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日米センターNPOフェローシップ 月次報告(2008年4月・5月)
フェロー:藤原 航

報告書リスト

藤原 航
日米センターNPOフェローシップ(第8期)
月次研修報告書(2008年4月・5月)

フェロー: 藤原 航(市民社会研究所 研究員) 
研修テーマ: 自立的なNPOセクターの環境整備に関して
研修先: Common Ground Community
研修期間: 2007年10月1日〜2008年6月30日


政策の中のNPO 〜行政とNPOの関係〜

シェルター訪問

2月にシェルターと呼ばれる、ホームレスの一時宿泊施設を3件訪問した。うち1件が私営、残り2件が公営施設であった。ニューヨークにあるおよそ260ヵ所あるシェルターは、5カ所を除き、すべて民間により運営されている。(いずれも市との受託契約を結んでいる。)

訪問の目的は、スキャター・サイト・プログラム(Scatter Site Program)という、ニューヨーク市内にある一般住宅の空き室を、労働の意欲が高いアルコール依存症の者やシェルターと刑務所生活を継続的に繰り返す者など、特定の特徴を持つホームレス向けに貸し出す市からの受託プログラムの入居候補者探しである。私はケース・マネージャー(ソーシャルワーカー)に付き添い、オブザーバーという立場で訪問した。

シェルター施設内部

私が訪れた何れのシェルターも大規模な施設で、使われなくなった学校や軍隊の屋内訓練場(Armory)が利用されており、建物内は、その広さの為か、少し寒々とするものの、非常に衛生的であった。どの施設も、私が訪れた昼間から夕方と言う時間帯と言うこともあり、夕食時に訪れたシェルターでは、食事を待ちかねた若者の長い列が地下の食堂へと続き、陽気な雰囲気だった。

公営のシェルターの多くは、夕方(17時頃)に利用受付が始まり、食事が出され、翌朝8時頃まで利用が出来る施設が多い。そのような、利用に関し時間制約のある施設においても、重度の心身障害者は例外的に日中も施設(=ベッド)を利用することができる。日中は、職のある者は仕事に出かけ、精神面や就労面に問題を抱える者たちはリハビリ施設や就労訓練、一時的に職を失った者達は就職面接などを受けに出かける。

シェルターは数百人規模の施設が多く、施設入り口は空港の手荷物検査と同じX線検査があり、部屋は、施設毎にその建物の形状によりまちまちだが、各部屋のドアにガードマンが立ち、およそ20人から40人利用の部屋で、各人用にベッドと荷物用ロッカーが用意されている。ガードマン付きの病院の大部屋をさらに大規模にしたようである。(ただし、ベッドの高さはそれほど高くない)

1月に行なったマンハッタンにおける夜間路上ホームレス調査時にインタビューをした男性の話や、インターネット、書物に書かれているような劣悪な環境という印象はなかった。(但し、今回は昼間訪問であったので、夜間の実態は分からない。)

政策メッセンジャーとしてのNPO

入居候補者探しは、スキャター・サイト・プログラムの全般的な説明と共に、事前にニューヨークホームレス局(行政当局)のシェルター利用者データベースで絞った候補者各人のプログラム適応性について、各々の施設にいるケース・マネージャーなどとのディスカッションを通して行なわれた。基本的にシェルターは一時的な利用施設であるため、そこに必ず事前に絞った候補者がいるとは限らず、何人かは「また昨日(刑務所に)戻った」や、「この数日姿を見ていない」と言われることもあった。

訪問時は幸い、何人かに直接インタビューをすることができた。ある者は初めて聞くそのプログラムに目を輝かせ、ある者は期待に胸を膨らませるものの、条件の照合が進むに連れ、自分が仮釈放期間内と言う理由により、プログラム対象外である事を知り、激しく落ち込む者もいた。

