JFサポーターズクラブ11月のイベント報告 -1- 国際交流奨励賞 日本語賞受賞 記念講演会 リービ英雄 「日本語の人生」

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パート1
現代の表現者は皆、異言語に身をさらしてきたのだ。

9・11を描き、第32回大佛次郎賞を受賞した『千々にくだけて』の発表から2年。リービ英雄氏の最新作『越境の声』が、2007年11月29日に刊行されました。

講演会の前半ではこの作品に言及しながら、リービ氏の文学パラダイムを語ってくださいました。

講演会の写真1

20世紀文学のパラダイム(書き方)には、2通りの方法があります。

  • ひとつの共同体での体験を、その言葉で内部まで細かく書く。
  • 1人の作家が、2つ以上の文化・共同体を体験して書く。

後者の例として、ポストコロニアル時代にアフリカなど植民地出身の作家が、英語で作品を書いていることがあげられます。

サルマン・ラシュディは、インドのボンベイで生まれ育ち、思春期になって英国に移民としてやってきました。彼が英語で書いた小説『真夜中の子供たち』は、インド系作家による英語文学の端緒となり、1981年に英国の権威ある文学賞、「ブッカー賞」を受賞。1993年には「ブッカー賞中のブッカー賞 (Booker of Bookers Prize)」に選ばれました。インドと英国の2つのカルチャーを書いたラシュディは、「1つの体験しか書かなければ、もうひとつの体験を殺してしまうことになる」と語っています。

V.S.ナイポールも、西インド諸島トリニダードのインド人の家系に生まれ育ち、のちに英国に渡りました。彼も2つ以上の文化・共同体を書いてブッカー賞を受賞、2001年に「ノーベル文学賞」を受賞しています。

また中国の作家莫言のように、山東省の農村というきわめてローカルなものを描きながら、それが世界性を帯びている場合もあります。農村を世界の歴史に貫かれた形で捉え、ローカルな場所を描きながら、世界を描いているのです。

このような新しい文学のあり方を明らかにする『越境の声』には、リービ氏と5人の作家・文化人の対談が収録されています。

日本人でありながらドイツ語で作品を発表している多和田葉子。

日本のGNPが米国の6分の1であった頃ニューヨークのロングアイランドに滞在、日本の内と外を体験して本格小説に仕立て上げた水村美苗。

多言語クリエイションを考えてきた文化人類学者青木保。

農民出身で貧しさから逃れるため人民解放軍に入り、革命文芸学校で学んで川端康成の作品から大きな影響を受けた莫言。

20歳の時に四国から上京し、フランス語を読むようになった大江健三郎。

それぞれに身のさらし方は違うものの、現代の表現者は皆、異言語に身をさらしてきたと言えます。そしてこれが新しい文学の形となっています。

『越境の声』の表紙画像詳しくは
『越境の声』リービ英雄 をお読みください。
岩波書店
体裁: 四六判・上製・カバー・264頁
定価: 2,100円(本体 2,000円 + 税5%)
2007年11月29日発行
ISBN978-4-00-022276-1 C0095
http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN4-00-022276-1&head=yes&

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