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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2006年5月)
フェロー:中村 絵乃

報告書リスト

中村 絵乃
日米センターNPOフェローシップ(第6期)
月次研修報告書(2006年5月分)

フェロー:中村絵乃(特定非営利活動法人 開発教育協会)
研修テーマ:NPOの組織強化/国内の教育活動
研修先: ESR Metro (New York City)
研修期間: 2006年1月20日〜2007年1月19日


今月は2つの大きなイベントがあった。一つは高校生グループが主催するイベントで、200人の高校生を迎えて、核の脅威や問題を話し合った。もう一つはESR Metroの中心的なプログラムの一つ「対立を創造的に解決するプログラム(Resolving Conflict Creatively Program、以下 RCCP」を始めて20年経つことを記念したイベントであった。両方ともに準備段階にも関わっていたので、その過程と結果を報告したい。

1.サニティ ユースコーカス(SANITY Youth Caucus

SANITY

SANITYとはStudents Action for Nuclear Insanity for Tomorrows Youth の略語で、日本語に訳すと「核の狂気に対して行動を起こす学生たちの会」、核問題について学び、行動を起こすための高校生向けのプログラムである。
昨年の9月から毎週火曜日の4時から6時にESR Metroのプログラムルームに集まり、勉強会をしていた。スタッフのキャサリーン サリバン氏(Ms. Kathleen Sullivan)は4年前からこのプログラムを始めた。彼女は国連機関や様々な平和団体のプログラムを執筆するなど、核問題に関して専門的な知識を有する活動家である。

プログラムの内容

SANITYミーティングの2時間は、チェックイン(アジェンダの確認)、アイスブレーキング(最近あった楽しかったこと、悲しかったこと)、メインアクティビティ(核に関する映画、ディスカッション、気持ちの共有、ロールプレイなど)、振り返り(一言共有)、クロージングなどによって構成される。毎週、できる限り交代で生徒が進行できるように、サポートする。進行役となった生徒は当日少し早く来て、アジェンダをキャサリーンと一緒に考える。進行役を練習するのはとてもよい経験であり、最初は恥ずかしさもあってうまくいかないものの、次第に慣れてくるのが分かる。5月1日のイベントに向けて、2月頃から、目的、内容、役割などを話し合ってきた。

ユースワーカーの役割

グループのコーディネーターであるキャサリーンから学んだことは多かった。高校生は日本と同じでとても忙しく、毎週同じ時間に来れない生徒もいる。キャサリーンは個々の生徒の特徴をつかみ、丁寧に対応していた。様々な学校から来る生徒達が、まずお互いを知り、尊重しあいながら、協力して活動できる学習環境をつくること、個々のの得意分野を活かして、イベントを自分たちが主催していると自覚させること、などに気を配っていた。

テーマに関する学習

今年はチェルノブイリの原発事故から20年目であることもあり、「チェルノブイリから20年」をテーマとした。2003年のアカデミー賞、ドキュメンタリー部門を受賞した『Chernobyl Heart』を上映し、NY在住の監督であるマリアン デ レオ氏(Ms. Maryann De Leo)を招いて話を聞くことを柱にする予定であったが、急遽監督の予定が合わなくなり、他のプログラムで代行するというハプニングもあった。『Chernobyl Heart』はチェルノブイリの原発事故のためまだ放射能の影響が強く残るベラルーシに住む子どもたちの様子を撮影している。奇形児として産まれてきて親から見捨てられた孤児院にいる子どもたちの生活、内臓が身体から出てしまっている子どもたちの様子を映すなど、とてもインパクトがある映画である。監督自身もこれまで高校生に見せたことはないという。SANITYのミーティングで最初にこの映画を観たとき、多くの生徒がとても動揺していた。ミーティングではその怒りや悲しみ、やりきれなさ、無力感、恐れなどを丁寧に共有した。そしてその感情を大切にすること、それを何かしらの行動につなげることを考え、そこから自分たちで考えたいテーマを練っていった。その結果、下記のような5つのワークショップを生徒達が2〜3人で分担して行なうことになった。

放射能と差別(Radiation and Discrimination
感情から行動へ(From Feeling to Action
放射能探知器の使い方(How to use a Radiation Monitor
原子力発電と核兵器(Nuclear Power and Nuclear Weapons
ディベート:原子力に対して賛成・反対?(The Great Debate: Yes or No to Nuclear Power?
核に対する理解(Performing Nuclear Awareness

テーマと担当が決まり、グループワークが始まったが、本格的に準備し始めたのは、本番ぎりぎりであった。キャサリーンとともに生徒たちを励ましながら、プログラムの進行を随時確認し、アドバイスをした。準備は前日の夜遅くまで行なわれた。

イベント当日

5月1日(月)は200人近い高校生がNY中から集まった。呼びかけは、主にキャサリーンが教員を通して行ない、教員が希望する生徒を連れてくるという形であった。SANITYのメンバーは最初は緊張していたが、進行役を務めることで少しずつリラックスしていったようだった。案の定『Chernobyl Heart』はとてもショックだったようだが、その後グループで気持ちを共有してもらった。参加した生徒達からは「これは現在のことなのか?」「何かできることはあるのか?」という質問があがった。それを受けて、上記5つのグループに分かれ、SANITYのメンバーがワークショップを行なった。もちろんいつものSANITYミーティングのように、アイスブレーキングから参加型で行なっていた。そして最後に再び全体で集まり、感じたことを参加した生徒達が舞台で共有した。高校生は同じ年齢の高校生がこのイベントを主催したことに非常に感銘を受けていた。そして、主催したSANITYのメンバーも満足げであった。

