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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2005年6月)
フェロー:谷 裕子

報告書リスト

谷 裕子
日米センターNPOフェローシップ(第5期)
月次研修報告書(2005年6月分)

フェロー:谷 裕子(Rape Crisis Survivors Net Kansai 事務局長)
研修テーマ:コミュニティで作る支援−性暴力被害者サポート
研修先:Bay Area Women Against Rape (BAWAR) (Oakland, California)
研修期間:2005年3月29日〜2006年3月15日


6月は、初めてのナショナル・カンファレンスと、医療・法関係者のためのトレーニングに参加した。たくさんの出会いがあった。

National SART Training Conference in San Francisco(June1-3, 2005)【PDF:外部サイト】

サンフランシスコのヒルトンホテルにて、第3回National SART Training Conferenceが開催された。連邦司法省の資金により、Sexual Assault Resource Servicesというミネソタ州の団体が主催したもので、全米はもとより、イギリス、オランダ、カナダからも数人の参加があった。日本からは私一人である。
2001年、第1回カンファレンス参加者は300人以下だったというが(それでも多いと思うが)今年は950人以上の参加。ホテルの会場は満席で熱気が溢れる。参加者は医療関係者、レイプクライシスセンターのスタッフ、弁護士、警察官、軍人、メディア関係者。まずは、このSARTについて説明したい。

SARTとは何か?

Sexual Assault Response Teamの略。
(1)レイプ被害者が911に通報する
(2)警察官が、通報のあった現場に向かい、被害者を保護し、SART対応の病院に移動。
(3)SART対応病院がソーシャル・ワーカーに連絡。
(4)ソーシャル・ワーカーがレイプクライシスセンターに連絡。センターのスタッフが病院に駆けつける。
(5)SART病院で警察の取調べと専門のナースによるレイプ検査が行なわれる。
トレーニングされた警察官による取り調べとレイプ検査が、一カ所で行なわれるため、被害者は、必要なプロセスを短時間で済ませることができる。平均3時間、長い時は8時間以上におよぶ事もあるという。その間、レイプクライシス・センターのスタッフは被害者に付き添い、レイプ検査の内容を説明する。検査の間も、被害者の傍で支える。付き添いの友人や恋人、家族などのサポートも必要であれば行なう。今後のサービスについても説明する。
このシステムは1970年代後半に始まった。当時、24時間体制は不可能だった。レイプ被害者は、救急治療の待合室で、自動車事故や銃撃戦によって負傷した患者と共に、血の匂いがする中、何時間も待たされていたという。レイプされて、自責の念に駆られ、被害者は待合室から立ち去ることが多かった。レイプ被害者でなくても、そのような環境に長居して心地よいものではないはず。SARTは、被害者の心労を少しでも軽減するため、そして通報を増やすために、レイプクライシス・センター、医療関係者、弁護士、警察の協働によって生まれたシステムである。

・カンファレンスのテーマ

分科会は3日間で42種類である。テーマは4つに分けられる。
SARTの技術向上と普及
■レイプ被害の通報と告訴事例から、法的なサービスを向上させる
■多文化におけるニーズを理解し、幅広い被害者支援を強化する
■メディアとの協働

・カンファレンスについて

カンファレンスはワークショップ形式だった。自分の関心のある分科会を選んで参加する。
一日3セッションあり、それぞれが6つの分科会による構成。私は、薬物使用のレイプ、多文化共生、人身売買のサバイバーのサポート、また、メディアとの関わりについての分科会などに参加した。しかし、各2時間のセッションでは、1つの問題についての情報提供と意見交換は無理だ。セッションの内容は、あまり充実したものとはいえなかった。どちらかというと、参加者はネットワーキングの場として利用しているように感じた。

・サバイバーの体験談

私が何よりも驚いたのは、朝9時から1時間、昼食中に1時間半あまり、「サバイバーの体験談」を壇上で語ることである。6人のサバイバーが、自分に起きた性被害と、現在の活動にいたるまでの経緯を力強く語る。一人は元ミス・アメリカ、一人は弁護士・・・。こみあげる感情に、時々声を震わせながらも、誇り高く語る彼女達に、私は心を打たれた。毎回、会場には大きな拍手が響いた。
分科会のファシリテーターの数人も「私は数年前にレイプされました。レイプは、私の人生を大きく変えてしまった。そして、今自分がレイプサバイバーに関わる生き方を選んだのは、不思議です」と語ってくれた。全米から集まったレイプクライシス・センター関係者とのネットワークを広げることができた。ランチに同席したワシントンDCのOffice for Victims of Crimeという連邦司法省関連団体のスタッフの口添えで、9月末にはワイオミングのクライシス・カウンセラー講座に招待してもらえることになりそうだ。

