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日米センター 知的交流プロジェクトレポート Vol.2

知的交流プロジェクトレポート一覧

日米センターNYではブックプロジェクトと題する形の研究助成事業を行っています。米国の若手研究者が、大学の教職を離れ、図書執筆とそのための研究にあてる期間を確保するための資金を提供しています。ここでは2003年度採用のブックプロジェクト3件のうちの1件である、バージニア大学レナード・ショッパ氏(Leonard Schoppa, Associate Professor of Politics, University of Virginia)に研究事業の紹介をしていただきます。

子供を生まない選択をする女性 =男女共同参画社会の実現をめぐる動き=

バージニア大学準教授
レナード・ショッパ
レナード・ショッパ氏の写真  ここ数年の日本の動きについての報道を見ていれば、国会で男女共同参画社会の形成をめぐって熱い論議が交わされていることにお気づきであろう。1999年には、「男女共同参画社会基本法」が国会を通過した。2001年、小泉首相は「待機児童ゼロ作戦」を発表し、10年来取り組んできた、保育所の受け入れ児童数増加策の強化に乗り出した。その1年後には厚生労働省が、女性が仕事と子育てを両立しやすくなるための最新の支援策を発表した。これは「少子化対策プラスワン」と呼ばれるプログラムで、就業規則を変更し、子育て期間中の夫婦にフレックスタイムを認めるよう求めている。また、出産後、母親の負担を軽減するため、男性にも育児休業の取得を促すように経営者に働きかけている。

 こうした報道に接した人々、中でも日本で仕事と子育てを両立させようと努力したことのある人々は、日本政府から男女同権主義論が出てきたことが信じられず、思わず目をこすってしまっただろう。日本はスウェーデンが歩んだ道をたどりはじめたのか、本当に性別役割分業を是正しようとしているのか、いったい何が起きているのか、と思ったのではないだろうか。

 確かに、前述の課題について、日本では土壇場の協議が続けられており、その背景には出生率低下に対する懸念がある。2003年には、出生率は1.29にまで落ち込み、人口置換水準(人口を維持するために必要な水準)の2.1をはるかに下回った。人口推計によれば、出生率は当面、ほぼ現在のレベルで推移すると見られており、これは退職を迎える団塊世代を支える現役世代の数が、数年前の推計よりも減ることを意味している。より多くの女性が仕事をし、子供を持たなければ、日本は労働力不足に直面し、労働人口が減少して増税せざるを得なくなる。

 こうした人口統計学的な懸念が、日本の性別雇用形態や関連する社会構造の幅広い改革への原動力となるかは興味深いところである。私は近日発行予定の著書『退出への急流—女性、会社、日本の社会的保護システムの解明』(Race for the Exits: Women, Firms, and Unraveling of Japan's System of Social Protection<仮題>)の中で、状況の推移を評価・分析することにした。この本では、生産コスト削減を目的とした経済改革も検証しており、このほど、国際交流基金日米センター(CGP)より助成金を頂いた。そのおかげで原稿を仕上げることができ、現在、大学出版会の校閲を受けているところである。また、小会議を開催するための資金もできた。10月に、さまざまな分野の学者や専門家の方々(メアリー・ブリントン、エド・リンカーン、古城佳子、土井あや子各氏)にシャーロッテビル(バージニア大学の所在地)に集まっていただき、私の原稿について有意義な意見を頂戴した。

 私の評価では、仕事と子育ての両立支援改革は、女性が結婚し子供を持つか否かを考える際の損得勘定に大幅な変化をもたらすものではなかった。1990年代の「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(いわゆる「エンゼルプラン」)では、3歳未満の乳幼児用に新たな助成対象保育所を20万ヵ所作った。また、政府は育児休業を整備し、現在、親たちは、給与水準の40%の給付金を得ながら、育児休業を10ヵ月まで取得することができる。さらに、1990年代初めと比べると、ほとんどの保育所が1時間延長して保育を行っており、託児所の営業時間に合わせて母親のスケジュールを調整できるようにフレックスタイム制を導入している会社もある。

 こうした変革は、出産後もキャリアアップを目指して頑張っている一握りの女性にとっては生活を支援するものとなったが、だからといって、こうしたライフスタイルを選ぶ女性の数を増やすには至らなかった。改革前(1985〜1989年)は、26%の女性が産後も仕事を続けており、そのうちの20%は8週間の出産休暇後に職場復帰し、6%が続けて育児休暇を取得した後に復帰していた。最新(1995〜1997年)のデータによると、仕事を続ける女性は22%に「下落」している。育児休暇制度により、長期休暇の後に職場復帰する女性が増えた(11%)ものの、今やそれよりも短い産休期間で職場に復帰しようとする女性は11%に過ぎない。最近では、32%の女性が結婚退職し、また40%の女性が出産後に退職している。つまり、両立政策を利用しない女性の全体的割合は、改革前よりも「高い」状態にあるのだ。

 3歳未満の乳幼児用育児支援施設の追加も、新たに子供を生んだ母親のごく一部に役立っているに過ぎない。施設を20万ヵ所追加したことで、保育を受ける1〜2歳の乳幼児の比率は、1989年の13.2%から、2000年には17.5%に上昇したが、フランスの託児所やスウェーデンの保育所、米国の働く親たちが利用している各種育児支援施設に比べ、ずっと低くなっている。

 改革が満足な結果を出せない理由について、私が説明の拠り所としているのはアルバート・ハーシュマン氏の考え方である。同氏は、名著『組織社会の論理構造:退出・告発・ロイヤルティ』Exit, Voice, and Loyalty(1970年出版)の中で、「告発」(voice)に対応する仕組みの社会制度は、「退出」(exit)に直面するとうまく機能しないと述べている。ハーシュマン氏は、その社会構造の例として、米国の公立学校制度をあげている。1960年代後半、都市部の学校レベルの低下に業を煮やした親たちが、子供たちをそのような学校に行かせないようになった。しかし、そうした動きにもかかわらず、学校当局が学校全体の学力向上のために立ち上がることは、ほとんどなかった。というのは、公立学校の官僚機構は「退出」より「告発」に対応する仕組みになっていたからである。

 厚生労働省の官僚機構の場合もこれと同様である。多くの女性が仕事と家庭の両立は大変だと感じ、そのいずれか一方から「退出」する中で、政府は性別役割分業の変革を主導することは容易ではないと思うようになった。女性が仕事に見切りをつけると、将来の労働力不足への不安が生じる。しかし、一度仕事を離れた彼女たちは、雇用制度の大幅な改革を求めて政府に働きかける必要など感じなくなる。同じことが、結婚や子育てを選択しない女性にも言える。一度その方向で落ち着くと、男性が子育てに参加するため勤務時間を短縮できるような社会変革を目指し、女性が戦う必要など感じない。政府は変革が国益にかなうことを前提に「男女共同参画社会」の実現を目指して努力してきたが、困難に立ち向かうワーキングマザーから一層の支援を得られなければ、まだ道は半ばなのではないだろうか。

(原文は英語。日米センターで和訳)
*このページに表明された意見・見解は研究者個人のものであり、日米センターの意見を代弁するものではありません。
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