本文へ 日米センター(CGP)は日本とアメリカにて、助成、フェローシップ、ボランティア、人物交流、情報発信を行なっています。
国際交流基金 日米センター
CGP NY | 国際交流基金 | English | サイトマップ
トップページ
日米センターとは
公開イベント
団体で助成金をお探しの方へ
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ
安倍フェローシップ
日米パートナーシップ・プログラム
Japan Outreach Initiative
NPO フェローシップ
CGPの人物交流事業
情報室(刊行物、寄稿など)
アクセス
お問合せ
FAQ
更新履歴
日米センター公募助成プログラム
CULCON(カルコン) 日米文化教育交流会
メール配信サービス
コラムス
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ

日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2006年2月)
フェロー:中村絵乃

報告書リスト

中村絵乃
日米センターNPOフェローシップ(第6期)
月次研修報告書(2006年2月分)

フェロー:中村絵乃 (特定非営利活動法人開発教育協会(東京) 事業・研修担当)
研修テーマ:NPOの組織強化/国内の教育活動
研修先:ESR Metro (New York City)
研修期間:2006年1月20日〜2007年1月19日


ESR Metroについて

研修先、Educators for Social Responsibility Metropolitan Area (社会的責任のための教育者の会 メトロポリタン、以下ESR Metro)には、昨年11月に下見に来たことで、スタッフ側にもフェローを受け入れる姿勢ができていたようだ。
スタッフは11名だが事務所には学校でプログラムを行なうスタッフデベロッパーや、理事、ボランティアなどたくさんの人々が毎日のように出入りして賑やかである。スタッフは元教員などのベテランが多く、お互いの役割がはっきりしていて結束感があり、事務所の雰囲気は和やかである。まず今回は、ESR Metroの背景とプログラム、NYの学校の様子、そしてプログラムを進めるスタッフの様子を報告したい。

ESR Metroは、 1982年、東西冷戦真っ只中の時期に「社会的責任のための物理学者の会(NY)」が主催した「核兵器拡大の危険について意識を高めるための会議」に集まった教員たちが結束して設立した。
この当時の創設者は今でもESR Metroのよき理解者であり、支援者でもある。翌1983年に現在の所長Mr. Tom Roderickが初の有給のコーディネーターとなった。そして20年以上、様々なプログラムを開発・展開している。

ESR Metroの活動の中心は下記の2点である。
1.子どもや大人に、対立解決や、多様性から学ぶ技術を伝えること
2.批判的思考(クリティカルシンキング)、社会的意識の向上、そしてクラスの中や、
  社会での行動を促すこと<

上記の2点を軸に(1)「対立解決」(2)「平和な教室環境作り」(3)「学校のコミュニティ作り」(4)「社会的意識の向上と行動」に関する数多いプログラムを行なっている。

(1)「対立解決」としては、物語から対立や多様性を学ぶ4Rs(Reading,Writing,Respect and Resolution)プログラム、RCCP(Resolving Creatively Conflict Resolution/対立を創造的に解決するプログラム)がある。
(2)「平和な教室環境作り」に関しては教員向けに協力的なクラス環境をつくるプログラム、また、(3)「学校のコミュニティ作り」に関しては、Peer Mediation(対立の仲裁を子どもたちが行なう)プログラム、教頭や両親も巻き込んだ学校理事会の運営支援、などを行なっている。
(4)「社会的意識の向上と行動」に関しては高校生を対象に核の問題を学び、行動を起こすプログラム(SANITY)や、時事問題などを教室で扱うプログラムが掲載されるウェブサイト「Teachable Moment」がある。
通常プログラムというと、個別のテーマごとのカリキュラム開発に目が行くが、教室環境や学校づくりといった学校運営に関する包括的なプログラムもあるのが面白い。

それぞれの担当スタッフがいて、実際に学校や地域でプログラムを行なうスタッフデベロッパーがいる。NYを中心に活動してきたことから、NYの教育局、各地域の理事会からも信頼が高い。地域に根づいた活動だが、プログラムは全国的に評価されている。
私はここで、それぞれのプログラムの理論と手法、そして運営の方法、また地域や政府との連携を含んだ教育プログラムの浸透のさせかた、そして組織運営の方法を学ぶ予定だ。

