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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2005年12月)
フェロー:谷 裕子

報告書リスト

谷 裕子
日米センターNPOフェローシップ(第5期)
月次研修報告書(2005年12月分)

フェロー:谷 裕子(Rape Crisis Survivors Net Kansai 事務局長)
研修テーマ:コミュニティで作る支援−性暴力被害者サポート
研修先:Bay Area Women Against Rape (BAWAR)(Oakland, California)
研修期間:2005年3月29日〜2006年3月15日

◆ VORG symposium

・4年ぶりのシンポジウム

12月14日7時半、霧の中をSolano刑務所に向かった。信号すら見えないほどの濃い霧を掻き分けるように車を走らせる。橋を渡った頃には、霧も晴れて、冬空と、まだ残っている紅葉が見えた。刑務所に到着。いつもより張り詰めた空気。たくさんの訪問者が来るため、訪問予定者のリストとIDを照らし合わせつつ厳重なセキュリティチェックを行うので、刑務所職員の人も緊張して、顔がこわばっている。とりあえず、セキュリティをクリアして、いつものミーティングルームに向かう。加害者と被害者の和解プログラムVictim-Offender Reconciliation Group(VORG)の17周年記念シンポジウムに出席したのである。

前日の午前0時3分、元ギャングメンバーのTookie Williamsの死刑が、カリフォルニア州San Quentin 刑務所で執行された。カリフォルニア州は、この日、元ギャングで、1979年にコンビニで4人の殺害容疑で死刑判決を受けたTookie Williamsを殺害した。彼は、この容疑については無罪を主張し続けたとはいえ、ギャングとして生きた自分の過ちに気づき、ギャングの危険性と命の大切さを説き、子ども達への本を出版。彼をモデルにした映画も製作され、ノーベル平和賞にノミネートされた。未来を担う子ども達に、非暴力の大切さを伝え続けた彼を、シュワルツェネッガー州知事は「改心していない」と判断し、死刑執行。一度罪を犯したら、人間として生きる価値は無いのか・・・? ここ数日、私も悲しみと悔しさで沈んでいた。

VORG とは

1988年。BAWARは刑務所内の加害者の再犯防止プログラムに加えて、被害者と加害者がメディエーター(調停者)を交えて対面するというプログラムを始めた。BAWARはプログラムの発案から実施まで深く関わっている。VORGのカリキュラムの一つとして、暴力が被害者に与える影響を理解する加害者向けの教育がある。この教育はVictim impactと呼ばれる。VORGの教育を通して加害者は、自分が犯した罪を認識し、被害者への同情を感じ始める。そして被害者への直接的な謝罪を決意する人も居る。謝罪が実現するケースは、決して多くはない。なぜなら、被害者側が対面を拒否する場合も多いからである。プログラムの理念は、「被害者と加害者が人間として関係を築くことは、相互的な癒しのプロセスである」というもの。被害者側が完全に加害者を許す事は困難だと思うが、「加害者」「被害者」という枠から外れすぎず、かつ人間同士として対面し、和解していくことが、再犯防止だけではなく、暴力の根絶につながると思われる。プログラムに参加する加害者の中には、自分自身が非虐待児であったことを思い出し、自身の傷ついた過去を見つめなおす人も居るという。加害者が、自分の傷と犯した罪に向き合う事は、とてもパワフルな変化を生じさせる。

私は、2001年に初めてVORGのシンポジウムに出席した。4年後の今日、同刑務所で、同シンポジウムに出席した。4年前に来た私を、同シンポジウムに参加した塀の中に居る彼等全員が覚えてくれていた。「また日本から戻って来たのか!!覚えてるよ。俺等も相変わらず、踏ん張ってるよ。まだまだやる事が山積みなんだよね!」と話してくれ、再会を喜び、ハグをする。日常的に暴力が横行する刑務所の中で、受刑中の彼等が生き方を変え、「自分の犯した過ちの責任」を取ろうと、生き直すチャンスを見出そうとしている。しかし残念なことに、「塀の外」には、そのムーブメントは発信されていない。忍耐を問われる活動だ。自分達で資金を集め、食事のケータリングを段取りする。少ない予算でコーヒーやハーブティー、紙皿、フォーク、紙ナプキンを調達し、外部から一人でも多くの人に参加してもらうことで、加害者への介入の必要性を訴え、来年もプログラムを維持する資金を得るために、彼等は全身全霊を尽くし、今日という一日のために準備をしてきたのだろう。

