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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2006年10月)
フェロー:中村 絵乃

報告書リスト

中村 絵乃
日米センターNPOフェローシップ(第6期)
月次研修報告書(2006年10月分)

フェロー:中村絵乃(特定非営利活動法人 開発教育協会)
研修テーマ:NPOの組織強化/国内の教育活動
研修先: ESR Metro (New York City)
研修期間: 2006年1月20日〜2007年1月19日


今月はNYの小学校、中学校で授業を行なう機会を得た。また対立解決学会(Association for Conflict Resolution)に参加したので、その2つを報告したい。

1. 授業実践

10月18日は小学校で、24日は中学校で「朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)の核実験」をテーマにした授業を行なう機会を得た。10月9日に北朝鮮の核実験のニュースが流れた時、大きなショックを受けたと同時に、このテーマで対立解決の授業案を作りたい、と考えた。早速スタッフデベロッパーのオードリー・メージャー(AudreyMajor)氏に相談して、授業案を練った。生徒達に考えて欲しいことをブレインストーミングし、「行動の裏にある感情やニーズに気づくこと」をテーマにすることにした。更に多くの子どもたちが北朝鮮のことを知らないと思われたので、アメリカとの違いをデータで理解してもらうことにした。そして、北朝鮮が核実験を行なった背景を考えてもらおうと思った。

10月18日

オードリーと一緒に、ブロンクスの小学校5年生に授業を実施した。子どもたちはちょうど日本の広島のことを学んだところだったようで日本に関心を持っていた。「今日は日本の隣の国の話をします」といって、まずはいくつか質問をした。「戦争で思いつくことは?」「イラク、暴力、武器、銃、怒り」「全ての国は自国を守るために軍隊を持つべきだと思う?」この質問に対しては多くの子どもたちが賛成の手を挙げた。「平和のためには戦争が必要だと思う?」これには少し困った顔をする子どもたちもいたが、何人かは手を挙げた。軍隊を持たない国もあること、日本の憲法9条のことを紹介した。そして北朝鮮の話をした。何人かはテレビのニュースで知っていた。しかしどういう国か、どこにあるのか、はほとんど知らなかった。北朝鮮とアメリカの基礎データを見せて、気づいたことや何が問題かをペアで考えてもらった。多くの子どもたちが、国の面積、人口とともに経済力の違いに気づいた。

子どもたちからは「こんなにお金がないのにどうやって武器をつくったの?」という本質を突く質問が出てきた。「どうしたと思う?」と聞き返すと考え込む生徒達。最後にもう一つ質問をした。「対立があったとき、勝者と敗者が必ずいると思う人」多くの子どもたちは手を挙げた。

「では今のイラク戦争はどっちが勝者?」「アメリカ」

「でもアメリカの兵士もたくさん亡くなっているよ」

「・・・・・。」

またまた考え込む子どもたち。「次回はどうして対立が起こるか、どうしたら両者とも勝者になれるのか、を考えてみましょう。」とオードリーが言って授業が終わった。

10月25日

ブロンクスの中学校の社会科の時間を使って授業を行なった。最初の質問「平和のためには戦争は必要である」には半分以上が賛成の手を挙げた。その理由は「他の国が攻めてきたら攻めかえすしかない」「独裁者を倒すには、戦争が必要」。反対の理由は「一般の人々がたくさん殺される」「戦争ではなくて話し合いで解決するべき」。反対の意見を聞いて、賛成だった子どもたちが「私も半分反対」と立場を変えていく。賛成か反対か、答えが一つでないことに気づいていく。子どもたちがどんな意見であれ自分の意志を表現することに慣れているのが分かる。アメリカと北朝鮮の基礎データを見せて、もっとも大きな違いを考えてもらった。違いについては、政治体制、大統領がいない(北朝鮮)、人口、面積、経済、寿命などが挙がり、核実験の理由については下記のものが挙がった。「アメリカより人口が少ないから、核実験に反対する人が少なかった」「アメリカよりも小さい国だから攻められてくると困ると思ったから」「貧しい国だから力を見せ付けたかった」「他の国から注目されたかった」。

オードリーは、それぞれの行動の背景にどのようなニーズがあるのかを考えるのは対立解決の重要な要素であることを説明し、「これからもこの問題を考え続けましょう」といって締めくくった。

最初は教室の後ろで他の仕事をしていた先生は、生徒達の意見に引かれて最後には教室の一番前で授業を見ていた。そしてうれしそうに生徒達に言った。「君たちの様々な意見交換に先生は驚いた。今後は私の授業のやり方も変える必要があることに気づいた。この問題に関して何かプロジェクトが出来るのでは、と思ったよ」。

「良い機会を与えてくれてありがとう」と私たちはお礼を言われた。

最初は少し難しいかもしれないと躊躇していたが、実践してよかった。時事問題、賛否両論ある問題は授業では取り上げにくいが、生徒達は自分の意見や関心を持ち、話し合う力を持っている。それを引き出す授業ができたようだ。

授業をESRのスタッフミーティングで報告し、ESR Metroのウェブサイトにも掲載されることになった。対立解決の授業は時事問題を使っていくらでも実践できることを体験できたのは貴重だった。

2. 対立解決学会への参加

10月27日はフィラデルフィアで開催された「対立解決学会(Association for Conflict Resolution)」の第6回年次集会に参加した。参加者は約500名、4日間の日程で175の分科会が設定されていた。その内容はミディエイターの上級トレーニングから国際紛争の仲裁、家庭内問題の解決例、職場内のミディエーション、異文化対立、コミュニティ調停の事例など様々。教育は「対立解決」分野の一部に過ぎず、参加者も弁護士や調停・仲裁を仕事としている人々が多かった。27日の午前中に開催された全体会では、コミュニティ調停や家庭内問題仲裁の実践者、研究者などが壇上に上がり、1960年代以降の「対立解決」に関する動きを振り返り、現在の課題を提示した。アメリカにおける「対立解決」やミディエーション活動は親族間やコミュニティ内の身近な問題を自分たちで解決する動きが発端であり、さらに市民権運動の高まりなどがその動きを後押ししたと考えられる。そこには当然のことながら人々の日常生活を反映した問題があり、様々な人々が関わっていた。

しかしながら、1960年代以降40年が経った現在、この学会にはその多様性が全く感じられなかった。参加者の大部分は白人の弁護士や研究者で占められていた。全体会でそれを指摘していた人が会場の共感を得ていた。

学会にはテーマごとに委員会があり、私は教育の委員会に参加させてもらった。全米で「対立解決教育」「ピア・ミディエーションプログラム」を実践・研究する人々と会えたのは大きな収穫であった。やはり、この学会に教育関係の参加者が少ないことは議題に上り、私がESRでインターンをしていると言うと、ESRの事例も是非、学会に提出して欲しい、と言われた。ESRのことはほとんどの人が知っており、そのプログラムも高く評価されていることが分かった。

さらに研究会では、全米共通の「ピア・ミディエーション」の基準を作る作業が進んでいた。その背景には全米で何千もの「ピア・ミディエーション」プログラムが行なわれている現在、その内容、質が必ずしも高くないものもあることが指摘されている。この委員会の目的は情報経験交流や、全米における「対立解決教育」の質の向上で、難しいが重要だと思う。

ESRで研修会の報告を行ない、新しい研究結果を学会へ提出することを提案すると、ディレクターのトム・ロドリック(Tom Roderick)氏や他のスタッフも肯いていた。現場で実践することと、研究活動に従事することを両方行なうのは難しいが、ESRのプログラムを広く広めるためにも、また「対立解決教育」の質の向上のためにも、学会への参加は意義があると思う。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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