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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2006年3月)
フェロー:中村絵乃

報告書リスト

中村絵乃
日米センターNPOフェローシップ(第6期)
月次研修報告書(2006年3月分)

フェロー:中村絵乃 (特定非営利活動法人開発教育協会(東京) 事業・研修担当)
研修テーマ:NPOの組織強化/国内の教育活動
研修先:ESR Metro (New York City)
研修期間:2006年1月20日〜2007年1月19日



3月は、スタッフデベロッパーに随行し、ESRがプログラムを実施しているいくつかの学校を廻った。その中で今回は特に親向けの研修会と、South Bronx地区(NYC)の中学校で開始した研修プロジェクトについて報告する。

親向けの研修会

ESR Metroのプログラムには教員向けのもの、子どもたちに直接スキルを教えるもの、そして「学校のコミュニティづくり」の一環で、親を対象にしたプログラムがある。今月は複数の「親対象のワークショップ」に参加する機会があった。
多くの子どもたちにとって、学校と家庭が世界の大部分である。学校で「コミュニケーション」や「対立解決」について学んでいる一方で、家庭では、子どもたちの意見が尊重されなかったり、兄弟げんかが絶えなかったりする。両親にも「対立解決」や「感情のコントロール」などについて学んでもらうことで、子どもとの関係が良くなることは多い。親同士のコミュニケーションも図れて一石二鳥である。

親向けのワークショップでは「コミュニティ」とは何か?どんなコミュニティを望むか?という質問から始まった。そして、自分が子どもだったころのコミュニティの特徴を共有する。子ども時代に溯ることで、自分が家族以外の大人にも受け入れられて育ったことが思い出される。
さらに自分が子どもだったころ、大人からどのようなメッセージを受けていたか、を共有する。「大人の言うことを聞くように」「子どもの役割を演じるように」といったメッセージがあったことに気づく。そして、現在、自分が子どもにどのようなメッセージを与えているかを振り返る。人と共有することで様々な意見があることに気づく。

対立やコミュニケーションを学ぶために、家でも子どもと一緒に取り組めるワークシートを配布する。例えば「コミュニティづくり」に関しては、子どもが親に「お父さんまたはお母さんが私の年齢だったころ、家族やそのコミュニティの特別な行事などはあったか、週末はどんなことをして過ごしたか?」をインタビューし、高学年は文章で、低学年は絵を描いて表現する。次に両親が子どもに「家族と過ごすどんな時が一番好きか?」を尋ねてみる。というように。
この活動を通じて、子どもたちは両親もコミュニティや家族とともに成長したことを、そして両親も子どもたちが何を楽しみにしているかを、理解できる。

また、他の研修では「最近自分のためにしたこと」をグループで共有した。これに答えられない親も最初はいたが、じっくり考えてもらって、自分の時間を持つこともとても大切だと理解する。常に子どもが生活の中心となる親たちが、一瞬でも自分のことを振り返り、自分を大切にしましょう、というメッセージを受けとったとき、とても嬉しそうだったのが忘れられない。また、学校によっては複数の父親も参加し、意見を述べていたのが印象的だった。

学校側の予算にもよるが大抵は3〜5回の研修が行なわれる。参加者を増やすにはParent Coordinatorと呼ばれる有給のスタッフの努力が鍵になる。チラシを作成し電話をかけたり丁寧に何度も声をかけると、人が集まりやすくなる。そういったアドバイスもスタッフデベロッパーの仕事である。予算にもよるが、日本でもこのような親向けの研修会がもっと増やせるとよいと思った。

South Bronx 中学校の教員研修プロジェクト

South Bronx地区の中学校より教員研修の要請があり、スタッフのAudreyと一緒に、まずは校長から話を聞くことになった。そこはNYCの中でももっとも貧しいといわれる地区で、建物の中には2つの学校が入っている。各階には警官がいて、とても威圧的な雰囲気である。校長はアフリカン・アメリカンの女性で、この学校に来て3年目だが、様々な事情で学校は毎年移転しているという。
経験が少なかったりこのコミュニティの住人ではない教員が多く、子どもたちのことを理解していないことが大きな問題だという。また話を聞きながら、校長が孤軍奮闘し、彼女を支えるスタッフがいないことに気づいた。

