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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2006年8月)
フェロー:中村絵乃

報告書リスト

中村絵乃
日米センターNPOフェローシップ(第6期)
月次研修報告書(2006年8月分)

フェロー:中村絵乃 (特定非営利活動法人開発教育協会(東京) 事業・研修担当)
研修テーマ:NPOの組織強化/国内の教育活動
研修先:ESR Metro (New York City)
研修期間:2006年1月20日〜2007年1月19日


今月はサンフランシスコで研修や環境教育プログラムに参加し、さらにシアトルではサイトビジットも行なった。研修の内容とサイトビジットの報告をしたい。

1.『関係性の再構築-理論と実践短期集中講座
  Intensive in the Theory & Practice of the Work That Reconnects

8月5日(土)〜15日(火)の10日間、サンフランシスコのLand of Medicine Buddha で上記の研修が行なわれた。講師はジョアンナ・メーシー(Joanna Macy)氏。内容は、世界の紛争や環境問題、開発、人権など様々な事柄と私たち自身の生活の関係性を捉え直し、再構築する作業を、理論や実践、感情の変化なども意識しながらグループで学ぶもので、持続可能な社会のために必要な資質、姿勢、能力を様々な体験を通して考える講座であった。

「関係性の再構築」活動の背景

1970年代後半に北アメリカで始まった教育活動で、非核運動家、環境活動家、心理学者、芸術家などにより始められた。教会や学校、警察官の集まりなどでもこのような平和、正義、安全な環境作りのワークショップが行なわれた。
1980年の半ばから、この活動は「ディープエコロジー」とも呼ばれ、ヨーロッパ、オーストラリア、南アジア、日本、ロシアなどにも広がっている。

「関係性の再構築」

経済的、産業的発展を重視した社会のあり方の問題を様々な視点から議論し、より持続可能な社会へのシフトがどのように可能かを、国レベル、地域レベル、個人レベル、論理的なレベル、心理的なレベルで検討していった。特に心理的なレベルの共有は私にとってはとても新しい経験であった。参加者が自分の活動や世界の問題に対して抱く懸念やフラストレーションを安全な環境で共有し、それに対してすぐに解決策を提供するのではなく、気持ちを受けとめ、認めていくプロセスは、とても新鮮であった。
特にNPO活動などで、社会がなかなか変わらず解決の糸口がつかめないときに、焦ったり、無力感に陥ることが多いが、その感情の動き自体を認めていくことで、実はとても心理的に安定することを実感できた。また、論理的なレクチャーと、インタラクティブなアクティビティ、そして個人的な振り返りの時間がそれぞれ十分にあったので、内容を消化し、確認し、自分なりの意見を持つことができた。大きな課題ではあったか、通常のセミナーにあるような「すぐに解決策を探る」という方向性ではなく、じっくり自分の理解や感情と向き合うことができたので、貴重な時間だった。

研修の構成

アメリカ西海岸を中心に全国から、さらにブラジル、カナダ、イスラエルからも平和や環境、開発分野で活躍する活動家、研究者など25名が集まった。午前中は主にレクチャーやワークショップ、午後はグループワークと個々の振り返りや準備、そして夜は発表会や意見共有の場であった。10日間の研修内容については、大枠の予定表のみを提示し、その都度柔軟に中身を変えていく方法はとてもよかった。
また5〜6人の小グループが用意され、午後の2時間はそのグループでテーマを話し合ったり、個々の課題について他者から質問を受けることにより深く理解する時間が設けられ、非常に有意義であった。その作業からこの小グループのメンバーはとても親しくなり、その結果、長いセミナーが乗り切れたとも言える。
また、参加者がそれぞれのテーマで話題を提供したり、セミナーの一部を担当したり、経験や詩・歌などを披露したりする時間があったことはとても効果的だった。このように参加者自らが積極的に参加できるスペースをつくるのはとてもよいと思った。

