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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2006年8月)
フェロー:岩附 由香

報告書リスト

岩附 由香
日米センターNPOフェローシップ(第6期)
月次研修報告書(2006年8月分)

フェロー: 岩附由香 (特定非営利活動法人ACE(東京) 代表) 
研修テーマ: 児童労働分野のNGOのアドボカシーとプログラム、資金調達とネットワーク活動
研修先: Winrock International (Arlington, Virginia)
研修期間: 2006年3月29日〜2006年12月28日


NGO訪問 全国消費者連盟

全国消費者連盟(National Consumer's League、以下NCL)の代表であり、また児童労働ネットワークの共同議長を務めるリンダ・ゴロドナー(Linda Golodner)さんに話をきいた。NCLは創設当時の1899年から国内の児童労働問題の政策提言を行なってきた団体だ。児童労働のほかにも詐欺防止など消費者問題に取り組む。またリンダさん自身も、公正労働協会(Fair Labor Association)の役員、ベライゾン(Verizon、アメリカの大手通信会社)の消費者サービス顧問グループの役員、ラグマーク財団(Rug mark foundation)の元役員、国際ココアイニシアティブ(International Cocoa Initiative)など、1980年代に現職について以降数々の団体に消費者問題の専門家として関わってきた。
 リンダさんとフェアトレード商品の話になり、児童労働防止の解決策になれるかと聞いたところ、モニタリングの問題があることを指摘された。第三者のモニタリングがされているかどうか、それが証明できなければ児童労働がないことを証明するのは難しい。フェアトレードといえば児童労働がないというイメージが強いが、厳密にはそうともいえないということに気づいた。

●資金調達はくじ引きで・・・。ラグマークのカーペットくじ引き

毎年ラグマーク財団(Rug mark foundation)が行なっている資金調達イベントのひとつがこのくじ引きである。英語でRaffleというが、くじの券(チケット)を売ることで団体は資金調達が行なえ、くじを買う人は高価な商品を当てられる可能性を楽しむ。

ラグ・マーク・ラベルの画像
カーペットの裏につくラグ・マーク・ラベル。このラベルの裏に製造情報などが記載される。

ラグマーク財団のくじ引きの商品はもちろんカーペットである。チケットは1枚25ドルで、5チケット分が100ドル、10チケット分が200ドル、50チケット分が1000ドルでインターネットで購入することができる。より高い当選可能性を追求する人ほど、高い金額で貢献するというわけだ。
当たる可能性がどれぐらい高いかについては分からないが、もともと寄付をしようと思っていた人にとっては良い機会となるし、気軽に寄付をしやすいので、新しい寄付者獲得にも効果的だ。団体の特徴を生かした宣伝にもなる。

実際に事務所を訪ねてDevelopment Officer(資金調達等を担当するポジション)のレベッカ・シャロフ(Rebecca Shaloff)さんに話を聞いた。
このラグマーク財団はカーペーット産業の児童労働の問題の解決方法のひとつとして編み出された市場原理を使ったアプローチをとっている。1994年にSACCS(South Asia Coalition on Child Servitude, 南アジア子ども奴隷解放連盟)の代表をしていたカイラシュ・サティアルティさんの考案によるものだ。私は1998年に、ACEの活動でサティアルティさんに出会った。サティアルティさんは、その後も2005年のACE法人設立シンポジウムや2006年のアムネスティ・インターナショナルによる招へいを受けて何回か来日している。児童労働問題において世界的に有名なインド人男性である。彼は1980年代から債務奴隷としてカーペット織りを強いられていた子どもたちの救出を行なっていた。そこでカーペット産業自体の構造変化の必要性を感じ、消費者側からこの構造に変化をもたらす方法—つまり児童労働が使われていないカーペットにそれを証明するラベルをつけ、児童労働が使われているかもしれないカーペットとの差別化を行なう—ことを考えたということだ。

カーペット製造国であるネパール、パキスタン、インド、カーペットの輸出先市場のあるドイツやアメリカの各国にラグマークの法人格を持つ団体があり、ラグマーク・インターナショナル(Rugmark International)という傘組織でつながっている。製造国では児童労働のモニタリング、子どもの教育プログラムなどを行ない、輸出先の事務所はそのための資金調達や、ラグマークのついたカーペットを取り扱う会社を増やす市場開拓を行なっている。

