地球市民賞ワークショップ 地球市民賞ワークショップ2016イン南砺

1985年に創設された地球市民賞の受賞団体が100件に達するのを機に、これまでの受賞団体間での意見の交換、情報やノウハウの共有、交流を図るため、フォローアップの新しい試みとして、「地球市民賞ワークショップ」を開くことになりました。記念すべき第1回は「地球市民賞ワークショップ2016イン南砺」と題し、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド実行委員会ならびにいなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会という2件の受賞団体を輩出している富山県南砺市において開催することになりました。南砺市は、豊かな伝統芸能や伝統工芸の土壌を元に、新しい文化を作りあげながらまちづくりを推進しています。その先進的な取り組みを視察するとともに、地元の方々も参加していただけるよう公開のラウンドテーブルを開き、情報交換と議論の場を設け、国際文化交流の新たな方向性を模索する機会となりました。

「地球市民賞ワークショップ2016イン南砺」開催概要

概要

タイトル:
地球市民賞ワークショップ2016イン南砺
テーマ:
文化・芸術による地域づくり
日時:
2016年8月27日(土曜日)~28日(日曜日)
場所:
南砺市商工会館2階会議室ほか市内各所
主催:
国際交流基金
共催:
北日本新聞社
後援:
南砺市

プログラム

8月27日(土曜日)富山県の活動視察

  • 13時30分~

    いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会の活動視察と意見交換

  • 16時30分~

    スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド・フェスティバルの活動視察と意見交換

8月28日(日曜日)

  • 10時~12時30分

    公開ラウンドテーブル「国際文化交流と地域づくり~日本各地の事例報告と討論~」

  • 13時30分~16時

    ワークショップ(非公開)

ラウンドテーブル参加メンバー

ファシリテーター

若林朋子氏
  • 立教大学大学院
  • 21世紀社会デザイン研究科
  • 准教授
  • 若林朋子
Profile
プロジェクト・コーディネーター/プランナー。慶應義塾大学人間関係学科人間科学専攻卒業。デザイン会社勤務を経て、英国ウォーリック大学院文化政策・経営学修士課程修了。1999年~2013年、公益社団法人企業メセナ協議会に勤務。プログラム・オフィサーとして企業が⾏う⽂化活動の推進と芸術・⽂化⽀援の環境整備に従事。現在は主に非営利セクターで、各種事業のコーディネート、取材・執筆、編集、調査研究などを⾏う。

テーブル着席者

田中 幹夫
南砺市市長
石井 幸孝
福岡城市民の会/2016年度地球市民賞選考委員長
山本 悦司
南砺市ブランド戦略部文化・世界遺産課文化振興係長
橋本 正俊
スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド実行委員長
永井 厳
いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員事務局長
谷口 信夫
いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会
柳瀬 敬
特定非営利活動法人 自然生クラブ 施設長
嘉田 良平
公益財団法人 「京都国際学生の家」
浅賀 正治
石彫千年の交感アーティストインレジデンス
須山 美玲
特定非営利活動法人 あしぶえ 理事/事務局長
佐藤 恵里
特定非営利活動法人 PEACE FIELD JAPAN
舟本 幸人
劇団 文芸座 理事/事務局長
伊東 眞
一般社団法人 富山県芸術文化協会 元事務局長
尾池 敏之
認定特定非営利活動法人 メイあさかセンター 理事

公開ラウンドテーブル「国際文化交流と地域づくり~日本各地の事例報告と討論~」

Round Table1

南砺市のまちづくり~伝統と創造

田中 幹夫氏の写真
挨拶 田中 幹夫さん南砺市市長

日本は経済成長を追い求めるあまり、心のつながり、絆を失ってしまいましたが、これは日本だけでなく、地球全体の課題です。南砺ではお金だけでなく文化が大事というまちづくりをしていきたい。12年前に4町、4村が合併して南砺市が発足しました。特徴あるそれぞれの地域の誇りを、連携によってさらにのばしていこうとしています。先日、演出家の平田オリザさんが南砺市で講演を行いましたが、平田さんは「Social Inclusion(社会的包摂)」をテーマとして話されました。社会的に弱い立場にある人々を孤独や孤立から援護し、社会(地域社会)の一員として取り込み、支え合う考え方のことで、文化は人を孤立させない、どうやって文化による地域づくりを行うか、文化の自己決定能力、ソフトの地産地消が必要だと訴えておられました。私は、南砺市もこのような考え方に立って素晴らしい地域をつくっていきたいと思っています。それがすばらしい日本、すばらしい世界をつくることにつながると考えるからです。

