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日米センター 地域・草の根交流プロジェクトレポート Vol.17

ペアレント・プロジェクト・ジャパン報告レポート〜助成プロジェクトのその後〜

地域・草の根交流プロジェクトレポート一覧

日米センタープロジェクトレポート特別編:ペアレント・プロジェクト・ジャパン


当センターでは、2004年度に財団法人岩手県国際交流協会が主体となって実施した「ペアレント・プロジェクト・セミナー」事業に対する助成を行ないました。今回は、その後岩手県国際交流協会から独立して活発な活動を展開しているペアレント・プロジェクト・ジャパンについてお伝えします。

【2004年度の助成事業概要】
教育を切り口とする日米間の交流事業。学校と保護者や地域が一体となって子供の教育に参画する米国の教育手法「ペアレント・プロジェクト」を日本で推進するため、2004年7月に岩手の保護者や教育関係者が訪米し、ウィスコンシンで開かれる研修ワークショップ「ワルーンセミナー」に参加したほか、シカゴ地域などのペアレント・プロジェクト実践者と交流。帰国後に、PTAや保護者、教員、地域住民を対象とした日本版セミナーの実施を通じて普及活動を展開した。
 >>当時のプロジェクトレポートはこちら

「ペアレント・プロジェクト・ジャパン(PPJ)」報告レポート

玉山幸芳氏ペアレント・プロジェクト・ジャパン(PPJ)代表 玉山 幸芳

1 ペアレント・プロジェクト・ジャパン(PPJ)と日米センター、そして「やるーんセミナー」

私たちは2002年1月に岩手県国際交流協会の研修事業で訪米し、ペアレント・プロジェクトを視察した。その後、2002年と2003年にペアレント・プロジェクトの提唱者であるジェームズ・ボパット教授を岩手に招いて、ペアレント・プロジェクトをワークショップ形式で学んだ。そしてボパット氏の指導と了解を得て、ペアレント・プロジェクト・ジャパン(PPJ)として活動を開始した。2003年末、日米センターへ「ワルーンセミナー」への参加を申請し、2004年日本から初めて同セミナーに参加した。ボパット氏から指導を受けた他、米国のペアレント・リーダー達との活動交換会もあった。「ワルーンセミナー」に参加して得られたことは多い。そのなかでも、私が具体的目標にしたことのひとつは「ワルーンセミナー」の日本版を企画、実施することだった。「ワルーンセミナー」への参加者は教師や校長先生等学校関係者だけでなく、親をはじめとする地域のリーダー、大学教授、NPO関係者、行政関係者など、子どもの学びに関わる多様な人々であった。

セミナーの写真1
北は青森、南は愛媛、日本全国から集まった参加者もワークショップ後はみんな仲良くなりました。

帰国後、1年間の準備期間を経て、2006年に「やるーんセミナーI」を開催。そして2007年夏に「やるーんセミナーII」を開催した。ペアレント・プロジェクト・ジャパン(PPJ)と学校と 地域融合教育研究会(融合研)とのジョイント企画で開催された「やるーんセミナーII」は北は北海道、南は四国から参加を得て盛況であったばかりでなく、深い学びの場になった。参加者の「ふりかえり」を2つ紹介させて頂く。「PPJのようなワークショップ(手法)をやってみたい。様々な人達がグループに分かれ、一人では思いつかない結果に結びつく(建設的な)のはすばらしい。自分の能力etc が改めて分かった。」「住んでいる地域・立場・年齢などが違う人達が集い、語り合う機会はすばらしいと思います。WS(ワークショップ)形式だからこそできるのだと感じました。考える→実践する→WSに参加する→考える→実践する・・・というくり返しが必要。このセミナーはこのための大いなる動機づけになった。GOOD!!」参加者の感想からもお解り頂けるように、参加者は地域のおじさんから、子育て中のおかあさん、先生、議員さんや県・市町村の教育長や教育委員長の肩書きを持つ方まで、皆さん自発的に参加された方達で、和やかな雰囲気のかで、子どもたちの幸せのために私たち大人ができることを基盤にして「やるーんセミナーII」は実施された。
ご関心のある方はPPJのブログをご覧下さい。

 

セミナーの写真2
ワークショップ課題「子供をめぐる様々な状況を4つの視点〜家庭/学校・教師/地域/行政・教育委員会〜からまとめる」。身近な大切な課題に皆さん熱心に取り組みました。
2 ペアレント・プロジェクトとは

