16号(2)

仙台クリエイティブ・フォーラム
「交差するクリエイティブ・パワー~世界から地方へ、地方から世界へ」開催
概要報告 その2

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3. <パネル・ディスカッション>(以下敬称略)

進行:本江正茂東北大大学院准教授

フォーラムの写真1
右からドリュー・ヘメントさん、鷲田めるろさん、
中谷日出さん、小川直人さん

小川直人(「ローグ」メンバー):「ローグ」の名称は、Dialogueから取られた。「-logue」には対話、話すという意味がある。最初「-」をつけていたが、インターネットの検索では「-」は「●●以外」という意味となり、検索にかからないことがわかって、Logueと名称を変更した。仙台市のクリエイティブ産業の振興をめざした研究会が出発点で、半年の間に、在仙の多彩なクリエーターたちへのインタビューとレクチャーを開催した。その報告をウェブに掲載し、毎日更新していた。一旦活動を停止していたが、先日再開した。再開するにあたっての新しいコンセプトは「ローカル」、「地方」をどう捉えるかであり、すなわち東京に対して、地方都市としての仙台市はどう見えるのかということである。これまでの中央と地方という捉え方ではない「地方」のあり方を定義できないかと考えて活動している。

鷲田めるろ(金沢21世紀美術館キュレーター):金沢21世紀美術館主催で2008年秋に行なわれた「金沢アートプラットフォーム」にはキュレーターという立場で関わった。「自分たちの生きる場所を自分たちでつくる」というテーマで、市内各地の会場で実施された展覧会。内外の19人のアーティストが参加し、空家や空店舗などを会場にして政策やワークショップを行なった。会場を巡るツアーも開催した。このプロジェクトで大切にしたことは、まず、多様な市民の.方々に関わってもらってつくる形式にしたこと。2番目に場所と関わることを大切にしたこと。例えば、神社、古い町家を探して、19人の作家や、運営スタッフが一緒に作品を創ったり、その間をつなぐツアーを創ってもらったりした。

このほか、CAKKのメンバーとして活動も行なっている。これは、アーティスト、学生、建築家がグループとして活動しているもので、市内の町家を借りて、アーティストに泊まってもらったり、展覧会をやったり、ワークショップしたり、多様な活動を行なっている。行政が主体の活動とは別に、街で活動したい人が集まっており、建築と美術の両方の分野を横断した活動であり、ソウル、沖縄、上海、台北、ベネルクス、古都のオルタナティブなネットワークを作りたいと考えている。

中谷日出(NHK解説委員):ナビゲーターを務めた「デジスタ」は単なる番組ではなく、「ムーブメント」と捉え、将来の展望、ビジョンありきをもって番組を考えた。世界に活躍できるクリエーターを育てたいと考えている。世界を知って、世界に日本にコンテンツを紹介してほしい。このような集積があって、多様なムーブメントが起こってくるのだと思う。

宮城・仙台は芸術民度も高く、仙台市は街としても人気も高い。仙台市は、アート・フェスティバルのムーブメントには適していると思う。しかし、まだまだ必要な要件があると思う。市民のニーズ、フェスティバルを愛する気持ち、フェスティバルを認める気持ちが大切。しかし、最も必要なものは、フェスラボのような機能。例えば、世界で一番素晴らしいフェスティバルのムーブメントは、人口4万6千人、印刷と製紙業の街、フランスのアングレーム市で開催されている漫画「バンド・デシネ」の国際フェスティバル(アングレーム国際マンガフェスティバルFestival international de la bande dessinée d'Angoulême)である。年1回開催されているが、世界中のファン、20万人が集まる。

映像研究所や映像専門学校、アニメ・映像センターを中心としてその周りにフランス中からコンテンツ関連企業を誘致して、600人の雇用を創出している。アニメ・映像センターは小さな古いお城をオフィスにしており、非常におしゃれな環境となっている。小学生たちがオフィスをたずねCG制作をしているお兄さんの姿を見ることができる。ポスト・ハリウッド、ハリウッドを越えることを目指している自治体でどのような展開をしていくか注目される。仙台市の役に立つ事例だと思う。

フォーラムの写真2
本江正茂さん

もう一つ好きなやはりフランスのル・マンに近いラバルという町。市長が科学技術を振興している。『ラバル・バーチャル(lLaval Virtual)』というバーチャル・リアリティのフェスティバルを始めた。小さな町だが世界中からファンが集まり、町全体でバーチャル・リアリティを楽しんでいる。一般の人にわかりやすくバーチャル・リアリティを活用しており、世界初の野外のテーマパークまで出来ている。ラバル・マイエンヌ・テクノポール研究施設も設置されており、そこに教育があり、イベントがあり、そこから世界に伝播し、そして世界から人が集まるサイクルが出来てくることが大切だと思う。

アメリカのアカデミー賞も最初にアカデミー、研究機関があったからここまで発展した。研究機関が常に新しいものやアイディアを生み出し牽引していくことが大事だと思う。

ヘメント: 小川さんに質問。オン・ライン・コミュニティはあるのか。

小川: 実際にはface to faceでやっており SNSではない。ローカルであることは、いつでも会える街の規模でもあると思う。

ヘメント: インターネットは、国際的な広がりを可能とするのと同時に地域を活性化できると思う。金沢については、人々との交流を重視していることに感心した。どのようにして人々を参加しようと気にさせたか。成功した方法は?

