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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2005年6月)
フェロー:井上 英之

報告書リスト

井上 英之
日米センターNPOフェローシップ(第5期)
月次研修報告書(2005年6月分)

フェロー: 井上英之(特定非営利活動法人ETIC.プロデューサー)
研修テーマ: ベンチャーフィランソロピー(社会起業向け投資)の経営とパフォーマンスマネジメント
研修先: Social Venture Partners International (Seattle, Washington)
研修期間: 2005年3月12日〜2005年9月11日


6月は、やや手間のかかっている翻訳作業を続けながら、7月以降に予定していた、SVPIの評価に関するプロジェクトの準備のため必要な書類や論文の読み込みなどを始めていた。また、下記するとおり、PCの窃盗事件にも遭い、復旧などに暫く時間が取られることになったが、振り返ると、この滞在中最大の意義ある出来事ともいえ、多くの学びもあった。

他に6月上旬には、3日間ほどの時間をとって、オフィスでミニ・キャンプを行なった。4月以降の懸案だった新しい戦略をもとに、それをどう実行していくのか(プロジェクトマネジメント、オペレーションの整理)、さらには、思い切り広げてしまった戦略計画をどう絞っていくのか(自分たちのミッションの再定義、優先順位づけ)など、具体的な今後のSVPIの進め方をメンバーでディスカッションした。この結果、非常に重い感じであった各スタッフの仕事がだいぶ整理されたようで、これ以降、作業項目と作業するカレンダーを整理したエクセルシートをスタッフ間で共有し、毎週のスタッフミーティングではアップデートしていくスタイルとなった。

下記は6月の大きな出来事3点である。

1.パートナーミーティング

半年に一度の、SVPシアトルの「春のパートナーミーティング」に参加した。シアトルのダウンタウンにある、「シアトル子供ミュージアム」を借り切り、Harris Private Bank というSVPの常連スポンサーをつけて開催した、一年でもっとも華やかなイベントである。

ここには既存のパートナーやその家族、パートナーに関心のあるビジネスパーソンたち、投資先のリーダーたちが集い、SVPの一年間の振り返りと、今年の投資委員会の結果、引きつづき投資することになった投資先の発表や成果、投資先との間に生まれた物語のプレゼンテーション、今後のSVPの目指すものや目標を一気に共有する。

何せ、400名以上がかかわる大所帯である。こうしたフィジカルに出会い、話をし、直接に「リード・パートナー」と呼ばれる投資先とタッグを組んで経営能力の向上に努める。パートナーと情報交換をしたり、自分がどういう場に対して年間5500ドルを支払っているのかを実感する。

非常によく出来たミーティングで、ミュージアムのホールを利用したカジュアルなカクテルから会は始まる。ここで新たな出会いや、なじみのパートナーと再会するなど、会場はすでに熱気に包まれる。

その後、ミュージアムのシアター型の会場に場所を移し、いきなり、地域の劇団によるお芝居が始まり、笑いをさそっていく。毎年、こうした「おふざけ」をするのが、いかにもシアトルらしい(生まじめなパートナーが毎年、クレームをつけるそうだが・・・)。

その後、シアトルのリーダー、ポール・シューメーカーによるカジュアルで魅力的なSVPの価値や方向性に関するプレゼンテーション、「SVキッズ」と呼ばれる、高校生がSVPのお金を一定額預かり、SVPと同じスキームで投資をする制度の報告を、高校生自身が、緊張しながらプレゼンもする。新たな投資先には拍手を送り、最大5年間の継続的な関わりをする投資先の年毎のパフォーマンス評価をスコア化したスライドには、活発な質疑を行ない、、、とあっという間に熱気ある時間は過ぎていく。

パートナーたちは、活動を推進するメンバーであり、なおかつ、出資者でもある。このような内部向けのイベントを、さらに外部のパートナー候補や関心ある地域の人も招待し、さらに外部スポンサーも得て開催するのは、非常に効果的だと思う。自らがこの場に参画し、出資もしていることを誇りに思うし、新しい出会いやプロジェクトも生まれる。非常に参考になった。

2.「ハイ・コンテクスト」と、「グラウンド・コンテクスト」

6月1日〜3日にわたって、オフィスで今後のSVPIのビジョンやミッション、戦略計画の実行のためのミニ・キャンプをスタッフ内で行なった。この際、SVPIの役割の定義と、実行するタスクの優先順位を整理する際に、大きく全ての実務を「ハイ・コンテクスト」と「グラウンド・コンテクスト」に分けて整理しなおす提案をした。

これは、トム・ドンリーや他のスタッフにも非常に好評で、SVPが各地で行っている事業全体のミッション達成を表す星(☆)印に向けた、三角形の頂点から見た文脈が「ハイ・コンテクスト」で、逆に、三角形の底辺から上に向けて見た文脈が「グラウンド・コンテクスト」となる(あえて「ロー・コンテクスト」とは言わなかった、日々のオペレーションは重要で、決して「低い」ものではないからだ)。

つまり、SVPIの「ハイ・コンテクスト」となる実務とは、SVPネットワーク全体の価値を向上させ、このモデルの意義を言語化し発信していくなど、より目線の高い価値創造である。それがSVP全体のブランディングであり、ビジネスのスキルでNPO支援をするとき生まれる知見の整理や、各地のSVPの成功事例を他のSVPとシェアすることである。