・被害者が語ることがもたらすインパクト

シンポジウムでは、家族を誘拐された被害者や、愛する人を殺された被害者がスピーチを行う。ある男性は、自動車の衝突事故で21歳の息子さんを失った父親だった。

息子さんは、飲酒運転で猛スピードで走っていた車に衝突され、息子さんが乗っていた車は炎上し、姿形も分からないほどの状態で発見されたという。加害者は17年〜終身刑を受けて、今も服役中である。彼は、加害者と連絡をとり、服役3年後、9年度、そして現在に至るまで面会を続け、その様子をショートムービー化して、各地で「飲酒運転の危険」「加害行為」についてボランティアとして教育を行っている。彼は、愛する息子の命を奪われた怒り、悲しみ、やるせなさ等々に、加害者と対面して「生身の人間」として接する事で向き合う決意をした。自らを癒すために生き方を変えている。加害者も、この父親との関わりによって、自らの過ちを振り返り、認め、自己を癒し、生き直す道を見出そうとしている。

加害者は語る。「入所した当初は、『自分は運が悪かった。なんで俺がこんな目に会わなきゃいけないんだ?たった一度の飲酒運転だけだったのに。いつも大丈夫だったのに!』と、社会を恨んだ。塀の中で、被害者の父親と関わるうちに、あの夜、自分は取り返しもつかない誤った選択をした事がわかった」と。そして、さらに続ける。「遺族の人達が『許す』と言ってくれても、僕は一生自分を許すことができないだろう。出所しても、妻子が居る以前のような生活は、もうできない。もし出所できたら、若者に意思決定の教育をしたい。自分と同じ過ちを犯して欲しくないから。もし遺族の人達が、僕がやりたい事に協力してくれるなら、僕は自分を許せるようになるかもしれない」。飲酒運転事故で息子さんを亡くした被害者の男性が「私は、加害者と出会って関わるまで、彼への恨みを抱えて生きてきた。それは、あたかも自分自身を『憎しみ、罪悪感という名の刑務所』に閉じ込めたようなものだった」と語った。「息子を悲劇的な事故で失った瞬間から、私も塀の中に自分を閉じ込めたんです」と。

・受刑者達との語らい

刑務所でのシンポジウムで、休憩中に受刑者達と話をする時間があった。彼等は、積極的に話しかけてくれる。酒と大麻の影響で、心に湧き起こる怒りに任せて、母親に暴力をふるった相手を射殺した人や、少年時代から悪ガキで、少年院と刑務所を行き来し、殺人を犯して終身刑という人も居る。VORGに参加している受刑者は自分が犯した行動に、自分で責任を取ろうとしている。それは「自分をまっすぐに見つめる作業」だ。母親との関係、過去に受けた虐待、いろんな話を聞かせてくれる。数人の男性が私に、「なぜ、あなたはこんな所に来たのか?」と質問した。「私は、子ども時代に先生にレイプされてから、荒れて、大人になってからはDV被害者になった。私は社会、男性、自分をも憎んで生きてきた。自分を被害者にして、苦しめてきた。しかし、被害者で居続ける自分が、他人を傷つける場合もある事に気づきはじめた。人間は自分の行動の責任を持つ必要がある。社会のせいにして生きても平和にはならないって、思うようになった。社会が荒れているのは、一人一人の責任だと思うから、人間のいろんな行動と社会の関係を学びたい。だからここに来たんです」と話した。

6時間の刑務所訪問。受刑者の中には70年代からSolanoに居る人も少なくない。「刑務所の中で起きている事実を、知っている(知ろうとする)人は少ない。『加害者=人間じゃない』っていう考えは、今もアメリカ全土で浸透している。きっと、君の生まれ育った国では、アメリカの刑務所のほうが、リベラルで、日本の刑務所よりマシだろうと思われているだろうね。実際は、言葉にできないほど絶望感に押しつぶされそうな毎日なんだ」と私に語ったのは、私と同年代と思われる黒人男性だった。彼は15年、終身刑でこの刑務所に居るという。
受刑者のほとんどは黒人。カリフォルニア州なので、次に多いのはメキシコ人、少数派は白人、次にアジア系。「刑務所内では人種差別が無い」VS「人種差別があるのは刑務所内だけだ」という両極端な思い込み。映画などでドラマチックに描かれる「刑務所内の白人と黒人の友情の芽生え」は、白人の娯楽に過ぎないと感じる。私は有色人種としてアメリカに住み、白人と結婚してみて、自分なりの「視点」を持っている。もしかしたら、それは間違っているかもしれない。だからこそ、もっと学びたいと思う。有色人種間でも、表面には見えにくい憎しみが、確実に存在している。人種差別は明らかに根付いている。「黒人の犯罪率がもっとも高い国」。本当にそうだろうか?私は何の解決法も持たない。ただ、今日という一日を刑務所で過ごして、生身の自分が感じたことを書きたかった。非暴力社会へ歩みは、ひとりひとりが気づき、語る事から始まるのではないか、と感じた一日だった。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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