学校の様子をもう少し深く知るため、生徒にインタビューを行ないたい旨を校長に申し出た。翌週に、6年生から8年生(12歳〜15歳)10名程を集めてもらって、学校のこと、教員との関係、地域について1時間くらい質問をした。
生徒達によると、学校よりも建物の評判が悪いこと、「麻薬の学校」などと呼ばれていること、教員の多くが同じコミュニティ出身者ではなく子どもたちの状況を理解していない/子どもたちを見下げている/マンハッタンの他の学校の生徒と比較すること、などの意見が出てきた。またもう一つの学校との間や同じ学校の生徒同士でも「けんか」や「対立」はたくさんあり、多くの場合暴力を使って対処していることも分かった。それがベストではないが、その他の方法が分からないとも言っていた。
子どもたちの意見は多少偏りがあるかもしれないが、なにより彼/彼女たちの生の声を聞けたことはとても良かった。困難な状況でも、学校は好きだし、高校にも行く準備をしているという生徒達は日本の中学生と何ら変わらず、冷静に大人の態度を観察し、自分たちのおかれている状況を把握していた。

校長の話やインタビューを通して、この学校の問題はスタッフや教員がバラバラに動いていて一貫性がないことにあると思った。インタビューの要点を簡単にまとめ、第1回目の研修案を練った。その結果、まずは、お互いを知り合い、信頼関係を築き、コミュニティづくりについて理解することを目標に研修を行なうことになった。

第1回目の研修は3月31日(金)の9時から2時半まで行なわれた。教員15名とガイドカウンセラーや学生指導のスタッフ、親なども含め約30名が集まった。まずはアイスブレーキングとしてお互いのことを知り、グループワークで「対立」について意見を出し合った。自分が子どものころ「対立」の扱いについてどのようなメッセージを受けたか、それがどのように影響しているか、を1人1分ずつグループで共有し、様々なパターンの対立をロールプレイで表現した。昼休みをはさみ、5〜6人のグループになって実際に学校で起こっている「対立」を表現した。教員と生徒、生徒と生徒、教員と親、教員とガイドカウンセラーなどの間の様々な問題が露呈した。
各ロールプレイが終わると、必ず他の参加者に、今のロールプレイは誰と誰の問題/対立か、解決策はあるか?を聞いた。ロールプレイをすることで、実際に各々の役割や関係性が明らかになり、問題が見えやすくなる。例えば、この人がこういう態度・行動を取れば状況は変わるのかもしれない、という意見も具体的に出てきやすい。一方で解決策をこの場で考えることは目的から外れるので、あまり深く踏み込まないようにする。

ある参加者が「この学校の問題は、それぞれが違うことを言っていて、子どもも人によって態度を変えている。」と言った。すかさずESRスタッフのAudreyが、ここで表現された問題は誰か一人の問題ではなく、この学校に関わるすべての人の問題で、みんなが協力して解決していく必要がある、と述べた。参加者も納得していた。学校に関わる様々な立場の人が問題を共有できたのはとても良かった、と感想にもあった。生徒の声も所々で反映できていていた。研修のスタートとしては良かったようだ。6月まで、何回か研修を行なう予定である。

ESR Metroの研修は、単回でおわることはない。なぜなら、目的は学校や地域の学習環境や文化を変えることだからである。それはそう簡単には達成できない。今回研修を行なう前に、生徒の声を聞けたのはとても有意義だった。教員向けの研修は多くの場合、生徒の声を聞いたつもり、生徒のためになっているつもり、で行なうことが多い。目的がはっきりしているからこそ、その方法も時間や労力のかけ方も明確になるようだ。プログラムの作り方、実施の仕方としてとても学ぶことが多い。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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