本文へ 日米センター(CGP)は日本とアメリカにて、助成、フェローシップ、ボランティア、人物交流、情報発信を行なっています。
国際交流基金 日米センター
CGP NY | 国際交流基金 | English | サイトマップ
トップページ
日米センターとは
公開イベント
団体で助成金をお探しの方へ
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ
安倍フェローシップ
日米パートナーシップ・プログラム
Japan Outreach Initiative
NPO フェローシップ
CGPの人物交流事業
情報室(刊行物、寄稿など)
アクセス
お問合せ
FAQ
更新履歴
日米センター公募助成プログラム
CULCON(カルコン) 日米文化教育交流会
メール配信サービス
コラムス
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ

日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2005年9月)
フェロー:谷 裕子

報告書リスト

谷 裕子
日米センターNPOフェローシップ(第5期)
月次研修報告書(2005年9月分)

フェロー:谷 裕子(Rape Crisis Survivors Net Kansai 事務局長)
研修テーマ:コミュニティで作る支援−性暴力被害者サポート
研修先:Bay Area Women Against Rape (BAWAR) (Oakland, California)
研修期間:2005年3月29日〜2006年3月15日


◆Sexual Assault Advocate/Counselor training

・ おもいがけないニュース

ベイエリアに来て、はやくも半年が過ぎた。歩道の木の葉が赤や黄色に染まり、秋の匂いがする。
9月27日〜28日、2日間のトレーニングに参加した。場所はワイオミング州シャイアンという街。シャイアンはワイオミングの州都である。性暴力被害者支援NPOのスタッフ、地方検事や性犯罪課の人材が対象のトレーニングである。ワシントンDCのOffice of Victims of Crime(OVC)のプログラムTraining and Technical Assistant Center(TTAC)が行なう。
5月、サンフランシスコのカンファレンスで出会ったOVCフェローの女性が、同じフェローの立場の私に、共感してくれた。彼女はDCに戻り、早速「日本からフェローが来ている」と上司に話したところ、その方も関心を示してくれたという。
7月に私に電話が入り、「ぜひ、ワイオミング州で開催するアドボケート・トレーニングに招待しますから来てください」と言われた。突然のご招待で、驚いた。OVCのウェブサイトでトレーニングの内容を確認してみた。正直なところ、内容はBAWARのトレーニングとさして変わらない。とはいえ、新しいネットワーク作りとファシリテート・スキルの勉強のチャンスだ。
9月26日、オークランド空港からデンバー経由でシャイアンに向かった。

The Office for Victims of Crime(OVC)

OVCは、1988年、連邦政府の司法省が管理するプログラムの一部として設立された組織。1984年に議定したVictims of Crime Act (VOCA)という法令の修正により、多様な犯罪被害者のニーズに対応するサービス提供と、このために必要なリーダ−シップを育成するため、OVCが発足した。OVCは全米における犯罪被害者の賠償金と、支援プログラム資金を提供している。
また、TTACでは、犯罪被害者支援を行なう多様な専門家養成やカンファレンスを行なう。TTACの講座、カンファレンスは、全米各地で行なわれる。興味深いのは、あえて小都市で講座を開催しているということだ。それは、地方の小さな支援NPOの人材育成を行なうことで被害者支援の質を高めるためである。奨学金制度を設けており、最高4名まで、カンファレンスの参加費、トレーニング受講にかかる旅費、宿泊費、食費等、最高$1,000まで負担される。

残念ながら、この奨学金制度については、NPOにはあまり知られていないようだ。Grassrootsと言われる草の根NPOでは、政府への不信感を抱いている団体が少なくないようだ。私の研修団体BAWARもその例にもれず、私が今回のトレーニングに参加して報告するまで、このありがたい奨学金制度を知らなかった。しかも、トレーニングに参加した人の9割は、奨学金を利用せずに自費で参加していたのである。

この事実に私は驚いたが、犯罪被害者支援団体(NPO)のために用意されている政府の資金が利用されていないという現実について、OVCの職員シャノン・メイ氏が、トレーニングの前半で語ってくれた。「政府とNPOは長い間闘ってきた壁があるから、仕方がない。私達は、こうして小都市で講座を開催することで、少しでも多くの被害者支援団体に奨学金制度と人材育成のチャンスを知ってほしいと考えている」。

