本文へ 日米センター(CGP)は日本とアメリカにて、助成、フェローシップ、ボランティア、人物交流、情報発信を行なっています。
国際交流基金 日米センター
CGP NY | 国際交流基金 | English | サイトマップ
トップページ
日米センターとは
公開イベント
団体で助成金をお探しの方へ
個人向け支援・ボランティアの機会をお探しの方へ
CGPの主要事業
情報室(刊行物、寄稿など)
Newsletter Eメール配信
コラムス
特別寄稿
スタッフ通信
書籍・報告書
アクセス
お問合せ
FAQ
更新履歴
日米センター公募助成プログラム
CULCON(カルコン) 日米文化教育交流会
メール配信サービス
コラムス
情報室(刊行物、寄稿など)

市民風車・農民風車・地元風車:地域密着型発電用風車の比較社会学


各界で活躍する安倍フェローによって書かれた、日米関係や現代政治・社会のトピックに関する寄稿文を掲載するコーナーです。本コーナーのための書き下ろしです。

市民風車・農民風車・地元風車:地域密着型発電用風車の比較社会学 長谷川公一(2003年度安倍フェロー)
長谷川公一

日本では、2001年9月に運転を開始した北海道浜頓別町のはまかぜちゃんを先頭に2006年夏までに計10基の「市民風車」が建設されている。市民出資で総額約18億円も集めえたことは、日本の市民運動・環境運動の歴史においても特筆すべきことである。

ミネソタ州の農民風車(2004年12月3日撮影)  約250人の農民が組合をつくり合計11基の風車を所有している。
ミネソタ州の農民風車- (2004年12月3日撮影)約250人の農民が組合をつくり合計11基の風車を所有している。
市民風車は、ドイツ語のBürgerwindparkの訳である。英語には「市民風車」にあたる概念がない。英語に該当する表現がないので、Hasegawa(2004)では、市民共同発電所に citizen-owned power plant、市民風車にあたる市民風力発電所にはcitizen's communal wind power generatorの英語をあてた。

市民風車に比較的似た感覚でよく使われるのは、アメリカではcommunity-based wind power、イギリスではlocal wind farmである。「地域密着型風車」、「地元風車」というべきか。農民や協同組合など、地元民出資の発電用風車をさす。

アメリカでcommunity-based wind power、略してcommunity windをもっとも活発にアドボケートしてきた、ミネアポリスに本拠をおくWindindustryというNPOは、次のように定義している。「地元の利益を最優先するような地元所有の商業規模の風力発電プロジェクト。地元所有とは、地域社会のメンバーが、土地の使用料、税収、税以外の他の収入を得ることにとどまらず、直接、重要な出資を行なうことを意味する」。ポイントは、地元出資・地元所有・地元利益という点にある。彼らは、1)自治体風車、2)農村電力協同組合風車、3)学校風車(高校、大学など)、4)農民風車、5)風力協同組合風車、6)ネイティブ・アメリカンの風車の6種類に分類し、具体的なプロジェクトを紹介している。

この中で日本の市民風車に比較的近い小口出資型プロジェクトは、4)農民風車と5)風力協同組合風車である。私もミネソタ州で聴取調査を行なったが、アメリカの事例では、出資者は、一定地域内の農民や地域住民に限られている。日本のように全国の不特定多数の市民に出資を呼びかけるわけではない。そこが日本の市民風車との違いである。

市民風車わんず見学会(2005年6月18日撮影) 説明を聞く環境社会学会のメンバー、於・青森県鰺ヶ沢町。
市民風車わんず見学会 (2005年6月18日撮影)-説明を聞く環境社会学会のメンバー、於・青森県鰺ヶ沢町。
発電用風車は、温暖化問題を背景に、21世紀初頭の有数の成長産業となったが、同時に大きな曲がり角にさしかかっている。大規模洋上風力発電に代表されるような大型化であり、General ElectricやBP、Shellなど、巨大エネルギー資本、巨大石油資本の参入が目立っている。だからこそ、それに対峙して、市民風車や農民風車、地元風車の取り組みが各国で試みられているのである。

世界の風力発電の立地点を歩いてみると、10基も20基も、さらには数十基も設置されているウィンドファームと、せいぜい数基程度が点々と設置されているところに大きく二分されることがわかる。この違いは、企業風車中心の国と、地域ベースの風車中心の国との相違である。アメリカやオランダ、日本に特徴的なのは、大規模ウィンドファームが目立つことである。それに対して、デンマークや北ドイツに多いのは、1基から数基程度までの小規模サイトである。個人や協同組合による地元出資のプロジェクトであり、出資者に有利な固定価格での買い取り制度が小規模プロジェクトを育ててきたからである。

日本やドイツ・デンマークなどでの実績をもとに、市民風車を定義すれば、「不特定多数の市民が共同出資して建設・運営する風力発電所」ということになる。このように概念を明確にすると、これまで十分自覚されてこなかったが、日本は、ドイツとともに、「不特定多数の市民」による「共同出資」という点で、市民風車の先進国であり、世界のリーダーであることが明らかになる。日本の場合は、地元だけでは出資者が限定されてしまい十分な資金が集められないという地域の経済的基盤の弱さに規定されているともいえるが、他方では、それが、全国規模に出資者を拡大しえた背景でもある。

市民のイニシアティブによるさまざまな動きは欧米がさかんで、日本は後追いだという「先入観」が強いが、自然エネルギーについては、とくに風力発電については、必ずしもそうではない。日本でも、アメリカでも、ヨーロッパでも、地元重視・地域重視のプロジェクトを育てたいという背景は、長年、地域を悩ませてきた強風を活かした風力発電ビジネスによる経済的利益が、おもに地域外からの大手資本および大きな電力会社の収益になって、地域外に流出していくだけでよいのか、という問題意識からである。

安倍フェローとして、2004年から05年にかけて、アメリカ・オランダ・ドイツ・イギリスで地元密着型風車の調査をしたが、それぞれの国で、地域の実情と制度的背景にあわせて、地域風車の様々のビジネス・モデルが模索されていることが理解できた。運動性(理念)と事業性(収益性)、地域性、これらをどう結びつけていくか、という点に、地球温暖化問題の時代における環境運動の今日的課題がある。


2007年3月
Profiele

長谷川 公一(はせがわ こういち)
東北大学大学院文学研究科教授。専攻は環境社会学、社会運動論。日本の市民風車プロジェクトのブレーンの1人。宮城県地球温暖化防止活動推進センター・センター長、都道府県地球温暖化防止活動推進センター連絡会代表幹事。2003年度安倍フェロー として、ミネソタ大学客員教授を務めた。主な著書に、Constructing Civil Society in Japan: Voices of Environmental MovementTrans Pacific Press, 2004年)、『環境運動と新しい公共圏:環境社会学のパースペクティブ』(有斐閣、2003年)、『脱原子力社会の選択』(1996年、新曜社)などがある。


TOKYO OFFICE
国際交流基金(ジャパンファウンデーション) 日米センター
160-0004 東京都新宿区四谷4-16-3
Tel (03)5369-6072 Fax (03)5369-6042
NEWYORK OFFICE
The Japan Foundation Center for Global Partnership, N.Y.
1700 Broadway, 15F, New York, NY 10019, U.S.A
Tel (212)489-1255 Fax (212)489-1344