JFサポーターズクラブ 2008年1月のイベント報告 アラブ映画の魅力

 

アラブ映画の魅力

 

ジャパンファウンデーションの映画祭企画を20年近くにわたっておこなってきた石坂健治さん(東京国際映画祭事務局アジアの風 プログラム・ディレクター)に、過去3回のアラブ映画祭についてお話をうかがいました。
ジャパンファウンデーションは、海外で日本映画を紹介する一方、日本国内では主に、上映される機会の少ない海外の映画を紹介する映画祭を実施しています。映画上映にあわせ、講演・シンポジウムも開催されるこの映画祭は、その背景となっている地域を知る絶好の機会です。

 

JFサポーターズクラブイベントの写真1

石坂さんの話に熱心に耳を傾ける参加者

「アラブ映画祭」誕生の背景

2005年にジャパンファウンデーションは、日本初の「アラブ映画祭」を開催しました。背景には、9.11やイラク戦争を契機とした、中東に対する日本国内での関心の高まりがありました。これを受けて、この地域の人たちが何を考えているのか、映画を通じて身近に知ることのできる映画祭を企画することになりました。
中東といっても、国によって映画に関する状況は様々です。ペルシャ語圏のイラン映画やトルコ語圏のトルコ映画は、日本で紹介される機会に比較的恵まれています。そこで、そのような機会の少ないアラビア語圏の映画を紹介しようということになり、映画祭の名前を「アラブ映画祭」としました。

準備にあたっては、フランスのパリにあるアラブ世界研究所で調査をおこないました。ここではアラブ映画ビエンナーレ(イタリア語で2年に1度の意)が開催されています。2004年のビエンナーレでは、イラク戦争が一段落したことを受け、イラク映画の特集が行われていました。イラクには、サダム・フセインが政権をとる前、欧米や日本と変わらない映画産業があったそうです。ところがフセイン時代、映画はプロパガンダ一色になり、映画人は亡命を余儀なくされ、作品も各地に散逸してしまいました。この特集ではそういった作品を集めて上映し、ヨーロッパに散らばっている亡命イラク人たちがパリに集まって、祖国の映画の復興を訴えていたのです。 

 

アラブ映画祭2005チラシ

アラブ映画祭 2005

イラクの現実を伝える映画

東京で開催された2005年の第1回「アラブ映画祭」は、第1部を「イラク映画回顧展」としました。
そのなかで、現存する最古のイラク映画『アリアとイサーム』が上映されました。これは1948年に制作されたモノクロの映画で、古い部族社会の犠牲となった若い男女の悲劇を描いた、イラク版の“ロミオとジュリエット”です。

イラク戦争直後のバクダッドで撮影された長編劇映画『露出不足』も上映されました。フセイン政権崩壊後の混沌とした社会状況を背景に、癌に蝕まれながらも映画に情熱を傾ける男性や、初めて友情を知るホームレス男性の姿などを通し、戦後イラクの新たなリアリティを探る意欲作です。映画祭には、当時31歳だった監督のウダイ・ラシードさんが来日して次のように語りました。
「私は、どうしようもない現実を見すえることが大切だと思います。映画やドキュメンタリーを通じて、イラクの社会で何がおこっているか伝えたい。それがイラクの再生のために私ができることです。」

 

アラブ映画祭2006チラシ

アラブ映画祭 2006

1本の映画が教えてくれることは、数冊の書物に勝る

このときには、パレスチナ出身、イスラエル出身の二人の監督の共同作品である超長編ドキュメンタリー『ルート181 パレスチナ‐イスラエルの旅の断章』も上映されました。イスラエルを南から北へ車を走らせ多数の老若男女にインタビューするだけなのですが、複雑な民族模様(エスニシティ)とともに住民の日常生活が浮かび上がってきます。上映時間4時間半という、驚異のロードムービーです。
このような映画は、パレスティナ問題に関する何冊の本を読むより、その地域のこと、そこに住む人々のことを私たちに教えてくれます。

 

 

アラブ映画祭2007チラシ

アラブ映画祭 2007

エジプトはアラブのハリウッド

中東随一のスケールの映画産業を有するのはエジプトです。「アラブのハリウッド」と呼ばれ、きら星のごときスターたちを輩出してきました。中東・北アフリカ諸国の人々にとってエジプト映画は、老若男女が夢の世界に浸れる日常的な娯楽の王様です。そこで第3回となる2007年の「アラブ映画祭」では、「エジプト映画回顧展」としてエジプト映画の特集を組みました。

大ヒットを記録した“アラブの喜劇王”アーデル・イマームの代表作、『テロリズムとケバブ』も上映されました。これは、「テロリズム」という言葉が今ほど深刻な響きを帯びていなかった1992年の作品です。怠惰な役人に腹を立てた小市民の男が、成り行きでテロリストとにされてしまう喜劇です。日本での上映はこれが初めてでした。

 

JFサポーターズクラブイベントの写真2

休憩時には干しいちじく、デーツ、ピスタチオなどをつまみ、中東の雰囲気を味わいました

第4回 国際交流基金アラブ映画祭2008への期待

石坂さんは第4回となる2008年のアラブ映画祭でプログラム・ディレクターを務めています。パリ・アラブ映画ビエンナーレ、エジプト国立フィルムセンター、ロッテルダム・アラブ映画祭、ドバイ国際映画祭などに足を運び、日本に紹介する新作を発掘しています。過去3回の「アラブ映画祭」で好評だった映画もアンコール上映される予定です。
どうぞご期待ください。

 

 

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