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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2005年5月)
フェロー:井上 英之

報告書リスト

井上 英之
日米センターNPOフェローシップ(第5期)
月次研修報告書(2005年5月分)

フェロー: 井上英之(特定非営利活動法人ETIC.プロデューサー)
研修テーマ: ベンチャーフィランソロピー(社会起業向け投資)の経営とパフォーマンスマネジメント
研修先: Social Venture Partners International (Seattle, Washington)
研修期間: 2005年3月12日〜2005年9月11日


5月は、4月に始めた、「SVP In A Box」という、SVP立ち上げや運営に関するノウハウブック(SVPIスタッフの汗の結晶である)の日本語翻訳を引き続き行なった。

また、日本でのSVP東京の動きが加速。正式なアフィリエイトにはなっていないため「東京ソーシャルベンチャーズ」(SVP)という名称で、30名ほどのパートナーが集まり、10万円ずつ出資をしてファンドを組成、数回に及ぶ初めての投資委員会を通じて(私もネットのTV電話を通じて参画)、最初の投資先が2件決定した。この様子や会議の写真、投資先の情報などを、SVPISVPシアトルのスタッフともシェアをした。

こうした実際の動きを背景に、SVPIからは、東京で立ち上がる当事者としてのフィードバックを求められ、「Box」の内容に関するコメントや、日本で立ち上げるさいの困難や逆にやりやすい部分、米国との差異などを伝え、ディレクターのトム・ドンリーとは度々ディスカッションを行なった。

他に、戦略ミーティング後のフォローアップ、戦略の練り直し、SVPシアトルのパートナー教育セッション(国際援助に関するセッションだった。シアトルは月に数度こうしたものを行っている)への参加、ロバート・ネスというSVPIの相談役をやっている戦略および組織コンサルタントとの出会いなど、慌しい3月、4月を超えて、生活に慣れながら仕事の幅や人間関係を広げて行なった時期でもあった。

+下記は、その他の重要な気づき2点である。

1.レバレッジ(leverage)とは?

実は、渡米して以来、常に気になっていた言葉である。SVPIのスタッフも、「各地のボードメンバーたちはね、いつも『レバレッジ、レバレッジ』って言うのよ! この言葉が大好きみたい」と笑っていた。

この「レバレッジ」という言葉、私が社会起業の分野に関わり始めてから常に耳にしていた言葉だったが、ここに来てようやく実感としてこの言葉が運ぶ背景が分かり始めた。なぜ、社会起業関連に関わるビジネスパーソンがこの言葉を口にするのか? 実は、この言葉なしには、90年代の終わり頃から動き始めたベンチャー・フィランソロピーや、「ニュー・フィランソロピー」と呼ばれる新しいビジネスとノンプロフィットの融合や相互作用を進めるムーブメントの背景は語れない。

「レバレッジ」とは、本来経営分野における「テコ入れ」を指し、多くの場合、企業の資金調達のさい使用される言葉である。より大きな資金を調達することで、今の事業の型にレバレッジをして資金を投入し拡大、生産性をあげていく。さらに広い意味では、経営そのものがレバレッジである、とも言う。起業家一人ではとても全てまわらないし、全ての能力を兼ね備えることもできない。だから、会計が得意な人材、ITが得意な人材、法務が分かる人材、オペレーションの得意な人材など、経営チームとなることで、この起業家アイデアに「レバレッジ」する。

20世紀の資本主義市場は、この「レバレッジ」の典型であり、この市場の“レバレッジ”能力によって、世界の富は加速度的に増大し、GDPも膨らんだ。つまり、あるときは鉄鋼などの特定産業にレバレッジをし、リソースの集中投下を行ない、生産性の低かった産業の生産性を一気に上昇させる。これがイノベーションである。同様のことを、資本市場を通じ、「次はIT産業だ」と一気にレバレッジしたのが、90年代のITブームである。同時に、金融マーケットのボーダレス化によって、さらにお金の循環の回転速度が上がり、富の循環を早まったことで、世界のGDPは増大した。結果として、この富の一部が、政府の税金を通じ、ときには、企業や個人の寄付を通じ再配分され、一気に市民セクターに流れたのが20世紀後半の世界的なNGOセクターの隆盛の背景の一つといえる。

このとき、アメリカを中心としたITベンチャーやニューエコノミーで若くして成功した起業家やビジネスパーソンたちが、ビジネスでの成功を背景に「お次は社会セクターだ」と社会セクターをビジネスのメソッドでイノベーションを起こそうとしたのが、『ニュー・フィランソロピー』の重要な背景である。

長い間、NPOセクターにおける経営改革の必要は叫ばれてはいた。しかし、基本的には増大するフィランソロピーマネーを背景に、一部の例外を除いて、革新的な生産性の向上は起きないでいた。つまり、ひとりの起業家の汗の分だけ、受益者となる社会的弱者は生活の向上が臨める。100人を救うためには、100人分のNPOスタッフが必要な世界である。