イベント後

イベントは終わったが、その後もミーティングは続けている。イベントの振り返りを行ない、お世話になった人に手紙を書いた。さらに今回、放射能で汚染されている地域の人々に放射能探知器を送っているプロジェクトに募金を送ることになった。その方法を考え、平和関係のイベントがあるとできるだけブースを借りて話すようにしている。高校生たちの積極的な態度は大人や一般の人々にも影響力があるようで、熱心に聞いてくれる人も多い。高校生たちも自分たちが何かできる、と実感したようだ。

学んだこと

公立高校に通う意識の高い高校生たちから学ぶことは多かった。4年生も何人かいたので、大学の進路についても相談に乗ったりした。全員がカリビアン/アフリカン/アジアン・アメリカンで、白人以外でいろいろな差別を経験したり、家庭の問題を抱えている子どもたちも多い。それでもこのミーティングに来ることで、気持ちを共有したり、問題を話し合ったりできることは素晴らしい。キャサリーンは常に生徒達の気持ちを察し、励ましていた。彼女は高校生たちのメンターであり、目標でもある。イベントが終了してから、キャサリーンが出張でいなかったSANITYの会議で、内緒で「感謝の手紙」を書いた。そこには「あなたに会えて良かった。影響力は計り知れない」「最後まで信じてくれてありがとう。あなたとの出会いは私の人生を変えました」などの感謝の言葉が綴られた。翌週にそれを受取ったキャサリーンは涙ぐんでいた。
このような中高生を対象にした活動は日本でもっと盛んにできると良いと思う。思いを行動に移し、社会への影響力や達成感を感じることのできる学びの場を提供できるNPOがもっとあっても良いと思う。

2.RCCP 20周年記念

5月18日(木)に、ESR Metroの中でもっとも古く、広く行なわれているプログラムRCCP(対立を創造的に解決するプログラム)の開始後20年を記念したイベントが開催された。2月頃からこのイベント担当のスタッフが雇われ、準備が進められていた。

資金集め

まずは、資金集めの方法が話し合われた。イベントといっても資金集めも目的の一つである。$100,000 (1,000万円) を目標に掲げ、寄付をしてくれそうな人のリストを作成する。過去の寄付者や関係者に7段階のランクをつけ色で分けて、「($150〜$1000以上)○○ドルを期待しています。」と明記し、招待状とともに送付する。高額の寄付を期待する人に対しては事務所長自身が直接電話をする。チケットは1枚$50で、購入枚数も記入できるようにする。とにかく多くの人に来てもらうためにウェブサイトや様々な場所でイベント名と日時を紹介する。

プログラムの内容

プログラムの内容を考えるミーティングも何度か開催された。そこでも様々な意見が出て興味深かった。著名人を呼んでマスコミなどにも宣伝し大々的に行なうか。誰を壇上に上げるか、資金提供者か、関係者か。何を目的にするか、誰に参加して欲しいのか。議論の結果、RCCPプログラムの20年を振り返り、プログラムを実施してきた教育者皆が表彰されるべきだということになり、著名人は呼ばず、RCCPに関わってきた人々にスポットを当ててイベントを行なうことになった。
内容は下記の通り。

レセプション (軽食・ドリンク)

ギャザリング(歌「There is always something you can do」)
対立解決のスキット by PS24(ブルックリン地区の小学校)の子どもたち
過去にRCCPを受けた人々の回想と現在
創設者トム・ロドリック氏(Mr. Tom Roderick)とリンダ・ランティエリ氏(Ms. Linda Lantieri)によるスピーチ

そして司会は地元のテレビ局NY1のアナウンサーであるジェニー・ラミレズ氏(Ms. Jeanine Ramirez)が務めた。
彼女の母親はPS24の元校長でESR Metroとも親しい関係で、ジェニーも喜んで引き受けてくれたそうだ。

当日の流れ

ESR Metroのスタッフとスタッフの家族総出のイベントとなった。荷物を運びだし、会場に向かう。レセプションの準備、会場設定、受け付け準備など事前に決められた役割に着く。レセプションには元教員、現役教員、関係者が集まる。懐かしい顔ぶれも多いようでとてもアットホームな雰囲気だ。

プログラムが始まる時間になると一斉に人々をチャペルの部屋に移動させる。そして歌を流しながらプログラムが始まった。まずは、ESR Metroがアフタースクールプログラムを行なっている小学校 PS24の子どもたちによる「スキット」。そして、RCCPと関係のある教員や、コミュニティワーカーのスピーチ。もっとも印象的だったのは、20年前にESR MetroRCCP研修を受けたエンジェル(Angel)君の登場だ。まずは彼が10歳のときにRCCPの研修を受け、実際に自分が公園でけんかの仲裁をしたことを得意げに話す映像が流された。そして現在、30歳になった彼が登場する。レストラン経営者である彼は、今でもその時に学んだ対立解決の技術を日常のように使っているという。とても上手な演出で誰もが感銘を受けていた。そして、最後は子どもたちから参加した教員たち全員にバラの花束が贈られた。手作りでありながら、とても心温まるイベントであった。

結果

目標の$100,000には届かなかったが、寄付金やチケットの売り上げなどをあわせると$68,000 が集まったという。特に事務所長のトムが直接電話をしたり、手紙を書いたりしていたのが功をなしたようだ。地元NYに根を張り、地域のニーズに応えて対立解決のプログラムを広げてきたことを、改めて振り返り、新しい方向を見出す良いきっかけになったようだ。元教員やプログラムに関わったことのある人が、後に個人的に支援してくれているケースも多いことに気づいた。プログラムのよさをアピールするだけでなく、そこに関わってきた人もうまく巻き込んで支援者になってもらう工夫は、日本の団体でも重要だと思う。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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