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NPOフェローはいま
NPOに必要なものを学んだフェローシップ経験」

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NPOに必要なものを学んだフェローシップ経験」

NPOリスク・マネジメント・オフィス
代表 中原美香
パイロット第2期(1999年度)NPOフェロー

Nonprofit Risk Management Center (ワシントンDC)での研修

私がフェローシップに参加したのは2000年ですから、もう7年も前のことになります。パイロット2期として半年間、ワシントンDCにあるNonprofit Risk Management Centerで研修させていただきました。

Nonprofit Risk Management Center(以下、「センター」)は、リスク・マネジメントに特化してNPOの運営を支援する中間支援組織で、活動は大きく分けると、1)講座などの研修、2)リスク・マネジメントに関するツール開発(CD-ROMやウェブ上でのオンライントレーニング・プログラムなど)、3)出版、そして4)コンサルテーションや電話・メール相談などを通じた個別支援になります。活動は全米、そしてときには海外にも及ぶNPOです。当時スタッフは6人いましたが、うち講演や個別支援を担当するのは4人でしたので、この4人は、まさに「全米を飛び回って」いました。研修前、私はNPOのマネジメントについて少々かじってはいましたが、リスク・マネジメントのことは何も知りませんでした。

研修先のNPOで果たす役割はフェローによって違うと思いますが、私の場合は、スタッフの一員として平日の朝10時から午後6時まで事務所にいて、電話を受けたり携わるプロジェクトなどに関する資料を読んだりし、ときどき外部での研修を受けたり、他のNPOへのヒアリングに出かけました。

「リスク」とは「組織のミッション実現能力をおびやかす将来のできごとに関する不確実性」であり、実際の損失そのものをさすのではない、そしてそのリスクに対処することが「リスク・マネジメント」である、とのことでした。これだけでは曖昧に聞こえますが、たとえばスタッフやボランティアが被害者または加害者になってしまう事故やトラブル、事務所など活動の場が火災などで失われること、情報の紛失や漏洩、契約の不履行などがリスクによってもたらされる損失です。リスク発生のために組織としてNPOが法的あるいは道義的な責任を負う恐れがあります。このようなリスクがおきないように、スタッフやボランティアを採用するときに気をつける点や、情報セキュリティの高め方、適切な保険への加入などがリスク・マネジメントの例です。NPOのマネジメントとして考えられるあらゆる分野にリスク・マネジメントが関わってくることを知ったとき、私は「日本のNPOにも必要なことだ」と直感しました。日本でも、NPOのマネジメントについて考えるとき、リスク・マネジメントにも考慮することはNPOの法的・社会的責任だと思ったのです。

半年の研修で、ひとつ任されたプロジェクトは、企業が従業員のボランティア活動を促進する際のリスク・マネジメントについて解説する簡単な冊子”Doing Well, Doing Good: Managing Risk in Corporate Volunteer Programs”の作成でした。この冊子を作成するにあたり、いくつかの企業や、企業とパートナー関係にあるボランティア・センターなどへメールや電話で取材もしました。作業を進めるのに緊張や不安もありましたが、スーパーバイザーである事務局長のメラニー・ハーマン他スタッフの、英語の添削を含めたサポートもあり、完成品を手にしたときは充実した達成感を得ることができました。

研修を通じて得たもの

研修を通じて得たものとしては、いろいろな人との「出会い」が一番の宝かもしれません。まず、センターのスタッフとの出会い。忙しい中、私をサポートしてくれました。少し時間ができると、センターに来る前の仕事や、センター以外に関わっているNPOの話、家族のことなど、雑談も含めてさまざまな話をしました。

また、他のフェローとの出会いも貴重でした。研修中は、5人のフェローのうち4人がワシントンDC、1人はペンシルバニア州フィラデルフィアでしたが時々ワシントンDCに来ていたこともあり、5人が同時に研修していた時期には皆で集まって情報交換や息抜きをすることもありました。また、青木孝弘さんの研修先がセンターと同じビルに当時入居しており、もともと両団体の事務局長やスタッフの交流もあったことから、私もよく出入りしていました。これがきっかけで、数年後には日本のあるプロジェクトの視察として彼と私の研修先を訪問先として紹介し、私も同行するなど、他のフェローの研修先ともつながることができました。他にも同時期のフェローに限らず、他のフェローOG・OBと、帰国後、講座などで仕事の協力を依頼しあうこともあります。

