平成11年度 国際交流基金賞/奨励賞 授賞式 (財)日本国際交流センター 理事長 山本 正氏 挨拶

国際交流奨励賞

(財)日本国際交流センター 理事長  山本 正


藤井理事長より山本氏へ賞状を授与する写真

 このたび、「国際交流奨励賞」をいただきましたこと、大変光栄に存じます。藤井理事長をはじめ、国際交流基金の関係者のみなさまにに心から御礼申し上げます。


 実は、1974年に第二回国際交流奨励賞を頂戴いたしましたが、その時は日本国際交流センターという団体に対しての賞でした。今回は私個人がこの賞を頂戴するということで、大変恐縮している次第です。


 25年近く前に受賞しましたころは、私たちのセンターも立ち上がってからまだ4年しか経っておらず、正直のところ組織としてもまだ十分形をとっておりませんでした。それだけに、あの時の賞は私たちの組織にとり社会的な認知としての意味が大きく、仕事がしやすくなったことは事実であります。現在、多くの非営利組織が立上げの苦しみを味わっていることを考えますと、あらためて有り難いことだったと思い返しております。その上にこの度個人として賞をいただくことになり、自分としてどのようにこのご厚情とご期待に応えて良いかについて戸惑っているところです。また、私たちの組織もまだ発展途上の段階であり、一層の努力をしなくてはならないという一種の危機感を持っておりましただけに、この賞を励みとして頑張っていかなくてはと思っている次第です。それと同時に、この賞は、自分の発展と組織の発展との相関関係についてもあらためて考える機会ともなりました。


会場風景(左:山本氏)の写真

 前回のセンターへの奨励賞をいただいた時の授賞式のご挨拶で、まだ当時ご健在だった国際文化会館の松本重治先生を前に、「国際交流は人に始まり、人に終わる」という先生の金言を引用して個人としての力を養う努力をすることを誓ったことを思い出します。しかし、その後の活動を通じて、国際交流という公共の利益、パブリック・インタレストを推進する活動に、非営利、非政府の組織が重要な役割を果たしていることを強く感じるようになりました。このことは、近年の"NPO法案"をめぐる論議でも強調されてきたことです。国が非営利組織の法人化を認証し、いろいろな特典を与えるのは、その組織が公共の利益を追求するものであるという信託というか信頼に基づくものであると思います。私がこれまで長年にわたり国際交流の仕事に携わることが出来ましたのも、一つには、そのような意味でのパブリック・トラストを持っていただける組織の枠組みの中で活動してきだからと思います。さもなければ、この長い期間多くの方々の支援をいただくとは出来なかったに違いありません。もう一つは、一緒に仕事をしてくれ一緒に組織を作ってきたセンターの仲間たちの協力があってはじめて出来たのだと思います。ですから、国際交流の多くの部分は非営利組織の枠組みがあってはじめて継続的で幅広い活動になりうるのだと思います。


会場風景(中央:山本氏)の写真

 しかし一方では、国際交流の仕事は組織と組織という無機的なつながりでは推進できるものではないということも事実であります。個人が前面に立ち、個人と個人の信頼関係があってはじめて出来る仕事であることは言うまでもありません。まさに、「人に始まり、人で終わる」活動と言えましょう。そのような活動に強いコミットメントを持った有能な個人が多くいる組織が、一層効果的な活動を展開することが出来るという"個人と組織"の関係なのだと感じてまいりました。そのような意味で、この度わたくしが賞をいただくことは、私どものセンターの仲間たちにとっても大きな喜び、励みでもあり、このことが私にとって何よりも嬉しいことなのであります。


 このような自分にとって嬉しい機会にするべきこととして、両親が教えてくれたことが、英語での表現で"count your blessings"ということであります。言うなれば、ここに至るまでのいろいろの方々からいただいたご恩の数を数えろと言うことですが、私にとっては、そのような方々の名前を挙げだしたら数も数えきれないことは間違いありません。その中には、すでにこの世にいらっしゃらない方々おられますが、この機会に多くの方々のご温情に心から感謝申し上げる次第です。このような栄誉を受けて自分としてもより大きな責任を感じ、日本国際交流センターのためだけでなく、日本の国際交流活動全般の発展のため、さらには日本の非営利セクターのために少しでも多く役に立てるように一層努力いたす所存であります。


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