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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2007年12月・2008年1月)
フェロー:藤原 航

報告書リスト

藤原 航
日米センターNPOフェローシップ(第8期)
月次研修報告書(2007年12月・2008年1月分)

フェロー: 藤原 航(市民社会研究所 研究員) 
研修テーマ: 自立的なNPOセクターの環境整備に関して
研修先: Common Ground Community
研修期間: 2007年10月1日〜2008年6月30日


HOPE 2008

1月28日午後11時50分から翌29日午前4時まで、HOPE2008が開催され、私もボランティアとして参加した。
HOPE2008とは、Homeless Outreach Population Estimate (ホームレス人口調査)の略である。ニューヨーク市ホームレス局が年一回実施する大調査で、冬期の夜間にニューヨーク市全域にいる路上生活者の人口を数的・個体別に把握しようとするものである。今年で6回目、全市調査になってからは4回目を迎える。
調査目的は、冬期の夜間路上生活者*の数を人海戦術により数え上げる事である。調査時間帯の性格上もあり、個別の聞き取り調査は、相手が同意した場合のみに行なうこととしている。

調査時期と時間帯

この調査時期・時間帯の選定理由は、ニューヨーク市内にいる長期路上生活者の正確な人数を計るため、路上生活者の数が少なくなる冬期のこの時間帯(夜間の平均気温が氷点下)が選ばれた。つまり、冬期の夜間路上生活者 ≒ 長期路上生活者と考えられる。また、冬期の深夜に出歩く人自体が少ないため、調査員にとっては、ホームレスとの峻別が比較的容易になる時間でもある。公的なホームレス宿泊施設では毎日その利用者が数えられているので、それらの施設を利用せずに路上、地下鉄構内、地下鉄車輌内で寝泊まりしている人はそのほとんどが長期路上生活者である可能性が高い。
また、24時間地下鉄が運行しているニューヨーク市において、午後11時50分から午前4時までは地下鉄が深夜ダイヤに変わる時間帯と言うこともあり、さらにホームレスの確認を容易にする。上記の理由により、この時期・時間帯が選定されている。

ニューヨーク市主催、ボランティアによる調査

調査員は全てボランティアによって行なわれる。基本的に自分の住まう区(既出ではあるが、ニューヨーク市には5つの区がある。) 内での調査に従事する。今回初参加の私は、私の受入団体が担当するエリアであるミッドタウンの調査に参加した。

調査は、ボランティアの安全を期すため、最低2人から4人のチームで行い、過去に調査経験のあるボランティアがリーダーとなり指揮を執る。
受入団体の担当エリアは、南北が、セントラルパーク南端(59丁目)から42丁目まで、東西が、マンハッタンを挟むイーストリバーとハドソンリバーの間での地上、及び駅を含む地下である。
ミッドタウン調査ボランティアの集合場所となった、ミッドタウンに位置する私の受入団体の施設の一つ『タイムズ・スクエア』の15階にあるパーティルーム「トップ・オブ・タイムズ」には、22のチームに編成された、ボランティアやニューヨーク市警ミッドタウン署の警察官20人ほどを含む総勢80人以上のミッドタウン地区調査関係者が集まり、午後10時から約1時間軽食を取りながら、調査地区の調査責任者や、警察からの説明を受け、ボランティアの安全と路上生活者への敬意、健康状態の悪い路上生活者への対応などの研修を受け、その後、チーム毎に巡回ルートや役割分担を話し合い、個別に担当地区に出向いた。

私が担当したのは、その中のセントラルパークの南端から55丁目、パークアベニューと6番街と言う、いわゆる世界の有名ブランド店、高級ホテル、レストランがひしめく「高級エリア」だった。
メンバーは受入団体の同僚、ソーシャルワーカーを目指す大学生と私の3人だった。
基本的には「寝ているホームレスは起こさない」、「聞き取り調査の無理強いはしない」と言う姿勢で行なったところ、10人の路上生活者を確認した。
調査地域の特性上、昼間ほどではないものの、南北に通る大通りは常に車の往来があり、東西の通りも、夜間の改装作業、飲食店等のゴミ処理などにより、人・作業車の出入も多く、高級店・ホテルに関しては24時間ドアマンや警備員が監視していた。
そのようなエリアの中でも、教会や飲食店が少ない通りの暗がりに段ボールなどで寝床を作っていた。中には行き倒れのように路上に突っ伏しているホームレスもいた。
確認した10人の内、7人は就寝中であり、残りの3人の内、2人に関してはインタビューを拒否された。
幸運にも1人だけインタビューに詳しく応えてくれた。年齢は50歳台、1985年から路上生活を開始し、公的な宿泊機関は利用していない。その理由を簡潔に表現する言葉として、彼はC・C・Cと説明してくれた。C・C・Cとは“Criminal(暴力)”、“Crack(薬物)”、“Crazy(錯乱)”の頭文字を取ったもので、ホームレス問題の専門家のチームリーダーも知らない俗表現であった。誰でも利用できるシェルターやドロップインと呼ばれる施設は、就寝中に他の利用者から暴行を受けたり、周囲で薬物・アルコールを摂取していたり、薬物やその他の理由により錯乱状態の人がいたりと、路上より危険だと説明してくれた。それらの施設の実態を確認したことはないが、多くの路上生活者が公的なそれらの施設を嫌がっている事は知っていたので、実際に話を聞くと想像以上に劣悪な環境なのだと感じた。

高精度の調査

今回私の調査では出会えなかったが、この調査には“Decoy(おとり)”が含まれている。そして、このおとりもボランティアによって行なわれている。(実際、調査のボランティア募集と同時におとりの募集も行なわれている) おとりの必要性は、この調査の統計上の信頼性を確認するための品質管理手法として導入されている。
他のグループで「おとり」に出会った参加者の話を聞くと、そのおとりボランティアはわざわざ、ワシントンD.Cからおとりになるために参加した弁護士だったと言うことだ。
統計の手法としては当然の考えではあるが、この種の調査で品質管理・統計手法が用いられていることに驚き、また同時に、この調査がそれだけ政策上重要な数字になっていると言うことを実感した。
おとりを含め、ボランティアは大学生や地域コミュニティ参加者など様々な人から構成されており、この調査への参加動機は様々だったが、一つの社会問題解決に向け、市民、民間企業・団体、大学等が可能な責任範囲内において、明確な役割分担の下、目に見える形で協力し、またその結果も目に見える形 = 数字・精度でアウトプットされている事例であったので、ホームレスの実態に触れることができる貴重な経験だった。
主催者であり、この調査を計画したニューヨーク市ホームレス局は、この数字を基に次の政策を打ち出し、また、私の受入団体であるコモン・グランドは、活動の成果を確認するとともに、事業の見直し・改善をこの調査の結果に基づいて行なうことになる。

*ニューヨークにおけるホームレス人口 ≒「公的なホームレス宿泊施設利用者」+ 「冬期路上生活者」

追記:1月31日現在、ミッドタウンエリア調査結果は、280人の個人を路上で確認し、内70人が非ホームレス(47人が非ホームレス、23人がおとり)、210人がホームレスであった。(内70人が電車内、残り140人が路上生活者)

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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