このラグマークの取り組みがそれまでの児童労働への取り組みと一線を画すのは、市場の原理を使っているところにある。児童労働を使おうとすることを妨げる方法(法律で制限するなど)だけでは児童労働を防ぐことが難しいため、児童労働を使わないことによって得られるメリットを創造しているのがこのラグマークの仕組みだ。この効果もあり、1994年には100万人と言われていたこの産業での児童労働者数が2004年には30万人にまで減少したという。もちろんラグマークだけがその功績を独り占めできるわけではないが、それでもひとつの産業の中で児童労働に取り組む成功例のひとつである。ただ、これが他の製品にすぐ当てはめられるかというとそうではない。製品をひとつづつ時間をかけてつくるカーペットと、大量生産される他製品とでは製造環境がかなり違うからだ。

1999年から数年間、債務奴隷者として96年に救出された少女ラクシュミさんが学校で手を上げている写真と、救出後学校に通うまでのストーリーが、ラグマークを代表する顔として語られていた。現在のラグマークの顔は、ラグマークラベル自身である。現在ラグマークは、3年間に渡る世論喚起キャンペーンを行なっており、そのキャッチフレーズは“The most beautiful Rug”(この世で一番美しいカーペット)である。そしてその広告をインテリアマガジンに掲載している。
このように、団体の顔を子どもの顔からラベル自体に変えていったその変遷が興味深い。これまで訪ねた団体のいくつかはやはり2、3年ごとに大衆へのメッセージやアドボカシーのターゲットの見直しを行ない、リニューアルしている。

ラグマークにとって、世論が喚起されたという証明は、市場シェアで示される。2005年時点で1.5%だった市場シェアを、2008年には7%に、2012年には15%に拡大することが目標である。そしてこの15%が達成されたときに、ミッションのひとつが完遂されたといえるという。そしてもうひとつのミッションは、児童労働の撤廃である。ちなみにこのミッションも、2年前に再設定されたものだそうだ。
この節の冒頭で紹介したくじ引きだが、毎年9千ドルほどの資金調達になるそうだ。今年はそれを越えるために、大きなイベントとリンクさせ、2万ドルを資金調達することを目標としている。日本では、くじ引きの商品である大きめのカーペットを敷ける家庭は限られるかもしれないが、私が知る限り日本には取り扱い店がないようなので、アメリカからの送料を負担するだけで高価な手織りカーペットを手に入れるチャンスではある。購入の際にぺラッと裏をめくってラグマークがついているか確かめるのがそのうち欧州や米国ではよくみる風景になるのかもしれない。

●児童労働問題の国際政策研究

児童労働を主題とした国際会議が1997年にオスロ(ノルウェイ)で開かれた。「児童労働に対する闘いの前進と後退」(原題“Achievements and setbacks in the fights against child labor”)は、この会議が児童労働にどのようなインパクトを与え、それがどのような性質のものであったかを見極めるための評価査定を試みている。この国際会議は国際児童基金(UNICEF)、国際労働機関(ILO)、ノルウェイ政府の共催で、約40カ国の代表が集まり(日本政府は参加していない)、児童労働に関する話し合いと行動計画が採択された。報告書の分析によると、この会議によって働く子どもへの直接支援を実施する機関としてUNICEFILO双方が同意できる児童労働の解釈定義が確立でき、会議以前から始まっていた新しい条約策定の草案にも大きな影響を与えた、とのことである。

実は私は、この会議に参加しようと試みたことがある。大胆にも1997年大阪の自宅からノルウェイ政府に参加したいとFAXを送ったのだ。感熱紙でプリントされたノルウェイ政府の返事は、「この会議への参加が認められるのは、政府代表や国際機関等の招待者のみである」というような返事だったと思う。もしかしたら、変色したFAXの返事が残っているかもしれない。記憶が定かではないが、日本政府からの参加はなかったと思う。国際政策の中で日本のNGOとして今後活動を展望していく中で、このような国際会議に対する自国政府の関心をいかに高め、日本としての貢献を実現していくかということも、アドボカシーの戦略のひとつになるのであろう。
報告書は、児童労働の国際政策を進める選択肢(Options for Policy Initiatives)として、1.児童労働と教育に関する会議;世界会議または地域会議、2.実施評価、3.知識強化、4.モニタリングメカニズムの確立を挙げている。
それぞれの選択肢の一長一短を上げているが、4については最近ILOも児童労働モニタリングシステム(Child Labor Monitoring System, CLMS)の開発などに力を入れていることから、今後注目すべきではないかと思う。
この報告書は2004年にFafoという組織の研究者が書いたものであるが、私は大変興味深く読んだ。国際機関やNGO以外で、文献調査ではない児童労働の政策研究が珍しいだけでなく、実際に関わった人たちにインタビューを行ない実情を詳しく描いている。このFafoは1981年にノルウェイの労働組合連合組織の研究機関として発足し、1993年に独立した。日本でいえば(財)連合総合生活開発研究所に相当するのであろう。欧州は児童労働問題に政府が積極的な国が多いが、研究面でも進んでいると感じた。

