北京日本学研究センター設立20周年記念国際シンポジウム特派員レポート2 -海老澤 純子-

「日本文化、文学分科会I~III」

シンポジウムの写真1

2日目は、分科会が行われました。私は日本文化の分科会に出席しました。

この分科会では初めに同志社大学の西田毅先生による「靖国問題と歴史認識」と題した特別講演が行われました。 

日本の小泉首相が靖国神社参拝をにおわせていた時期のせいか、もともと人々の関心の高いテーマだったせいか、小さな教室にはたくさんの聴講者が集まり、立ち見の人あり、さらに廊下にまで人があふれるほどの盛況でした。

講演は、歴史問題と日本人の宗教意識という観点からなされました。靖国問題は日本の思想、倫理意識、日本文化を理解する根底の問題であること、政教分離の原則は日本国憲法に定められているが、本来日本人には受け入れがたいものであること、日本国内でも首相の靖国参拝は賛否が二分していること、などが話されました。そして、この問題を外交上の争点とだけしないでほしい、とまとめられました。

この講演が行われたのが、10月15日土曜日。翌日私達は日本に帰国し、その翌17日月曜日午前に小泉首相は靖国神社を参拝したのでした。もし小泉首相の参拝があと数日早かったらこの講演でどのようなお話がされたのか、また現在、北京日本学研究センターではどのような意見が交わされているのか、とても気になります。

特別講演の後は、中国、日本それぞれの先生方による研究発表がありました。日本の憲法改正問題や文芸作品をとおして見る現代日本の社会と文化についてなど、興味深い発表が続きました。発表のなかで出てきた「ホリエモン」「刺客」「杉村太蔵」などの日本社会を語るための最新のキーワードを、中国人聴講者の多くの方が理解していたことには驚きました。現在の日本についてよく勉強されていると感心させられました。

分科会終了後、大平学校・北京日本学研究センター同窓会第一回総会が行われました。センターに関わった多くの方々の挨拶がありましたが、とりわけ胸をうったのが、元大平学校日本側主任でいらした佐治圭三先生のお話しでした。役を退かれてから体調を崩し、この度の訪中が久しぶりであったとのことです。当時の北京の様子と現在の様子を比較され、驚かれたことをいくつかお話しなさっていました。当時自転車で通っていた細い道が今では幹線道路になって自動車であふれていること、日本からはビザなしで訪中できるようになったこと等、時代の流れを感じさせられ、25年という時の重みを実感させられました。司会の徐一平先生が感極まり涙される場面があり、私も目頭が熱くなりました。

また、国際交流基金の紿田理事が、国際交流基金の事業の中でも北京日本学研究センターのように長く続いているものは稀であり、貴重な存在であるとお話しされていました。
このようなお話しを通して、北京日本学研究センターが中国における日本学の発展と中日交流に寄与したものの大きさをひしひしと感じました。


シンポジウムの写真2

中国でよくいわれている言葉として「水を飲むときは、最初に井戸を掘った人のことを思え」というものがあるそうです。2日間の式典や講演のなかで、多くの先生方がこの言葉を引用してお話しされていました。今回20周年のセレモニーにふさわしい言葉であり、中国では本当によく使われる言葉なのだと感じました。また、この言葉を深読みすれば、中国人は現在を考えるときに過去を大切に振り返る国民性であることを表現しているのかとも受けとれました。

中国と日本は近く、関係が緊密だからこそ、良好な関係を保つことが難しいのだと感じます。歴史を学び、文化交流を通して互いの思想にまで思いをめぐらせてこそ、真の友好関係が築かれていくのでしょう。そして、これは中日互いの不断の努力が必要であり、永遠の課題であるように思いました。

今回の行事に参加させていただいて、現在の中日交流の一端を垣間見ることができ、初めて知ったことや啓発されたことが多々ありました。隣の興味ある国としての中国の歴史や文化はもちろん、私自身の母国日本の歴史や文化についてもしっかりとした認識を持ち、今後も中国との交流を深めていきたいです。そして、高等学校の教員として、生徒達にもこのような認識の必要性を教えていきたいと考えました。



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