若林 朋子氏の写真
ファシリテーター・若林 朋子さん

今回のラウンドテーブルについては、3つの意義があると思います。1つは、地球市民賞の授賞後のフォローアップとして、ふりかえりの場をつくったこと。2つ目は、地球市民賞の受賞団体が100件に達する記念の年に、知恵を共有して課題を共有する場をつくった、ということ。そして最後に、過去の受賞団体の活動を視察し、共に実際に地域を歩いて見学して肌で感じる場をつくったということです。このラウンドテーブルでは、過去の受賞団体の成功モデルが、なぜ?どのようにして成功したのか?という観点から、それぞれの地域の事例をみていきたいと思います。

市民が担う文化戦略と発信

報告1南砺市文化によるまちづくり

山本 悦司氏の写真
山本 悦司さん南砺市ブランド戦略部文化・世界遺産課

南砺市は、平成22年度文化庁長官表彰創造都市部門を受賞しています。この賞は、全国1,736ある自治体が切望している賞ですが、これまで受賞した自治体は36だけです。例えば、利賀村という演劇で有名な村があり、「劇団SCOT」は世界にむけて発信しています。また、「いなみ国際木彫刻キャンプ」は、井波彫刻250年の歴史をもとに新たなイベントを作りました。日本最大規模のワールド・ミュージック・フェスティバル「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」は、スタートから26年目を迎え、今なお新しい文化を作り出していますし、城端曳山祭、五箇山の民謡など伝統文化もあります。2016年4月に南砺市文化芸術振興基本計画を策定したところなので、こういった文化資源をどう活かすのかを、展開していく予定です。

ファシリテーター・若林さん

山本さん、ありがとうございました。

市町村合併の波を受けた地域も多いようですが、合併を経たことによる悩みや課題はなかったのでしょうか?

伊東 眞さん一般社団法人 富山県芸術文化協会 元事務局長

私は合併で南砺市になるとき、文化施設を減らされ、地域ごとの文化がどうなってしまうのか、懸念していました。しかし、先ほど田中市長よりそれぞれをさらに伸ばして連携していくという説明があり、また今回いろいろ事例紹介を聞いて安心しました。合併した後も、みなさん活き活きしているのを見られて大変うれしかったです。

須山 美玲さん特定非営利活動法人 あしぶえ 理事/事務局長

合併後、どちらかを選ぶという取捨選択ではなく、それぞれを伸ばしていくということであるべきですね。私たちが活動している松江市は、国際文化観光都市です。あるとき、人から「あしぶえ」のある地域は合併後に松江市になったので本当は松江市ではないといわれて、くやしい思いもしたこともあります。

“スキヤキ式!市民参加型のワールド・ミュージック・フェスティバル”

報告2スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド

橋本 正俊氏のポートレートと、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドの活動の様子
橋本 正俊さんスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド実行委員長

スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド・フェスティバルは、市民ボランティアの協力のもと、23年間にわたり継続して実施されています。私の本職は公務員ですが、フェスティバルの委員長になってはや10年になります。

このフェスティバルの大きな特徴は、市民がボランティアとして関わるみんなで作るフェスティバルということ。全体の約6割が市民参加型のプログラムです。アーティスト・参加者・スタッフが一体となって「スキヤキ式」で運営しています。またフェスティバル開催前からアーティストを招へいし、ワークショップの開催や寝食を共にして、アーティストと住民の結びつきを深めています。また来日するアーティストの宿泊施設として、空き家を利用しており、空き家問題の解決にも一役かっています。

人材育成という点では、市民によるスキヤキ・スティールパン・オーケストラも結成されています。すべての小学校にスティールパン・クラブがあり、学校卒業後は大人の楽団に入るという、よい循環も起きています。また「トゥーマラッカ」というサンバのドラムチームも結成されましたし、京都、兵庫、愛知など県外からも、パレードやフェスティバルに参加する人たちが大勢やってきます。

最近は、モザンビークやメキシコからアーティストを招いて、3体の巨大人形を制作し、パレードに参加させています。富山県無形民俗文化財に福野夜高祭の行燈文化が指定されているのですが、この人形はその行燈文化もベースに制作され、地元の文化とうまく融合しています。

これだけのパフォーマンスを共同制作するのは、非常に難しいことで、各人のプライドを尊重しながら、上手く調整してすすめる必要があります。またフェスティバルに参加したアーティストのCD制作を行い、独自に「スキヤキ・レーベル」として販売しています。

スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドの活動の様子
嘉田 良平さん公益財団法人 京都「国際学生の家」

