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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2005年7月)
フェロー:谷 裕子

報告書リスト

谷 裕子
日米センターNPOフェローシップ(第5期)
月次研修報告書(2005年7月分)

フェロー:谷 裕子(Rape Crisis Survivors Net Kansai 事務局長)
研修テーマ:コミュニティで作る支援−性暴力被害者サポート
研修先:Bay Area Women Against Rape (BAWAR) (Oakland, California)
研修期間:2005年3月29日〜2006年3月15日


◆ 女性のための護身術 Impact

アメリカで生まれた護身術「Impact」(インパクト)のクラスに参加した。

Impact Bay Area
インパクトは全米各地で行なわれており、サンフランシスコ・ベイエリアでインパクトの普及を行なうこのNPOも、かれこれ20年の歴史を持つ。

ある女性武道家のレイプ事件が、発足のきっかけだという。「武道の専門家がレイプされるなど、有り得ない」と、彼女は被害を信じてもらう事ができなかったという。武道に長けていれば、24時間、眠っている時も自分の身を守ることができるだろうか。映画のヒーローではないので、普通の人間は、突然襲われると恐怖で体が動かなくなるはずである。インパクトでは、「日常に起きるかもしれない暴力に抵抗するスキル」を分かりやすく教えている。

私の受講した初級クラスは、全3日コースである。1日は土曜日の朝10時から夕方6時まで、みっちり8時間だ。以前、アメリカ在住日本人の友人に「ぜひ受けてみて」と薦められていた。友人は、数年前ボストンで受講し、現在はインストラクターとして、日本でインパクト講座を年1回のペースで実施している(インパクト関西)。

私も、いつか受けてみたいと思っていた。性被害サバイバーのセルフエスティームの回復に効果的だと聞いていたからだ。そして、なんと住まいのすぐ近くで講座がある、という誘いが来たので、さっそく申し込んだ。スタッフの女性に、「まずは受講者の卒業式を見に来たら、雰囲気が分かるんじゃないかな?」と言われて、5月度の卒業式を見学した。

不恰好に完全防備した加害者役の男性インストラクターに襲われ、卑猥な事を言われる。見ているだけでも怖く、手を堅く握り締めてしまう。力強く反撃する女性たちを見て、「このような事が私に、できるだろうか」と少し不安になった。

およそ1カ月が経過し、とうとうクラスの日がやってきた。最後まで居られるか、不安だ。会場は広い体育館のようなところで、スポーツジムにあるような青いマットが敷き詰めてある。「プロレスのリングのようだ」と思った。女性インストラクターが1名、アシスタント女性スタッフ2名、男性加害者役のインストラクターが3名。まずは、全員で円座し、インパクトの説明と、トレーナーたちの自己紹介、そして参加者の自己紹介をした。午前中の2時間は話をして過ぎていった。準備運動をして、基本の動きかたを教えてもらう。合気道の受身の練習に少しだけ似ている。知識とスキルを持つ女性インストラクターは、高いテンションで話しながらも、激しく体を動かして手本を見せてくれる。

自分の身を守りつつ、相手を攻撃する方法が、分かりやすくコンパクトにまとめられている。体を動かして憶えていくうちに、少しずつ自信がついてくる。10年以上前に傷めた両足首と、5年前に骨折した鎖骨が心配だった。この講座は、「いかに自分を傷つけないか」のトレーニングでもあるようだ。けっして無理はさせない。そしてさらに、どんなに体に不利があっても「いかに全力で戦えるか」を教えてくれる。
実際に体を動かしてみて、こんなに自分が闘えるとは思わなかった。蹴りや突きが甘ければ、「もう一度やってみよう」と、やり直す事で、体で覚えることができる。インストラクターの男性達の真摯な態度に、心を打たれた。殴られ、蹴られ、ひどくののしられる「悪役」を演じながら、参加者の動きなどを確実に見て、分析し、適切なアドバイスを与えてくれる。

後ろから羽交い絞めにされ、地面に押し倒される状態でも闘える方法を教えてもらい、路上や公共の場などで、からまれた時に、言葉と体を使って抵抗するスキルも習う。私は、ある時点で、恐怖で一瞬にして体が凍りついてしまった。「大丈夫。一人じゃないよ。あなたが準備できるまで、待ってるからね」と言ってくれた。もう、恥ずかしいなどと言っていられず、数分間、あお向けのまま、涙を流していたが、他の参加者の声で意識が戻る。彼女達に励まされ、闘うことが出来た。これは私だけではなく、全ての参加者が同じ気持ちだという事が、後で分かった。

1日目、誰が見ても分かるようなフラッシュバックを起こしたのは、15人の参加者で私1人だったが、その後2日間で、全員がそれぞれ自分の心に秘めた恐れと闘っていた。3週間、土曜日を共に過ごすうち、参加者の間に不思議な連帯感が生じた。互いの闘い方を褒めあい、励ましあう。数人がフラッシュバックを起こしていた。経験豊富なスタッフの丁寧なサポートからも、多くを学んだ。私を含め、参加者の数人が、性被害のトラウマを語った。

そして最終日は卒業式である。参加者の家族や友人達を招待することができる。全員が「本当に参加してよかった。女性だからとか、体が小さいから、自分は弱いと思い込んでいた」「自分がレイプされた時に闘えなかったことで、自分を責めてきた。私は弱くない。自分自身の内にある強さに気付いた」など、それぞれが思いを語り合い、抱きしめあう。笑いと涙の絶えないクラスだった。このような護身術のクラスが、スポーツジムや学校にあれば、素晴らしいと思う。加害者役のインストラクターのトレーニング方法に興味が湧いた。滞在中に取材をしてみたいと思う。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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