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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2005年4月)
フェロー:谷 裕子

報告書リスト

谷 裕子
日米センターNPOフェローシップ(第5期)
月次研修報告書(2005年4月分)

フェロー:谷 裕子(Rape Crisis Survivors Net Kansai 事務局長)
研修テーマ:コミュニティで作る支援−性暴力被害者サポート
研修先:Bay Area Women Against Rape (BAWAR) (Oakland, California)
研修期間:2005年3月29日〜2006年3月15日


米国のレイプクライシス・センター、BAWARとは

カリフォルニア州オークランドにオフィスを構えるBay Area Women Against Rape(BAWAR)が私の研修先である。

私が日本で所属するRape Crisis Survivors Net Kansai(RCSNK)BAWARが出会い5年以上になる。BAWARは、1971年、バークレーで起きたレイプ事件をきっかけに主婦3名がレイプ被害者の支援活動を始めた。BAWARは全米で最初に市民が立ち上げたレイプクライシス・センターである。現在、このような団体は全米では900以上に及ぶという。レイプ被害者は「サバイバー」と呼ばれる。これはアメリカで生まれた言葉である。被害者は「弱くてかわいそうな人」ではない。恐ろしい経験をして、生き抜いた人への敬意を表し「サバイバー」という表現をするのである。

また、アメリカにはドメスティック・バイオレンス(DV)サバイバーの支援団体も星の数ほどある。レイプとDVは色々な理由から別扱いされている。ほかに、子どもの虐待、女性と子ども、同性愛者、性同一性障害者、人種別、障害者などそれぞれ専門的に性暴力サバイバーのサポートを行なう団体もあれば、BAWARのように、年齢、性別、性的嗜好を問わず支援を行なう団体もある。

BAWARは病院、警察、裁判所等への同行、各機関、地域での教育を行なうほか、24時間ホットラインを設けている。24時間ホットラインは、トレーニングを受けたボランティアによって交替で行なわれる。レイプクライシスセンターのボランティアトレーニングは平均45時間だが、BAWARのトレーニングは60時間。その後、スタッフの監督のもとで、ホットライン6時間、救急病院への同行1回を修了しなければいけない。その間、面接と常時ふるいわけが行なわれている。修了者はカリフォルニア州認定のレイプクライシス・カウンセラーの認証を受け取る。ホットラインがボランティアでカバーできない時間帯は、BAWARのスタッフ7名が交替で担当する。

このホットラインに電話をかけてくるのは、10分前にレイプされた人もいれば、30年前にレイプされたことを話したい人もいる。被害者が警察への通報や妊娠検査等を望むなど緊急の場合は、BAWARスタッフ及びボランティアが24時間対応でレイプ検査を受けられる病院に同行する(SARTコールと呼ぶ)。SART(Sexual Assault Response Team)とは、BAWARの対象地域であるオークランド内の2つの病院で、性暴力被害専門の警察官と医療チームにより運営されているシステムである。性暴力被害について教育を受けた警察官による調書から始まり、トレーニングを受けた看護士によるレイプ検査(DNAなど証拠を採取)、けがの治療、性感染症検査など、必要なサポートが一箇所に集結している。このチームスタッフの教育も、BAWARが行なってきた活動の一つである。このSARTを持つ病院が増えると支援の幅も広がることだろう。

SARTコールは毎日あるわけではないが、予測不可能である。ボランティアは自分の担当日は携帯とポケットベルを常備して、いつでもSARTの病院に行ける体制を整えておく必要がある。

通常、ホットラインにかけてくる人は、被害について話したい、聴いて欲しい場合が多い。アメリカでもレイプについて語ることはまだまだタブーである。疎外感や孤独、絶望感など、サバイバーの心に沸き起こるさまざまな感情を聴いてくれる人がいることは、大きな違いである。BAWARが厳しくスクリーニングを行なうのは、ボランティアが心無い言葉でサバイバーを傷つけないため、適した人材を選出しているのである。今年4月に終了した今年1回目のトレーニング受講者の中にも、活動への参加を断られている人もいた。