●ウィンロック・インターナショナルの児童労働プロジェクト—選考プロセス等—

現在、児童労働のグローバルプロジェクトである、CIRCLE(Community-based Innovations to Reduce Child Labor through Education)プロジェクトの評価を行なっている。このプロジェクトの概要は以前述べたが、その選考プロセスは以下である。
ウィンロックのプロジェクト募集に対し、各国のローカルNGOが申請を行ない、それをウィンロックが選考し、最終的に支援するプロジェクトが決定される。2003年に第1次募集、2005年に第2次募集を行ない、計76のプロジェクトを支援した(うち4案件は問題があり途中で終わるなどした。)

これらのNGOの提案するプロジェクトはアメリカ労働省(US Department of Labor, USDOL)の児童労働教育イニシアティブ(Child Labor and Education Initiatives)で掲げる4つの目的(1.正規または非正規教育システムの強化、2.世論喚起、3.国内の教育および労働に関する機関、政策の強化、4.持続可能性の確保)の中の少なくとも1つをプロジェクトの目的としなければならない。NGOが申請するプロジェクトの目的として一番多いのが世論喚起、及び教育システムの強化である。そのため、2006年に行なわれた第3次募集では残りの2つの目的、すなわち政策提言、または持続可能性に焦点をあてたプロジェクトを奨励している、とのことだった。2006年は3回目の募集と選考が行なわれ、6月には各地域(アジア、ラテンアメリカ、アフリカ)で選考されたNGOを招へいし、報告書の作成方法等のオリエンテーションを行なった。

これらの児童労働プロジェクトのNGOのパートナーをどう選ぶかについては、そのプロジェクトの申請内容そのものの評価に加えて、児童労働の高い地域かどうか、ウィンロックが過去に活動経験を持つ地域または事務所が近い地域かどうかも勘案される。また、資金提供者である労働省の選好が影響する場合もあるそうだ。CIRCLEプロジェクト開始直後は情報収集の目的もあり、労働省が特定地域や国を選好する傾向があったそうだが、現在労働省が資金提供するプロジェクトが増加し、カバーする地域、国が多様になっため、今ではこの傾向はほとんどないそうだ。
大まかなNGO選考については以下のような流れである。
NGOはウェブからダウンロードして申請書を書き、提出する。申請されたものは、地域選考委員会(Regional Selection Committee、RSM)が審査を行なう。この委員会は国際労働機関/教育関係者/現地政府の関係者(当事者を除く)などからなる8−9人の委員会であり、委員の名前は明かされない。審査方法はスコアシートに記入してもらい、スコアをつけていくというものだ。
その後、この委員以外の2人の外部者がスコアを見て、委員会とミーティングを持ち、プログラムを推薦する。

それに対して、ウィンロック側がフィードバックを行ない、最終的に決まったものを労働省に報告し、そこでの承認を得て最終決定となる。労働省の段階で決定が覆ることがたまにあり、例えば大きな予算のプロジェクトの一部だけ承認され、規模を縮小したものが承認されるというようなケースが以前あったそうだ。このように、実施内容について若干の変更要請を行なう場合もある。
このCIRCLEプロジェクトの中で児童労働に直接的に介入する役割は現地NGOが担う。したがって、ウィンロックの役割は、それらのプロジェクトの実施状況などの管理を行なうことであり、各NGOに対する技術的補助(地域事務所が主に担う)と、児童労働プロジェクトの成功例を導き出す分析作業(アメリカ事務所が主に担う)がある。私が現在担っているベスト・プラクティスはこの後者にあたるわけだ。
今月は、9月の第4ラウンドの評価に向けての準備を前もって実施したために、かなりの時間を割くことになった。10月後半にはこのベスト・プラクティスの書籍の中身を話し会う会議がアジア、アフリカ、ラテンアメリカからスタッフを招へいして開かれることもあり、これからもだいぶ時間を費やすことになりそうである。

以上

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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