平成11年度 国際交流基金賞/奨励賞 授賞式 全米日系人博物館 館長 アイリーン・ヒラノ氏 挨拶

国際交流奨励賞

全米日系人博物館 館長 アイリーン・ヒラノ


藤井理事長よりアイリーン・ヒラノ氏へ賞状を授与する写真

 本日、国際交流奨励賞を受賞致しますことは、全米日系人博物館にとって大変光栄なことであり、私どもの理事会メンバーの多くが、この記念すべき授賞式に全米各地から集まって参りました。この栄えある賞を受賞する喜びと誇りを共にする5万人以上の博物館会員やボランティア及びスタッフを代表して参りました。このような特別な形で全米日系人博物館の働きを認めて下さった国際交流基金に感謝申し上げます。


 全米日系人博物館は、1985年に法人として設立され、1992年に開館致しました。今年の始めには、85,000平方フィート(約70,000m2)の新館も完成致しました。これは、日米両国の数多くの個人、企業、財団、公的機関からの暖かいご支援によって実現することができたもので、総額4千5百万ドルが建設費、事業費、そして基金として寄せられました。これは4千5百万ドルという金額ばかりを意味するものではなく、より多くの方々による貢献と協力の賜であり、三世や四世を含む日系人、米国の企業や財団など1万人以上の協力が得られ、また日本の財界からは、経団連とCBCCを通じて950万ドルを超えるご支援をいただきました。このような幅広い社会から博物館にお寄せいただいたご支援とご協力を、将来にわたる私どもの活動の基盤として参る所存です。


 新館は、開館から最初の5ヶ月で10万人を超える来館者をお迎えし、また数百校の学校からの見学グループも迎えました。私どもでは、今年の来館者数を、昨年の2倍以上にあたる25万人と見込んでおります。また、全米を対象とする博物館として、巡回展や教育プログラムを通じて全米各地の7万5千人以上の方々にサービスを提供しております。新館には、より広い展示スペースの他、教材・資料センター、メディア・アート・センター、教室等の様々な設備が整っています。

会場風景(左:ヒラノ氏)の写真

 博物館では、地元ロス・アンジェスルでの活動に加えて、米国各地での様々な活動やプログラムも行なっています。現在は、3種類の展覧会が米国を巡回中です。「弁当からミックスト・プレートへ:多文化のハワイにおける日系人」展は11月までワシントンDCのスミソニアン博物館で開催されています。この展覧会では、ワシントンDC周辺地域の100名を超えるボランティアの参加を得て、来館者に展示の案内と解説サービスを提供していますが、ボランティアの多くは現在はワシントンDC地区に住む様々な人種の元ハワイ住民の人たちです。こ展覧会は、来年の始めにはハワイで、また来年11月には沖縄で、2001年には日本本土での開催が予定されています。


 アトランタ州ジョージアのウィリアム・ブレマン・ユダヤ伝統博物館では、第二次世界大戦中の日系人の体験を紹介する2種類の展覧会を開催しています。これらの展覧会では、米国南東部のユダヤ系アメリカ人やアフリカ系アメリカ人のコミュニティーと共同で教育プログラムに取り組むことが出来ました。またこれまでの展覧会では、様々なアジア系アメリカ人やラテン系アメリカ人のコミュニティーと協力して事業を行なう機会もありました。


 私どもの博物館における過去数年間の最も重要な仕事のひとつに全米学校プロジェクトがあります。この事業は、国際交流基金日米センターの助成を受けて実施しているもので、米国の様々な地域の学校区や教育関係者と協力して行なわれています。今年の夏には、米国史と文化の授業に日系人の体験を取り上げることに取り組んでいる教師のための「多文化教育夏期研修会」を実施しました。全米日系人博物館は、全米学校プロジェクトを通じて、数千人の学生や教師達と協力することができ、この重要な事業に対する国際交流基金の熱意あるご支援を深く感謝しております。


会場風景(中央:ヒラノ氏)の写真

 全米日系人博物館が開発している新しいプロジェクトのひとつに、「国際日系リサーチ事業」があります。1998年に3ヶ年の計画で開始されたこの事業は、日本、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、ペルー、アルゼンチン及びその他の中南米諸国の研究者や研究機関と協力して、各国にある日系人関係の資料を収集・分析し、西半球における日系人の経験をまとめ、その調査結果を世界中に公開するというものです。調査の結果は、博物館の出版物や教材・資料センターを通じて公表される予定です。


 全米日系人博物館が行なってきた幅広い米国内外の人々に向けて日系人コミュニティーの歴史と体験を紹介する努力と、米国内の様々な人種的文化的コミュニティーとの間で協力と相互理解を深めるための努力に対して、国際交流奨励賞という形で評価をいただいたことを改めて深く名誉に感じます。


 私どもが行なってきたこのような努力は、全米日系人博物館の使命であり長期に渡る教育的コミットメントでもあります。21世紀を迎えるにあたり、私どもは、世界がより素晴らしい可能性と多くの課題を抱えていることに気付きます。相互理解、世界平和、そして異文化や異なった体験に対する寛容が必要であり、そのためには多くの機関や指導者の働きが求められています。全米日系人博物館では、日本と米国、そして世界の日系人コミュニティーの間の架け橋となる努力を続けていく所存です。相互理解を促進し、互いの友情を深め、協力して教育的プログラムを開発するという共通の目的を実現するために、将来にわたり国際交流基金や日本の皆様と協力していけることを期待しております。本日はどうもありがとうございました。


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