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NPOフェローはいま
「市民社会を多元的に理解する力が今の自分を支えている」

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「市民社会を多元的に理解する力が今の自分を支えている」

市民社会コンサルタント 村上徹也
第4期(2003年度)NPOフェロー

1. NPOフェローシップを行なうまでの経緯
2002年の春、その前年である2001年に世界中で取り組まれたボランティア国際年の日本におけるキャンペーン推進事務局(2001年ボランティア国際年推進協議会)の解散手続きを済ませた私は、米国のボランティア活動やNPOについてじっくり研究するため渡米することになった。ボランティア国際年の推進事務局には、事前事後を含め約4年間携わった。

青少年のボランティア活動の推進に携わってきた私は、それ以前にバングラデシュでの足かけ4年にわたるNGOボランティアとしての活動経験があり、その後も日本だけでなくアジア諸国のボランティア関係者との交流があった。しかし、ボランティア国際年に関わってみて、日本以外の先進国のボランティア活動やNPOについての理解が不足しているという自分にとっての課題が浮き彫りになった。日本には、欧米のボランティア活動やNPOについてたくさんの情報がもたらされているけれど、欧米での経験のない私にはその情報の背景についての知識が不足していて、海外からの情報をどう理解し、受けとめるべきかわからないことが多かったのだ。

一口に欧米といっても多様であり、そのすべての国々で経験を積むことはできないため、かねてよりボランティア関係者に有力な知り合いがいて、専門であるボランティア活動推進について中間支援を行なう全国組織に所属する事ができそうな米国を訪問先として選択した。特に「サービスラーニング(*1)」という知的学習と社会貢献活動を意図的に結び合わせるプログラムが、急速に広がっている米国のダイナミズムを研究したいというのが、渡米を決めた引き金でもあった。

前置きが長くなったが、なぜ私が米国でフェローシップを経験することになったかの経緯は、フェローシップを終えて帰国した後の私の今に密接に関わっていることであり、それを抜きにして今を語れないと考えあえて記すことにした。

2. フェローシップで得られた米国市民社会の背景的知識
長年正職員として働いてきた日本青年奉仕協会を無給の休職扱いで2年間離れる了解を得、米国人の知人が首都ワシントンDC で主催しているボランティア活動に関するコンサルティング事務所の手伝いなどをしながら米国で研究を行なう事にした私は、2002年6月末に渡米した。そして、渡米後にCGPNPOフェローシップに応募して、2003年の10月から2004年の3月まで、全米ボランティアセンターの役割を果たしていた「ポインツ・オブ・ライト財団」でフェローシップを行なうことができた。

米国におけるフェローシップの内容やそこで得たサービスラーニングについての知見などについては、NP0フェロー第4期の報告書に詳しく書いているので、そちらを参照していただくとして、もう少し全般的な意味で役に立っている学びについて書こうと思う。

米国でフェローシップを始めてよく戸惑ったのは、一つのことを別々の機会に立場の違う人に質問すると、答えが皆違っているということだった。たとえば、サービスラーニングの定義について問うとすれば、実践している立場の人々であれば、学習に重点を置いているのか、社会貢献活動に重点を置いているのかで、その人からの回答には違いがある。ましてや、研究者に質問をする際には、その人の専門分野における学問的な立ち位置を知らないと、サービスラーニングを一面からのみ理解することになり、場合によっては非常に偏った見解を鵜呑みにしてしまう場合もある。当たり前のことだけれど、人から得る情報は、相手の立場や考え方などという背景の情報を持って受けとめなければ正確に理解することはできない。

研修先での打合せ風景の写真

研修先での打合せ風景

米国でのフェローシップは、先進的で真新しい情報を手に入れる機会としてよりも、そうした情報を冷静に客観的に理解するために必要な背景の知識を豊富に得ることができたという意味で、私にとって非常に貴重な経験の場となった。そして、その成果は、帰国後すぐに役立つことになる。

