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日米センター 知的交流プロジェクトレポート Vol.14

知的交流プロジェクトレポート一覧

日米貿易の環境影響評価研究を終わって

神戸大学大学院経済学研究科 教授
特定非営利法人ごみじゃぱん(Gomi-jp)代表
石川雅紀

はじめに

安倍首相が、6月のハイリゲンダムサミットで、2050年に世界全体での温暖化効果ガスの半減という目標を提案する意向であることが報じられました。我が国が環境問題でふさわしい役割を果たす ことを期待します。ポスト京都の枠組みに関する議論では、「世界全体で半減」とかかれているように、京都議定書に加わっていないアメリカ、中国 および途上国を含めた世界全体での削減計画を作ることが最も重要です。

貿易は環境によいか? 〜日米共同研究の実施〜

私たちは、世界で最も大きな貿易の一つである日米貿易に注目しました。貿易はそれぞれの国が得意な商品の生産に特化してそれを交換すると考えられますから双方にとって経済的なメリットがあります。しかし、環境面でも常にメリットがあるのでしょうか?懸念されるのは、ある国で環境規制を厳しくすると、汚染物質をたくさん排出する産業が、環境規制がゆるい国に移転する可能性です(Pollution Heaven 仮説といいます)。このような場合、世界全体での排出量削減につながらないことになります。

これまで、先進国と途上国間での貿易と環境の関係に関する研究がありましたが、不思議なことに非常に大きな取引額である日米貿易は取り扱われてきませんでした。しかし、その大きさからすると、日米貿易が環境面から見たときに有益かそうではないのかは重要な問題です。

日米センター知的交流プログラムの助成を受け、この問題に、神戸大学、東京国際大学、米国タフツ大学の国際チームで取組み、その成果が、英文学術誌「Energy Policy」に論文(*1) として掲載されることになりました。

結果は、日米貿易によって、1995年に世界全体で炭酸ガスの排出量を790万トン削減したと推計されました。内訳は、日米貿易によって日本は670万トン増加、アメリカで1460万トン削減されています。この量は、両国の総排出量の1% 以下ですから、非常に大きいとは言えません。しかし、両国とも第3国との貿易でそれぞれの国の排出量の約4%程度を削減しているとの推計結果となりました。

総じてアメリカの産業の排出量は対応する日本の産業の排出量よりも多くなっていました。分析作業を通じて、競争力が強い産業は相対的に炭酸ガスを多く排出していることが見いだされました。

この結果から、アメリカの産業が対応する日本の産業と同じ環境効率(炭酸ガス排出量1トン当たりの生産額)を達成すればアメリカの産業部門の排出量は半分以下になると考えられます。また、排出量が多い産業の競争力が強いことは、このままでは事態がより一層悪くなる可能性を示唆しています。何らかの政策的対応が必要です。

*1 The Carbon Content of Japan-US Trade, Frank Ackerman, Masanobu Ishikawa and Mikio Suga, Energy Policy in press

研究室の外にある課題

我々の研究は、以上のような成果を論文にまとめ一段落となりましたが、現実の社会に目を向けてみると、大きな問題があります。目前に京都議定書の第一約束期間(2008-2012)が迫っており、我が国は1990年比で6%削減を約束していますが、2004年で既に7.4〒増加しており、目標を達成するのは簡単なことではありません。

大学の講義で地球温暖化に関する事実や研究に関する資料を示してこの状況を説明しますが、学生が当事者意識に欠けているように感じるときがあります。レストランでメニューを見て料理を選んでいるように見えるのです。食べる立場と料理する立場を無関係と考えているようです。地球環境問題に関しては、無関係でいられる人はいませんし、すばらしい解決メニューを提供してくれる三つ星レストランもありません。

