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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2006年9月)
フェロー:岩附 由香

報告書リスト

岩附 由香
日米センターNPOフェローシップ(第6期)
月次研修報告書(2006年9月分)

フェロー: 岩附由香 (特定非営利活動法人ACE(東京) 代表) 
研修テーマ: 児童労働分野のNGOのアドボカシーとプログラム、資金調達とネットワーク活動
研修先: Winrock International (Arlington, Virginia)
研修期間: 2006年3月29日〜2006年12月28日


9月の活動報告

  • NYとボストンにて複数のNGO、大学、フェアトレード会社を訪問
  • 10月初旬にワシントンDCで行なわれるWorld Cocoa Foundation(世界ココア基金)の会議へのアシストの依頼を受け、世界ココア基金と内容を打ち合わせ
  • 所属するユニットの戦略ミーティング(3日間)
  • チョコレートと児童労働についての研究開始

チョコレートと児童労働

1.現状

チョコレートの原材料であるカカオ豆は赤道をはさむ南北緯度20度以内に生産地が限られている。現在カカオ豆を生産している主要国のうち4カ国が西アフリカ(カメルーン、ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア)に集中し、生産は世界の生産高の約7割を占める。中でも世界の43%の生産量をかかえ、国民の3分の1がカカオかコーヒー栽培に関わっているという国が、コートジボワールである。

国際熱帯農業研究所(International Institute of Tropical AgricultureIITA)が実施した西アフリカのカカオ生産における児童労働調査(2002年発表、世界カカオ基金、米国国際開発庁及び労働省、ILO、各国政府の協力の下実施)では、コートジボワールだけで約13万人の子どもが農園での労働に従事している。カカオ農園は小規模な家族経営の場合が多く、子どもが家族の手伝いとして働いている場合もある。
しかし、1万2千人の子どもが「農園経営者の家族や親戚ではない子ども」であった。また、農園経営をする家庭の子ども(6歳−17歳)の3分の1は、「一度も学校に行なったことがない」と報告されている。その中には「何らかの仲介機関」によってこの職についている子どももあり、「他国から誘拐され奴隷として売られて強制的に働かされている」という報道や他の文献の指摘を裏付けている。

調査では西アフリカでカカオ農園で働く子どもの64%が14歳以下と述べられており、カカオ栽培の労働集約的な作業、特に農薬の塗布、刃物の使用などは子どもの身体に危険をもたらす可能性が高いといえる。労働省はこの労働を「最悪の形態の児童労働」と位置づけている。また国際ココアイニシアティブ(International Cocoa Initiative, ICI)のディレクターの話によると、現地の人々への意識啓発及びトレーニングをしていく中で、農園で働いている人たち自身がこの労働を「最悪の形態の児童労働」と理解し、政府へ保護及び教育の改善を求めるようになったそうだ。
カカオ農園で子どもが行なう危険な作業としては、電子のこぎり(チェインソー)を使って農園となる土地を開拓し雑草などを取り除く作業、カカオの木に登って高所(2.74メートル以上)で行なう作業、農薬の塗布(ガーナでは95%の子どもが保護具なし、袖なし半ズボンにゴム草履で背中に農薬の入った器具を背負って塗布しているほか、農薬を混ぜる作業を行なったり、農薬が入った容器を頭に載せて運ぶなどもしている)、カカオの実(カカオポッド)の収穫時など刃物を使用して実を割る作業、60−65キロにもなるカカオ豆の入ったバッグやかごを頭に載せて運ぶ作業がある。

このような児童労働が世間の注目を集めるようになった背景には、2000年、2001年の欧米でのテレビ報道と、NGOや消費者団体のキャンペーンがあった。これに対し、2001年9月、米国の議員とチョコレート製造業者協会は、カカオ農園から最悪の児童労働をなくす目的で「ハーキン・エンゲル議定書」を締結した。それを受けて2002年には国際ココアイニシアティブ(ICI)が発足し、以後、米国政府、ILO、労働組合、NGO、消費者団体等とともに実態調査、児童労働予防プロジェクトの開発、実施等を行なってきた。また、ILOもこの地域でプロジェクトを行ない、WACAP (West Africa Cocoa and Commercial Agriculture Project to Combat Hazardous and Exploitative Child Labour)に着手した。600万ドルを拠出(アメリカ労働省、ICIによる)し、世論喚起、農夫・生産者・労働監査者などの能力強化、収入機会向上、子どもの労働からの解放と教育に焦点を当てた直接介入型パイロット・プロジェクトや、CLMSChild Labor Monitoring System、児童労働モニタリングシステム)の実施など、積極的関与を続けている。

