なぜ中国が地球温暖化の悪役にされるのかがよくわかる。中国は自らの「成功」に窒息しそうな状況にあり、今では温室効果ガスの20%以上を発生させている国として、格好のスケープゴートになろうとしているのだ。しかし、中国だけに目を向けていたのでは、気候変動の根本的原因に対処し、その悪影響を軽減し、持続的な解決策を提示するのにほとんど役立たない。

最近、国連およびワシントンで気候変動に関する会議が催されたが、ブッシュ政権は温室効果ガスの削減について中国を含む途上国の分担を増やすべきだと主張し続けている。このような要求は、西側諸国が長年懸命に努力を傾けて、中国を今日ある姿へと、つまり、危険に満ちた有害な製造工程を集中して受けもつ世界の産業基盤へと変貌させてきた事実を覆い隠すものだ。西側諸国の政府も企業も、単に利益を挙げてきたというだけではなく、中国がこのエネルギー集約型かつ環境破壊型の成長を遂げ、その結果として温室効果ガスを急増させる道を突き進むのに手を貸してきた。さらに、西側諸国の消費者は、中国の工場で製造された低価格の輸入品から直接の利益を受けてきた。中国で温室効果ガス排出が急増した根本には、貪欲な消費の拡大と、それを煽ってきた事実がある。この傾向はとりわけ西側諸国で顕著だ。

世界銀行、日本の国際協力銀行、および西側各国の二国間援助機関は、1980年代はじめ以降2,000億ドルを超える融資を提供し(この時期の開発援助額としては最大)、その結果、何はともあれ中国を世界の工場に仕立て上げるための社会基盤が整備された。発電所、送電システム、石炭輸送用の鉄道、天然ガスのパイプライン、幹線道路、港湾、空港など、中国の社会基盤整備を支援する大型契約は多国籍企業が受注した。こうして中国は、主として地方の農民からなる移動性の高い低賃金の労働力が豊富に存在することも手伝って、グローバル化する企業の大いなる関心を集めることとなった。

これと時を同じくして、西側諸国のリーダーたちは新自由主義の経済政策を推進し、資本の流動性向上を図ってきた。過去25年間にわたって企業は製造工場を中国へと移転させてきたが、多くの場合は現地の企業や子会社と提携し、環境や労働に関する規制の緩さを利用して高収益を挙げてきたのだ。柔軟な対応が可能な企業は、製造業務を中国へ移転させることによっていく過程で、世界の他の地域を脱工業化させてきた。

中国では政府自身が何としてでも高度成長を達成しようと努力を傾けたことにより、世界経済との一体化がさらに進み、過去20年間以上にわたって年平均10%を超える経済成長を遂げた。逆説的になるが、その結果生じた環境破壊と貧富の格差拡大が、今では経済成長そのものを脅かし、また政府の威信も傷つけかねない状況を生み、毎日のように各地で抗議行動が行われているのである。中国に広範な製造ネットワークが行きわたったことにより利益を獲得した人々と、逆にその悪影響を被ることになった人々との間には、大きな格差が生じている。最大の利益を手にしているのは中国および外国の企業であり、コストを負担しているのは現地の環境や中国人労働者の身体だ。

中国が発展していく過程で生じている長期的な環境破壊の影響については、国の指導者も市民も十分理解しており、政府の統計は、今では公害が主な死亡原因であることを指摘している。中国はまた、環境破壊を含めて、今日自国が現在抱える多くの問題の根本には計り知れないほどの社会経済的不平等があることを認めている。そして、中国にとって地球温暖化の壊滅的な影響が及ぶということが、対策に乗り出す強い動機づけとなっている。

農業にも工業にも壊滅的な影響が及び、都市にも地方にも深刻な問題が生じていることから、中国は、国内的にも国際的にもこれになんとか対応し、同時にガス排出量の削減に真剣に取り組まなければならないし、又、このような背景があるがゆえに、今日中国では最善策を模索する広範囲な議論が行われ、また国際社会に伍して京都議定書以降の論議に加わる機会が増しているわけである。

中国では労働者と環境が発展への道の最前線に置かれている一方で、環境破壊の足跡は国境の外側にも及んでいる。中国が世界経済と一体化することによって競争が激化し、世界中の国々で環境と労働に関する基準を押し下げるという結果を招いている。さらに、中国が世界中の企業を相手とする産業基盤の提供者となったことから、中国ではグローバルな資源に対する需要が高まり、遠方の国々や地域からの輸入も増えている。たとえば、シベリア、モザンビーク、ミャンマーから木材を、スーダン、インドネシア、ボリビアから石油化学製品や鉱物を輸入している。そこで一例を挙げて言うなら、森林伐採による地球温暖化の影響などは今や肥大化し、中国国内にとどまらなくなっている。

中国では世界経済との一体化が進み、資源の消費が急激に拡大しているが、西側諸国は自らがこの傾向を後押しし、そこから利益を得ているのだ、ということを認識しなければならない。温室効果ガス排出量の増加を中国のせいにするという、誰でも陥りがちな比較的安易な答えで自らをごまかすのでなく、私たちは問題の核心に焦点を当てなければならない。ここに言う問題の核心とは、極度に不平等な生産、分配、消費に関する国際的なシステムだ。このシステムは、勝者と敗者の二極化を引き起こし、利益の大半を幸運な少数派に分配し、その他多数の人々の将来を危険にさらしている。このシステムこそが問題なのだ。


*シンポジウム開催報告はこちら

シンポジウムにご参加いただいた他のパネリストの方々からもエッセイをご寄稿いただきました。こちら(ダイアン・フーイー氏エッセイ / 有村俊秀准教授エッセイ)からご覧ください。

モルダビン氏プロフィール:
ジョシュア モルダビンジョシュア・モルダビン (Joshua Muldavin
ニューヨークのサラ・ローレンス大学地理学部教授。カリフォルニア大学バークレー校博士号取得。現在アジアで2年間の実施研究に従事している。主にアジア各地での国際開発における政治生態学を中心に研究。2006年より、安倍フェローシップの後援を受け、「中国における保全、持続可能性、貧困の軽減:中国の開発における日本の環境ODAの役割」に関する実地調査を行う。2007年以降は日本の上智大学比較文化研究所の客員研究員、ならびにネパールのカトマンズ総合山岳研究開発国際センターの客員研究員を兼務。


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