北京日本学研究センター設立20周年記念国際シンポジウム特派員レポート1 -栗山 利宏-

「基調講演・パネルディスカッション」

北京市内の写真

私は、10月13日から16日まで、他の2名の会員とともにサポーターズクラブボランティアとして中国へ派遣されました。今回のボランティア派遣の主な目的は北京日本学研究センター設立20周年記念行事式典への参加でした。3泊4日の短い日程でしたが、見たこと感じたことを私なりの視点でレポートさせていただきます。

式典当日の朝は、雲ひとつない青空が北京市内一面に広がっていた。まさしくこれを“北京晴れ”とでも表現するのであろうか。聞けば、北京はこの時期が観光のベストシーズンなのだそうだ。前夜、遅くに北京入りした私たちサポーターズクラブ一行は、国際交流基金北京事務所の迎えの車に乗って式典会場に向う。朝の通勤時間帯で、自動車と自転車があわただしく行き交う道を15分ほど走って会場に到着する。会場となった北京外国語大学の受付周辺は、すでに多くの参加者でにぎわっていた。私は、とにかく中国語を使い「ニーハオ」と挨拶を交わさねばと思っていた。すると、案内係とおぼしき女性が、「おはようございます。」とにこやかに挨拶をしてきた。彼女の発したよどみのない日本語に、「なんだ。日本人か。」と一瞬思った。しかし、次の瞬間、彼女の首からさげられたIDカードを見て、日本人ではないことを理解する。私は、相手の笑顔に負けまいと必死で笑顔を返す。そして、「おはようございます。」と日本語で挨拶を交わした。(交わしてしまったと言うべきか・・・)この時、中国で行われている日本語教育のレベルの高さを見せつけられた気がした。今回のボランティア派遣の応募条件に、中国黷フ能力は問われていなかったことをふと思い出す。


シンポジウムの写真

その後、ここは日本なのかと錯覚するような流暢な日本語が飛び交う中を会場に入った。そこにはすでに多くの参加者が着席していた。私には、日本人と中国人を見分けることはできない。(私だけではないと思うが)何せほとんどの参加者がごく自然に日本語を話しているのだから。
記念式典は定刻の9時に始まった。開会式の挨拶で、国際交流基金の紿田(たいだ)英哉理事が、「日中交流2000年有余の歴史からみれば20年という年月は短い。しかし、この研究センターが果たしてきた役割にはとても大きく意義深いものがある。」と話された。朝の出来事を経験した私は、ただただ納得する。

続いて劉徳有氏(中国対外文化交流協会常務副会長)の「中日文化比較の一考察」と題した講演があった。氏が話す日本語に、日本人でもこれだけ美しい日本語を話せる人はどれだけいるだろうかと率直に感じた。このレポートを読んでいる方に、氏の肉声をお届けできないのが残念である。講演自体も、ソフトな語り口で内容も論旨が明快であった。1時間30分の講演時間は、あっと言う間に終わった。私が、講演の中で特に印象に残った内容を以下に紹介する。氏は、中日文化比較を論じる中で中国に不足しているのは、創造性(オリジナリティ)であると何度も強調した。そのことを、日本でも有名になった中国人女性グループ“女子十二楽坊”を例にして話を進めた。なぜ「女子十二楽坊」が日本で受け入られたのか。(実は、このグループは当初、中国では受け入られなかった。)氏はこのように解説した。「このグループに豊富な民族音楽の資源とハイレベルの演奏技術があることは言うまでもない。強調すべきは、創造性(オリジナリティ)が備わっていることである。このオリジナリティによって、伝統的審美眼と現代の審美眼の距離を縮めさせたからである。」と話された。私は、“中国古来の民族音楽を、日本フ若者を中心とする層に、魅力ある音楽として伝えるオリジナリティ(創意工夫)があったからだ。”と理解した。

また、講演の最後に文化交流についての考えも話された。「文化交流は、言ってみれば心と心の交流です。東西間では分かり合えないことも、中国と日本の間では容易に分かり合えることがある。」まさしく、時宜を得た示唆ある言葉としてかみしめた。

午後からは、パネルディスカションが行われた。主題は、「ジブリアニメの力」であった。パネラーは、日中米各国から一人ずつ参加した。コーディネータは秦剛氏(北京日本学研究センター)が務めた。当然のように、ディスカションはすべて日本語で進められた。ここで、主題として設定された“ジブリアニメの力”というテーマについて少し記しておきたい。私は、アニメについては全くの門外漢である。当初、私はなぜこのテーマが主題に設定されたか理解できなかった。北京日本学研究センターの研究との関連性はあるのだろうか。このテーマでのパネルディスカションで、聴衆者は議論を理解できるのであろうか。さまざまな疑問を感じていた。同時に議論の展開にも興味を持っていた。このレポートを読んでいる方の中にも、私と同じような考えを持った方がおられると思う。そのような方に少しでも理解していただければと思いながら、このレポートを書いている。

まず、この“ジブリアニメの力“と題したパネルディスカションの趣旨を大会案内より抜粋する。「アニメは現代日本文化の中でもっとも発達したジャンルのひとつである。日本のアニメは欧米では高いブランド性を誇っている。このパネルディスカションを通して、ジブリ作品の魅力と現代社会における価値を見直していきたい。」とある。

このパネルディスカションで導き出された結論は、「アニメの世界からも日本(文化)を掘り下げて考えることができる。」であると理解した。パネラーが述べた意見から日本のアニメが持つ独自の文化の具体例を紹介する。

  1. (1)アメリカアニメと違い、善と悪を対立させない。
  2. (2)日本のアニメには、場面設定に国籍を感じさせない。
       (場面ごとにアメリカ・中国・日本的描写が混在)
  3. (3)ジブリアニメの主人公がトイレに行くシーンがある。このようなシーンは、欧米アニメでは絶対見ることはできない。


ページトップへ戻る