ペアレント・プロジェクトは、親と教師(学校)と地域を繋げるプロジェクトである。ペアレント・プロジェクトの四つの指針は以下のとおり:
  1. 親は子どもにとって一番最初の先生であるばかりでなく実践を通しての先生でもあり、生涯に渡って影響を与え続ける存在である。
  2. 親と教師は同じ目的を共有している。それは「子どもの学力を伸ばす」ことである。
  3. 子どもの教育に関して、親と教師を分けて考える理由は全くない。対等の立場で協力していくことで親と教師の相互理解が深まり、子どもの学びをより豊かにすることができる。
  4. 親と教師が「読み・書き」を含めた多様なワークショップに参加することは、一体感を強めるだけでなく、学びへの情熱を新鮮なものにする。

親も教師も共に子どもを支えるパートナーである、というのがこのプロジェクトの基本的な考えである。ワークショップという手法を用い、子どもの学びや幸せのために何ができるかを、親と教師、時には地域の人達も一緒になって、共に考え、思いを共有し、その後の様々な取り組みに繋げて行く。参加者が主体のワークショップという場を通して、一人一人が自分達の持つ力や可能性に気づき、変容し、そのことにより、子ども−親−教師の関係性もより良いものに変ってゆくのである。 ペアレント・プロジェクトは1980年代のアメリカの教育改革の流れの中で、「親の学校参加」は子どもの教育に非常に重要であるとの認識から始まった。ボパット氏が提唱し、ミルウォーキーからシカゴへ、そして全米へと広まった。

 

3 PPJの活動と目指すもの  

セミナーの写真3
ワークショップ終了後の振り返り記入中。皆さん真剣です。
昨年の2006年、PPJはワークショップを60回開催し延べ参加人数は1,200 人を超えた。ワークショップはPTA関係(家庭教育学級、進路講座等)、思春期講座、キャリア教育、地域・自治体、子育て支援、教員研修などであった。これら全てのワークショップは学校、PTA、各団体からの依頼であり、PPJが認知され評価されてきていることの証しであろう。しかし、PPJがこの様に自立出来てきたのには岩手県国際交流協会とその担当者宮順子氏に拠るところ大である。彼女は県の事業期間が終了した後のPPJのソフトランデングの戦略を共有し、いろいろアドバイスをしてくれた。

PPJが目指すものは、子どもの学びと育ちに関わる親や教師、地域の人達、行政、NPOなど全ての関係するところと協働してコミュニティーを形成することである。「ワルーンセミナー」でのキーワードのひとつは「Disconnection(断絶)」であった。親子間での断絶、世代間での断絶、地域間での断絶、職場間での断絶、人種間での断絶が非行・暴力・犯罪・学力低下・いじめ・自殺・殺人など、あらゆる社会現象の根底にあるという。すなわち、「一人」、「孤独」の連鎖により、良き社会的伝統・規範・文化・価値観が継承されないという。また同時に、断絶は自尊感情の低さももたらす。断絶が各方面へ広がることによってアメリカの社会そのものが変容してきていると、ペドロ・ノゲエラ教授は指摘したと私は理解している。アメリカの事情がそのまま日本にあてはまるものではないかも知れないが、しかし心に留めておく価値はあると思う。「結」とか「絆」といわれる価値観が日本でも見直されてきているからである。これを、ペアレント・プロジェクト風に言えば日本流の仲間づくり、地域づくり、町づくりの概念を含んだコミュニティー・ビルディングである。様々な問題や弊害を抱えつつ変容して行く現代日本にあっても、ペアレント・プロジェクトのワークショップは有効だと感じている。「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを楽しく」学ぶPPJのワークショップを数多く実践していくことである。 終わりに、敬愛するある実践活動家の言葉を引用してPPJの目指すものとする。

「私たちは大きなことは何も出来ません。ただ、大きな愛をもって小さなことを実践するのみです。」 〜マザー・テレサ〜
PPJに関するお問い合わせは、玉山 幸芳まで
Eメール: v9s8ct@bma.biglobe.ne.jp
(メールを送る際は、全角@マークを半角@マークに変更してください。)

 

