本文へ 日米センター(CGP)は日本とアメリカにて、助成、フェローシップ、ボランティア、人物交流、情報発信を行なっています。
国際交流基金 日米センター
CGP NY | 国際交流基金 | English | サイトマップ
トップページ
日米センターとは
公開イベント
団体で助成金をお探しの方へ
公募助成プログラム
申請に関するQ&A
採用後の手続きの流れ
助成事業紹介レポート
助成データベース
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ
CGPの人物交流事業
情報室(刊行物、寄稿など)
アクセス
お問合せ
FAQ
更新履歴
日米センター公募助成プログラム
CULCON(カルコン) 日米文化教育交流会
日米草の根交流コーディネーター派遣プログラム
メール配信サービス
コラムス
団体で助成金をお探しの方へ

 

日米センター 地域・草の根交流プロジェクトレポート Vol.16

地域・草の根交流プロジェクトレポート一覧

戦中・戦後の子どもの本をふりかえる
〜メリーランド大学プランゲ文庫資料および大阪国際児童文学館資料を基盤とした
日米子どもの本・子どもの文化交流プロジェクト〜


<日米センターより>
プランゲ文庫とは、第2次世界大戦直後、検閲にあった雑誌、新聞、図書、公文書等であり、当時GHQ戦史室に勤務していたゴードン・W・プランゲ博士が日本から米国に持ち帰ったコレクションです。その数は11万点以上にも及び、メリーランド大学図書館に所蔵されています。これらは日米の現代史研究にとって占領時の空白を埋める貴重な資料であり、過去に日米センターでは、コレクションのうち、新聞について分類・整理、目録作成およびマイクロフィルム化を通じて修復・保存するプログラムに対して助成を行ないました。
このたび、正置友子氏を代表とする実行委員会では、プランゲ文庫および大阪国際児童文学館の資料の中から、戦中・戦後の子どもの本と文化を紹介する展示を2006年夏に大阪歴史博物館で実施し、同時期にあわせて日米交流子どもの本・文化セミナーを行なっています。

「戦後60+1周年子どもの本・文化プロジェクト」実行委員会
委員長 正置友子(まさきともこ)


はじまり
正置友子氏プロジェクトは、2001年、日本を訪れていたプランゲ文庫を見たことから、始まった。1945年8月15日の終戦から1952年まで、日本が被占領期にあった時代は子どもの本は不毛であった、と子どもの本の関係者は思い込んでいた。それが、目の前に展示されている子どもの本の量に圧倒され、これは調べずにはいられないと思った関西圏の子どもの本の研究者・関係者によってスタートした。住むところ、身に纏うものさえ乏しい、食べるものさえ事欠く焼け跡時代に、日本では、子どもの本を含む膨大な本が出版されていたことになる。驚くべきことだった。研究の成果を、2006年すなわち戦後60+1周年にプランゲ文庫の展示という形で大阪で開催することにした。

研究開始と研究対象
15名の実行委員の関心や研究領域が多様であることから、研究対象が、歴史、検閲、原爆、童謡、翻訳、沖縄、大阪の子どもの本、教科書、雑誌、図書館などの多岐に渡り、関西在住する私たちが利用した研究機関は、プランゲ文庫所蔵資料と同時期のものも大量に所蔵している大阪国際児童文学館であった。ここに所蔵されている資料が、プランゲ文庫所蔵のものと重なりが少ないことも、戦後の出版物がいかに多かったかを物語っている。研究を進める過程で、研究の範囲を時空間上で拡大することになった。

一つは年代の範囲の拡大である。研究対象期間を、戦後の被占領期だけではなく、戦中にも拡大した。戦中・戦後を研究対象領域とすることで、日本の子どもの本が連続して体験した歴史的にも珍しい二つの種類の異なった検閲が浮かび上がり、検閲という権力者側からの出版と思想に向けての統制・弾圧がより明確に浮かび上がってきた。

もう一つは、空間の拡大である。実行委員の中に、沖縄の子どもの本の研究では第一人者といえるメンバーを擁していたこともあり、沖縄の日本復帰は本土より20年も遅れるが、そのことにこそ日本の被占領期が明確に表われているとして、沖縄も組み込むことになった。

プランゲ文庫訪問
 いよいよ、アメリカのメリーランド大学にプランゲ文庫を訪問する時がきた。2005年2月と2006年3月の二度訪れ、実際に資料を調べながら、展示資料の決定も行なっていった。一度目には、大学図書館主催のセミナー「文学に見る占領期」に参加し、3人が英語で発表した。チャールズ・B・ラウリー館長、デシダー・L・ビコー資料部長ともお会いし、2006年度に開催予定の展示およびセミナーへの協力(プランゲ文庫資料の貸し出しと日米交流セミナーの講師としての参加)をお願いした。東アジア部門とプランゲ文庫の室長である坂口英子氏が、プロジェクトのアメリカ側の窓口であり、坂口氏の助言やバックアップ抜きにしては、今回のプロジェクトの成立は有り得なかった。

いよいよ、大阪歴史博物館で展示開催
会場の様子の写真1
会場の様子
2006年6月14日、大阪の真ん中にある大阪歴史博物館で「戦中・戦後の子どもの本・文化プロジェクト」の展示がスタートした。大阪の官庁街である谷町四丁目に、大阪NHKと並び建つ大阪歴史博物館は立派な建物で、展示の見学者たちはまず会場の立派さに圧倒された。私たちとしても、このような会場で展示を開催できたことは幸運という言葉に尽きる。大阪歴史博物館は、10階建で、窓から展望する大阪城は絶景であり、足元には、平城京よりも古いとされている難波の宮跡がある。大阪歴史博物館も難波宮の上に建っており、この歴史博物館で、子どもの本の1940年代展を開催できたことは大きな意味を持つ。

