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NPOフェローはいま
「コモングランド・コミュニティでの経験を振り返って」

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「コモングランド・コミュニティでの経験を振り返って」

藤原 航
                             第8期(2007年度)NPOフェロー

 

1.小さな”結果”の連続

私は、国際交流基金日米センター(CGP)のNPOフェローとして、2007年10月から翌2008年6月まで、ニューヨークにあるホームレスへの住宅供給や雇用に向けた自立支援サービスを行なう団体、コモングランド・コミュニティ(以下、CGC)で、その業務に携わりながら、社会に結果を残すNPOの組織やそのマネジメント、サービス開発に触れる機会を得ました。
そこで学んだことは、言葉にしてしまうと、とてもシンプルで基本的な事柄になってしまいますが、私にとっては、決して日本では学ぶことが出来なかった、かけがえの無い貴重な経験となりました。

帰国してからは日本の多くの媒体でCGCやその創設者であるロザンヌ・ハガティが取り上げられている物を目にし、日本におけるホームレス問題や社会的企業家への関心の高さを日々感じずにはいられません。

フェローであった10ヶ月間のアメリカ・ニューヨークでの生活、CGCでの仕事で得たものは、NPOなどの手段を通じ、市民が社会をより望ましい方向に再構築し続けようとする姿でありました。それは、それまで私が勝手にイメージしていた“アメリカ的”な、華やかで力強いものではなく、むしろ、その正反対とも言える、市民が小さく成功を重ね確実に前進してゆくものでした。

そして、私が所属していたCGCはまさに、その市民がひとつの大きな社会問題であるホームレス問題を根本から解決すべく集まり、“大きな”ホームレス問題を、着実に“小さく”してゆく組織でした。

CGCが設立される以前から、ホームレス問題を解決するための数多く取組む団体が存在していましたが、現在、CGCがこの分野で非常に高い評価を得ている背景には、確かにその大型ホテルを買収し、ホームレス向け住宅開発を行なったという華々しい点にもあります。しかし、私は、実は、複雑なホームレス問題を分解し、着手できる問題一つ一つを、また、目の前にいる困窮者一人ひとりの抱える問題を丁寧に解決しているからだと思っています。

2. 「もっとオブジェクティブに考えてみなさい」

個人としては、CGCで用いられていた組織内のデータ蓄積の仕組みなどの技術的なこと、それまで知らなかった様々な政策・制度や、それらを活用して運用する方法など、非常に多くの事を学ぶことが出来ました。
“もっとオブジェクティブに考えてみなさい”。
帰国して2年近く経た今でも、CGCで学んだ事は何だったかと振り返ると、いつも脳裏をよぎるのは、私のスーパーバイザーだったキャリーがよく口にしたこの言葉です。

私はCGCで、ホームレス向け住宅サービスと新規事業の立ち上げに関する部門に所属し、その中で主にニューヨーク市ホームレス部局などとの契約実施状況を管理する業務に携わっていました。
特に数週間ごとに作成する入居者へのソーシャルサービス(入居者への社会復帰支援策など)が、契約に従って行なわれているかの進捗を確認するレポート作成では、私の拙い英語力に加え、300人近くの入居者の詳細なデータを処理する複雑な作業が伴い、データ処理に行き詰る度に、上の言葉をキャリーからかけられていました。

“オブジェクティブに”とは、“目的をしっかり念頭において”と言う意味だと、私は理解しています。どのような仕事をする上でも、非常に当たり前で、基本的な事だとも思っています。

CGCは徹底して、組織全体、スタッフ全員がまさに、“オブジェクティブに”発想する組織・集団でした。
そして、その“最終的なオブジェクト”であるミッションは、至極シンプルで、“To End the Homelessness”の一文、つまり、“ホームレス問題を終わらせる事”でした。

300人以上いるスタッフは日々、それぞれの担当業務に従事していますが、いずれもそのミッションと業務の目的との関連性を強く認識しながら働いており、素晴らしい個々のスタッフの能力に加え、このようなミッションに則した組織運営のあり方が、社会に対して結果を出すために必要な仕組みだと痛感しました。
年に数回開かれる、事業の進捗を確認する全員参加のミーティングは、見事に個々の仕事が、目に見えてミッションの達成に関与しているかが理解できる場でした。

恥ずかしながら、それまでの私のNPOでの業務経験では、これほどミッションがシンプルで明確、そして個々の仕事の目的とミッションが連動しているような経験がなかったため、CGCの素晴らしい仕組みの中で働いたことは、貴重な経験だったと思っています。

CGCでの仕事を経験する前は、日々の業務に追われると、その契約内容や、業務をこなす事自体に注力してしまい、結局何のための作業なのか、考えることも忘れて、仕事を“こなして”いるだけだったように思います。また、いざ原点である、そのNPO本来の目的に立ち返ろうと定款や設立趣旨を見直しても、美辞麗句が並び、先に進めないこともありました。

3. 帰国後

帰国後は、縁あって、NPO、ボランティア活動が盛んな阪神間の幾つかの中間支援型NPO団体に所属し、阪神・淡路大震災から継続している復興支援関連の事業や、企業の社会貢献、地域コミュニティの活性化など、複数の、古くからある課題から最近の課題まで幅広い事業に触れる機会を得ています。
最近では、主として、地域の中間支援団体のマネジメントを含めた仕組みづくりや自治体と連携し、住民の行政サービスへの参画とその協働に関する仕組みづくりに関する仕事を行なっています。

CGCはホームレス問題に特化したNPOではありましたが、私がそこで得たものは汎く、市民が、そしてNPOが社会をより良くしていく事例の活きたテキストを学ぶ機会であり、またそのために、NPO経営者、スタッフ、大きなステークホルダーである行政や企業とどのように連携してゆくかという実験を体感(または体験)することができた機会でもありました。

当然のことながら、日本とアメリカでは様々な面で多くの違いがあり、市民社会やNPOは異なる過程を経て成長しており、私の経験した事を日本社会にそのまま適用することは難しいですが、私が得た経験である“一つ一つ問題を分解し、一つ一つ丁寧に解決してゆくという姿勢”、“ミッションと業務の目的の明確化”は現在の仕事でも意識しながら、日々業務をこなしております。

最後になりましたが、フェローシップの機会を与えてくださった国際交流基金、このような仕組みを切り開いてくださった先輩のフェローの方々、そして先輩フェローとしてCGCをご紹介くださった末村祐子先生には、改めて感謝申し上げます。



※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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