ワークショップなどに参加して得た出会いもあります。参加したNPOマネジメントの講座で出会った参加者の草の根NPOの活動風景を見せてもらったこともあります。出会った参加者や講師のなかには、今でも連絡を取り合っている人たちがいます。なかには、NPO関係のプロジェクトで日本にスピーカーとして招へいした人もいます。

リスク・マネジメントについて、半年で理論やNPO支援のあり方を到底学びきれるものではありませんでしたが、「リスク・マネジメントはこれからのNPOに、NPOだからこそ必要なのだ」と実感できたことは、研修の成果でした。いかに熱い想いや行動力のある人たちが社会的使命を抱いて活動を始めても、また「善人」が集まって活動を始めたとしても、「いかに信頼を醸成し、組織のミッションを実現し、よりよい社会を築いていくか」について組織として取り組む体制を作っていなければ、せっかく組織のミッションに賛同し、参加してくれたボランティアを事故の被害者または加害者にしてしまったり、活動が社会のニーズから乖離していくかもしれません。リスク・マネジメントは、保険や事故のことだけを考えるものではなく、あらゆるマネジメントに織りこまれるべきものであるということを、研修によって学ぶことができました。当時、リスク・マネジメントを講座のメニューに持つ日本のNPO支援組織は、(もし「全く」でなければ)ほとんどありませんでしたので、今後、NPOのリスク・マネジメントの重要性について、もっと知ってもらえるような活動をしようと思い、帰国しました。

帰国後の活動

2000年9月に帰国して3カ月後、「NPOリスク・マネジメント・オフィス」をたちあげました。「リスク・マネジメントを導入したいNPOと一緒に取り組みたい」という思いをこめてつけた名前です。当初は「リスクを取らないNPOなんてNPOじゃないから、リスク・マネジメントなんていらない」という声も耳に届きました。「リスクを取る」と言うと、聞こえがいいものです。しかし、組織としてのマネジメントの失敗が、その組織を支持していた多くの人々にも影響が及びます。社会のあり方を変えたり、支援を必要とする人に寄り添うなどのNPOの活動は、多くのリスクをともないます。「弱みを強みに変える」、つまり「リスクをチャンスにする」こともリスク・マネジメントだと知ってもらいたいと思って活動してきました。

NPOは企業や政府の責任を問うことがありますが、同時に自分たちの社会的・法的責任にも厳しくなければならないと伝えたい気持ちは変わりませんでした。

リスク・マネジメントは、関わる人たちが萎縮して活動をしにくくするものではなく、むしろ、安全・安心・信頼・自信をもって人がそのNPOに参画するために必要な体制作りをするものだと伝えようと、この7年間活動してきました。

NPOへの社会的期待が高まるほど、「もしも」のときに信用は大きく失墜します。企業の場合は、一企業の不祥事では企業全体の評価が落ちることにはならないのに対し、NPOの場合は「NPOはうさんくさい」という、NPO全体への問題になってしまいます。非営利セクター全体の基盤強化のためにも、NPOが社会的な信頼を得ながら結果の出せる活動をしていくために、リスク・マネジメントが有効な取り組みなのです。

これからも、個々のNPOの実情に合ったマネジメントのあり方を、リスク・マネジメントの視点から提案し、実践していきたいと思います。これは、日本やアメリカをとりまくNPOの環境が違っても共通の要素です。そのことを教えてくれたセンター事務局長のメラニーやスタッフには大変感謝しています。

これからも、社会的に結果を出せる市民活動を真剣にめざす人たちとの出会いや協働を大切にしながら、NPOの運営支援や市民活動に関わり、社会変革に取り組みたいたいと思います。


※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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