本文へ 日米センター(CGP)は日本とアメリカにて、助成、フェローシップ、ボランティア、人物交流、情報発信を行なっています。
国際交流基金 日米センター
CGP NY | 国際交流基金 | English | サイトマップ
トップページ
日米センターとは
公開イベント
団体で助成金をお探しの方へ
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ
安倍フェローシップ
日米パートナーシップ・プログラム
Japan Outreach Initiative
NPO フェローシップ
CGPの人物交流事業
情報室(刊行物、寄稿など)
アクセス
お問合せ
FAQ
更新履歴
日米センター公募助成プログラム
CULCON(カルコン) 日米文化教育交流会
メール配信サービス
コラムス
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ

日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2008年2月・3月)
フェロー:藤原 航

報告書リスト

藤原 航
日米センターNPOフェローシップ(第8期)
月次研修報告書(2008年2月・3月)

フェロー: 藤原 航(市民社会研究所 研究員) 
研修テーマ: 自立的なNPOセクターの環境整備に関して
研修先: Common Ground Community
研修期間: 2007年10月1日〜2008年6月30日


Mission Creeping 〜選択と集中 〜

企業との協働事業

コモン・グランド(以下CG)はその活動が様々な媒体で紹介され、日本においてその活動を知る人も少なくない。実際、ニューヨークに滞在しているこの数カ月だけでも、はるばる日本から来た施設見学者数人と出会う機会があった。CGの活動の中で目を引く事業として、企業との協働(コラボレーション)によるサポーティブ・ハウス(自立生活が困難な人々を対象とした自立生活支援の為のケアサービスを含めた、低価格で供給される賃貸住宅)入居者の就労支援事業があった。

背景

CG最初の、全米最大級のサポーティブ・ハウスである「タイムズ・スクエア」は、その名の通りマンハッタンの「タイムズ・スクエア」と呼ばれる、いわゆる「ブロードウェイ」の一角にある。現在はミュージカルに、観光に世界中から多くの観光客が昼夜問わず押し寄せているこの街も、1990年頃までは荒廃し、ドラッグ、売春、レイプ、強盗、殺人・・・とあらゆる犯罪が頻発し、通常の商店は、売上はおろか、店を開けることすら難しいほどだったと聞く。
90年に入り、CGは荒廃していたホテル「タイムズ・スクエア」を買い取り、リノベーション(改装)し、周囲に住み着くホームレス向けのサポーティブ・ハウスを開き、大通りに面した一階部分に商業テナントを入れる事業を開始した。世界的なブランド、Ben & Jerry's(アイスクリームパーラー)、McDonald's(ハンバーガーショップ)、Starbucks(カフェ)がCGのミッションに賛同して入居することにより、これらの一般認知度の高い企業の進出の影響もあり、かつては犯罪の温床であった荒廃したホテルは、徐々にその周囲を「安全な商業地」に変えていった。(当時ニューヨーク市によって行なわれていた警察官の重点的配置等の政策転換による効果も大きい。) 私見ではあるが、現在、昼間は当然ながら、深夜でも、100%安全とは言えないものの、危険を感じることは多くない。

企業との協働

テナントの中でも特にBen & Jerry'sは従来から社会貢献事業に熱心で、「タイムズ・スクエア」内を含め、近隣にある3店舗で「タイムズ・スクエア」入居者を従業員として雇い、CGはフランチャイズ権を獲得した。仕事のないホームレスだった入居者の率先した雇用、店舗からの売り上げの寄付と、企業の社会貢献の最たる事例と見られていたこの事業は、開始からおよそ10年で終了した。この10年の協働事業でCG、Ben & Jerry'sともに学ぶ事が多かった。