これまでは、社会の基本的なルールである法律や基盤となる制度は「お上」としての行政が実質的に決めてきました。「市民」は、「お上」に協力を要請される対象でした。一方で「市民」や民間企業は自分たちで解決できない問題に直面すると「お上」に頼る(裁定を期待する)傾向がありました。しかし、持続可能な社会への移行というような多様な解があり得るような問題に対しては、「お上」も「市民」もとまどうばかりです。持続可能な社会への移行は、入学試験問題のような与えられた条件の下で唯一の解があるような問題ではなく、むしろ、どの路を選ぶかという選択の問題です。「市民」や民間企業は正解のない問題で社会的な選択を行なうことに慣れなければなりません。しかも選択の結果の予測は大変不確かです。これは大変難しい問題です。暗闇の中を持続可能性という出口を求めて一歩一歩、歩くようなものです。座って待っているだけの人は絶対に出られません、自ら立ち上がって歩む人だけが出口に到達できる可能性があります。 この課題について、学生を巻き込んで考え、実践につなげたい、と考えるにいたりました。

行動に移して  〜「Gomi-jp」の挑戦〜

このアプローチを実践するために仲間とともにNPOを立ち上げました。NPO法人ごみじゃぱん(通称Gomi-jp)と言います。Gomi-jpの目指すところは、持続可能な社会を目指して、ごみを削減することです。活動の特徴は、産官学民の連携で無理せずごみが減らせる仕組みを作ることです。このために、丁寧なインセンティブ設計とコミュニケーション、個別の問題解決が核となります。社会デザインという言葉が適当かもしれません。

街頭でのPRの様子の写真1 街頭でのPRの様子の写真2
街頭でのPRの様子

Gomi-jpの活動の一つとして今年の2月、神戸市で容器包装ごみの発生抑制を目指した大規模な社会実験を行いました。核となるアイデアは生活者に容器包装ごみに関する情報を伝えることによって生活者が簡易包装を選択し、この情報を学術的なレベルで普遍化して企業に伝えることによって、全ての商品の容器包装をより簡易にする事を目指しています。
学生がコープこうべ六甲アイランドで他の商品よりも容器包装が簡易な商品を探し出し、NPOが簡易包装として推奨しました。消費者への情報伝達を重視し、交通広告、チラシ、チンドン屋さんなど様々なメディアを使いました。
結果はメディアの注目を集め、対象商品はキャンペーン期間中に統計的に有意に多く売れました。6割以上の住民がキャンペーン商品を購入しており、プロジェクト内容を理解している住民に限定すると3/4が購入しています。購入していなかった住民の半分は「購入機会が無かった」また、1/3は「プロジェクトを知らなかった」を理由として挙げています。

店頭でのごみ減量キャンペーンの様子の写真
店頭でのごみ減量キャンペーンの様子
また生活者の意識も明確に動いていました。事前調査と事後調査から、環境に関する関心は50%から10ポイント上がりました。他の項目はほぼ変化がないことと比べて大きな変化です。「地球環境を考えた生活は快適と思う」に対する賛否は、2:1から3:1に増加しました。日常の買い物で環境に配慮した生活ができることを実感したからではないかと思います。メーカー、流通事業者に対するイメージは約半分の回答者が向上したと回答しており (*2)、企業側にとっても負担ばかりではなく、メリットもありました。トレードオフやゼロサム (*3)ととらえられがちな環境と経済の関係を違った方向から見るきっかけになると思います。

今回のキャンペーンでは店頭商品数のわずか1%しか対象としていませんし、期間も1ヶ月と短かったのですが、初めての試みとしては期待以上の成果が上がったと思います。今後も当事者として問題に向き合う学生、生活者を増やすことを目的にこの試みを更に進めてゆくつもりです。

*2  「やや向上した」を含めると7割
*3  自分の得は相手の損といった関係

まとめ

学術研究は、真理の探究が目的ですから必ずしも「役にたつ」ことは必要ではありません。しかし「環境問題」は具体的な問題であり、解決策が必要とされています。
この意味で、環境問題に学術的に取り組むのであれば、成果が学術体系の中で整理され、学問に貢献するだけでなく、環境問題の解決につながることが望まれます。どちらかが欠ければ学問として不十分か、環境に名を借りた自己満足に終わるでしょう。後半で紹介したGomi-jpの活動は、通常の学問から社会へ向かってややはみ出した活動です。
しかし、短い経験ですが、学生の成長は目覚ましく、自分自身も含めて参加している社会人にとっても大変な刺激となっています。研究者としての今後の課題として、この種の活動自体を体系化することが可能かどうか考えてみたいと思います。

2007年6月

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