JFサポーターズクラブ 2007年7月のイベント報告 第2部

 

国際文化交流最前線の舞台裏 パリ日本文化会館編 国際文化交流の最前線、ジャパンファウンデーション海外事務所での仕事とは?

 

JFサポーターズクラブイベントの写真1

後半はインタビュー形式で、パリ日本文化会館の仕事に迫りました。

公演で何をやるかは、どういう基準で決めるのですか。


それについては、次の3つの基準で検討します。

1. 国際交流という視点をもちながら、日本のものを上演する。
この「日本のもの」というのを、広く解釈します。つまり、日本の要素が少しでも入っていればよいのです。日本人が演ずるもの、日本で賞を取った外国人、日本の曲を演奏する外国人などにも門戸を広げています。

2. 上演時期とプログラムのバランスを考える。
古典もの、現代もの、音楽、ダンス、演劇など、バラエティのあるプログラムを組みたいので、同じものが重なることは避けます。

3. 一定以上のクオリティーがあること。
フランスの人に、会館でやるものはおもしろいと思ってもらわなくてはいけないので、それなりのアピールができるものであることが必要です。

 

以上のことを総合的に考えて決定します。専門家の意見も仰いでいます。

 

会館で上演されたもので、どういうものがフランス人に好評でしたか。


会館の観客は半分以上がフランス人、大半がフランス人ということもあります。それは私たちが誇りに思っている点でもあります。
まず伝統ものがフランス人にうけます。能・狂言・寄席・雅楽・神楽などはほぼ毎回満席です。
しかし文化交流という点からは、伝統ものだけをやっていたのでは日本を広く知ってもらうことができません。そこで現代のものも積極的に上演するようにしています。

好評というとき、一般のお客さんがたくさん入るのと、専門家に高い評価を受けるのと二通りあると思います。

お客さんがいっぱいはいったという点では、MIYAZAWAバンドやコンドルズが大成功でした。しかしお客さんがいっぱい入らないかもしれないけれど、やらなければいけないものもあります。ダンスや演劇などで日本で高い評価を受けている人の公演は、われわれの使命としてやらなければいけないものだと考えています。

 

コンドルズ公演の写真

コンドルズ公演

コンドルズ公演は来場者の評判がよく、ブログでもたくさん取り上げられました。しかし残念ながら、新聞には評が出ませんでした。さまざまなフェスティバルのディレクターなどを招待して見てもらいましたが、プロの好みはよりアーティスティックなものだったようです。(コンドルズは素人っぽさを売りにしています)

 

 

 

 

チェルフィッチュ公演の写真

チェルフィッチュ公演

それに対して、チェルフィッチュという劇団のお芝居は、玄人受けした例です。チェルフィッチュはヨーロッパ舞台芸術界の最前線ともいえるクンステン・フェスティバルで注目を集めた後、パリにやってきました。評判を聞いて、普段は招待しても来てくれないディレクターたちが何人も見に来てくれました。観客動員数は少なかったけれど、彼らをフェスティバルに招待したいというディレクターたちが現れました。彼らは来年、再来年、ヨーロッパで活動していくと思われます。そういう意味で、この公演は成功であったといえます。

 

JAZZ IN JAPANの写真

© Jean-MarcLaouénan

パリ日本文化会館がフランスでジャズをとりあげるのはどうしてですか。


日本に関心のない人にも会館に来てもらいたいという思いで、ジャズをとりあげています。
フランスではジャズが盛んで、いろいろなところでジャズフェスティバルが開催されています。誰にでもわかりやすく親しみやすいのがジャズのいいところです。JAZZ IN JAPANと銘打って、ほぼ毎年5日間開催しています。フランス人と日本人のコラボレーションも組み込んでいます。

 

草間弥生展の写真

草間弥生展
埴輪展
© Bernard Rain

まず草間弥生展。これは今までで一番入場者が多かった展覧会です。独創的な世界を会館の展示ホールに展開しました。

国宝も出品された埴輪展。これもフランス人に大変好評でした。古代の素朴さと、今の日本人につながるものがあるといって喜ばれました。照明スタッフが工夫し、埴輪が暗い会場から浮き上がる感じを出しました。シラク元大統領も来場され、日本文化に造詣が深いことを示されました。