〜玉山氏へのインタビュー〜

日米センター: 「やるーんセミナー」は大盛況だったようですね。写真からも参加者の皆さんの真剣な様子がうかがえます。ところで、やるーんセミナーは、PPJの普段のワークショップとどのように違うのでしょうか?
玉山氏: 普段のワークショップは、学校、地域、行政など依頼者のニーズに合わせて実施しています。テーマやワークショップの内容、進め方について事前に何度も打ち合わせを行ない、作り上げていくものです。やるーんセミナーは、1年に1回、PPJの研修として行なうもので、メンバーのスキル向上の他、新しいメンバーの獲得や横の連携やネットワークを深めることを狙いとしています。
日米センター: すると、やるーんセミナーはアメリカで行われているワルーンセミナーの日本版ということになるでしょうか?
玉山氏: 共通点としては、どちらも参加者が多様であることです。学校教師や保護者に限らず、行政やNPOからも参加があります。多様なワークショップを行なう点も似ていますね。ただ大きく異なるのは、アメリカでは教師は教職についてからも各種教員研修を受講することが義務付けられており、ワルーンセミナーはその研修の一つとして位置づけられていることです。そのため、研修内容も教授法など教師の専門性向上を目的としたものが多くあります。
私どもが行ったやるーんセミナーのワークショップでは、日本の先生方の現状に目を向けました。今の日本の教師の最大の悩みの一つは、とにかく時間がないということです。授業や校務に追われ、子供と接する時間や教材研究の時間が十分に取れないという声をよく聞きます。また、保護者からも、子供の幸せを願っているのだが、親として具体的にどう行動するのがいいのか悩んでいる、という声を聞きます。ワークショップを通じて、こうした思いを共有し、「どうすれば子供の教育にかかわっていけるか」を話し合い、対策を考え、意見を出し合って解決に導いていくのが目的です。
日米センター: PPJでは、年間60回以上のワークショップを実施されたとのことですが、毎週1回以上と考えますと、これはなかなかすごい数ですね。ペアレント・プロジェクトの活動は主にワークショップ形式で進められることが多いようですが、この「ワークショップ」という形式の魅力や秘訣はどんなところにあるのでしょうか?
玉山氏: 会議形式や一斉授業のような集まりの場合、講師などが一方的に話すだけだと参加者はおのずと受動的になってしまい、主体的な参加が得られなくなりがちです。ワークショップ形式では、全員が自分の意見を述べ、その結果をふまえてさらにまた意見を述べ…という構成になっていますので、自然と相手の意見にも耳を傾け、出し合った意見のなかから気づきや認識の変化が生まれ、具体的方法論の糸口が見えてきます。そして結果的に、その後の実際の行動に結びつく可能性も高まると考えています。PPJでは、堅苦しく考えず、とにかく「楽しくやる」をモットーにワークショップを行なっています。学校教育が話題になる場面ではよく、悪いのは誰か、という「犯人探し」がとかく行なわれがちですが、PPJでは誰かを吊るし上げることはしません。建設的な意見を出し合ってお互いに前向きに取り組んでいくことを重視しています。
日米センター: 元々は岩手県国際交流協会主催の研修事業から始まった活動ですが、PPJとして独立されるにあたって、ご苦労された点もおありだったのではないかと思います。
玉山氏: 単独で活動を展開するにあたり、いかにして周囲に認知してもらうか、資金面はどうするかといった課題はありましたが、岩手県国際交流協会の宮さんから貴重なアドバイスをいただき、ここまでやってくることができました。今は、人材の育成・確保をどうするか、単発のワークショップではなくシリーズ化して継続的に実施していくにはどうするか、といったことを考えている最中です。
日米センター: アメリカのペアレント・プロジェクトやボパット氏とは今も交流があるのでしょうか?
玉山氏: アメリカで初めてワルーンセミナーに参加してから来年3月で丸3年になります。これまで少しずつ積み上げてきた活動が、ようやく実を結んできたという実感が出てきましたので、ボパットさんに報告したいと考えています。
日米センター: 最後に、ペアレント・プロジェクト・ジャパンの今後の目標や目指している方向性などがありましたら教えていただけますでしょうか。
玉山氏: 一つには、地に足をつけたワークショップをできるだけ数多く開くこと、そして次にはワークショップを継続的に開ける場所をなるべく増やしていくこと、です。数多く、そして継続的に、が鍵だと思っています。というのも、つながりの場を増えれば増えるほど、ペアレント・プロジェクトが広がっていき、大きな効果を期待できるからです。目指しているのは、学びの共同体をつくり、地域の人々を一体化するようなコミュニティー・ビルディングです。例えば、子育て中の母親のためのワークショップや、学校にシルバーの方々に入っていってもらう、そういう活動を通じて地域の「断絶」を解消し、コミュニティーづくりに貢献できればと願っています。
日米センター: 焦らず、気張らず、コツコツと、そして楽しく実践していくことがポイントだということですね。このたびは、大変印象的なお話をどうもありがとうございました。
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