ワークショップの手法

とてもシンプルだが、気づきの多い参加型のアクティビティが多く、非常に勉強になった。特に世界の問題を扱うのはどうしても難しくなりがちであるが、「持続可能な社会」を考える際に、時間軸を使って、祖先から脈々と受け継いできた様々な贈り物を実感したり、7世代先の子どもたちのことを考えた社会作りを検討したのは面白かった。また「今まで自分が何かを変えた経験」を話して、その力は何だったのか、を明らかにしたり、既に起こっている市民社会の良い例を共有したことは、NPOスタッフの研修にも活用できる、と思った。

文化の違い

研修では、自分の気持ちや感情を表現する場面が多く、多くのアクティビティの手法も西洋的な文化を反映していた。日本で似たようなセミナーを行なう場合は、安心して気持ちを表せる環境が必要で、そのためにはウォームアップにもう少し長い時間が必要だろう。また、今回は携帯電話もEメールも極力使わず、10日間を研修に集中できる場所で行なわれた。このような環境作りも重要だといえる。忙しい日本ではなかなか難しいかもしれないが、日本でもこのような研修ができればよいなと考えている。


2.モノ湖の環境教育プログラム Link

ヨセミテ国立公園のそばにある、Mono Lake (モノ湖)のMono Lake Committee(モノ湖委員会)を訪れ、プログラムについて話を聞くことができた。モノ湖は、湖としての活動はなく、川から流れ込む水は養分を残して蒸発するので、湖の水は海の倍の塩分になる。よって肥沃かつ比較的シンプルなエコシステムを作り上げている。
石灰華の塔が湖のまわりに聳え立ち、海水の小エビやアルカリ蝿など、珍しい生き物が見られた。モノ湖流域には、1000以上の植物の種類と約400の脊椎動物が住んでいると言われる。その結果、モノ湖とその流域はカリフォルニアのもっとも豊かな自然地域の一つであると考えられているようだ。

モノ湖委員会は、モノ湖流域のエコシステムを保護し、回復していくための非営利団体で、モノ湖や大量の水消費が環境に与える影響などを人々に教育している。1978年以降、モノ湖委員会はモノ湖からロサンゼルス市への大量の給水に反対している。訴訟や市民の支援を通して、今のところこの試みは成功しているようであるが、モノ湖の保護と回復にはまだ時間はかかるようだ。団体の活動は、水鳥の生息地や湖岸の植生の回復、市民への教育、水質保護の推進、政治的なモノ湖の保護推進を進めることなど多岐に渡っている。

毎年モノ湖委員会は何千もの人々に環境教育やインタープリテーションを行なっている。カヌーやハイキングなどのインタラクティブプログラム、地質学やネイティブアメリカン文化などをテーマにしたセミナー、子どもたち向けの体験プログラム、ロサンゼルス市の水源電力庁と共同で行なう教育プログラム、学校の訪問受入、カリキュラム作成を行なっている。実際に湖のまわりを歩いて説明を受けたが、とても興味深かった。水源を守るだけでなく、水の使用をより意識するように組み立てられた教育プログラムは日本の教育現場でも活用可能であろう。


3.シアトルのサイトビジット

シアトルでは以下の4団体にサイトビジットを実施した。

a. World Affairs Council Link

1951年に設立されたNPOで、海外からの訪問者との交流プログラム、一般の人々を対象にしたイベント、教育プログラムなどを通して、国際問題を理解することを目的にしている。もともと、「グローバル・クラスルーム」という教育プログラムに関心があったのだが、財政難で、現在はパートタイムスタッフが一人いるだけでその担当者とも予定が合わなかったことから、シニア・プログラム・オフィサーのクリスティ・カーター(Kristy Carter)氏に、彼女の担当の「International Visitor Program」と全体の話を聞いた。
International Visitor Program」は国務省の後援で世界中から様々な専門家や活動家を招き、セミナーを行なっている。政治、メディア、教育、芸術、その他様々な分野で派遣されてくる人々を受け入れ、学校訪問や公共の行事をアレンジしたりしている。