私は、今回のワークショップに感動しています。目からウロコの話が聞けました。3つの“びっくりポン”がありました。

まず田中市長の挨拶がすばらしかった。これだから、市民がついてくるのですね。昨日の「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」のパレードに参加しましたが、なんという無秩序でしょう。(笑)でもココロはどんどん高揚していきます。ごった煮感、ハードルの低さなど、参加したくなるしかけがいくつもありました。また、地元のスティールパン・バンド、ブラスバンドのレベルもたいへん高く、南砺の底力だと思いました。地域の文化と海外の文化をごった煮にしながら、文化というものは変わっていくもの、そう思いました。

橋本さん

フェスティバルを気に入っていただけたようでよかったです。私たちは、最初から「国際交流」という意識を持って、フェスティバルを開催してきた訳ではありません。メンバーも国際交流という意識をもっていないと思います。やっているうちに自然に国際交流になっていった、というのが実際です。今では外国人もすっかり溶け込んで開催しています。世界から来てくれた一流のミュージシャンに南砺市だけで演奏してもらうのはもったいないので、「スキヤキ・トーキョー」、「スキヤキ・オキナワ」も開催するようになり、ネットワークが広がっています。福野が日本のワールドミュージックの郷になればいいと思って継続しています。

ファシリテーター・若林さん

橋本さんのお話だけでなく、皆さんの活動にも共通しているのではないかと思いますが、先に国際交流を意識しない活動があったということ。そして、地球市民賞を授賞してはじめて「そうか、自分たちの活動は「地球市民」だったのか」と、気づいた、ということですね。まさにその通りだと思います。

“世界とつながる木彫刻の町 井波”

報告3いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会

永井 厳氏のポートレートと、いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会の活動の様子
永井 厳さんいなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会

「いなみ国際木彫刻キャンプ」が開催された背景には、当地の古刹である瑞泉寺の建立に際して、京都から200人の木彫師がやってきたことから、この地に木彫刻が根付いたという歴史があります。

このキャンプの目的は、木彫を通して世界をつなぐということ。競い合うコンクールではなく、参加アーティストたちが公開で制作します。木彫の制作過程を住民の間近で披露する、木彫作家と住民の交流をはかるイベントでもあるのです。

1991年に、町の中心から少し離れた閑乗寺公園キャンプ場で、当時の井波町開町600周年を記念して始まりましたが、これまで海外40カ国から73名の木彫作家が来日して参加しています。つくられた作品は南砺市内の公共施設、公園などで展示されています。また井波町からも、のべ28名の木彫作家が海外のキャンプに参加している実績があります。

キャンプでは、市民ボランティア1,000名以上が、受付、清掃、通訳と役割を分担して参加しています。財政的には少々厳しいですが、木彫刻という地域の特色を活かし、後世に残していこうとしています。木を素材にしたイベントとしては世界一と自負しています。

佐藤 恵里さん特定非営利活動法人 PEACE FIELD JAPAN

昨日の視察で井波を訪れましたが、井波が木彫のふるさとだということを知らなかったので、大変驚きました。町全体の調和がとれています。せっかくの週末なのに、あまり訪問者がおらず、もったいなく感じるほどでした。自分たちは、人口750人の山梨県小菅村で活動していますが、小菅村は、村人の生活が一番だという考えのもと、合併を拒んだ地域でもあります。イスラエルとパレスチナの女子高校生たちが一緒に歌ったり踊ったりすると、日本と違いすぎて、逆に互いがよく似ていることに気づきが生まれるのですが、こういうことは、小さな小菅村だからこそ可能になるように思います。

永井さん

井波の木彫刻についてほめていただき、ありがとうございます。国際木彫刻キャンプは、井波の木彫の伝統から生まれました。これからも伝統を守りつづけていきたいと思っています。

嘉田さん

私も木彫に感動しました。自分は、大阪の岸和田出身で子供の頃からだんじりを見てきたのですが、その獅子頭は泉州で作っていると思っていたのですが、なんと井波の作家が彫ったのだ、と教えていただきました。

地球市民賞のワークショップのNext Stepをどうするか?こんな情報交換のプラットフォームをつくってもらえたら、これまでの苦労とか、最新の情報とかを共有できるのではないかと思います。