大阪歴史博物館との共催により、私たちは展示会場の確保と共に、学芸員という専門家にお世話になることができた。彼らは、博物館が効果的に活用されるように企画・運営をしている。制度的にしっかりした、設備の整った組織と協力・提携したおかげで、貴重な資料を正式に借り受け、展示することができた。

オープニングにアメリカからビコー氏を迎える
メリーランド大学図書館の貴重コレクション担当部長であるビコー部長を迎えて、6月14日にオープニングのスピーチをしていただいた。坂口氏も通訳として来日。講堂の入り口でビコー部長とともに坂口氏をお迎えしたときは、感無量であった。プロジェクト開始から5年近い年月が流れていた。ビコー部長は、プランゲ文庫がアメリカにあることの重要性についてスピーチした。戦後稀有な復興を遂げた日本について知ることができる資料がアメリカにあることで、日本の人だけではなく、アメリカの人たちも研究することができるという内容であった。

展示(2006年6月14日〜8月28日)
展示構成は、展示室の広さと展示ケースの設置可能状況にあわせて七つのセクションに分けた。
会場の様子の写真2
会場の様子2
  1. 子どもの本と雑誌・30年の歩み
    —占領期とその前後—
  2. 教科書 —昭和20年代を中心に—
  3. 検閲の実態 —処分例と許可例—
  4. 大阪の子ども向け出版
  5. 謎の多い原爆の検閲
  6. 沖縄 —占領の光と影—
  7. 子どもたちの遊びの世界 

今回の展示期間中、会場では週に数回(希望に応じて何回も)のギャラリートークを行なった。展示会場で実物の絵本、読み物、教科書、絵本の絵のパネルを見ながらのギャラリート-クは、大好評であった。

日米交流子どもの本・文化セミナー —歴史に学び未来を拓く—
展示期間中の7月1日〜2日に6人の講師を招いてのセミナーを開催した。
会場は大阪歴史博物館の講堂。

第1日目
 「オープニング・スピーチ」 
   三宅興子氏 梅花女子大学大学院教授
 「アメリカの子どもの本に見る日本」 
   シビル・ヤグッシュ氏 アメリカ議会図書館児童室室長
 「日本の児童文学と二つの検閲」 
   鳥越信氏 児童文学者
第2日目
 「子どもたちのための日米平和使節(青い目の人形)」 
   デニイ・ギューリック氏 メリーランド大学教授
 「プランゲ文庫の児童出版物」 
   谷暎子氏 北星学園大学教授
 「未来を信じたとき」
   松居直氏 日本児童図書評議会理事長

講師陣の顔ぶれの多彩さと内容の素晴らしさから、記録に残してほしいという声を受けて、セミナーの記録集を作成した。英文の記録集も作成中である。

子ども達を対象としたワークショップを開催
 おはなし「戦中・戦後を子どもたちに語りたい」 2006年8月13日・14日
   語り手 本多立太郎氏 わんぱく通信社代表
 紙芝居 「紙芝居のおじさんがやってくる」 2006年7月30日・8月6日
   演じ手 近藤博昭氏 池田紙芝居同行会主宰

最終報告会(第8回セミナー)
2003年2月に第1回セミナーをスタートし、以後年に2回講師を迎えて大阪国際児童文学館でセミナーを開催してきた。そして、展示や日米セミナーを終えて、プロジェクトの最終報告会として第8回セミナーを2007年3月に開催した。毎回100名ほどの参加があり、リピーターも多く、東京、四国、沖縄からの参加者もあり、プロジェクトのメンバーにとって、大きな励ましであった。

終わりに
プロジェクト・メンバーの志があっての船出であり、多くの友人たちの精神的支援があってこそ船旅を続けることができ、その上に、国際交流基金日米センターからの経済的支援が得られたことで、現実へ向けての梶を取り、大海原を乗り切ることができた。励まし、支えてくださった友人たち、諸機関に対して心からの感謝を捧げたい。

プランゲ文庫との出会いからは、5年という年月をかけての準備・研究の期間があったからこそ、多くの方々から参加の喜びを報告していただける展示と日米交流セミナーになったと思う。それぞれのメンバーは、この期間に研究したことの上に立って、さらに研究を深める予定である。私自身は、専門のヴィクトリア時代の絵本研究からの大きな方向転換に見えるかもしれないが、イギリスのヴィクトリア時代も日本の1900年代の前半も、自国を「帝国化」していく過程としての共通項がある。絵本はその時代の産物であり、また絵本を通してその時代を検証することができる。日本の戦前から戦中・戦後に向う激動期に産出された絵本群の検証は、未来を生きる子どもたちと深く関わる文庫活動を30数年している者としての責務であると思っている。

Top

TOKYO OFFICE
国際交流基金(ジャパンファウンデーション) 日米センター
160-0004 東京都新宿区四谷4-16-3
Tel (03)5369-6072 Fax (03)5369-6042
NEWYORK OFFICE
The Japan Foundation Center for Global Partnership, N.Y.
1700 Broadway, 15F, New York, NY 10019, U.S.A
Tel (212)489-1255 Fax (212)489-1344