また多くのフェローも受け入れていて、毎月国際問題のセミナーを主催し、国際的なリーダーシップの養成を目指している。教育プログラムでは、世界の文化、人々、歴史、言語、経済などをテーマにカリキュラム作成をしており、教員の会員も多い。

国際的な問題をテーマにしたセミナーの切り口も多様で、学ぶことが多かった。現在は11人のスタッフと約500人の会員がおり、財源はシアトル市内の企業(スターバックスなど)が主である。何といっても、この団体の強みはネットワークである。世界中の様々な人々を受け入れることでそのネットワークは広がり、また地域からも支援されているという。

b. Japan-America Society of the State of Washington(ワシントン州日米協会)

1923年にシアトルのビジネスマン、学者/研究者、そして外交官などのコミュニティのリーダーによって設立された。ワシントン州と日本の長期的な交流が目的。第二次世界大戦中の短い期間を除き、日本−ワシントン州間の貿易、ビジネス、文化的交流などを支援している。1980年代初めまで完全にボランティアで運営されていたが、現在は3人のフルタイム・スタッフがいる。
プログラムディレクターの三輪朝子氏に話を聞いた。シアトル地区で初めてのNPOで、日系の企業や大学からの寄付が多いようだ。日本の文化や歴史、経済について紹介する教育事業も広く行なっており、毎年約2000人の学生に日本の文化を伝えるプログラム「Our Japan in the School Program」も定評がある。多くのボランティアが積極的に関わっているようだ。

c. Positive Future Network

国内外の問題を市民の目で分析し、より平和で持続可能な社会を作ることを進める季刊誌『Yes!マガジン』を発行している。10年間で発行数も4万部に伸びた。所長のフラン・コールテン(Fran Korten)氏と、教育部門のキム・コリガン(CorrigaKim n)氏に話を聞くことができた。
社会的な問題を扱っている雑誌はたくさんあるが、その中でも『Yes!マガジン』が取り上げているのは、たくさんの市民活動の成功例や励みになる話である。市民活動は多くの場合、問題が大きすぎて成果が見えない場合があるが、この冊子は草の根レベルのどんな小さな変化も見逃さず、それを公にすることで、活動の有効性を証明している。
教育部門のコリガン氏は、この成功物語を使って社会科のカリキュラムを作成した。また、教員は一年間無料で購読ができる特典があり、教員の多くが利用している。予算などは厳しい部分もあるが、メンバーに購読の継続とともに、特別会員として寄付を募ったところ、多くが賛同してくれたという。前向きな情報を提供することで、会員の帰属意識も刺激しているのかもしれない。

d. Hate Free Zone WashingtonLink

2001年9月11日以後、即座に起きたアラブやムスリム、南アジアや他のコミュニティのメンバーに対する個人的または政策上の差別に対して立ち上がった団体である。民主主義と正義の基本的な原理を支持することがミッション。人種差別の対象となっている移民社会やその仲間たちに対し、平等と、尊厳と尊重の権利獲得と、結集を支援している。4つの主な領域は政治的アドボカシー、直接的な支援、コミュニティの動員、教育である。

事務局長(Managing Director)のミカエル・ビンクウィスキー(Michelle Binkwski)氏に話を聞いた。Hate Free Zoneは、コミュニティの直接的なニーズにも応えつつ、より信頼関係の保てる社会にするために政策提言も行なう、という新しいモデルで活動を行なっている。現在、スタッフは9名でコミュニティNPOとしては少し大きくなりすぎた。今後全国展開も図っていく。
また、以前は教育活動にも力を入れていて、『Justice & Democracy Challenges and Opportunities in the Aftermath of Sep,11,2001』という立派な教材も作成していた。現在では少数コミュニティ自身が意見を発信し、持続できるように、指導者養成に力を入れている。今後の全国展開も楽しみである。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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