3. 都立高校の教科「奉仕」へのかかわり
2004年の夏に帰国した私は、その秋、東京都による突然の「全都立高校で奉仕活動を必修化」という発表を新聞で読み驚いた。教育的な奉仕体験活動(コミュニティサービス)が当たり前のように行なわれてきた米国の教育現場でも、一部の州や地域で行なわれているサービスラーニングを学校の卒業要件にする制度には、反対も根強くあった。そうしたなかで行政は、地域の協力体制をつくるために、相当の時間と労力、資金をかけていた。熱心に取り組む教員も、全員ではないにしても学校現場に必ず何名かはいるというのが米国の状況だった。果たして日本でそれが可能だろうか。私の考えは、「ノー」だった。

ところが、そんな私に、「米国でのサービスラーニング研究の成果を都立高校での教科『奉仕』のカリキュラムづくりに生かしてほしい」という東京都からの要請が舞い込んできた。私と同様の危惧の念を抱いた人たちが都の内部にもいて、学校教育関係者のみでなく私のような外部の者も入ったカリキュラム開発委員会が必要と考えて、私に声がかかったのだ。批判的な立場でありながら、引き受けるべきかどうか迷った末に、要請を引き受けることにした。米国でも同様の施策が進められた際には、短絡的な展開になりがちな行政の思惑を越えて、人権の擁護、非差別、貧困との闘いなどをテーマに掲げて自由で民主的な社会の担い手を育むサービスラーニングに取り組んだ多くの先生や実践者がいた。私も、彼らと同じ姿勢で事に当たろうと考えた。

結果として、単純な奉仕活動の強制ではなく、事前事後の学習にも活動と同じぐらいの比重を置くこととしたカリキュラムが導入され、2007年度から教科「奉仕」が全都立高校で実施されている。しかし、200を越える都立高校の現場では、疑問やとまどいも多くあるのが実情といえる。そんな中で、私は、全都立高校の担当教員対象の研修会で講師を努めることの他に、現場の実践を支援するコーディネーターとして10数校を担当して高校生に話をしたり、学校と地域の橋渡し役をしたりして、高校生たちの教科「奉仕」の取り組みが、サービスラーニングとして成果を生むようにかかわりを続けている。

4. 市民社会コンサルタントとしての活動
現在私は、渡米前に常勤職員として働いていた日本青年奉仕協会に肩書きを残しつつ、フリーランスの市民社会コンサルタントとして活動を行なっている。活動の内容は、サービスラーニングを取り入れる学校や大学への協力、様々な社会課題に取り組む民間団体のボランティア・マネジメントについての助言、子育てや青少年育成に取り組む行政の施策づくりやプロジェクトへの参画、ボランティア活動に関連した集会や研修会での講演やワークショップのファシリテート、国内外のサービスラーニングやボランタリズムに関する研究、そして日米間を始めとした交流と対話の促進など多岐にわたっている。そうしたすべての活動に、米国でのフェローシップをとおして得た知見が役立っている。

ユースフィランソロピー教育の日米交流も促進の写真

ユースフィランソロピー教育の日米交流も促進

特に、じっくりとゆとりを持って深く考えながら、市民社会にかかわる人や組織と出会い、多元的な観点で市民社会に関わる物事を理解する力を高めることができたことは、自分ならではの仕事が求められるフリーランスである今の自分の支えになっている。


*1 サービスラーニングとは、社会に貢献する活動と知的学習を組み合わせた取り組みの総称。サービスラーニングという考え方は、米国のボランティア活動の歴史とともに育まれ、1990年代に入り、連邦政府をはじめとした政府・行政機関、大学や学校、そして民間非営利組織などの協力のもと、急速に全国に広がった。特に、それまでも児童・生徒そして学生たちの間で伝統的に盛んだったコミュニティサービスを、単なる社会貢献活動として終わらせずに学校の学習カリキュラムと関わりをもたせ、貢献と学びの相乗効果を生み出す取り組みとして、学校教育の中に取り入れられ全米に普及した。


※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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