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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2005年8月)
フェロー:谷 裕子

報告書リスト

谷 裕子
日米センターNPOフェローシップ(第5期)
月次研修報告書(2005年8月分)

フェロー:谷 裕子(Rape Crisis Survivors Net Kansai 事務局長)
研修テーマ:コミュニティで作る支援−性暴力被害者サポート
研修先:Bay Area Women Against Rape (BAWAR) (Oakland, California)
研修期間:2005年3月29日〜2006年3月15日


初めてのダイレクト・サービス体験

・レイプクライシス・カウンセラー・トレーニング

ベイエリアに来て5カ月が経つ。3月29日に到着した翌日から、早速アドボケート・トレーニングに参加した。すでに2月からトレーニングが開始されていたため、私は途中参加で後半を終了後、7月に開始された今年2度目のトレーニングで残りの前半部分を受講することになった。そのおかげで、2種類のグループで違う仲間たちと学ぶことができた。

米国レイプクライシス・センターのトレーニングの基準は、40時間である。私の研修先である BAWAR では、55時間のトレーニングである。毎週火・木曜日の夜6時から9時まで、モジュールを1つずつ学んでいく。少しずつ知識を重ねて、初期、中期、後期にロールプレイを3回行なう。
初期のロールプレイは性被害と全く関係のないテーマについて話す。日常の会話の中で、私達が相手の話を「ただ聞く」ということが、いかに難しいことであるかに気付くためのワークである。自分では聞いているつもりだが、これが結構できていないものである。相手に応答する自分の言葉が「でもね、それは○○なんじゃない?」という具合に、話をしてくれた相手に自分の価値観を押し付け、相手の考えをそのまま受け止めるどころか、相手の考え方を変えようとまでする。

自分のパートナーや友人、子どもとの関わり方を改めて考えさせられる。日常の会話で、いかに自分が「でも」「なぜ」などの否定的な言葉を使っているか、参加者は気付くことになる。被害者に対して、「でも」「なぜ」という言葉は禁句とされる。
例えば、「なぜ、そんな夜遅くに1人でそのお店に居たの?」と質問したとする。この「なぜ」により、被害者は、店に1人で行なった自分が間違っていたので、レイプされたのは自分の責任であると思ってしまう。たとえ自分が、その店の常連客で、お店の人を良く知っていたとしても、である。

私達のほとんどが、無意識のうちに、こう考える。「あの人は普段から派手だから、レイプを誘っているようなものだ」「バーで知らない人にお酒をおごってもらったりするからよ」などの思い込みである。これは社会に浸透した誤解であり、「レイプ神話」と言われる。

レイプに対する誤解と、事実を比較して学ぶことにより、自分の中に根付いた「レイプ神話」を少しずつ減らしていく。レイプは性交渉を武器とした暴力であり、どのような状況であったとしても被害者の責任ではない。とはいえ、正直なところ「自分で危険な状況に身を置いている被害者」が居るのは事実である。それはレイプ被害と関係のない問題であり、被害者が自身の癒しの旅路で、ゆっくりと「自分を大切にすること」を知るうちに、リスクを減らすことになるだろう。そのことを理解することにより、サポートを行なう人は心をこめて「あなたのせいじゃない」と伝えることができると思う。

55時間のトレーニングを通して、参加者はレイプという深刻な社会問題について考え、支援の必要性を再確認していく。そして「アドボケート」の認定を受ける。BAWAR はボランティアたちを「アドボケート」と呼ぶ。それは、「レイプクライシス・センターとともに社会に啓発を行なう人」という意味だ。私は、他の参加者より長い時間をかけてトレーニングを受けたわけで、2つのグループに参加することで、多くを学ぶことができたと思う。日本の講座のファシリテートに役立つヒントを得ることができた。
参加者の中には既に関連分野で活動している人も居るので、「燃え尽き」やスランプ状態になっている場合もある。トレーニング期間中、トレーナーは常に一人一人の状態を見ている。これをスクリーニングという。重いテーマであるため、トレーニングが進むうち、自分自身の傷が疼く事もある。私は自分の経験から、参加者の様子を観察する癖がついている。危険信号に気付くと、トレーナーに伝えるようにしている。私は参加者であると同時にスクリーニングを担当させてもらうことができた。10月に開催されるトレーニングにも、参加者&スクリーナーとして関わる予定である。

・週末のオンコール・バックアップ担当

8月から、週末3日間のオンコール・バックアップ・シフトに加えられることになった。正式にスタッフとしての職務を体験できる。週末のオンコールとは、24時間体制のホットラインと、救急病院からの呼び出しに、SARTSexual Assault Response Team)の一員として待機することである(SART については、6月分の報告をご参照)。土曜日の朝6時から、火曜日の朝6時まで、72時間。基本的には、毎日3時間交替でアドボケートがホットラインと病院を担当するのだが、彼女達が常にシフトをカバーできるわけではないので、空白の部分を担当するのがバックアップの仕事だ。よくある事では、アドボケートがシフトを忘れたり(またはそのフリをしたり)するので、常に対応できるよう待機する。オンコールの間は買い物に行く時も、それこそお風呂に入っている時も、携帯とポケットベルが離せない。初めてのオンコール、さっそく1日目の昼間に病院から呼び出しがあった。「30分で行きます」と救急病棟の担当者に伝え、車を走らせる。

病院に到着すると、ちょうど事情聴取が済んだところだった。実は、この事情聴取は本来、SART のシステムの一部である。SART における病院での過程は全て、アドボケートが同伴することが、カリフォルニア州法で定められているので、この日のケースはルール違反だったことになるが、こういう問題点を発見、改善の提案をすることも、アドボケートの仕事だ。初めての SART は4時間程度で終了。実はこのサバイバーは朝8時から病院で待たされていたという。証拠収集のため、水を飲むことすらできない。このシステムには、まだまだ改善の必要があると思う。

・サバイバーに伝える言葉と、自己発見

初めて付き添い現場で被害の話を聞いた後、私が彼女にかけた言葉は、「どんなことがあったにせよ、あなたのせいじゃない。本当に辛かったね」だった。トレーニングで習ったからではない。自然にこの言葉をかけていた。自分でも驚いた。私は、子どもの頃に塾講師から1年間にわたり受けた性被害を、母親に告げたが、信じてもらえなかった。それどころか、「嘘をついている」と叱られた。それから人を信じる事ができず、絶望で心と口を閉ざした。およそ20年が経過した頃に、信頼できる友人たちに自分の過去の話を少しずつ聴いてもらった。

その時、友人達からの言葉や態度、表現方法は人それぞれだったが、共通していたのは「辛かったね、がんばったね」という思いやりだった。心のこもった言葉をかけられても、私は長い間、彼らの思いやりや友情を「哀れみ」だと感じ、拒否してきた。「かわいそう」と思われるのは耐えられない。ところが、実際に被害にあったサバイバーを目の前に「あなたのせいじゃない。よくがんばって、生き抜いたね」と伝えた私の心には、彼女が被害にあってしまって残念な気持ちと、傷が癒される事を願う、祈りのような気持ちだけだった。

この時、私は初めて、自分の周囲の人たちが私の癒しを願っていてくれていたのだと感じたように思う。サポートの原点は、相手を思う気持ちであることを、改めて確信した。同時に日本において、今後も性被害の影響に関して社会への発信と、特に若い人や子ども達へのメッセージを伝えること、そして病院や警察、裁判所等への付添いサービスが一般に理解され、普及してほしいと強く感じた。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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