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特別寄稿
政治的に分極化した米国とどう付き合うのか

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日米各界で活躍する方々に寄稿いただく「特別寄稿」のコーナー。今回は日米センターと各種事業で協力関係にある財団法人日本国際交流センター(JCIE)の山本正理事長より、2005年9月に日米青年政治指導者交流プログラム(共催:日米センター、JCIE)の事業評価のための訪米ミッションに参加した際の印象を中心に、政治的に分断状態であると言われる今日の米国に対し、交流事業の担い手たちに何ができるのか、特に政治交流の現場で今何が求められているのかを論じていただきました。


政治的に分極化した米国とどう付き合うのか

山本 正 氏
財団法人
日本国際交流センター
理事長 山 本  正
この秋に、米国を訪問する機会が二度あり、しかも、政治交流に関わる仕事が多かったこともあり、米国の政治のあり方の変化についてあらためて深く感じるところがあった。
9月初旬には、日本国際交流センター米国青年政治指導者会議(American Council for Young Political LeadersACYPL)との共催による交流プログラムへの日米センターの継続的助成の評価のための訪米ミッションに村田晃嗣教授、茶野純一日米センター副所長などに同道したもので、ワシントンとアトランタを訪問した。
10月後半には、当センターがワシントンで開催した東アジア・コミュニティに関する会議に出席することが主たる目的であったが、来年早々に日米議員交流のプログラムによる日本議員団訪米の下準備のための会合をいくつか持った。

ACYPLとの交流は、地方議員の参加に重点を置いた交流であるが、もう30年以上の交流の歴史がある。日米議員交流は、1967年の第一回下田会議で基調講演をしたマイク・マンスフィールド上院院内総務などが提案し、1968年に始まったもので、これも37年の長い歴史がある。
今回の9月の訪米の時も村田教授などと一緒に昼食をし、10月の訪米の時にも再びゆっくり昼食をともにしたトム・フォーレイ元下院議長(元駐日大使)は、1969年の第二回訪日議員団の一員として来日して以来、13回も日米議員交流に参加しただけに、会話の内容もややもすると30年もの年月の間の日本と米国のそれぞれの国内的な政治変化や、それを背景にする日米関係の変化と日米交流の変化に話しが集中した。このような会話は、1973年の日米青年政治指導者交流プログラム第1回の米国代表団一員として来日したころはジョージア州アトランタの市会議員だったのが、市長から連邦上院議員にまで“出世”したワイチ・ファウラー、など多くの政界関係者との懇談でも繰りかえされたが、基本的な話題は、米国内の共和、民主の二大政党の間の対立の先鋭化についてであった。

筆者が日米議員交流の仕事を始めたころに最も深い感銘を受けたことは、政策論議では相当厳しいやりとりをする共和党と民主党の議員たちが、食事の時、酒を飲むとき、そして新幹線で移動するときなどには、きわめてうち解けて冗談を言い合い、訪日の機会を党派を超えた個人的な協力関係を作るために活用しているようにすら見えたことである。
当時、日本の政党間のイデオロギー的対立関係が顕著であっただけに、民主党の院内総務のフォーレイ議員と共和党の院内総務のボブ・マイケルが政治ジョークの競演を深更まで続ける様子は、羨ましいものであった。
ところが、今の米国政治では、そんな情景がほぼ見られなくなったというのである。党を超えて議員同士で食事を一緒にすることもあまり無くなり、相手の党の人間と言葉を交わすことすらあまり無いというのである。議会のなかでの討論も、かってのようにジョークまじりに相手を揶揄するといったものは影をひそめ、ギスギスしたものになってしまった。
反対党の議員に対しても、個人的な批判は控えるのが、議会人の“デコールム”と呼ばれる礼儀作法とされていた。ところが今では、個人攻撃は日常茶飯事になり、議会の外での党派を超えた付き合いは、相当経歴の長い議員達に限られつつあるとのことである。筆者の経験でも、超党派の海外派遣議員団を組織することが困難になりつつある。