公開ラウンドテーブルの様子
谷口 信夫さんいなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会

私たちの木彫刻キャンプは世界一という自負はありますが、なによりも自分たちが楽しい、誇りがもてることが大事です。そうすると、自然と異文化交流へとつながっていく。このように今回、文化の意義、異文化理解、地域づくり、社会包摂などさまざまな気づきがありました。今後、経済的効果が生まれてくるといいのですが。スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド・フェスティバルには、非常に感動しました。みんなが笑顔でやっています。一度、木彫刻キャンプの閉会式にスティールパン・バンドが来たことがあり、アーティスト達もたいへん喜んでいました。同じ市内なので、木彫刻キャンプと“スキヤキ”とが、もっと融合してやれると良いと思いました。

会場からのコメント(いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会メンバー)

木彫刻組合、作家協会もコラボしていかないとね。ネットワークを作っていくことが大切です。

会場からのコメント(二浦さん スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド実行委員長)

ネットワークづくりについて言えば、個人レベルではもう始まっています。城端地ビール、食材、巨大人形(土台は井波で作っている)。これから、もっと一緒にやっていけたらいいですね。

“地方から世界の舞台へ”

報告4劇団文芸座

舟本 幸人氏のポートレートと、劇団文芸座の活動の様子
舟本 幸人さん劇団文芸座 理事/事務局長

劇団文芸座は、第1回目の地球市民賞を受賞した団体です。1977年、アイルランドのダンドーク国際アマチュア演劇コンクールで最高賞を受賞したことをきっかけに、富山県の文化芸術活動の国際化が始まりました。その後、米国のモート・クラーク教授に、ヴァルハラ演劇祭に招待され、チェーホフの劇「結婚の申し込み」を上演。その際ハンガリーから参加していたプレイヤーズ・スタジオ・デブレツェン・グループが同じ演目を公演したことから、交流が始まりました。

その後の、劇団文芸座をはじめとする富山県内の文化団体国際交流活動は以下の通りで目覚しいものがあります。

  • 1981年 サントリー地域文化賞受賞。
  • 1983年 富山国際アマチュア演劇祭開始。
  • 1985年 ハンガリーフラワー演劇祭に富山芸文協が参加。
  • 同じ年、ハンガリーの木彫キャンプに井波町在住の作家が参加。小泉代表が後押し井波町でもやろう!ということになった。国際アマチュア演劇ネットワークの副代表だった小泉代表がネットワークを活用し、海外からの参加者を募集して、井波町での実施が実現した。
  • 1985年 国際交流基金地域交流振興賞(現 地球市民賞)受賞。副賞は、手話劇団おんにょろ座がチェコの演劇祭に参加するのに活用。
  • 1991年 いなみ国際木彫刻キャンプ開始。
  • 1996年 こども演劇祭開始。大人とこどもによる演劇祭。
Round Table2

全国各地からの事例報告

“創作田楽舞を通じた異文化交流”

報告5茨城県 特定非営利活動法人 自然生クラブ

柳瀬 敬氏のポートレートと、特定非営利活動法人 自然生クラブの活動の様子
柳瀬 敬さん特定非営利活動法人 自然生クラブ 施設長

特定非営利活動法人 自然生クラブは、筑波山麓で活動する知的障害者との共同体で、2016年で設立26年目となります。活動当初の目的は、福祉でも国際交流でもありませんでした。

地元文化との関係で言えば、田楽をやっていました。この田楽は、1996年にリトアニアに招待されたことがきっかけで、これまで9カ国11回の海外公演を行っています。さらに、2009年に地球市民賞を受賞したことで、「ああ、そうか、自分たちのやっていることは国際交流なのか」と自覚した次第です。

現在は、コミュニティ農園やグループホーム「宙の家」などを運営する一方、古い農協の事務所だったところをカフェにして活用しています。休耕田には、ひまわりを植えて油を自給しています。地域の伝統行事にも参加しています。

知的障害者は、誤解を恐れずいえば一種の異文化に生きている人たちです。私たちは、田楽舞を通じて、障害者と異文化交流を行っていて、彼らの持っているものを理解することが大事です。最近は、海外からの視察や知的障害者の訪問もあり、香港から知的障害者が来日した際には、ワークショップを開催したり、ウィーン・フィルのフルーティストが知的障害者の描いた作品を購入してくれたりなど、ネットワークが拡がっています。2011年の東日本大震災の時には、農園を閉じて逃げようかと思ったのですが、アイルランドの友人から「もし、逃げてくるなら受け入れるよ」というメールが届いて感激しました。今回のラウンドテーブルに参加して、南砺市の行政の方々の熱意に驚きました。つくば市はロボットなどの最先端の科学で有名ですが、文化を大事にしていないと感じられる面もあり、今後は、行政とも協力して活動をしていきたいと考えるようになりました。

