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日米センター 知的交流プロジェクトレポート Vol.8

知的交流プロジェクトレポート一覧

「核の要求 —東アジアと中東の対照的方向性—」

カリフォルニア大学アーバイン校教授 エテル・ソリンゲン

エーテル・ソリンゲン

CGPの「知的交流プログラム」は、「ブックプロジェクト」をシリーズで実施することによって、研究者の重要なニーズのひとつへの対応に乗り出しているといえます。2年目を迎えたこの新しい助成の取り組みは、アメリカの研究者たちの国際交流や新たな学術・政策ネットワーク形成を図りつつ、図書の執筆を手助けしようとするものです。

私は第1期助成対象者である3名のうちのひとりとして、明確でユニークな特徴をもったこの新しいプログラムが順調に動き出していることに深い感銘を受けています。
その特徴とは、第1に、助成対象者は自ら選定したアドバイザリー・コミッティー(通常、日米の学術・政策専門家で構成されます)からプロジェクトのさまざまな段階で重要なフィードバックを得られる点が挙げられます。大変幸いなことに、私は中心的なアドバイザーとして、東京大学猪口孝教授(当時)、カリフォルニア大学T. J. ペンペル教授、防衛大学校長西原正教授ら著名な方々の協力を得ることができました。また、ほかにも多くの方々から私の研究事業の実質的な諸側面に対して重要な考察をお示しいただきました。
第2に、執筆活動を充実させ、支援するためにワークショップを計画し、知的な交流を行なうことが奨励されている点です。

こうした活動を日米両国で行なったことにより、私は原稿を執筆する上で非常に参考になるフィードバックを得ることができました。特に貴重な機会となったのは、CGPが学術理論のみならず応用分野も含め、さまざまな立場にある専門家を招き、2005年3月に東京で開催した専門家討論セミナー『核の要求:東アジアと中東の対照的方向性』でした。私はこの場で講演者としてこの研究事業の内容についての中間発表を行ない、出席者の方々からたいへん有意義なコメント、意見、そして提案をいただきました。この会議では、東京とニューヨークにあるCGPのスタッフの方々のあたたかい支援がなければ実現しなかったものです。

ではここで私の研究事業について紹介します。表題は上記セミナーと同じ『核の要求: 東アジアと中東の対照的方向性』です。

なぜ中東から東アジアにかけての地域では、いくつかの国家が核兵器を求めてきたのか。なぜある国は核の権利を放棄する一方、他の国は核保有の権利をより強く主張してきたのか。このように核の保有/廃棄に関して地域によって異なる傾向が見られるのか。どちらの傾向が今後10年間に広まってゆくのか。さらに最も重要なこととして、核の問題は国際関係論研究にどのような位置づけをもつのか・・・。

当研究事業は、これらの問いに答えようとするものであり、特に「なぜ中東と東アジアが核について異なる方向に歩み始めたのか」を解明しようと試みています。イラク、イラン、イスラエル、リビアといった中東諸国については、核兵器保有疑惑が数十年にわたって持たれ、そのなかでもイラン、イラク、リビアのこの動向は、核拡散防止条約の義務に反するものでした。

一方、東アジアの日本、台湾、韓国は、1970年代に核拡散防止条約を批准し、同条約国の一員としてIAEA(国際原子力機関)から高く評価されています。東南アジアは非核地帯を設定し、これを1997年にバンコク条約として発効させています。北朝鮮はこの地域の例外であり、その核開発は、東アジアがこれまで歩んできた核の方向性から別の可能性へ逸脱するきっかけを与えるものとして、あらためて懸念を呼んでいます。

現実的問題をめぐる議論の基礎として、執筆中の図書では、核化と非核化が生じやすい一般的な条件を考察し、こうした条件について、国際関係理論の最新の見地から検証しています。過去10年間のグローバル化、民主化、そして国際機関に関する研究の進展により、地政学を基本とするネオリアリズムのような古典的な視点を補完したり、代替したりする新たな考え方が生まれています。
この普遍的な問題の解明にあたっては、ある重要な法則が見過ごされる傾向があるといえるでしょう。その法則とは、ある国の政治経済やグローバリゼーションについて国内の動きが実は、その国の核保有/廃棄に関する行動に非常に重要な意味をもっているということです。この国内的相違から考えると、東アジアと中東の核に関する異なる態度を理解することができます。

これまでの研究では、それぞれの国の核に対する態度に関して国内的な要因は十分に厳密には検討されてきていたとはいえません。国内的、地域的、国際的な利益をよく考慮した結果として、世界経済への統合モデルを追求している指導者にとって、核保有はそれほど魅力的ではなく、より負担の大きなものだというのです。この観点から見ると、中東の指導者にとって核保有の障壁は東アジアの指導者の場合ほど高くなく、また、核保有に向けてのインセンティブは強かったといえます。
東アジアには国際化を目指す指導者が集中し、それぞれの国家において核化を拒絶する方向にインセンティブがはたらいたと説明できるでしょう。中東の大部分では、政治的生き残りをかけた内向きの戦略への傾倒が見られ、東アジアとは逆に、核兵器開発に向けてのインセンティブが強まったのでしょう。このように、核に関する選択を説明するには、国内の政治的生き残りのモデルを検討することが極めて重要であり、結果論やそれ以外の要因の考察からは導かれません。

両地域とも、核の方向性には進化が見られ、それが日々のニュースの焦点にもなっています。このため、執筆にあたっては常に内容を更新し、新たな資料を盛り込んでいかなければなりません。本研究事業の主要目的は、前述の主題に関する学術文献の充実に寄与するとともに、執筆した本を政策関係者の利用に供することにあります。これまでに当プロジェクトさまざまな側面を、いくつかの国際会議(国際関係論学会の会合、アジア研究国際会議、アメリカ政治学会の会合)で発表しています。いずれの会議も、基本的な考え方に磨きをかける機会となり、プロジェクトの主要目的を推進する上で役に立っています。

最後に一言でまとめるとするならば、CGPの「ブックプロジェクト」は、たいへんよく練られたプログラムといえましょう。このプログラムにより、今後も意欲的な研究者による有意義な研究が生まれ、日米共通の関心分野における新たな共同プロジェクトが創造され、進展してゆくことに大いに期待しています。

(Etel Solingen, Professor, University of California, Irvine)

*原文は英語

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