本文へ 日米センター(CGP)は日本とアメリカにて、助成、フェローシップ、ボランティア、人物交流、情報発信を行なっています。
国際交流基金 日米センター
CGP NY | 国際交流基金 | English | サイトマップ
トップページ
日米センターとは
公開イベント
団体で助成金をお探しの方へ
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ
安倍フェローシップ
日米パートナーシップ・プログラム
Japan Outreach Initiative
NPO フェローシップ
CGPの人物交流事業
情報室(刊行物、寄稿など)
アクセス
お問合せ
FAQ
更新履歴
日米センター公募助成プログラム
CULCON(カルコン) 日米文化教育交流会
メール配信サービス
コラムス
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ

日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2006年6月)
フェロー:中村絵乃

報告書リスト

中村絵乃
日米センターNPOフェローシップ(第6期)
月次研修報告書(2006年6月分)

フェロー:中村絵乃 (特定非営利活動法人開発教育協会(東京) 事業・研修担当)
研修テーマ:NPOの組織強化/国内の教育活動
研修先:ESR Metro (New York City)
研修期間:2006年1月20日〜2007年1月19日


今月は学校の年度末でもあり、今年度の振り返りと次年度の計画を立てる時期であった。学校訪問や会議の報告、プログラムを読み込む中で気づいたことを報告したい。さらに、NYの高校の社会科のカリキュラムについて見聞きする機会があったので、それを報告したい。

1. 4Rsプログラムについて

4Rs(Reading, Writing, Respect & Resolution)

ESRが開発した、物語を通して対立解決のスキルを学ぶプログラムで、幼稚園から小学5年生までが対象である。全部で7つあるユニットは、コミュニティを創る、感情、聞くこと、アサーティブネス、問題解決、多様性、変化を起こす、というテーマで構成されており、そのテーマに関する絵本が学年ごとに配布される。カリキュラムにはその本の内容を理解し、自分の状況に置き換えて気持ちを共有し、問題解決のスキルを学ぶアクティビティが掲載されている。

日本と同様に、主要科目の授業で忙しい学校において「対立解決」という新しい科目を導入するのは難しい。そこで、国語の時間に使えるように学年に応じた本を紹介し「対立解決」の要素を入れ込んだのが、この4Rsプログラムである。スペイン語が母国語の生徒が多いクラスには、スペイン語と英語表記がされているような本も紹介している。

6月は最後のユニット「変化を起こす」まで進んでいるクラスとそこまで進んでいないクラスもあったが、まとめの工夫はそれぞれされていた。ユニットの中では今まで学んだことを復習しながら、自分の行動が問題解決につながる、と意識できるようにプログラムが設定されている。学校によっては、まとめの作文を書かせたりクラスのルールを再度確認して、追加したりして、まとめとしている。

研究対象校

4Rsプログラムは、NY市から予算をもらって、NY大学とともに子どもや教員の態度、姿勢、行動の変化を調査するプロジェクトを行なっており、ランダムに選ばれた9校を対象にしている。その9校に派遣されるスタッフデベロッパーは毎月一度集まり、現状や問題点を共有している。研究は3年間の期限付きで行なわれ、今年は2年目である。主な対象は4年生、来年度は5年生になる。6月のスタッフデベロッパー会議では、2年間の振り返りと、次年度の計画について共有された。2年間で学校自体がプログラムに力を入れてきたところと、そうでないところの差が開いているようだ。それは、校長や教員の関心によるところも多い。

また、よい意味で各学校に変化が起こってきたことが共有された。例えば、年度末に多文化を祝う行事を行なうことが恒例になった学校、4RsやESRのプログラムが教室全体に浸透しているクラス、子どもたちの態度が変わってきたクラス。実際、1年目の調査の結果が出ており、子どもの態度がより協力的になったことが非公式に報告されていたので、2年目の成果も楽しみである。

次年度の目標として出てきた主なものは、SELSocial Emotional Learning 社会的感情的学習)を校長に理解してもらい、プログラムの枠を超えて、学校全体の学習環境を作ること、ミディエイター(もめごとの仲裁者)研修を行なうこと、親をもっと巻き込むこと、などが挙げられた。3年目は最終年なので、ESRのスタッフが学校訪問をしなくてもそのプログラムが続けられるように、校長、教員の意識向上と、学校全体の学習環境作りの方法が細かく話し合われた。プログラムの成果を図るのに、大学などと協動して調査ができるのはとてもよいと思う。またプログラムの提供の仕方も学校や教員のニーズに沿ったものになっており、非常に学ぶことが多い。