“演劇は心のたべもの~日本一小さな公設民営劇場の演劇祭”

報告6島根県 特定非営利活動法人 あしぶえ

須山 美玲氏のポートレートと、特定非営利活動法人 あしぶえの活動の様子

須山 美玲さん特定非営利活動法人 あしぶえ 理事/事務局長

私たちの活動の中心は「しいの実シアター」という島根県の山の中にある森の劇場で、客席数100ほどの、日本一小さな公設民営劇場でもあります。あしぶえが指定管理者となって運営しています。私たちの活動は、2016年で50周年を迎えますが、演劇を人々の暮らしの中へ浸透させたいという思いで活動してきました。スタッフ数は10名で、専属劇団「あしぶえ」があります。1994年にアメリカの演劇祭で「セロ引きのゴーシュ」を上演し、第1席を獲得しました。その時、この演劇祭が演劇によるまちづくりに貢献している事例にふれ、「これだ!」という思いを強くもちました。その後、自分たちでも八雲国際演劇祭を始め、演劇によるまちづくりを日々、実践しています。現在では、若い人から大人、中高生のボランティアも参加し、「演劇は心のたべもの」をモットーに活動しています。

ファシリテーター・若林さん

これまでのみなさんのお話を聞いて、何か感じられたことや伺いたいこと、ご意見などはありますでしょうか? また、今回のワークショップに参加された感想もお聞かせください。

浅賀 正治さん石彫千年の交感アーティスト・イン・レジデンス

私が住んでいる茨城県桜川市は、石屋の街で500~600社くらいあります。自分の技術の向上のために、ブルガリアから自分と同じ程度の技と経験のある人を個人的に招いて、共同制作するアーティスト・イン・レジデンスを行っています。同期間、同条件で制作しあい競争します。また仮設空間ではベストをつくせないので、常設会場を作って公開しています。来日したアーティストたちは、物見遊山ではないので、観光もせずにひたすら制作に集中しています。民族の魂を刻むために制作しているのですね。真剣勝負なので帰国後入院してしまう人もいます。今回のワークショップは、新しいアイディアを得る機会となりました。

尾池 敏之さん認定特定非営利活動法人 メイあさかセンター 理事

言葉は通じなくても、お互いわかりあえます。日本人は文化が単一なものと考えがち。マレーシアに赴任していたことがありますが、マルチレイシャルな世界でお互いをどうやって理解しあうかが、大切でした。私は、もともと子供文庫を開設していたのですが、赴任生活がきっかけでペナン州教育局と絵の交流を行っていました。朝霞市は、江戸の近郊農作地で、伝統文化は残っていないのですが、マレーシアと朝霞市をつなぐ活動を30年してきました。

私は、日本の文化の源泉は地方にあると思っています。東南アジアの人がきたら、是非、地方に案内したい。自分たちは、3万枚の絵を蓄積しているので、イベントの機会に展示できる絵を貸すことができるので、そういう機会があれば、是非、知らせてください。

会場からのコメント(小島 多恵子さん 公益財団法人 サントリー文化財団)

1979年からサントリー地域文化賞を授与してきています。スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド実行委員会、いなみ国際木彫刻キャンプ実行委員会、劇団文芸座など、国際交流基金の地球市民賞と当方とのダブル受賞をしている団体が富山県内にかなりあります。2000年に、「地球は舞台」というワークショップを一緒に開催しましたが、いずこも最初に文化の振興があって、それから国際交流というパターンが共通しています。国際交流基金とサントリー文化財団の懸賞の違いは、国際文化交流という点。互いに立ち位置が異なるからこそ、協力し合えると思います。文化から入った団体と、国際交流から入った団体がコラボするとブレイクスルーが生まれるのではないか、と思いました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて何かできると良いですね。例えば、文化はあるけど国際交流の経験のない人たちに、先駆者としてのノウハウを提供するというのも一案ではないでしょうか。

公開ラウンドテーブルの様子

ラウンドテーブルまとめ

柄 博子氏
柄 博子国際交流基金

このラウンドテーブルでは、様々な意見や事例紹介がなされ、刺激的な情報をたくさん受けることができたように思います。各団体の取組みのきっかけも多様で、多くの人々の尽力があって、柔軟に変化に対応され、かつ活動の幹がしっかりしていたからこそ、ここまでみなさん継続されたのだと思います。活動は、沢山の人が見に来られたという開催期間数日間の成果だけでは評価できません。それぞれの団体が考えられた目標やねらいといったことが、今後さらに共有されていくと良いと思います。

What We Do事業内容を知る