一方、「グラウンド・コンテクスト」とは、各地のSVPが一方で、スタッフ育成のためのトレーニングを望んでいたり、事務サービスや購買の共有化を希望していたり、場合によっては、各地のための資金調達が出来ないかという議論もあり、こうした日々の運営サポートをしていくことである。

これらのふたつの異なる文脈から、各地のSVPが要望としてSVPに提案をしているため、これまで何度もレポートしているように、SVPは現状のスタッフではまわしきれなくなっている。

正直、渡米するまでは、私は東京のSVPでは高いコンテクストでの期待しかしていなかった。実際に距離があるせいもあるが、各地のSVPは基本的に独立して資金も調達するし運営もする。たしかに、共同購入などはあったほうがいいが、地理的に離れているためあまり現実的に考えていなかった。

SVPのアフィリエイトが増えるに従い、第一号であるSVPシアトルが窓口となってノウハウやアフィリエイト加入の案内をしているのには限界がある。それを見越して、2001年にトム・ドンリーを雇ってSVPIを設立した。その後、アフィリエイトも20を超え、タスクも増加、ちょうど今が、ミッションや役割の整理の時期となっている。

3.盗難について

詳しくは、私の滞在中のブログに3回に分けて報告したが、6月13日に、私のラップトップPCとバックパックが窃盗にあった。

これは実は、ある意味、この滞在中の最もメッセージに満ちた出来事かもしれない。事件に遭ったのは、宇和島屋という、シアトル地域では有名な日本の食品などを販売するスーパーマーケットで、創業は1928年と歴史も長い、日系人にとっては重要な場所である。

この宇和島屋は、森口富雄氏という日系人が会長を務めている。全米でも類を見ないほど、日系人をはじめ、アジア系移民がしっかりと地域に入り活躍しているその努力とここまでの展開に、彼や宇和島屋の存在は欠かせない(「草の根NPOのまちづくり〜シアトルからの挑戦」西村祐子著に詳しい。)。同時に、宇和島屋がビジネスを続ける、このインターナショナル地区は、かなり治安の良いといわれるシアトルのダウンタウンでも、最も貧しく、治安も不安定なエリアだ。ここであえて、粘り強く、森口氏ら宇和島屋はビジネスを続け、地域からの敬意も受けている。

その宇和島屋の店内で、私は窃盗にあった。詳しくは割愛するが、店内のフードコートのテーブルでPCを短時間使い、それをバックパックに入れようとした瞬間に、黒人の少年が後ろからそれを狙い、素早く奪い逃走した(その後、彼を追跡中に彼は現場に戻り、バックパックも盗んだ)。

警察とのやり取りやさまざまな対応、その後の、失ったファイルの復旧などかなり手間がかかったが、それ以上にこの事件の学びは大きい。

私は彼を必死で追いながら、なぜか彼を憎いとは最後まで思わなかった。それ以上に、これで彼はPCを叩き売って小銭を稼いで終わってしまう(日本のOSだし彼が使うことはありえない)。やり方は悪質ながらも彼が必死に逃げる姿を追いながら、あの黒人の少年がこういう窃盗に走る背景となるこのインターナショナル地区の町並みが、逃走の背景として目の端をよぎる。職業病かもしれないが、「どうせ寄付するなら、もっと彼にPCスキルなり何かキャパシティビルディングになる投資の仕方があるのに!! これじゃあ、こっちが損して、彼も稼いだお金使い切ってまた同じ繰り返しだよ!」、そんなことも感じていた。

それ以上に、大きな学びが二つある。

ひとつは、これが、ふだん我々が「社会問題」(ソーシャル・イシュー)と毎日のように語っている、そのリアリティである。特に、それがアメリカ社会のこの地区のように少し寂れたエリアに来れば、具体的に身に危険の迫るリアルなものなのである。当たり前のようだが、身体にその感覚がしっかりと刻み込まれ、それをも飲み込み活動している多くの現場の市民や活動家たち、また、そこに生きるということを考えた。命の危険と隣り合わせである状況は、途上国でのNGO活動をはじめ、初めてではなかったが、そのことをざらざらとした感触として、今、自分たちがしていること、しようとしていることは、何と対峙してなおかつ善意を訴えているものなのか、強く感じる機会となった。

第二に、事件後、気持ちはかなり早く切り替えたつもりでも、身体的に、事件の感触が暫く残っていた、という事実と出会ったことである。しばらくの間、誰かが背後にまわると、身体が反応してしまう。びくっとしている、過度に警戒をする自分と出会った。この社会には、必ずしも自分に責任もないのに、理不尽な暴力や人権の侵害、もしくはテロのような社会的な暴力行為に出会うことがある。そうしたことに情報としてでなく、リアルに遭遇してしまった場合、どんなに考え整理しても、やはり、動物としてこういう反応が身体に残るものなのだ。その自分の反応に驚き、また、まだ小さな事件で入り口に過ぎないが、この種の暴力に出会った人たちにとって、それを乗り越えるということがどういうことなのか、本の少しでも実感として考えることができたように思う。

 最後に、この事件をきっかけに、SVPIのみならず、同じフロアにいる、他のいくつもの団体のスタッフたちともコミュニケーションをとるよい機会となったし、自分の人となりや、こういうときに考えたことをシェアし、交流することができたのも、収穫だった。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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