2.ハーキン・エンゲル議定書の内容

主導者: 米国のトム・ハーキン上院議員, エリオット・エンゲル下院議員(当議員が2001年議会でチョコレート産業の子ども奴隷を指摘した)
署名者: チョコレート製造業者協会(CMA)、世界カカオ基金(WCF)代表
証人: 米国のトム・ハーキン上院議員、エリオット・エンゲル下院議員、ハーバート・コール上院議員、コートジボワール大使、IPECディレクター、国際食品関連産業労働組合連合会(IUF)事務局長、反奴隷運動「フリー・ザ・スレイブス」代表、全米消費者連盟(NCL)代表、児童労働連合コーディネーター
署名された
日付:
2001年9月19日
目的: カカオ豆とその関連商品は、ILO182条約を遵守した形態で生育、加工されなければならない。
責務: この目的は主要関係者のパートナーシップなしには達成できるものではない。関係者とはすなわち、政府、世界産業(カカオ豆及びチョコレートの主要製造業者、その他主要なココア使用業者)、ココア生産者、労働者及び非政府組織、及び消費者である。各パートナーは重要な責務を担う。この議定書は産業のコミットメントを示すものである。カカオ生産国における既存のプログラムの継続及び拡大、またこの文書に記した段階を経て、産業はその責務を遂行する。
実施者: 明記はないが、実際に関わっているのは、米国政府、ILO、世界カカオ基金、反奴隷運動「フリー・ザ・スレイブス」、全米消費者連盟(NCL)など
議定書に定めれた実施項目
  • 活動計画策定の根拠と実施内容の草案
  • 西アフリカのカカオ豆に関する労働慣習について、セクターを超えた人員からなるアドバイザリー・グループの形成
  • ILOとの共同声明への署名
  • 関係者との協力を確認する覚書の作成
  • 産業内部と産業外部が協働する基盤の設置
  • 公的認証システム

以上の項目のうち、6つめの項目が、目標とされていた2005年までに達成できていないため、この議定書は延長されている。2006年10月の労働省のプレスリリースによると、アメリカのティユーレーン大学(Tulane University)のペイソンセンター(The Payson Center for International Development Technology Transfer)が、まだ実現していない最後の項目(カカオ豆生産量の50%に児童労働が用いられていないことを認証できるようにする)の実施を監督することになっている。

3.フェアトレードチョコレート:イコール・エクスチェンジ(Equal Exchange)訪問

NPOフェローシップの様子の写真1

イコール・エクスチェンジは1986年に設立されたフェアトレード会社である。協同組合として活動している会社というユニークな存在である。協同組合という制度がフェアトレードの軸となっている。
この会社は、各地域の協同組合と直接交渉し取引を行なうことで、仲介業者を減らし価格を抑える一方、その分を協同組合及びコミュニティーに還元し、コミュニティーの向上を図っている。世界各地の協同組合とコーヒー、紅茶、砂糖、ココアなどの製品に関して取引を行なっている。写真のとおり、倉庫にはコーヒーの豆など出荷を待つ商品が山積みされている。
この会社を訪問した理由は、児童労働との関連を明らかにすることがある。チョコレートの生産に児童労働が関わることが公になって以来、フェアトレードチョコレートは「児童労働の関わらないチョコレート」として取り上げられる機会が増えた。現在アメリカのチョコレート市場の約1%をフェアトレードチョコレートが占める。

NPOフェローシップの様子の写真2

広報担当のロドニー・ノース(Rodny North)さん(写真)と、チョコレート製品マネージャーのダリー・グードリッチ(Dary Goodrich)さんに話を聞いた。
フェアトレード製品は「グルメ市場」の拡大を受けその指示を広げてきた。コーヒーとチョコレートのいずれにおいても、消費者の高級製品への志向をとらえ、オーガニック製品などの高品質の商品を提供するだけでなく、そこに生産者への還元という付加価値を付けた。
1986年からニカラグア産コーヒー豆をとり扱い、その後エル・サルバドル産など品種を増やした。1996年には、米国のコーヒー会社として初めて、小規模協同組合へ収穫前の融資を提供した。

イコール・エクスチェンジは、バナナチップ、はちみつ、ツナなどの製品を開発し、失敗を重ねながら取り扱う製品を選定してきた。2002年から取り扱っているカカオ関連製品は、売り上げが1千万ドルを超えるヒット商品となった。コーヒーの大口顧客であった教会関係者から、「子どもたちが飲めるものも作って欲しい」という声があり、フェアトレードの認証を受けたカカオ豆と砂糖を使ったココアとチョコレートバーを販売した。この原材料のカカオは西アフリカではなく、ドミニカ共和国とペルーが原産地である。また、砂糖はパラグアイとコスタリカ産のものを扱っている。ドミニカ共和国のCONOKADOと呼ばれる15,000人の生産者を持つ協同組合と提携している。これらの原材料はすべてフェアトレード認証団体であるトランスフェアーの認証を受けている。
トランスフェアーUSA(Transfair USA)のWebサイトによると、認証を受けたフェアトレード製品の条件は、正当な価格が生産者に支払われること、強制的児童労働の禁止を含めた結社の自由があること、安全な労働環境が保障されていること、直接的貿易(仲介業者の削減)、民主的で透明性のある組織体制、地域開発、持続可能な環境保護などである。

このようにフェアトレード商品の前提は「児童労働がない」ということである。トランスフェアーUSAWebサイトのカカオプログラムに関するページによると、児童労働は厳しく禁止されており、視察が行なわれているという記述があった。イコール・エクスチェンジが児童労働の有無についてモニタリングをしているわけではないので、この会社が生産プロセスにおける子どもの関与の有無について直接証明するための情報やメカニズムがあるわけではない。
NPOフェローシップの様子の写真3つまり、フェアトレードラベル認証機関が、児童労働がないことを認証システムを通じて担保しているという仕組みになる。フェアトレードが協働組合との取引の上に成り立っており、賃金保障により児童労働の要因となる貧困、経済的困窮の改善は期待できる。
この協同組合はときに地域の教育システム、衛生管理など、本来政府が行なうべきサービスが不十分である場合、それを補完する機能を果たしており、その局面からも子どもの福祉に役立つことが想定される。
さて、取り扱っているカカオ関連の商品は写真のとおり。ちなみにこのココアはオフィスの同僚には人気が高かった。右側の小さなチョコレートは、ハロウィーン用である。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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