この生産性の低いセクターを、「レバレッジできないか?」、これが、彼らの問題意識である。このときレバレッジを行なうツールは、お金だけではない。ビジネスセクターで鍛えた経営ノウハウやさまざまな人材の提供、そうしたものが、固まってしまった社会セクターやビジネスセクターといった分離した「サイロ」(この表現を彼らは頻繁に使う)の壁を突き破り、両セクターの橋渡しをすることで、イノベーションが起きるのだという。

そのため、ビジネスセクター出身の社会セクター関係者の多くは「レバレッジするんだ!」ということを口にする。100人を救うために10人で回せる仕組みを作り、世界に広げるのだと、希望をもって語る。

4月のSVPIコンファレンス以来、SVPの評価指標に関するディスカッションもずいぶん行なったが、やはり、ここでも問題になるのは、「広がり」(replicability)である。どう、今のクオリティーや品質を保ったまま、このモデルを広げるのか?

20世紀の繁栄を築いた“レバレッジ”という装置の大きな課題として、実は、「個の疎外」という問題が常に生じてしまう。近代化した社会のあちこちで、組織で働く個人が直面している課題である。生産性はあがったが、創業社長は企業をIPO(公開)することで、自ら育て上げた企業は自分の手を離れる(よいことでもあるのだが)。働く従業員に至ってはレバレッジするほど、組織の中の自分の存在が小さく、そして交換可能な部品のようになってしまう。

社会セクターは、本来、地域で困窮する個人を相手に、丁寧にサービスを積み上げていく。マクドナルドのようなフランチャイズ方式では、優良な福祉施設はなかなか展開できない。では、いかに魂を抜かずに、仕組みに落としていくのか? SVPも同様の悩みをもっている。

だからこそ、SVPIDSI(Demonstrating SVP's Impact: SVPIのインパクトを測る)という評価委員会では、YMCAGoodwill など、全米に展開する巨大NPOの広がりとそのポイントを扱ったマッキンゼーのレポートを研究する。この「レバレッジ」と「個の疎外」、孤独感といった課題は、今、NPOをビジネス化する潮流の中で常に話題となっている。底辺に流れるのは、21世紀の企業やNPOのあり方、今後の生き方、働き方の問題という、非常に重要なテーマだからである。

2.ブランディング・ミーティング

5月上旬には、SVPI主導の「ブランディング(branding)」ミーティングが行なわれた。フェニックスでの戦略ミーティング同様に、各地のボードメンバーが今度は10名弱集まり、1日シアトルでミーティングをしている。

ブランディングは、そのまま組織としてのビジョンや戦略、一般に伝えたい自分たちの方向性のイメージを固めていく作業でもある。SVPIスタッフで、ブランディング担当のロナ・プライヤーがコンサルタントともにリードするミーティングは見事で、創造的で内容の濃い時間が続いた。

特に、自分たちにとってもSVPの価値を言語化していく。このプロセスは非常に興味深く、イメージを言葉に置きかえ、参加メンバーでブレインストームし、それをつなげてひとつのビジョンにしていく。

SVPIの名称も、SVP International ではなくネットワーク全体を指すSVPという名称にして、現在、Social Venture Partners というロゴを使っているのは発祥地のシアトルだけだが、シアトルのロゴを SVP Seattle にしてはどうかという提案もあった。またコピーに関する議論は全てを集約するもので面白く、一般に、ナイキの「Just Do It」、マクドナルドの「I'm Loving It」などシンプルなものが多い。SVPの価値も、Venture Capital for Communityなど説明的なものではなく、この日、コンサルタントから提案にあった「Fortune Forward」などいくつか候補があがり活発な議論がなされた。

この日、コピーに関する最終的な結論はでなかったものの(最終的に秋の時点で、「Invest. Engage. Advance」となった)、このプロセスを通じて参加したメンバーにとって、SVPが他のベンチャー・フィランソロピーと何が違い何がユニークで、何を目指しているのか非常に議論が深まり、ミッションも明文化できた。こうやってミッションや価値を共有し、ブランドや戦略に落としていく。ビジネスでのブランディングの手法を、非営利組織向けに多少アレンジしたその進め方は非常に参考になった。

最後に、SVPはこうしたテクニカルなボードミーティングに、しばしばコンサルタントを雇っている。前出のDSI(評価委員会)では、Blue Print という財団や政府部門の評価を得意とするコンサルタント会社を使い、結構な額を支払っていたし、このブランディング・ミーティングも同様である。SVPIにとってその負担は実は重いものでもあるが、逆にいえば、職員を雇って自前で全てを行なう場合に比べれば、時間も労力もそしてコストもかなり圧縮できる。またコンサルタントからのスキルのトランスファーもある。

コンサルタントを雇うためのファンディング(資金調達)は、簡単ではない。いくつもの財団や企業にプロポーザルを出したり、心あるパートナーたちに資金提供をお願いをする場合もある。だが、コンサルタントなしで評価やブランディングといった専門性が高くかつ重要な分野を行なった場合を考えると、決して高くない買い物だ、というのが彼らの判断である。実際に参加してみると、コンサルタントと良好な関係をしっかりと築き、第三者である彼らをうまく活用していることが分かる。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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