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NPOフェローはいま
NPOフェローで学んだネットワーキングを、実践と研究をつなぐ方法論に」

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NPOフェローで学んだネットワーキングを、実践と研究をつなぐ方法論に」

エイズを伝えるネットワーク(TENCAI
代表 鮎川 葉子
                             第7期(2006年度)NPOフェロー


鮎川氏

■ 私の「今」

第7期NPOフェローの鮎川葉子です。現在は、以前から主宰しているエイズを伝えるネットワーク(TENCAI)の事務局長を務めるかたわら、国際医療福祉大学大学院・保健医療学研究科・先進的ケア・ネットワーク開発研究領域という長い名前の学校に籍を置き、文字通り「ケア」と「ネットワーク」の研究をしています。今年の春からは社会福祉の勉強も始め、「学生」「NPOの事務局長」「研究者」という三足のわらじを履いて、老化が進む脳に鞭打ちながら机に向かう毎日を過ごしています。

■ 私のフェロー時代

私は、2007年3月から9月まで、米国マサチューセッツ州のMen's Resource Center for ChangeMRC)という団体で研修を受けました。研修テーマは、「非営利組織のネットワーキング」です。私はTENCAIの他に、HIVと人権情報センター、シーズ=市民活動を支える制度をつくる会という二つのNPOで、多団体が連携するプロジェクトに携わっていましたので、多機関連携のあり方には以前から関心がありました。人々の問題解決に向かおうとする意思が、活動の中でどのように絡み合っているのか、その日米の違いを、コミュニティベースのNPOのネットワーキングの中から知ろうと考えたのです。

フェローが決まり、米国のNPO事情に詳しい友人に、この関心を調べるのに適した団体を相談したところ、その内容ならジェンダー領域の団体の方が良い、と助言されました。ジェンダーならと今度は東京YWCAを尋ねて、マサチューセッツ州で暴力防止活動に取り組んでいる著名な日本人である加藤洋子さんをご紹介いただき、MRCでのフェローが実現したのです。

MRCは、暴力防止をミッションに掲げ、DVなどの暴力加害者が暴力を止められるよう支援するNPOでした。MRCの事業については、帰国後に詳細な報告(1)を書いているので、ここでは詳しく述べません。DVや暴力の問題にはある程度の知識はあったものの、専門に取り組んだことはなかったため、ネットワーキングと同時に、ホスト団体の活動の中の問題意識を詳しく知る必要がありました。米国の暴力の問題の大きさと深刻さに圧倒されながら、紹介された団体やキーパーソンを毎日片っ端から尋ねてインタビューを重ねました。

ディレクターの家に寄宿させていただき、コミュニティに張り巡らされたインフォーマルなネットワークの中に簡単に入り込んで調査できたことは、本当に貴重な体験でした。

ディレクターのパートナーは、暴力や搾取に関するドキュメンタリーフィルムを制作しているNPOのファンドレイザーで、二人の周りには、コミュニティで暴力防止に取り組む多様な人々の人脈が広がっていました。恵まれた環境の中で、人々の有機的な連携がどのようにつむぎだされているかをつぶさに観察できる、有意義で豊かな研修でした。

■ 帰国、そして現状に至るまで

2007年9月に帰国し、片付けや帰国報告などが一段落した12月、私は深刻な「ホームシック」にかかっていました。たった半年で、自分でも意外なほどアメリカ生活に慣れてしまっていたために、日本での生活が逆に息苦しくなってしまったのです。何よりも、アメリカにいる間中、政治や経済、戦争や国際情勢について当たり前のように毎日議論していた家族環境から離れてしまった孤独感が強くありました。