米国のこのような傾向は、宗教的右派を中心とする偏狭なナショナリズムの影響によるところが大きいということは、よく聞くことであるが、最近の訪米中に会った政界関係者もそのことを否定しない。このような流れは、米国の人たちが味わったことのないような9.11の屈辱的な体験、イラク情勢をめぐる慢性化しつつあるフラストレーションなどによって一層先鋭化しつつあると言えよう。米国議会で「敵か味方か」を短絡的に区別する安易なナショナリズムがはびこるような状況では、日本や諸外国の議員との対話をはかる議員交流を促進することが容易でないことは言うまでもない。
このような傾向がフィランソロピーの世界にも影響を与えつつあるということは、10月末の訪米の時にたまたまワシントンで年次総会を開いていた”Independent Sector”という民間財団やシビル・ソサエティの全国組織の関係者の何人かから耳にした。国益を尊重し、米国の価値観や国家体制を増進するようなフィランソロピーのみが免税措置を受けるに値するといった議論が増えつつあるというのである。
そのような米国とどうつきあっていくかということは、容易な課題ではない。特に政治交流ともなれば一層大きな努力を必要とするように感じる。戦後の一時期米国政治・社会に大きな影響力を持ったマッカーシーイズムもあまり長く続かなかったではないか、と慰めてくれる米国の友人もいるが、何年ものあいだ手をこまねいているわけにはいかない。ただ実際には、困難な環境の中にあっても、いくつかの道があるような感触を最近の訪米で感じることができた。

一つは、日米両国、あるいは国際的な共通の課題をめぐる日米の議員の交流・協力活動の可能性である。今回話し合う機会のあった下院共和党の重鎮であるジム・コルベ議員は、エイズの分野で大きな役割を果たしているが、来年の1月には、議員団を連れてアフリカに視察に行くとのことである。筆者が関係しているエイズ・結核・マラリア対策のための「世界基金支援日本委員会」の議員タスクフォース(幹事・逢沢一郎議員)のなかで検討を始めている米国議員との合同現地視察や意見交流について、コルベ議員も大いに関心を示し、そのためにも日本を訪問したいと言っていた。因みに、上院院内総務のビル・フリスト議員もエイズの分野で活発に活動していることは良く知られている。感染症問題以外にも、環境問題、開発問題など多くの共通の関心分野での議員交流の可能性は大いにある。

米国議会関係者の間で高まりつつあるもう一つの関心事は、地域的連帯を深めている東アジアの将来であり、中国の躍進についての興味と懸念を反映して、日本への関心の回帰であり、下院外交委員会アジア小委員会委員長のジム・リーチ議員などの議会関係者の間に明白に感じることが出来た。ただ、このような交流は、大きな議員団を組織して日本に招待するのでなく、個別的に会議に招待したり、意見交換のための来日プログラムをオファーする方が効果的ではないかとも思った。

もう一つ、今後促進すべきものとして、米国の地方に密着した政治交流をあげることが出来る。ACYPLのような地方議員や議員スタッフが参加する交流では、連邦議員レベルでの顕著なイデオロギー的対立はあまり見られない。地元が直面している経済の活性化、社会問題の解決などの具体的政策課題に向かい合って仕事をしている人たちにとって、イデオロギー的なものへの関心はワシントンにおけるほど高くない。南部、南西部など、日本への関心が高かったにもかかわらず十分交流の機会がなかったような地域の政治関係者との交流は、日米関係にとって中・長期的な効果をあげることは間違いないものと考える。

当然のことではあるが、一般の国際交流と同様に、あるいはそれ以上に政治交流において重要なことは、長期的な視点を持つことであろう。短期的に成果をあげようとすれば、ロビー活動と誤解されかねない。一握りでも良い。10名とか20名の中央や地方の米国の有力な政治家が、政治の流れが如何に変わろうとも、日本に関心を持ち、友人を持ち、親しみを持ち続けるならば、日米関係ためだけでなく、世界的な課題の解決のための日米協力の増進にも大きな影響を与えることが出来ると思うのである。

2005年11月
(了)
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