Sexual Assault Forensic Examiner Training in Sacramento (June13-17, 2005)

6月13日から5日間、SARTトレーニングに参加した。主催のカリフォルニア大学のSARTチームに、5月にメールを送ったのがきっかけである。「私は、医療関係者ではないが、日本でSARTの紹介をしたいので、参加は可能ですか?」と問い合わせてみた。予想以上に早く返事が来た。「医療関係者でない場合は、認定証を発行できないから、オブザーバーとして参加してはどうかしら? 参加費は免除しますよ」という。自分で問い合わせておきながら、その返事には驚いた。車で2時間ほど走り、サクラメントに到着した。
いざ、参加してみると、実は、ナースのためのレイプ検査のスキル・トレーニングだった。私は場違いだったが、自己紹介をした。「わお、日本のレイプクライシス・センターから参加者だなんて、初めてだよ!ようこそ!」と、トレーナーのDr. Greenはじめ、スタッフの皆さんは快く迎えてくれた。自分はナースではないし、このシステムをすぐに日本に紹介できるほどの力もない。少し落ち込んでしまったが、ご好意で参加させていただいているのだから、この場をネットワーキングに生かしつつ、吸収でき得る情報を集めて帰ろうと、心を決めた。参加者の9割はナースだ。約60人の参加で、うち男性は6名。

SARTトレーニングの内容

トレーニングは、全体の7割が講義である。医学用語は少ししか分からないので、講義の内容は難しくて頭に入りにくいが、レイプトラウマや被害の状況、そして文化の違いなどについては意見や質問をさせてもらった。後で参加者の数人が、私に「日本の状況を知らなかった。大変だね。教えてくれてありがとう」と話し掛けてくれた。
退屈ともいえるトレーニング。一日中レイプの話や、被害者の証拠写真などを見て過ごしてみて、気になることがあった。医療のプロとはいえ、この中にもサバイバーが居るはず。このトレーニングには、参加者の心のケアについての配慮は無かったので、私は「感想」を書くシートに「参加者の心のケアも準備が必要だと思います」と書かせてもらった。医療現場のスキル・トレーニングだから、現実的な内容は当たり前だろう。とはいえ、フラッシュバックや過去の被害を思い出すナースもいるはずだ。心理面でのサポート情報だけでも提供してほしいな、と感じた。ナースは時間も体力も、精神面でも大変な仕事だと思うからである。
私の母は元・看護婦である。昼夜を問わず、生死の境に立つ患者のために、忙しく働いていた母が、後輩ナース達に「自分自身の時間を大事にしなさい」と話しているのを見て育った私は、専門職の方々が燃え尽きずに、かつ仕事への意欲を持続させるためのセルフケアは、最も重要だと信じている。

・レイプクライシス・センターの役割も紹介

カリキュラムには、レイプクライシス・センターから講師を招いてのトレーニングも組み込まれている。レイプトラウマ症候群の講義を担当していたカリフォルニア大学のペギーさんは「代理トラウマ」「セルフケア」の大切さを話してくれて、少し安心した。残念ながら、参加者は、興味を示さない人が多かった。周囲から小声で「レイプトラウマとか、長すぎるよね。もういいから、早くスキルに入ってほしいわ」という、囁きが聴こえる。

・実技トレーニング

5日間のトレーニング後半は、模型を使ってレイプ検査の実技を習う。女性器、男性器などの模型を使用して、DNA採取を行なった。また被害時の衣類の保存法、証拠物品の採取方法など、私が実際に行なうことは、まずなさそうな実技を、他のナース達と共に、体験させてもらえた。最終日は半日のクロージングだった。質疑応答が中心で、その後はラップアップ。全米各地から参加しているので、すでに出発している人も多く、最終日は人が少なかった。

とても難しい内容だったが、スタッフの方々のおかげで、多くの情報を吸収することができた。最後にお礼を言うと、講師のDr. Greenが「日本でこのトレーニングを翻訳して行なうなら、僕達ができるだけのお手伝いをさせてもらうよ。日本でSARTを実現するのは、ゼロからスタートだろう。とても時間がかかるだろうけど、いつでも連絡してくれよ!!」と明るく微笑んで握手してくれた。

他の参加者と全く同等に私にも全ての体験をさせてくださった皆さんに、心から感謝したい。残念ながらたくさん撮った写真のデータがミスで消えてしまった。しかし、また機会があるだろう。そう思えた。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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