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NPOフェローはいま
「心の回復・多様な可能性」

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「心の回復・多様な可能性」

Attitudinal Healing Osaka
代表 谷 裕子
第5期(2005年度)NPOフェロー

2005年3月29日から一年間、カリフォルニア州オークランドで、第5期フェローとして、性暴力被害者支援団体で研修をさせてもらった。

1971年、アメリカ全国で最初のレイプクライシスセンター(性被害にあった人をサポートするNPO)が発足した。Bay Area Women Against Rape (以下、BAWAR)である。スタッフ7名の、その小さなNPOが、私の研修先だった。

BAWARのスタッフやアドボケートたちとの写真

BAWARのスタッフやアドボケートたちと

2005年当時に私が所属していた「レイプクライシス・サバイバーズネット関西(以下、RCSNK)」とBAWARは、すでに数年来の交流関係を持っていたが、2003年10月にRCSNKが主催した講座の講師として、BAWARの代表:マーシャ・ブラックストック氏とイラナ・ガージョイ氏を招へいしたことで、その絆は深まった。その講座の中で「レイプトラウマ症候群」という、性暴力被害にあった人が体験する感情と行動の様々な障害の説明をマーシャが話す様子を見ながら、私は直感した。「私は、これを日本語で分かりやすく説明できる」と。その直感に突き動かされるままに、後日、フェローの応募書類が入った封筒を投函していた。

一年間、友人もいないカリフォルニア州で性被害者支援の現場に関わる。60時間のトレーニング、被害者や第三者のカウンセリング、病院や裁判所への付き添い・・・自分自身の性被害体験とリンクすれば、精神的に、かなり影響があるはずだ。仕事が続けられるだろうか?不安はあったが、同時に、「ここでは何が起きても、受け入れてくれるサポートが見つかるはず」という安心もあった。自分のPTSD (心的外傷後ストレス障害)症状が起きれば、必要なサポートを探せばいい。そうすれば自分の中で、性被害の心理的影響の理解が深まるはずだ。むしろ、症状が出てくれたほうが、「レイプトラウマ症候群」を日本語で分かりやすく伝えるための研究になる。ネットワーキング活動にもつながるはずだ。

アメリカに到着した翌日から、私はトレーニングに中途参加しながら、日常のオフィスの業務も覚えていった。酷いレイプ直後の被害者に付き添って一晩を病院で明かしたときや、耳を覆いたくなるような痛ましい児童虐待の裁判にも何度か同行した後などは、精神的に辛かったが、BAWARのスタッフに支えられ、やり遂げることができた。

一年間働いてみて、実際には大きな精神的・身体的な症状は出なかった。病院や裁判所で、様々なレイプケースを見て、被害にあわれた方の行動や態度に生で関われたことは、「被害体験を持ちながら、この先の人生を、どう生きてゆくのか」を考えるきっかけになった。
これは、私にとって、他人事ではないからだ。

私は、子ども時代の性虐待と、DV被害の当事者である。だから、日本におけるサービスの無さを幼い頃から実体験したといえる。性被害による影響を最小限にするための適切な心理・身体的な支援サービスと、法医学的対応のために、警察・司法・医療機関・支援団体の連携システム構築、そして多分野への教育の普及の必要性は、研修前から頭にあった。

一年間の研修をとおして、それ以外のことが見えてきた。体制の確立はもちろん重要である。
それと同時に、被害にあった人が、自らの心の回復のために、多様なケアを選択できることが必要なのではないか。ベイエリアには、トラウマを持つ人が参加できる、セラピーを兼ねた多様なワークショップがあることを知った。詩や絵を描く、陶芸などの造形、ダンス、音楽などの表現アートや、瞑想のワークショップなどがある。セラピストあるいはファシリテーターは、トラウマに関する知識を持っているため、ワークショップ中に参加者が自らのトラウマを語りだすことには慣れている。むしろ、そうすることが、内側から生まれる回復力に出会えるチャンスになることを知っている。そして、あたたかく受け入れる。こういうセラピーやワークショップの場で、過去に起きた性被害のトラウマを違う形で表現する、または、他の人に語ることで、少しでも楽になれる人が居るのだ。