ミッションとコア・コンピタンス

入居者が就労機会に恵まれる事はCG本来のミッション“End Homelessness(ホームレスを終わらせる)”と違わない。むしろ望ましい事であり、必要な要素である。さらに、店舗の経営が上手くいけば重要な収入源となる。また、従来から社会貢献活動に重きを置いていたBen & Jerry'sにとっても、ブランド力を高める装置になった。また、比較的シンプルで、マニュアル化された仕事であるため、経営が容易とも考えられていた。しかし、実際経営を初めてみると、数々の困難が訪れてきた。
第一に入居者兼従業員として、「タイムズ・スクエア」の入居者のみならず、長期的にホームレス生活を送る人々は、様々な精神的及び身体的問題を抱え、就労自体が困難、または就労経験自体ほとんどない人も多く、「働くこと」、「働き方そのもの」が分からない為、トレーニング自体が困難を極めた。またそれらの要因によりスケジュールが守れない、マニュアル・職場のルールを守れない等の理由と共に、離職率も高く、トレーニングと従業員の定着のリズムが直ぐに崩れてしまった。この点に関しては、当初は100%「タイムズ・スクエア」入居者から従業員を選ぶ予定だったが、開店直後からその割合を一気に50%まで下げるなど、対策を練り、最終的には100%非入居者アルバイトに置き変わっていった。
そして、「タイムズ・スクエア」の入居者のそのほとんどの年齢層が高齢だった事も困難を形成する要素になった。これは、職業柄重いアイスクリームのコンテナ、冷蔵庫の出入りが体に障り、また、職業差別ではないが、年齢層が高い人々にとっては、自尊心を高める職場・職種ではなかった。(一般論として壮年層の人が友人に、ユニフォームを着てアイスを売っていると笑顔では話しづらい。)
第二に、CGにとって店員は同時に入居者であり、何らかの事情で店員を解雇すると、それは無収入を宣告する事となり、CG自ら家賃収入の元を絶ってしまうと言う、サポーティブ・ハウス経営、飲食店経営共に、純粋な経営判断を下せないジレンマに陥ってしまった。

つまり、ミッションという同一フィールド上に存在しているベクトルの違う2つの事業を行なったのである。CGの持つ「強み」、「個性」と呼ぶべき核となる経営資源は、ホームレスケアのサービス、住宅開発である。飲食店経営には長じていない。これは「ミッション・クリーピング」と呼ばれる現象で、日本語で言うならミッションの膨張・増長である。結果として、CGでは事業の10年に及ぶ試行錯誤と、核となる経営資源、コア・コンピタンスとそのミッションの関係を探りながら、最終的に飲食店の自主運営を切り捨て、追加のコスト投下が要らないテナント収入のみのビルオーナーとテナントと言うシンプルな関係に切り替えた。

試行錯誤の成果物

この10年の試行錯誤がもたらしたものは、CG、Ben & Jerry's共に大きく、CGにとっては、コア・コンピタンスとミッション、経営資源の集中投下を行なうきっかけとなり、Ben & Jerry'sにとっては、自社の社会貢献における優位なポジションを知ることが出来、現在は支援対象を若年層に切り替え、同様の社会貢献事業を継続している。

事業の選択・資源の集中

実際問題、CGは入居者に対する直接の就労事業を中止したものの、入居者にとり、就労は家賃の支払いは元より、自立した生活を今後送っていく為に必要不可欠である。就労支援や自立に向けたケアサービスは、一部のサポーティブ・ハウスではCGが自ら行なっているが、多くはその専門であるNPO団体のCenter for Urban Community Services (CUCS)、若年層向けのプログラムに関してはGood Shepherd Dervicesと言う別のNPO団体にサービス供給を委ねている。CGは別のホームレス支援のNPOと協働することにより、数あるホームレス支援策の中から住宅供給部分を選択し、その経営資源を集中投下している。
歴史の長いホームレス支援のNPOセクターは、多様なNPO団体が存在しており、その層も厚いことから、このような専門特化の組み合わせによる高品質のサービス提供が可能になっていると考えられる。

セクター間での資源集中

上記のような事業の選択・資源の集中、同業種異分野による連携は、個々の団体の枠を超え、地理的に近接する同業種による連携へと広がりを見せている。
具体的な取り組みとしては「Manhattan Consortium(マンハッタンコンソーシアム)」と呼ばれる同業種のNPOによる連携共同体がある。これは、マンハッタンで活動するホームレス支援のNPOのうちの6団体が、より効率的で迅速なホームレスへの住宅提供を目指し、データ・ベースの統合を始めとした、一連のホームレス受入手続を一元化する試みである。2007年秋より開始したばかりの試みなので、試行錯誤の段階であるが、考え方自体は非常に効率的で、将来的により良い結果を出せる仕組みになると考えられる。また、見方を変えると、この構想の下支え、予算の元になっているニューヨーク市の従来のマンハッタンを分割していた複数の委託契約を一元化したという意味で、既に効果を発揮しているとも考えられる。
上記のように、試行錯誤を繰り返しながら、徐々にニューヨークのホームレス関連のNPO活動や政策は運営効率と適切なターゲットを策定し続けている。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

Top

TOKYO OFFICE
国際交流基金(ジャパンファウンデーション) 日米センター
160-0004 東京都新宿区四谷4-16-3
Tel (03)5369-6072 Fax (03)5369-6042
NEWYORK OFFICE
The Japan Foundation Center for Global Partnership, N.Y.
1700 Broadway, 15F, New York, NY 10019, U.S.A
Tel (212)489-1255 Fax (212)489-1344