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NPOフェローはいま
「3つの財産」

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「3つの財産」

京都光華女子大学人間関係学部
教授 妻鹿ふみ子
パイロット第2期(1999年度)NPOフェロー


10月中旬、本当に久しぶりに、研修先のスーパーバイザーであったポインツ・オブ・ライト財団(POLF)上席バイスプレジデントのメイ・コブさんからのメールを受け取りました。その内容は、15年勤め続けたPOLFを退職する、というものでした。転職が珍しくないアメリカのNPO業界にあって、15年間同じ財団に勤め続けた、ということは驚くべきことです。すでに、私の研修当時に在籍していた職員は、もう誰もいらっしゃらなくなっていたのですが、メイさんがいらっしゃることで、アメリカにはいつでも「訪ねる場所がある」という安心感のようなものを持っていた私には、このメイさん退職の知らせはショッキングなことでした。それだけ、私のNPOフェローとしての日々も遠くなってしまったということなのだと改めて気づかされました。

パイロットフェロー2期生としてワシントンDCのPOLFにお世話になったのは、2000年の春から夏でした。POLFNPOとはいえ、連邦政府や議会から巨額の助成金を得て経営されている巨大な組織で、多くの人がイメージするNPOとはかなり様相を異にします。すなわち、全米ボランティアセンターの機能を持つPOLFの年間予算は2000年当時で125万ドルを超え、職員の数も100名を超える、という巨大な組織。したがって、メイさんがトップであったボランティアセンター開発部門、という自分が配属された一部門を理解するのがフェローとしての私には精一杯のことでした。そのため、いろいろなことが未消化のまま、お腹いっぱいの状態で帰国しました。すぐに研修成果として使えたもの、といえば参加したさまざまなマネジメント研修の成果や、サイトビジットしたNPOで教えてもらったボランティアマネジメントの実践ノウハウなど、スキルに関するものだけだったように思います。しかし、POLFのように巨大な、全国レベルの展開をするインターミディアリー(中間支援組織)で研修したことの成果は、帰国直後よりも、少し時間がたってから、じわじわと、ボディブローのごとく効いてきた、そんな気がするのです。

帰国後すぐに、日本ボランティアコーディネーター協会(JVCA)、というボランティア活動を支援する専門職としてのボランティアコーディネーターを支援するネットワーク組織を立ち上げるプロジェクトに中核メンバーとして参画し、2001年にJVCAを設立した後は、理事や運営委員としてずっとその経営に携わってきました。現在は大学で福祉を教え、研究するという仕事との二足のわらじを履いています。大学での職を得るとき、NPOの有給スタッフとして、あるいは新しいプロジェクトを立ち上げる位置に身をおいて、安定とは無縁の状況でこのフェローの成果を生かしている他のフェローの皆さんと比べ、この立場はぬるま湯なのではないか、と自問自答したことを思い出します。しかし結果として、今のような、NPO経営と研究という2つのことを、何とかバランスをとりながら実践している今の私にとって、POLFという全国レベルの組織で研修をしたことが多いに役立っているのです。改めてNPOフェローとしての研修で得られたことを整理してみると、私にとってこの研修は大きな3つの財産を与えてくれたと思います。

第1の財産は、アメリカのNPOやボランティア支援の俯瞰図を描けるようになったことです。つまり、アメリカのボランティア支援の基本構造や枠組みを理解して、自分の中に評価軸のようなものをきちんと持つことができるようになったので、アメリカのNPOやボランティア活動の状況についての情報収集の際の視点がぶれないのです。これは、短期の視察や訪問調査では、決して得られない、本当に大きな財産だといえます。

第2の財産は、第1の財産から派生的に得られたことですが、アメリカにおいても、NPOの人材マネジメントは後進の分野であることがわかったことです。つまり、NPOマネジメントにおける最優先分野はファンドレイズであり、ヒトのマネジメントの優先順位は低い、ということです。しかしながら、その中でもヒトのマネジメント、特に無給の働き手としてのボランティアのマネジメントの重要性を信じ、そのことに文字通り心血を注いで活動している人たちがいることは見えてきました。これこそが、アメリカにおけるNPOの層の厚みなのだと実感しました。

そのような人々、すなわちボランティア・マネジメントの分野における、それほど多くはないキーパーソンと出会い、パイプを築けたことが第3の財産です。帰国後すぐに、ボランティア・マネジメントのベストセラーであったスーザン・エリスさんの著作を仲間二人と共に翻訳し、『なぜボランティアか?〜思いを生かすNPOの人づくり戦略〜』(海象社 2001年)として日本語訳を出版し、さらにはスーザンさんをJVCA設立の記念講演に招へいすることも果たしました。これは、フェローとしての目に見える大きな成果ではなかったかと思っています。

私がフェローとしての研修から得たものを、そのままダイレクトに還元する時期は過ぎ去ったと思います。今後は、自分というフィルターを通して得たアメリカのNPO実践の今の情報を研究、実践に生かしていくことで社会への還元をしていければと考えています。今でも、NPOの人材マネジメントであるとか、NPOにかかわる人々(職員、理事、ボランティアスタッフ)の支援のあり方については、ニーズがあるにもかかわらず、その手法が確立されているとはいえない状況です。NPO法人が3万を超えるようになり、量としては日本のNPOも一人前になったといえるのかもしれません。しかし、経営に携わっている多くの関係者は資金や人材の不足に悩んでおり、継続することの厳しさに直面していることが、内閣府のNPO法人調査から明らかになっています。特に、私がフィールドとしている福祉分野においては、取り組むべき課題は山積しているのに、取り組む主体としてのNPOは疲弊し、継続へのパワーを失いがちです。「アメリカではこうしている」ではなく、アメリカを軸として、ときには、ヨーロッパ型の実践手法を採り入れるなどすることも必要ではないかと最近考えるようになりましたが、それは、アメリカの実践についての「ぶれない理解」があるからこそ考えられることだと思っています。

「今、もう1回、アメリカで研修できたら、すごく学べるものが多いだろうなあ。また行きたいなあ。」などと最近とみに思うようになりました。しかしそれは、CGPに期待(依存?)するのではなく、自分の力で実行すべきで、そのことができるようなノウハウや人脈は研修を通じてフェローには身についているはず。このプログラムの関係者は誰もがそうおっしゃるに違いありません。「次のステップ・アップの機会」を自分でどう作り出すか。「十年一昔」となりつつあるパイロット2期生としての私の今の課題です。


※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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