本文へ 日米センター(CGP)は日本とアメリカにて、助成、フェローシップ、ボランティア、人物交流、情報発信を行なっています。
国際交流基金 日米センター
CGP NY | 国際交流基金 | English | サイトマップ
トップページ
日米センターとは
公開イベント
団体で助成金をお探しの方へ
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ
安倍フェローシップ
日米パートナーシップ・プログラム
Japan Outreach Initiative
NPO フェローシップ
CGPの人物交流事業
情報室(刊行物、寄稿など)
アクセス
お問合せ
FAQ
更新履歴
日米センター公募助成プログラム
CULCON(カルコン) 日米文化教育交流会
メール配信サービス
コラムス
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ

日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2006年7月)
フェロー:中村絵乃

報告書リスト

中村絵乃
日米センターNPOフェローシップ(第6期)
月次研修報告書(2006年7月分)

フェロー:中村絵乃 (特定非営利活動法人開発教育協会(東京) 事業・研修担当)
研修テーマ:NPOの組織強化/国内の教育活動
研修先:ESR Metro (New York City)
研修期間:2006年1月20日〜2007年1月19日


今月は学校も夏休みに入り、様々な研修が行なわれた。そのなかでも「Social Emotional LearningSEL)」の研修と、コロンビア大学のティーチャーズカレッジの「対立解決講座」について報告したい。

1. Social Emotional Learning (社会的感情的学習/SEL)の研修会について

社会的感情的学習とは、コミュニケーションや対立解決など、教科にはなっていないが、子どもの成長に欠かせないスキルを学ぶ学習である。そのようなスキルを学ぶには、多様性を受入れ、誰もが安心して学べる学習環境が必要であることから、学習環境作りに焦点があたっている。本研修会では、学校全体の学習環境をよりよいものに変えるためにNY教育局から資金($10,000)を得ることが決まったブルックリン地区19の学校のチームが集め、NY教育局主催の2日間の研修が行なわれた。

Collaborative for Academic, Social and Emotional LearningCASEL

研修会の講師は、SELの第一人者CASELのスタッフである。CASELは、シカゴ大学の心理学科に併設された非営利組織で、SELの研究やガイドラインの作成をしている。最近完成した、SEL実践ガイドSEL Implementation Guide: An Educational Leader's Guide to Evidence-Based, Sustainable, and System-Wide Social and Emotional Learningを使用した。

研修の内容

19校の内訳は、小学校が7校、中学校が6校、高校が6校、それぞれ、校長、教頭、進路指導、カウンセラー、教員などで4〜5人のチームを作っている。複数で来ることが重要なのは、学校全体の学習環境を変えるため、皆で力を合わせる必要があるからである。NYの教育局からの資金はSEL実践の準備のために活用できることから、チームでその計画の土台を作るための研修なのである。

最初に行なったのは、SELのイメージを模造紙に描くことである。様々なイメージが話し合われ、表現された。学校は緊急事態で、救急車が曲がりくねった道を走っている図、SELは人と人を結ぶ橋で、その橋を作るのは教員、指揮するのは校長、渡るのは子どもたち。サッカーのコーチとチームに例えたグループ、それぞれでとても面白い。このイメージ化の作業はとても良かった。チーム全体が漠然としていたイメージを話し合い、表現することで基礎となる概念や目標を大まかに共有できたようだ。
2日目は学校ごとに具体的な計画を建てた。実践に必要な項目について話し合いながら、役割を決めて、計画を練っていく。9月からスタートするには夏休みを使って準備もできるので、最適な時期だといえる。

ESR Metroの役割

このSELのプログラムをNYの教育局に持ち掛けたのはESR Metroであった。うまく資金を引き出したのは良かったが、この資金は具体的なプログラムには使用できないことから、フォローアップや教員研修を請け負うための資金をまた別の財団に申請しているようである。直接団体の資金にはならなくても、大きな動きを作ることで結果的には団体にも良い効果が及ぶ。
現に、教育局が「社会的感情的学習」に関心を示し、支援の姿勢を見せた意味は非常に大きい。シカゴではすでに「社会的感情的学習」が学校評価の項目として入っていることから、NYでもその動きを作って行こうという意図がある。中・小規模のNPOはどうしても短期的な効果に目が行きがちであるが、常に大きな視野を持っておくことが、とても重要だと改めて思った。