実際は、奨学金だけの問題ではないはずだ。トレーニングの内容が、いかに的を射ているかである。政府が提供する人材育成トレーニングが、参加するNPOスタッフにとって役立つ内容なのか。普段の多忙な被害者支援の現場から、わざわざ休暇を取り、他のスタッフにシフトをカバーしてもらってまで、数日間のトレーニングに参加させる魅力あるカリキュラムなのか。年間数十種類のトレーニングを提供しているTTACだが、そのうちの1つを受講しただけの私には語れない。「実際にコミュニティに関わるNPOから学び、TTACの講座を充実させたい」とシャノン氏は語る。
今回受講したトレーニングの内容は、性暴力被害のサバイバー支援スキルの部分はBAWARのアドボケート・トレーニングと共通している。今回発見した、BAWARのトレーニングには無い部分と、受講して感じたことを書きたいと思う。

・トレーナーのリンダ・レクラー氏が語る、SART誕生にいたるまで

27日、朝8時半。参加者が少しずつ受付に現れる。ホテルから用意された朝食をとりながら、前夜に用意したテーブルに座り、参加者は互いに交流している。受講者は女性14人、男性4人。そのうちの女性10人がレイプクライシスセンターのスタッフ。4人は地方検事。男性2人は警察官、そして2人は、モンタナ州の先住民Crow族の居留地内で性暴力被害者支援を行うスタッフだ。男性が参加するのは珍しい。

トレーナーのリンダ・レクラー氏が自己紹介。続いてSART(Sexual Assault Response Team)について説明する。リンダ氏はアメリカで生まれ育ち、結婚してドイツやアフリカで暮らした。30年前にご主人の転勤でアメリカに帰国し、ミネアポリスに住んだ。看護士免許を持っていたので、地元の病院に就職。2カ月後に、突然、「1日1時間、レイプ検査の外来サービスを担当してほしい」といわれたという。誰もレイプ被害者への対応が分からず、病院は困っていたようだ。彼女に特別な知識があったわけではない。「新入りだから柔軟だろう」という理由だけだった、という。そして、レイプ被害者の対応と妊娠や性感染症の検査をするうちに、性暴力被害を実証する証拠収集のため、SARTの必要性を確信したという。リンダ氏に限らず、他の州でも同じニーズを感じている専門機関の職員が居たようだ。ミネアポリスで最初のSARTが誕生、ワイオミング州は2番目だ。現在、各州に最低1カ所はSART対応の医療機関があるという。

・2日間の講座の感想

2日間のトレーニングを通して、地方ではまだ「性暴力被害」について語るのはタブーであることが分かった。学校に介入を行なう団体の女性が、「それどころか、最近は『自殺』という言葉も禁句なのよ」と話す。自殺願望を促進するから、その言葉を使わないで欲しい、と学校側から言われるという。「自殺」「レイプ」「セックス」という言葉を発することが、その願望を促進するという根拠のない危惧は、ここアメリカでも存在していることを知った。

トレーニングの中でおもしろいところは、「小テスト」や「セルフチェック」が多く含まれることだ。モジュールは大きく5章に分けられている。1つ終了する毎に、5分程度の「小テスト」で各自が復習する。これは得た知識を再確認することに役立つ。採点はない。全くの自習なのだが、この作業で質問したいことが浮かぶので、良いアイデアだと思った。もうひとつ、とても強く印象に残ったのは、「アドボケートとして直接支援に関われなくてもいい。事務作業や、資料係、イベントの広報など自分のやりたいことで関わればいい」と、わざわざマニュアルに記載していることだ。

トレーニングを受けたからといって、すぐに被害者に対応できる心の準備が出来ているわけではない。長く続けるためには、マイペースで関わることが大切だと明確に記している。「まずは自分を大切にして、セルフケアを最優先してください」。リンダ氏は、一貫してこのメッセージを伝えていた。受講者の中には、「そういわれても、うちの団体は資金もスタッフも居ない。セルフケアをする暇がない」という人が多かった。それでもリンダ氏は、毅然として「自分を一番大切にすることが、長続きの秘訣です。あなたが幸せじゃなければ、他の人も幸せにはなれないわよ」と言った。このメッセージは、日本の講座でも使わせてもらおう、と思った。

リンダ氏とシャノン氏と再会を約束し、数人の参加者と名刺交換をした。会場の扉に、「私は、今後、セルフケアを第一にして、活動します」と書かれた模造紙が貼られており、皆がそれを見て微笑みながら去っていった。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

Top

TOKYO OFFICE
国際交流基金(ジャパンファウンデーション) 日米センター
160-0004 東京都新宿区四谷4-16-3
Tel (03)5369-6072 Fax (03)5369-6042
NEWYORK OFFICE
The Japan Foundation Center for Global Partnership, N.Y.
1700 Broadway, 15F, New York, NY 10019, U.S.A
Tel (212)489-1255 Fax (212)489-1344