2. 高校の社会科

社会科をカリキュラムの中心に

5月9日に社会科教員対象の大きな研修会があった。NY市の教育局、社会科学科の主催で、約400人の社会科教員が参加した。研修会のテーマは「社会科を教育の中心に/Social Studies at the Core」であった。アメリカでも教科としては数学や国語、科学などが重視され、社会科の優先度はあまり高くない。そこであえて「社会科こそを教育の中心としよう!」と主張した研修会であった。それぞれのワークショップではESRのようなNPO、大学、博物館、図書館、国連、新聞社やテレビ局などのメディア、企業など様々な団体が自分たちのプログラムを披露し、ブース会場にもカラフルな教材やパンフレットが並んでいた。

テーマも、中学・高校向けには、権利憲章と憲法、モデル国連、インド・中国・日本の仏教的視点、絹から石油へ:シルクロードにおける文化の交わり、ニューヨーク・タイムズを通して人権を考える、ホロコーストについて多様なメディアから学ぶ、ストックマーケット・ゲーム、博物館の展示から階級間の対立を考える、などさまざまである。ESR Metroは、ウェブ上で配信している「時事問題を教室に」というカリキュラムの中から「移民問題」について取り上げた。ちょうど移民法が議会をにぎわせているところだったので、議論も白熱した。

この研修を受けてから、高校の社会科のカリキュラムが気になるようになり、調べたり、関係者に話を聞いた。アメリカには日本のような国定カリキュラムは存在しないが「National Standard」という国が定めた基準がある。それに沿って、州政府が扱うべき内容やテーマを提示し、テストも作成する。州政府から提示された内容に従ってカリキュラムの詳細は各学校が用意する。高校の4年間で学ぶ社会科はアメリカ史(1年)、世界史・世界地理(2年)、経済(6カ月)、政治(6カ月)が卒業のための必修の単位である。その他、法や哲学は選択科目である。

NYの教育局で務めながら、高校の社会科学科のスーパーバイザーもするシェイラ・ハンレイ氏(Ms.Sheila Hanley)は社会科の問題を、時間がないことと、生徒の関心の低さ、と指摘する。現代史はいつも駆け足になり、話し合いなどをさせる時間もない。また生徒自身が自分の事として捉えることができないという。またもう一つ、問題だと思ったことは、世界史では「アメリカの役割」は取り上げられないことである。アメリカのことは「アメリカ史」で学び、世界のことは「世界史」で学ぶかららしい。
そして時間の関係で「アメリカ史」で中心的に取り上げられるのは現代史より前のものである。州政府が提示する内容では、例えば、9.11については「テロが起きた」イラク戦争については「イラク攻撃が始まった」と事実について理解することに留まっているという。シェイラはテストがそのようにしか作られていないので、授業でそこに時間をかけるのは難しいという。その分選択の授業などでは現在の課題やメディアの問題点などを取り上げているという。
確かにシェイラの作成するカリキュラムは、できるだけ生徒の生活に引きつけて、他の項目と関連付けて考えられるように工夫されていた。教員の努力次第という部分は日本と似ている。社会科のカリキュラムについて日米の教員が意見交換をするような場が設けられると面白いのでは、と思った。

社会科と開発教育

日本でも国際理解教育や開発教育はそのテーマから、社会科のカリキュラムに関連して導入されることが多い。「社会科を教科の中心にというスローガンは良いこととして受け留められるか?」とシェイラに尋ねたところ、そんなことを大々的にしたら教育局の余計な関与を広げてしまうので、また動きにくくなる、そっとしておいて欲しい、という意見であった。現在の市長になってから、教育制度も大きく変わり、学校の自由度が制限されているという。まだまだ教員の苦悩は続きそうだ。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

Top

TOKYO OFFICE
国際交流基金(ジャパンファウンデーション) 日米センター
160-0004 東京都新宿区四谷4-16-3
Tel (03)5369-6072 Fax (03)5369-6042
NEWYORK OFFICE
The Japan Foundation Center for Global Partnership, N.Y.
1700 Broadway, 15F, New York, NY 10019, U.S.A
Tel (212)489-1255 Fax (212)489-1344