2.対立解決講座について

コロンビア大学のティーチャーズカレッジの「Basic Practicum in Conflict Resolution & Mediation(対立解決講座)」を受講した。講師は、大学に併設されるNPOThe International Center for Cooperation & Conflict Resolution (ICCCR)のスタッフ。2回の週末を使った短期集中講座であった。前半は交渉(Negotiation)を、後半は仲裁(Mediation)をテーマとした。参加者は、企業の人事部や、教員、保険のセールス、アメリカ軍の指導部など様々。とても実践的な内容で、自分自身の対立への概念や、態度、心の変化を非常に意識した6日間であった。

前半の内容−交渉

まずはこの講座で「対立」に対する意識が大きく変わった。対立はできるだけ避けたいと思っていたのであるが、避けること以外にも様々な方法があることに気づき、なにより「対立」事体はよくも悪くもなく、その対応次第で対立の意味が変化することを実感できた。また「対立」に対する対応は文化によっても大きく異なることを身をもって感じることができた。日本人は私だけだったので、出される例についても、アメリカらしい、と思うことが多かった。そしてなぜ、そのように反応するのかを、分析していくことで自分の経験も大きく関係していることに気づいた。

ロールプレイやシミュレーションを行ない、交渉を直接体験した。その際に必要なアクティブ・リスニング(傾聴)やパラフレーズ(自分の言葉で繰り返し内容を確認する)は、口で言うより数倍難しく、それを体験してフィードバックを受けることができたのは貴重な経験だった。何より、意識して違う対処方法、考え方を試してみることが重要であることが理解できた。この3日間で学んだことは、自分自身の振り返りと日常の行動の変化、そして課題になっている書籍を読みその内容を反映しながらレポートを書いた。これはとても勉強になった。

後半の内容−仲裁(ミディエーション)

スキルについては前半で身につけたものがかなり役に立ったが、仲裁は非常に難しいプロセスであることを改めて感じた。ESR Metroで子どもたちに教える「ピア・ミディエーション(生徒が生徒のもめごとの仲裁をする)」と異なるのは、もっと、現実的なそして柔軟な姿勢が必要であることだ。ESRのプログラムでは、最初に言う言葉や、パターンを決めてまずはそれを練習するが、今回学んだのは、どのように、両者を、仲裁者を介さないで、直接自由に会話をさせることができるか、であった。そのため、パラフレーズはその場に応じて行ない、何よりも必要なのはより深い部分を引き出す質問であった。
しかし、両者がとても感情的になったり、話すのを拒否したりすると、非常に難しくなる。多くの場合、最初に両者から提示された問題以外の問題が実は潜んでいて、その部分を見つけ出し、話し合いを組み直す(reframe)ことが、重要であることが理解できた。

初めての仲裁役の実践(ロールプレイ)は非常に難しかったが、前半同様、たくさんのフィードバックをもらったのはとても勉強になった。全て英語なので、どちらかというと、聞き手に廻り、両者を自由に話させたことが結果的には感情を認め、両者共通の関心を見つけることができた。しかし、他の参加者がつい口を挟んでしまうのを見ていて、「これが日本語だったら、私も口を挟んでしまいたくなるだろうな」と思った。

仲裁役の意味が私の中で大きく変わった。会話の中で本人たちがお互いのニーズと気持ちを理解し、解決策を見つけることを助ける役目であり、アドバイザーでも指導者でも議長でもないのだ。また、実際に参加者が持ちよった「対立」について、それぞれの立場、ニーズ、組み直した質問を考え、ロールプレイを行なったのもとても良かった。私のケースを扱ってもらったが、相手の立場になって初めて、相手のニーズや気持ちが分かったのは驚きだった。後半も前半同様、振り返りのレポートを書き、さらには全体で学んだことを反映させたレポートを提出する予定だ。できれば日本で応用するためのプログラムを作成してみたいと思う。

日本での応用

この講座で学んだことは、非常に広く活用できると思う。日本の場合「対立」をあまり表に出さないが「対立」はあらゆる所に起こっている。「対立」はより人間関係や社会を良くするものであると捉えることで、前向きに取り組むことが重要であることが分かる。アクティブ・リスニングやパラフレーズなどの技術は、教育プログラムや組織づくりにも役立つし、日常生活でも実践できることから、積極的に使って行こうと思う。何より、自分自身の気持ちや行動を深く振り返ることで、意識して「対立」に向き合えるようになったことは大きな収穫であった。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

Top

TOKYO OFFICE
国際交流基金(ジャパンファウンデーション) 日米センター
160-0004 東京都新宿区四谷4-16-3
Tel (03)5369-6072 Fax (03)5369-6042
NEWYORK OFFICE
The Japan Foundation Center for Global Partnership, N.Y.
1700 Broadway, 15F, New York, NY 10019, U.S.A
Tel (212)489-1255 Fax (212)489-1344