平成11年度 国際交流基金賞/奨励賞 授賞式 アフメット・メテ・トゥンジョク氏 挨拶

国際交流奨励賞

中東工科大学経済行政学部国際関係学科 教授 アフメット・メテ・トゥンジョク


藤井理事長よりへトゥンジョク氏へ賞状を授与する写真

 今回の国際交流基金からの奨励賞受賞は、トルコにおける日本語教育の普及への貢献が認められたことによるものです。しかし私の本来の専門分野は国際関係であり、博士号は法学分野において取得しました。一見、畑違いのように思われることでしょう。この経緯を説明させて頂きたいと思います。


 1969年アンカラ大学政治学部を卒業して大学院にはいるため日本への留学を決意した私は、日本語というものを全く知りませんでした。日本に関する知識と言えば、授業で学んだものと、本から得たものぐらいでした。その当時のトルコでは日本に関する研究はまだ始まっておらず、日本語を勉強する手段はなかったためです。


会場風景(右より2番目:トゥンジョク氏)の写真

 その結果、外国において言語を理解できぬまま生活を送り、研究活動を行なうという精神的ストレスを身を持って体験することになりました。その経験を踏まえ、1978年にトルコに帰国してから、トルコで日本語教育を始め、普及させることを重視してきました。トルコにおける日本研究はスタートこそ遅かったものの着実に急速に進んできています。1970年当時、日本には3名のトルコ人留学生がおりました。現在、在日トルコ人留学生は170名にのぼり、東京にはトルコ・日本学生友好協会も設立されております。


 1969年に私には二つの選択肢がありました。一方は多くの人が通った西への道、もう一方は通る人の少ない東への道でした。私は東への道を選んで、日本へやって参りました。以来30年間、この道を歩み続けております。振り返ってみますと、試練が多く、長い道のりでした。常に決意、忍耐、努力を必要としました。しかしこの道は国難をきわめる一方で、驚き、発見、新たな知識と精神的満足に溢れたものでもありました。また、常に一人孤独に歩んできたわけではなく、日本国の機関、指導をして下さった先生方、大学の同級生、友人達からの応援を受け、励まされてきました。


会場風景(右:トゥンジョク氏)の写真

 これらはすべて「両国の友好関係と信頼を高め、相互理解をはかる活動」のために注がれたものと理解しております。長年にわたる経済的支援もそのためのものであり、日本の皆さん一人一人から差しのべられたものと考えております。


 恩とそれに報いることの大切さは私の母国トルコの習慣、文化にも共通するものです。私は常にそれを意識し、それを自分自身の活動の原動力としてきました。


 30年間歩み続け私なりに経験も積んで参りましたが、今でも自分自身を好奇心に溢れ、興味のつきることのない研究者、というより一学生として考えております。これからも熱意を持って取り組んでいきたいと思います。


 今まで惜しみなく私に与えて下さった支援に対しお礼を申し上げると共に、日本研究に励むトルコ人研究者にも温かな手を差しのべてくださいますよう、お願い申し上げます。


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