本文へ 日米センター(CGP)は日本とアメリカにて、助成、フェローシップ、ボランティア、人物交流、情報発信を行なっています。
国際交流基金 日米センター
CGP NY | 国際交流基金 | English | サイトマップ
トップページ
日米センターとは
公開イベント
団体で助成金をお探しの方へ
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ
安倍フェローシップ
日米パートナーシップ・プログラム
Japan Outreach Initiative
NPO フェローシップ
CGPの人物交流事業
情報室(刊行物、寄稿など)
アクセス
お問合せ
FAQ
更新履歴
日米センター公募助成プログラム
CULCON(カルコン) 日米文化教育交流会
メール配信サービス
コラムス
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ

 

NPOフェローはいま
「中間支援団体の役割から学ぶ~9・11同時多発テロ事件による移民への影響~」

>>NPOフェローはいま」一覧

「中間支援団体の役割から学ぶ〜9・11同時多発テロ事件による移民への影響〜」

(特活)ぱれっと
理事 谷口奈保子
第2期(2001年度)NPOフェロー

はじめに

谷口奈保子氏私は、知的に障がいのある人たちが生まれ育った地域であたり前の生活ができる社会作りを目指して、1983年に「ぱれっとを支える会」(2002年NPO法人取得)を設立しました。当時は、障がい者教育の義務化により18歳までは養護学校で教育を受けることはできていたのですが、卒業後の彼らの自立生活の保障がほとんど整備されていない時代でした。その後、地域に余暇活動の場、働く場、暮らしの場と彼らの拠点を作り続けて15年も過ぎたころ、トップの世代交代を意識するようになり、同時に、組織の見直しの必要性を痛感したのです。当然、スタッフの育成、安定した組織づくりのための資金確保は、次世代に委ねる必要な条件です。そこで私は、NPOマネジメントの研修を受けるために、1年間の予定で2002年1月にニューヨークに向かいました。

9.11同時多発テロ事件の衝撃

研修をお願いした団体が、障がい者関係ではなく移民の問題に取り組んでいる異業種を敢えて選んだのも、トップ交代を念頭に直接支援型組織の「ぱれっと」とは異なった分野から、客観的な視点で研修テーマである「人材育成」、「資金調達」を通して中間支援組織の働きに触れたかったのです。ところが、出発を予定していた2001年11月の2カ月前の9月11日に、世界を揺るがす同時多発テロ事件が起きたのです。私が到着した4カ月後も、世界貿易センターの倒壊による生々しい傷跡を残し、移民の暮らしに多大な打撃を与えていました。

ニューヨークアジア系アメリカ人連盟(AAFNY)での研修

その混沌とした状況の中で始まった私の研修は、犠牲となったアジア系アメリカ人のリストを作成することでした。最終犠牲者数2819人の中からアジア系アメリカ人の犠牲者235名の国別リストを作成する毎日の作業は、大変つらく苦しいものでした。2カ月余りの期間を要しましたが、その後の遺族に対する精神的、経済的な援助活動の具体的な動きをつぶさに見ることができたことは、私にとってまさしく臨場感あふれる現場での研修となりました。

1990年に設立されたAsian American Federation of New York (AAFNY)は、年間1億3千万円の予算を36の会員団体を通して、ニューヨーク市に居住する児童から高齢者までのアジア系アメリカ人が、健康的且つ経済的に安定した生活が営めるように、個々のニーズにあった援助を行なっていました。しかし、9.11以降は遺族や失業者の多様なニーズに対応すべく大幅な予算の増額(2002年は2億4000万円)、会員団体の組織強化、援助活動の拡大、チャイナタウンにおける9.11後の被害状況と経済的打撃調査報告書の出版など彼らの生活状況を社会に向けて活発に発信し、テロ事件をきっかけに活動は大きく変化していったのです。このような混乱期に、残念ながら私のテーマである人材育成と資金調達に絞って研修することは難しいと判断しましたが、逼迫した状況でしか得られない様々な体験は貴重なものでした。

直面している厳しい問題に関する会員団体との話し合い、彼らが抱えている問題解決のためのワークショップ開催、高齢者対象の訪問ボランティア活動の参加、AAFNYスタッフへのインタビューやアンケート調査など、直接彼らと接する場を通して、人種のるつぼと言われているニューヨーク市の全容と、出身国が異なる市民を護るべき人権の確立を基盤にした活動の展開が、まさに私が望んでいた研修そのものであったと、今、改めて思い起こされます。

帰国後に考えたこと

思いもよらない事件で失業や大幅な減給により精神的にも経済的にも苦しい生活を余儀なくされている移民の姿は、それまでぱれっとが取り組んできた障がい者の人権の問題と重なりました。25年前に知的障がい者の自立を目指して就労の場であるクッキーの製造・販売構想を打ち出したときの社会の反応は、「不可能」の一言でした。その数年後のレストラン構想でも株式会社の形態は、障がい者の接客では経営は成り立たないと忠告を受けました。障がい者の人権を否定されたという思いを強くしました。しかし帰国後に、日本でも新しい発想で多様な活動を始める小さな団体が次々と生まれていることを目の当たりにして、NYでの研修の成果が活かされないかと考えたのです。それは、設立間もない団体が気軽に相談ができる機会を提供することでした。

団体を育てるということ

研修期間中に団体の育成とはどういうことなのかという学びは、私個人に留まらず、ぱれっととしての日本での今後の役割を認識したきっかけとなりました。本来なら、AAFNYのような中間支援団体が手を差し伸べるべきことなのかもしれません。研修期間中に多くの中間支援団体が、まだ組織が確立していない団体に対して様々な方法で支援し、育てている様子を見聞しました。資金調達のための申請書の書き方、NPO法人の会計指導、コンピュータの技術指導、具体的な運営方法の講習など無料で講師を派遣する支援は、資金の乏しい団体にとっては心強い存在です。日本では、実績のない団体の運営が安定期に入るまでの5年間を見守る助成団体はほとんどありません。草の根のNPOを育てようという心意気が感じられる姿勢に学ぶところが多いと実感しました。

更に、設立後数年の小さな団体でも、明確な理念の下に将来を見据えた展望を確認しながら進めている活動は、受益者のニーズにも明確に応えることができていて、支援がぶれないということです。これは、育てるということを軸にした中間支援団体の指導が常に的確だからです。当然、スタッフの質が向上し、団体の実績も認められるようになり、その成長には目をみはるものがあります。

このような育成の役割をぱれっとが担うことは、これまでの25年間の実績の裏づけとニューヨークで学んだNPOマネジメントの手法に納得できたからこそ、相談業務に携わることができるのだと肝に銘じています。幸い多くの団体や個人から声がかかり、それを機に障がい関係の分野に留まらず広くネットワークができてきたのは嬉しいことです。しかし、その具体的な成果が表れるにはまだまだ時間がかかります。しかも、資金があるから実績が作れるのか、実績があるから資金が得られるのか、日本では、NPO団体の自立に直面するこのジレンマが当分続く限り、真の成長は望めません。そのためにも、米国で研修を受けた37名のフェローは、様々な分野で日本のNPOを育てていかなければならないのだと、私は改めてその役割を重く受け止め、気持ちが引き締まる思いです。


※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

Top

TOKYO OFFICE
国際交流基金(ジャパンファウンデーション) 日米センター
160-0004 東京都新宿区四谷4-16-3
Tel (03)5369-6072 Fax (03)5369-6042
NEWYORK OFFICE
The Japan Foundation Center for Global Partnership, N.Y.
1700 Broadway, 15F, New York, NY 10019, U.S.A
Tel (212)489-1255 Fax (212)489-1344