 

 

 

ロボット展ポスターの画像

ロボット展ポスター

パリ日本文化会館で紹介されたことがきっかけになって、フランスでブレイクしたものはありますか。

 

たとえば2003-2004年に「大ロボット展」の一環として行われた明和電機のコンサートが、それにあたるでしょう。ポンピドーセンターはじめ、いくつかのコンサートに招待されるようになりました。今年4月に開催されたニームのジャパンフェスティバルにも招待されていました。

 

フランス人はフランス語を大切にすると言われていますが、日本語に対する拒否反応はありませんか?

 

フランスでは日本語の人気が高まっています。日系書店では、フランス語版の漫画コーナーだけでなく、日本語版の漫画コーナーにも、フランス人の姿が目につきます。ケーブルテレビには日本アニメの専門チャンネルがあるのですが、同じタイトルでフランス語吹き替え版と日本語版にフランス語字幕つきがあります。特に若年層では、日本語版で見たい人が増えているようです。

映画「となりのトトロ」を子どもと一緒に見に行ったとき、フランス人の若い観客が多いのに驚きました。オープニングの「さんぽ」の歌が始まると、観客は「あるこ、あるこ♪・・」と日本語で大合唱。みんな日本語で歌を覚えていたのです。

英語の場合はちょっと風向きが違います。
日本文化会館で映画上映をするとき、フランス語字幕が用意できない場合があります。そんなとき英語字幕だとクレームが来ます。また講演会の配布資料などで英語のものだけを配ると、「フランス語がないなら、日本語だけでよい。英語はいらない。」といわれます。

 

JFサポーターズクラブイベントの写真2

日仏の労働観の違いやカルチャーの違いで苦労はありましたか。

 

フランス人が働かないというのは誤解だと思います。彼らは集中して働きます。休みはまとめてとるものというのがフランスのやり方です。夏の休暇は法律で、2週間連続してとらなくてはならないことになっています。また、1日の労働時間は10時間を越えてはならない、週の労働時間は48時間を越えてはならないなどの細かい規則があります。そのため、しっかり計画を立てて働くことが必要になります。公演では臨時雇用職員(アンテルミッタン)を雇用することもあり、この点でも計画が必要です。日本から来るスタッフは現地事情が事前にわからないこともあり、往々にして直前まで予定が定まりません。それがスタッフのストレスになります。

会館には腕のよいスタッフがそろっています。彼らは自分が納得するとよい仕事をしてくれます。
フランスでは「口論」は「コミュニケーション」の一種のようです。口論したから関係が悪くなるというわけではなく、それを乗り越えたところに連帯感が生まれるのです。論戦をいとわず一緒に仕事をすることで、達成感が生まれます。フランスで長く生活する人は、まず口応えをして言葉で自分の思っていることを表現することを学ばなくてはなりません。それが互いを理解する方法だからです。

展覧会でも公演でも、準備中はこれで間に合うのかと思ったことがたびたびでしたが、初日が開かなかったことはない、というのがスタッフの誇りです。フランス人と日本人でやり方やテンポは違っても、パリ日本文化会館のスタッフは、芸術が好きな人たちが集まっています。芸術に関わることを誇りに思い、仕事に情熱を持っている人たちが集まっている、それが私たちの会館です。

 

○最後にひとこと

●姫田
オープンして10年、会館の評判も成果も着実にあがってきています。フランス人への日本紹介をしていることから、日本人にはあまり知られていませんが、日本の人々にも会館のことを知ってもらいたいと思います。

●嶋根
会館では、フランス人スタッフも「おつかれさま」という言葉を知っています。フランス語にはそのような表現はないのですが。打ち上げでお互いをねぎらい、フランス人同士でも「おつかれさま」と言うところが、たいへん気持ちよいと思っています。
「文化交流の現場に立つ人の話が聞けた」と、参加者からたいへん好評をいただいたイベントでした。
(情報センター)

 

 

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