1988年からは、刑務所に出向いて性犯罪者への教育を行なっている。BAWARの代表、マーシャと、彼女の親友であり、スタッフのダイアンは活動を続ける中で、「加害者への介入無しに性暴力事件を減らす事は不可能と気付いた」と語る。

加害者への介入を行なうレイプクライシス・センターは稀だが、その影響力は強いはずだ。事件後、被害者が長期にわたり体験する精神的、肉体的な苦痛を加害者に伝えていくのは、被害者の声を聴き、寄り添ってきた団体だからこそできる活動ではないだろうか。

サバイバー支援団体は、それぞれの活動分野を持ち、互いに連携している。例えば、BAWARの24時間ホットラインに子どもの性虐待の相談が入ると、BAWARは子ども専門の支援団体の情報を伝える。

一例として、Child Abuse Listening Interviewing Coordination Center(CALICO)がある。CALICOは全米で最初に設立された、虐待を受けた子どものためのインタビューセンターである。インタビューの内容は録画、録音され厳重に保管される。裁判になった場合、証言として使用される。子どもは裁判所へ行くことを拒否できる。こうして、加害者に合わずに済む。子どもが事件について語るのは一度だけである。本人とその周囲の人間の精神的な苦痛をすこしでも軽減させる必要性が理解されて生まれた活動だ。市民が専門機関と連携して作り上げた活動の一つだ。


Sexual Assault Awareness Month

毎年4月はSexual Assault Awareness Monthといわれている。性暴力被害を認識する月間、性暴に対する意識啓発月間とでも訳すことができるだろうか。

全米各地で4月は様々なイベントが行なわれる。ここオークランドでも大小さまざまなイベントが開催された。BAWARスタッフも地域の学校、教会、警察などでの講演に大忙しだ。さらにTablingと呼ばれる活動紹介を行なう。イベント会場で長テーブルに団体のパンフレットやオリジナルグッズを並べ、参加者に話をしつつ、他の団体と交流。ここで新たな紹介先を開拓することもできる。

4月は、BAWARもオークランド周辺で開催されたイベントに参加するたび、カリフォルニアのレイプクライシス連合California Coalition Against Sexual Assault(CALCASA)製作のバッジを配布した。「Why Denim?(なぜデニム?)」と書かれたバッジ。1998年頃、イタリアで起きたレイプ裁判で、サバイバーが事件当日ジーンズを着用していた。裁判長は「ジーンズは脱がせにくいので、レイプすることは不可能である」という理由で被害女性は敗訴。本当にそうだろうか? もし銃やナイフで脅されたら、被害者は生き残るためにジーンズを脱ぐだろう。ナイフで切り裂けば、脱がせずにレイプすることはできるはずだ。この事件をきっかけに「Why Denim?」バッジと、事件を説明するカードを作成、毎年4月に配布しているそうだ。

他にも、BAWARは、地元の警察と提携してバーへ出向き、Bar Hopping(バーのはしご)を行なった。これは決してバーで酒を飲むわけではない。バーや、バーの設置されたレストランのオーナーに直接話をして、飲み物に混入されるレイプドラッグを警告する協力をお願いする。警告ポスターをトイレに貼らせてもらい、警告文を印刷したコースターを配る。4月は3つの街を訪ね、30カ所以上のバーを回った。私服警官がバッジを見せると、オーナーは突然態度を変えて協力してくれるが、おそらく数件は、私達が去った後、ポスターとコースターを捨てているだろう。

土曜日も毎週どこかで集会などがあり、私は到着した翌日から毎日どこかへ出かけてばかりだった。これだけ性暴力被害者支援の活動がある米国でも、「レイプ」「性暴力」「子どもの性虐待」といった言葉を出すと顔をしかめ、立ち去る人が多い。日本もアメリカも、一人一人の意識変革への道のりはまだ長いという現実を見ることができた。4月から研修が始まったのは、息つぎをする時間もないほど忙しかったが、黙っていてもいろいろな団体の活動を知ることができ、得るものが多かった。 私はBAWARのレイプクライシス・カウンセラー・トレーニング後半(4月1日)から参加したので、6月に前半部分に参加し、修了することになる。今から楽しみだ。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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