鷲田: 多様なかかわり方、窓口を設定することがキーとなる。能動的に自分でプロジェクトを立ち上げられるようになることが大事。

本江: 論点が4つ出てきた。1.都市 2.コアになる組織、3.オーディエンスをどう獲得し巻き込んでいくか4.テクノロジーとメディア。特に、都市と自分の仕事はどう関係しているかを聞きたい。どんな場所でどう関わってきているのか。

ヘメント: フェスティバルには 2種類ある。一つは、街とそれほど関わり無いもの、たとえば街から街へと移動するもの。もう一つは、ある特定の都市と深い関わりのあるフェスティバル。ルーツがその街にあるもので、「フューチャーソニック」は後者であり、他の都市でできるタイプのものではない。私はその都市の人々としっかり対話して街を変えていきたい。フェスティバルとマンチェスター市は相互に影響し合って、フェスティバルも変化を遂げ、市も変化を遂げてきたのではないかと思う。

鷲田: 金沢は、人と人とのつながりが濃い。ジャンルを超えてつながりやすい。家賃が安いので、活動のベースも自分たちの小遣いの中で借りることができる。地方の環境にあって、有利な条件を活かしてコトを動かすには丁度良いサイズ。

フォーラムの写真3

中谷: 同感。グローバリゼーションが進んでいるので、海外の人にとっては地方都市の物理的距離はそれほど問題ではなく、世界に知らしめることが必要。世界一のフェスティバルを競争するのではなく、いかにオリジナリティのあるフェスティバルを創っていけるかである。フランスのアングレーム市でも、日本に対する興味が高い。フランス人も子どもの頃から日本のアニメを見て育ち、その後で、それがメイド・イン・ジャパンと知る。どこで働きたいかと聞くと、東京、ジャパンと言う。他から見れば東京、日本は憧れの土地なのに、日本人自身が気づいていない。日本に対してよいイメージがあるうちにどんどん発信していくことが大切。

小川: 自分たちの世代の感覚でいうと、昔の郷土愛とは違う地域性があるのではないかと思う。地方⇔中央という回路を経なくても、いいもの、気に入ってものを手に入れられれば、もっと効果的ではないか。

<会場とのQ&A>

Q1:マンチェスターについてだが、世代を横断して楽しんでいるのが、すごい。いろんな世代に理解してもらう工夫は?

ヘメント: アーティストによるトーク・セッション、ワークショップ、展示など、多彩なイベント、催しを用意している。

Q2:女性だが左官の仕事をしている。今回の事例紹介を見て、左官の仕事に映像を取り入れたいと思った。アイディアを教えてほしい。

中谷: ロングテール、すなわち売れ筋より、そうでないところにビジネス・チャンスが沢山あるはず。経済状況が悪いと難しいと思われるけど、違う。自信をもって、世界中どこにもない職人、オンリーワンを目指してほしい。

Q3:1.大型イベントを実施するための組織体が難しいと思う。どう組織を立ち上げたのか。2.ボランティア、スタッフをどう集めたのか。3.どういう資金をどこから勝ち取って動かしているのか。

ヘメント: まず、運営体制だが、数年前まではかなり規模が小さかったので、自分ですべてをやらざるを得なかった。その後、アーツ・カウンシルから展示に対して助成がおり、また非常に有能なマネージャーも雇うことができた。自分が気づかなかった視点や新しいアイディアで、運営や資金獲得をしてくれるようになった。そこで、自分はクリエイティブな部分と研究に専念できるようになった。資金獲得についてだが、実際にはそれほど自分たちも資金があるわけではない。しかし、こういう仕事が大好きな人々が手伝ってくれて、新しい実験の場、発表の場として、アーティスト、コラボレーター、コミッショナーなどが協力や参加を申し出てくれる場合が多い。

<各パネリストからのコメント>

小川: たまたま美術館に来て、このシンポジウムに来てくださっている方もいるとうれしい。
中谷: 継続しなければ意味はない。その意味で自治体が関わるのは重要。経済状況が厳しいとつらいが、知恵と努力で克服してほしい。
鷲田: 会場からの質問を金沢の例に当てると、多様な世代に理解してもらうための工夫についてだが、理解をしてもらおうとしてはいけないと思う。よそ者だけれども仲間に入れてくださいと自分から入っていく努力が必要。お年寄りの人にとっては、人が集まる場所に出てくるだけでも大変なので、何も言わなくても見ていられる場を作ることが大切だと思う。アートがきっかけとなってそういうことが起きれば最高。余り、イベントを理解してもらうということではなく場を共有することが大切だと思う。
ヘメント: 新しくフェスティバルを立ち上げることは本当に大変。新しい挑戦、試みをすることは本当に難しい。フェスラボは大変刺激的な試みであり、仙台市でも、新しい試みが広がっていることを知ったのはうれしい。何かを始めることは非常にエネルギー、パワー、忍耐が必要であり、情熱を維持し続けていくことが大切。アドバイスとしては、ローカル、グローバルという視野を持つことであり、クリエイティブな才能に投資して、グローバルなネットワークとつながって、世界に発信していくことが大切。

コミュニケーションセンター(JFIC
菅野幸子

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