民間運営のシェルターのケース・マネージャーや施設関係者はこのスキャター・サイト・プログラムの存在を知らず、コモン・グラウンドのケース・マネージャーの説明に非常に熱心に耳を傾け、こちらの絞った候補者以外にも他の候補者を提案して来てくれた。一方、興味深い事に、公営のシェルターでは、プログラム説明に関して反応がまちまちであった。直接利用者に接するケース・マネージャーや医師は民間施設と同様の反応であったが、施設管理者に関しては、そうではなかった。後から分かったことであるが、ニューヨークホームレス局の政策により、シェルター利用者の自立促進に高い成果を残した民間運営のシェルターは、次年度の予算が増額され、反対に、成果が乏しいと、次年度からの予算が減額されるインセンティブ・プログラムを委託契約に導入されており、このことが民間シェルター職員の高い関心につながり、このインセンティブ・プログラムの影響がない公営シェルターは、反応にばらつきがあると言う一つの理由である事が分かった。

また、私は行く前から不思議に思っていたのだが、行政プログラムを、民間であるNPOが行政施設に対して説明する事の不自然さを感じていた。つまり、ニューヨークホームレス局内の政策の存在を、民間を通して、同じニューヨークホームレス局内のシェルター運営担当課にも伝えると言うことである。この点は、同じ局内でも、専門性の違いによる連携が取れていない縦割りの弊害の著しい例であったと思える。

このように、コモン・グラウンドはこの受託事業により、その目的 、すなわち「入居者を探す事」の中で、同業者への政策メッセンジャーとしての機能を持つと共に、偶然にも、同局他課の関係をも繋ぐ役割を担っているという現状を垣間見ることができた。

公共経営の横糸を担うNPOの役割

ニューヨークにおけるホームレス政策は、1993年にニューヨーク市にホームレス局が設置されるまでは、連邦の生活保護給付などの低所得者政策、低廉な住宅開発などの住宅政策を基礎に、コモン・グラウンドのみならず、各々のNPOが、政策すなわち政府予算を組み合わせ、ホームレス解決策を作り上げていた。

コモン・グラウンドの各サポーティブ・ハウジング(低価格のメンタルケア等サービス付き住宅)も同様で、全米にあるサポーティブ・ハウスのうち、単一の予算で出来上がっているものはほとんどない。

つまり、連邦政府や州、市からの低所得者向けの予算、HIV患者向けの予算、精神障害者向けの予算などを組み合わせて、一つの建物が構成されている。当然のことながら、外から見てもその区分は分からないが、例えるなら一室毎に入居できる資格が違っている様な、複雑な予算構成になっている。

ホームレス局内の違う課に対しての情報供給の役割をコモン・グラウンドが担っている上述の事例に見られるように、歴史的に見て、ニューヨークのホームレス問題を扱うNPOは、単一目的毎の行政機構に対して、それらを横で結び、つなげる役割を負ってきた。言い換えれば、公共経営の縦糸を行政機関が担い、横糸をNPOが担っているとも言える。

これは、ホームレス問題などの複雑な要因から生じる新たな社会問題が、旧来の各行政機構の間と間の狭間に生じており、各々の機構では正確な対応がとれない部分について、NPOが統一的な目的解決に取り組むことにより、補完しているようにも見える。

ニューヨーク市のホームレス専門部署設立によるNPO活動の後押し

1979年に始まった、ニューヨーク州憲法に掲げられた生活困窮者に関する一文の解釈を巡るニューヨーク州・市を相手としたホームレスによる数件の集団訴訟により、ホームレス専門部署、通称DHS(正式名称:Department of Homeless Service)がニューヨーク市役所に設置されることになった。これにより、ニューヨークではホームレス問題は、従来は低所得者政策や住宅政策の狭間にあった問題から、独立した社会問題・政策課題へと転換した。しかし、この事によりそれぞれのNPOが行なうホームレスに対するサービスが大きく変わったことはなく、むしろ、従来のNPOの活動を後押しするような政策立案やその優先順位、ホームレスの生活環境の制度化、大規模調査、市民向けPRなど、行政にしかできないサービスを提供している。

これにより、ニューヨーク全州・全市を挙げたホームレス問題解決の取り組みが始まり、ホームレス問題の公益化と政策化、大規模な官・民の政策内における役割分担による公共コストの削減の実現に向け、絶え間ないイノベーションが生み出される事となった。

 

※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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