一方でTENCAIは、フェローで持ち帰った知見をもとに、

性教育開発シュミレーションの様子の写真

性教育開発シュミレーションの様子

虐待を受けた子どもたちに対する新しい性教育のプログラムを作るプロジェクトを立ち上げようとしていました。この問題に取り組む先進地で学んだことで、新たなリソースと連携する糸口も見え、さらに、英国のボディショップ財団から、プログラム開発に2年間の助成を受けることができたのです。このプロジェクトは現在計画の最終段階にあり、来年にはまとまった報告ができるでしょう。ともかく、当時はやる気を奮い立たせるのが当面の 問題でした。この状況を打開しようと思い立ったのが、大学院への進学でした。

アメリカでは、社会活動の活発さと大学とは非常に関係が深く、特にマサチューセッツ州の社会運動は、大学と強く結びついていた様子は、非常に触発されるところがありました。日本とアメリカの大学のあり方は違う部分も多いのですが、実践を研究にしていく重要さを意識するようになっていたことと、集中して勉強すればホームシックもまぎれるだろうという気持ちで、学生に戻ることに決めました。

国際医療福祉大学を選んだのは、2008年に新設された「先進的ケア・ネットワーク開発研究」という分野名に惹かれたからです。ここでは、医療・保健・福祉の分野の連携について、ボランティア活動や地域福祉研究なども視野に入れた研究が行なわれています。現在私が大学院で取り組んでいる研究は、虐待や暴力を受けた子どもたちが、暴力のない関係性を学ぶプログラムの開発と、そのための人材育成です。特に、性的な関係の中で暴力を使わないことを学習する手法に関心を持っています。最近、ずいぶん大きなテーマに取り組み始めてしまったものだ、という思いを強くしていますが、この問題に対する見方や考え方も、もしフェローの経験がなかったなら、持ち得なかったものでした。

■ 私にとってフェロー経験とは

フェロー採用時、当時の担当者の方に「面接で、もしこの人を選ばなかったら、この人はこの仕事を辞めてしまうんじゃないかと感じた」と言われたことが、今でも忘れられません。当時の私は、そう言われてしまうような雰囲気をまとっていたのでしょう。あなたに仕事を辞めてほしくないので研修に行ってもらうことにしました、とあたたかく送り出していただけたことが、今、私がこの仕事を続けている自信と原動力の源です。

NPOは社会を変える仕事、というフレーズを聞くことがありますが、社会を変える仕事は、そこで働くものに、並々ならぬ消耗を強要します。この消耗は、個人の能力を磨くだけでは凌ぎ難く、回復のための休息や、気力を支えあう仲間などの環境が不可欠です。

大学院ゼミの様子の写真

大学院ゼミの様子

研修や交流には、そのような回復の場の提供という意味もあります。

人材育成について研究する中で、私は、優秀な人材は、個人の能力や努力を重点的にレベルアップさせる方法よりも、変化や多様性に寛容な文化・環境を広く整える方が効率的なのではないかと考えるようになりました。経済や政治の問題よりも、自由で変化に満ちた環境を評価する文化が育っていないことの方が、日本のNPOの発展の阻害要因には大きいかもしれません。

一言で、米国のNPOといってもいろいろです。米国のNPOが日本のNPOより優れているわけでも、必ずしも資金が潤沢にあるわけでもありません。しかし米国では、多様なNPOが自由に活動し、自由な価値観を主張する中から、ユニークでオリジナルな活動がたくさん生まれています。この状況には、心からうらやましいと思いました。

残念ながら、まだ日本には、NPOの活動を豊かに支える文化が育っているとはいえず、若く、やる気がある人が消耗戦を戦い、休息する前に倒れてしまう現場があちこちにあります。この状況を改善しなければ、NPOセクターの長期的な発展はないでしょう。今まで活動を継続してきて、これから、この状況の改善のために、私がどのような仕事ができるのか、改めて考えさせられています。今はまだはっきりとは見えませんが、フェローで出会った多くの「自分の夢を見ることをあきらめない人々」に倣い、私なりの表現で、引き続き、フェローの成果を社会に還元する方法に取り組んでいければと思っています。


(1)米国の「男性支援センター」事業の社会的意義 大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター年報第5号 2007年‐2008年版



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※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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