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NPOフェローはいま
「草の根NPOへの温かいまなざし~ベッツィ氏に学んだリーダーシップの源泉~」

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「草の根NPOへの温かいまなざし〜ベッツィ氏に学んだリーダーシップの源泉〜」

(特活)長井まちづくりNPOセンター
事務局長 青木孝弘
パイロット第2期(1999年度)NPOフェロー

私は2000年1月から7月までの半年間、ワシントンDCの中間支援NPOであるWashington Council of Agencies (以下WCA)(*1)で草の根NPO支援、ネットワーク構築、地域力向上をテーマに研修を行ないました。フェローシップ期間の毎週金曜日の午後、スーパーバイザーであるベッツィ・ジョンソン事務局長との談話は、NPO支援の考え方から日米の教育論、社会比較までに及び、私の人生にとってかけがえのない学びになりました。彼女の信条は、「1つの大規模NPOより、小さくとも100の草の根NPOが伸びる社会に」で、この言葉が帰国後の活動の糧になっています。

NPOの運営強化のために

帰国した私が最初に取り組んだのは、NPOの運営支援でした。WCAでは、ユナイテッド・ウェイ事件(NPO役員による一大金銭スキャンダル)で失墜したNPOの社会的信頼の回復を目指し、1995年からワシントン・ポスト社と協働で「ワシントン・ポストNPOマネジメント賞」(*2)を実施しています。私は1999-2000年の第二次選考から参加し、審査委員とともに現地ヒアリング調査や、審査委員会での評価に立会う機会を得ました。ちょうど日本のNPOセクターにおいても、マネジメントとアカウンタビリティについての意識が高まりつつあったときで、フェローシップ後、私は外務省委託の専門調査員となり、東海地域の国際協力系NPOネットワークである名古屋NGOセンターでマネジメント強化に従事しました。

設立から5年目を迎えていた名古屋NGOセンターは、NPO会員35団体と個人会員150名からなる1,500万円規模の団体で、多忙な通常業務に追われ、理事もスタッフも自分たちの立ち位置を見失いつつありました。そこで私は、フェローシップで学んだ戦略的計画策定(Strategic Planning)を、名古屋NGOセンター流にアレンジして、約半年かけて本格的な事業と組織の洗い出しに着手しました。この取組みは、(1)外部専門家とNPOの協働、(2)理事、スタッフ、会員ボランティアの参画、(3)評価プロセスを通じた人材養成という点で特徴的です。その成果は『名古屋NGOセンター発展プラン2001〜03』として結実し、団体の行動指標となるとともに、2002年日本NPO学会で「自己革新のNPOマネジメント」として報告し、運営に悩む多くのNPO実務者と経験を共有しました。しかし、学会で少し残念だったのが、参加していた研究者の関心はワシントン・ポスト賞や戦略的計画策定の評価基準や評価方法に集中し、本来の趣旨である学びを通じた能力形成(Capacity Building)の点は、あまり顧みられなかったことでした。

知多半島とワシントンDC、草の根交流を通じた学び

招へい事業で来日したベッツィ・ジョンソン氏との写真
招へい事業で来日したベッツィ・ジョンソン氏と(名古屋市VNS事務所にて
その後2001年4月、名古屋を拠点にしたNPOとまちづくりの中間支援ボランタリーネイバーズ(VNS)の設立に加わり、事務局次長として主にNPOの運営支援や協働のまちづくり事業の評価を担当しました。このとき名古屋郊外人口55万人の知多半島では、たすけあい活動を母体とした高齢者福祉NPOが活発で、介護保険導入を契機にして急速に事業化が進み、収入規模が1億円規模のものが10団体近く存在し、緩やかなネットワークを形成していました。VNSではその動きを後押ししていましたが、それら多くの女性リーダー達が、たすけあいの理念やこころの部分と、介護保険ビジネスとの両立やバランスに苦慮し、進むべき方向性を模索していました。そんな折の2002年2月、国際交流基金日米センター(CGP)の招へいプログラムとして、WCA事務局長のベッツィ・ジョンソン氏を知多に迎えることができました。このときのことをベッツィ氏は、「知多のネットワークとの出会いは、日本で最も印象的だったことのひとつ」と語っています。WCAもまた、ワシントンDC郊外のメリーランド州郡部において、福祉サービスNPOのネットワーク化(モンゴメリNPOアライアンス)に対して惜しみない支援をしてきたので、知多のリーダーとベッツィ氏の双方が、互いに問題意識を共有し共感するところが大きかったと思います。

