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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2007年9月・10月)
フェロー:棚田雄一

報告書リスト

棚田雄一
日米センターNPOフェローシップ(第8期)
月次研修報告書(2007年9月・10月分)

フェロー: 棚田雄一(社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(東京) ) 
研修テーマ: 緊急援助における米国のNGOのオペレーション上のスタンダードや安全管理の実務的理解
研修先: Save the Children USA
研修期間: 2007年9月1日〜2008年2月29日


アメリカのNGOにあって日本のNGOの緊急援助にないものはマニュアルである。マニュアルというとマニュアル人間のようにネガティブな印象があるかもしれないが、さすがアメリカである。すべてマニュアルなのである。しかしこれは非常に有益であるという印象を持った。なぜなら通常、日本のNGOでは(日本では比較的大きな二つのNGOに所属した私の経験では、)緊急援助や復興援助の場所に行くにしても基本的に研修はほとんどない。身内の恥をさらすようだが、私がアフガニスタンに緊急復興支援で送り出されるとき、私は会計のことは何もわからなかった。そして団体から会計のブリーフィングをしてくれと頼んだにもかかわらず、特に何の会計の説明もまたマニュアルもなかった。ただ年度末に銀行の残高の写しを本部事務所に送ってくれというそれだけだった。

何もわからないまま送り出され、ある意味それまで培ってきた社会人としてのコモンセンス(常識)だけで対応していたというのが実態だった。そしてコモンセンスはそれぞれ人によって異なる。この業界で派遣される人のコモンセンスに任せた結果とんでもないことになったケースを少なからず知っている。これは日本のNGOの脆弱性である。即戦力の社会人経験のあるスタッフのコモンセンスにまかせながら、後に派遣された人が最終的に糾弾されたり、非難されるのは非常に不当なことだろう。

今回の研修で感じたのは、アメリカの団体はとてもマニュアルがしっかりしていることである。各職域の担当者は実際その業務を回すだけではなく、マニュアル作りにかかわることがその人の仕事の一部なのである。非常に分厚いマニュアルがあり、正直読むのも大変な量ではあるが、いざ読み始めると確かに内容には無駄がない。さまざまフィールドで直面する問題にどう対応すればいいか、また対応できない場合どのようなチャンネルでそれを解決したらいいかがしっかり書いてあるのである。だからこそマニュアルなのであるが、困ったらマニュアルを見ればいいのだ。マニュアルにはまた指針だけでなく、様々な書類の既成のテンプレートが付いている。こういうのも日本の団体では、少なくとも私の知る限り、あまり見たことがない。だから日本の団体では、もともと人数の少ない現地派遣の日本人が、会計をどういう風にしようかとか、人を採用するにあたってジョブディスクリプションを作らなくてはということで、さらにこのような定型作業レベルの対応で時間をかけなくてはならなくなる。それに比して、アメリカの団体ではすでに経験上から必要な手続きや書式は決まっていることからマニュアルに一切の文書のテンプレートを入れてあるのだ。CD-ROMを一枚持って赴任すればそこにいろんなリソースが入っているのだ。私自身、以前アフガニスタンに行って事務所を立ち上げた際に、スタッフの給与明細票から内規から全部一から作らなければならず、膨大な作業量に途方にくれた。そこで私は同じくカブールに事務所を別々に開いていており、今回研修先となったSave the Children USASCUS)の門をたたきSCUSのスタッフに様々なルールとか書類をもらってほとんどコピーペーストして乗り切った。その時に彼らのシステマチックな組織に触れ、今回フェローシップで是非アメリカのNGOに学びたいと思った。このときの経験から日本のNGOの個人へのよく言えば信頼、悪く言えば、依存によって成り立っている緊急援助に違和感を持っていた。その後私自身がプログラムの責任者になったが、その点で十分な改良をすることは出来なかった。今回の研修では私の中のそういった渇いた部分を潤すような研修になると考えている。

また緊急に限らず事業の標準化をしてまたその品質レベルを上げていこうという意向が私の研修先に見られる。ミニマム・オペレーティング・スタンダードを設定してそれを守るように、また常にそのパフォーマンスを上げるようにしている。まるで企業カルチャーのようであるが、感じたのはNPOのマネジメントにいわゆるプロフェッショナリズムが浸透していることだった。私の多少バイアス(偏向)のかかった見方があるかもしれないが、日本のNGOにはプロフェッショナリズムとは対極のアマチュアリズムとでも言うべき価値観があると思う。この点反論もあるかもしれないが、これは利用するには便利な価値観で、いわくボランティアリズムというか、大変な中なんとかやっています、みたいなところを見せることによって、理解やサポートを得ようとしているところがある。それに比べて、アメリカのNGOは事業の標準化を行なっており、それをさらに引き上げようとしているのだ。パフォーマンスがいくつかの論点で評価され、点数化され、低いランクのオフィスは改善を要求される。これらはおそらく企業であれば普通のことだろうが、日本のNGOの世界ではかなり行なわれにくいアクションだ。そこには独特の甘えという構造もあるのではないかと思われる。日本のNGOはまだアマチュアリズムを標榜して、いわば「大変なところで、頑張っている」というコンセプトで売っているわけだが、アメリカのNGOは事務所も個室やパーティションで区切られて一見ビジネスオフィスのようであり、個々人が「頑張っています」というだけではなく、成果を残さなければ去らなくてはならないシステムである。

ここに良し悪しは別としてかなり違った世界が展開している。マニュアルにしても、派遣された人間の個々の力量や過去の経験にしか依拠しない援助ではおのずと問題が生じてくる。そこを長い経験の中からマニュアルという形で問題を抽出し、処方箋を予め示しておけば、緊急援助時の錯綜した中でより高度な判断が要求されるテーマにエネルギーを割くことが出来るというものである。非常に理にかなった考え方である。マニュアル嫌いの私もマニュアルの重要性を再認識した。今回の研修で感じるのはマニュアルの整備やそれに基づいた各種トレーニングを行なうことによって、アメリカのNGOは緊急援助のシステムを作ろうとしている点である。それは経験者というヒーローによって担われる個人のプレーヤーの世界ではなく、緊急支援を多くの人々に迅速にそしてなるべく同質のサービスを組織として提供しようとする仕組み作りである。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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