上記のプログラムの中で、アメリカでもっとも古く、かつ広く実践されてきた「RCCP」は1990年代、若者の間で暴力的な事件が増えたことをきっかけにつくられたプログラムであったが、その成果が認められるとともに、社会的な脚光も浴びるようになった。
中でも「RCCPの授業を受けた子どもたちは、社会的なスキルの向上だけでなく学校の成績も向上する」という研究結果 は大きな反響があった。1994年〜1996年に、NY市の15の小学校の生徒1100人を対象に行なわれた調査の結果は大きな注目を浴び、ESR Metroは現在、この成果を広げるべく、更なる調査をNY大学と協動で行なっている。

教育現場のニーズから生まれた非常に草の根的な活動が、研究者や大学、NY市、企業などと連携して広がっている形が面白い。また社会全体に教育に対する関心の高さが伺える。この例を見て、私の所属するDEARの活動も、大学や研究機関との協動にもっと可能性があるのではないか、と思った。今後その連携の仕方を学んでいきたい。


学校の様子

NY市内には1200を超える公立の小学校、中学校がある。NY市の教育はBloomberg市長に変わった2001年より大きく変わり、市に初めて教育局(Department of Education)がおかれた。いままで権限を持っていた32地区(district)の理事会は解体され、新しく10の地域(region)理事会が市長主導で構成された。各校の自由度が少なくなる分、各地域に平等に資金が行き渡るようにして、ボトムアップを目指すのが目的らしい。統一テストの結果が今まで以上に重視されるようになり、教員や生徒にもプレッシャーがかかっている。

ESR MetroはNY市を中心に20校以上の公立学校でプログラムを行なっていることから、できるだけスタッフデベロッパーについて、学校を見せてもらっている。公立学校は地域の住民構成を反映する。訪れた学校はどこも、ラテン系かアフリカ系の子どもたちが大半を占めていた。多くの白人の子どもたちは、私立かチャータースクールのようなところに行くらしい。

まず学校には、様々な大人が関わっていることがわかる。多くが元教員や生徒の親などで、雇用されている人と無給の人がいる。大体のクラスは20〜25人で、それでも教員が一人で教えることはない。必ずアシスタントがついている。グループワークやペアワークも多く、教室や廊下には彼/彼女らの作品や学校のルールなどが所狭しと貼られている。学校によって何を重視しているのか、その学校の特徴も、校内を散策するだけで感じ取れる。
学校では、共通して校長の持つ権限が強いことが感じられた。ESRを含め様々な外部の団体(非営利が多い)とのコーディネートも校長の役割で、プログラムがスムーズに行くかどうかも校長の関心とコーディネート力にかかっている気がした。この部分は日本の公立学校と良く似ている。


学校でのESRの役割

そういう状況で、ESRのスタッフデベロッパーは非常にまめに校長や教員、両親や他のスタッフと連絡を取っている。プログラムは、教師向け研修会や親向けの研修会を含め、学校を訪れる回数が決まっており、その中でプログラムの理論と手法を伝え、最終的には教師が自らプログラムを実践、継続できるように支援することが彼/彼女らの役割である。なので、学校全体の雰囲気や問題、誰がキーパーソンか、をすばやくキャッチし、働きかける技は見事である。

事務所で定期的に行なわれるスタッフデベロッパーの会議はいつも熱気がある。各自担当する学校の様子を細かく報告し、今後の政策を全体で話す。その政策はプログラムを超えて、学校全体を良くするための攻略である。学校内に委員会を設置するよう支援したり、やる気のある教員をバックアップすることまでも行なう。
プログラムだけが素晴らしくてもそれを行なう人材と環境を作り、育てないと意味がないことは分かっていたが、プログラム開発とは、プログラムを促進する人材をも開発していくことで、実はその方が何倍も難しいことを強く感じた。ESRのスタッフデベロッパーは多くが元教員だったりソーシャルワーカーであったりして、経験豊富で魅力的な人々が多い。4月に新しいデベロッパーの研修があるというので、ぜひ参加させてもらう予定だ。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

Top

TOKYO OFFICE
国際交流基金(ジャパンファウンデーション) 日米センター
160-0004 東京都新宿区四谷4-16-3
Tel (03)5369-6072 Fax (03)5369-6042
NEWYORK OFFICE
The Japan Foundation Center for Global Partnership, N.Y.
1700 Broadway, 15F, New York, NY 10019, U.S.A
Tel (212)489-1255 Fax (212)489-1344