私は、こういったワークショップに何度か参加する機会に恵まれ、実際に自分の性被害体験を語り、表現してみた。実際に語ってみると、他の参加者が不快な表情を示したこともあったし、私が語ることにより、他の参加者が「私も性被害体験があって長い間苦しんでいる」と語ってくれたことも、何度かあった。絵を描く、ダンスをする、太鼓で静かな瞑想をする、このような行為が、心の回復に本当に役立ったし、安全な環境で語れることの大切さを実感した。セラピストやファシリテーターに話を聞いてみた。彼等も「トラウマを癒すための多様な選択肢があるのは、実に大切なことだ」という。私は帰国したら、日本でトラウマを癒すことに役立ちそうなワークショップを行なうセラピスト達と出会い、彼等が性被害のトラウマについて、どのくらい知識を持っているのか調べよう、と決めた。できるなら、自分でもできるワークショップを考えてみよう、と。

帰国後、まずは研修報告会を数回、開催した。出来る限り「食事付き」にした。私の本職は料理人である。自然食を皆で食べ、ほっとしてからトラウマの話を聞いてもらいたい。食事を共にすることで生まれる一体感があるはず、と思ったからである。実際に、このアイデアは正解だった。2006年6月1日に大阪・朝潮橋のイースト・ウェスト対話センターで開催した第一回報告会に集まった方の多くはセラピストだった。その時の出会いのおかげで、アーツセラピストの森すみれさんとは深いつながりが生まれ、現在は月一度、アートワークと食のコラボレーションとして「新月の集い」を食事付きで開催している。

長野県女神山ライフセンターでの講座の写真

長野県女神山ライフセンターでの講座

そのおかげで、心理系のワークショップで食事を作ってくれないか?という依頼が来るようになった。合宿形式のワークショップなどに食材を持って行き、ワークに参加しながら、他の参加者の様子を観察して雰囲気を感じ取り、状況に合わせて三食の食事を即興で考える、参加者兼料理人。参加者とワークを体験して交流しながらも、講座スタッフとして食事を提供する私の立場は少し特殊だといえるが、そのお蔭か他の参加者たちともより深い交流が持てた。こういう場で、性的な被害体験を持つ方が、私にそっと、自らの体験を打ち明けてくださることが何度もあった。

2007年1月からは、知人の協力を得て、大阪を中心に不定期でアフリカの太鼓ジャンベを使った食事付きの瞑想会を始めた。子どもから高齢者まで誰でもできる簡単な太鼓の瞑想には、幅広い年齢層の方が参加してくれる。瞑想の後の食事の時間は、世代間の交流の場となっている。私にとってもメリットは多く、セラピストやワークショップのファシリテーターと出会い、新しい企画を創るためのネットワーキングの場にもなっている。

「心と体を感じるワークショップ」と「食」がうまく共存した場の創造。フェロー研修中に、漠然と頭に描いていた構想が、帰国後はたくさんの人との出会いに支えられ、少しずつ現実化している。

現在、私はRCSNKに在籍していない。どこかのNPOに所属しているわけでもない。全くのソロ活動であるが、トラウマを扱う学会やNPO、活動団体、個人との関わりを持ちながら、性被害にあった人が安心して語れる場の創造に向けて、今後もフェローの経験を活かし続けたい。

最初に直感した「レイプトラウマ症候群」について、現在は、看護師の研修や臨床心理士学会等で研修講師として、年に2〜3回、お話をさせていただいている。英語版はインターナショナルスクールの教職員研修にご利用いただいている。 

NPOフェローとしての研修期間中、マーシャが講演に行くところには全て同行し、彼女が聴講者の興味を引くテクニックを見せてもらった。参考になることは全てメモした。自分自身の回復の体験から学んだこともつけ加えた。日本で、これまで性被害について、考えたことすらない人が聞いても、少しでも「なるほど」と思えるような、説得力のある内容を考えるには、実体験の真実に基づく情報がもっとも効果的だと考えているからだ。一年間の研修で、被害にあった人達を支援させていただきながら、自分のトラウマを見つめなおせた体験は、現在も鮮やかに生き生きと、私を支えてくれている。今後もアメリカの団体との交流を継続しながら、国内でのネットワークを広げ、性被害からの心の回復に役立つ多様な選択肢を日本に増やせるよう、地道に頑張りたいと考えている。


※本報告内容は、執筆者の見解によるもので、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の公式見解とは必ずしも一致するものではありません。

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