それから4カ月後の2002年6月、今度は知多の福祉NPOリーダーら9名が、ベッツィ氏のもとへとスタディツアーを実現しました。幸運だったのは、VNSの三島知斗世事務局長が、当時NPOフェローとしてニューヨークに滞在していたために、米国でのアテンドをお願いできたことです。私は知多のリーダーに対し、日本での事前研修を実施するとともに、ワシントンDCでの訪問先についてベッツィ氏と電話やメールにて相談しました。ちょうど2年前のフェロー期間中、彼女が多忙なスケジュールの合間を縫って、しばしば私を同行してくれた数々のすばらしいNPOのことが昨日のことのように思い出され、訪問先が確定しました。ベッツィ氏のコーディネートのもとでワシントンDCの7団体と、ニューヨークの4団体の計11団体を、知多のメンバーは訪問交流し、帰国後『福祉NPOリーダーが見たアメリカ』(発行VNS、地域福祉サポートちた、2002年11月)としてレポートを発行しました。帰国後の彼女たちが、持ち前のリーダーシップで、それぞれ持ち帰った「財産」をひとつひとつ実践に結びつけていったことは言うまでもありません。

知多の福祉NPOリーダーによるワシントンDC研修の写真
知多の福祉NPOリーダーによるワシントンDC研修

山形での実践 〜草の根の声を政策に〜

一方の私は2003年に、家業継承のために急遽、山形県長井市に帰郷せざるを得なくなります。13年ぶりで戻った故郷では、同世代の若者が少子高齢化と中心市街地の空洞化に苦闘していました。私もその輪に加わり、ベッツィ氏がいつも強調していた「小さくても自ら社会を変えていく第一歩」を踏み出しました。現在、私が事務局長を務める長井まちづくりNPOセンター(あやっか)は設立4年目を迎え、まちづくり事業とNPO活動を両輪とした地域再生に励んでいます。一例をあげれば、長井市内には江戸時代に最上川舟運で繁栄した商人の蔵や町屋など歴史的建築が今なお多く残っていますが、それらを女性を主体としたコミュニティカフェやチャレンジショップとして再生させたり、登録有形文化財化による観光交流の促進を主導しています。と同時に、それら資産を活用した自発的なNPO活動を次々に生み育てるための仕組みづくりを働きかけ、2007年3月に市民と行政が共同で出資する9,000万円のまちづくり基金を人口3万人の町に創出することができました。

また2005年には、大阪大学NPO法人財務データベース作成委員会(山内直人委員長)の全国プロジェクトに参加し、山形県のNPO法人の実態分析を行ない、その結果を2006年日本NPO学会でパネル報告しました。山形県内においても、県NPO推進委員会やNPO資金制度検討会といった公共政策審議会の場でこの結果をもとに政策提言を行ない、NPOを対象とした研修会ではアカウンタビリティ強化のために活用しています。私がこのプロジェクトの重要性を認識し、地方にいながら参画することになったのも、フェローシップで見聞したNPOの調査提言活動が大きく影響しました。

私はベッツィ氏の勧めで、帰国前の2000年6月にニューオーリンズで開催された全米NPO 協議会(NCNA)の年次総会に参加しました。全米各州の中間支援NPOの事務局長による議論では、セクターが直面している数々の挑戦のなかで、政策提言とその土台としての調査能力の向上とが最優先課題との意見が優勢を占めました。米国では、毎年NPOが内国歳入庁(IRS)に提出する年次報告書を、ガイドスターというNPOのウェブサイトから入手することができます。それを使って、先進的な州の中間支援NPOでは必要に応じた実態調査を実施し、積極的な政策提言活動を展開していました。例えばミネソタ州の場合、財政規模と構造、雇用や賃金面の分析です。全国的な助成財団であるインディペンデント・セクターが、地方における調査提言能力の向上を積極的に後押ししていたのが、とても印象的でした。

ワシントンDC、名古屋、そして山形・・・。時が過ぎても、舞台が変わっても、見つめる方向が定まったのは、ベッツィ氏との出会いがあってこそでした。2008年7月をもってWCA事務局長ベッツィ・ジョンソン氏は勇退しますが、22年間にわたる彼女のNPOセクターに対する偉大な功績とリーダーシップは、日米の垣根を越えて継承されることでしょう。

*1 WCAは、ワシントンDC都市圏(人口350万人)で活動するNPOのために、様々な研修機会の提供、NPO番組の制作監督、医療・失業保険の提供、連携支援、政策提言活動を実施しています。2000年の時点で、会員NPOは730団体。2004年にWashington Council of AgenciesWCA)からCenter for Nonprofit Advancementに改称しました。

*2 過去の受賞団体の実践事例をまとめた、『Winning Ways(栄光への道)』が2001年にWCAより発行されています。


※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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