JFサポーターズクラブ 2008年4月のイベント報告 「格差社会」を生きる日韓の若者事情〜日韓NPO交流事業報告会〜

JFサポーターズクラブ4月のイベント 「格差社会」を生きる日韓の若者事情~日韓NPO交流事業報告会~の画像

4月17日(木)にJFサポーターズクラブ4月のイベントが行われました。今回は、ジャパンファウンデーションの助成で3月に行われた日韓NPO関係者交流事業の報告会として、参加者の工藤啓氏と塚本竜也氏にお話を伺いました。また、同事業に参加した磯田浩司氏と、参加NPOのスタッフである岩本真実氏にもお越しいただき、グループワークのコーディネーターを務めていただきました。

ニートをテーマに、グループでディスカッション

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講師の工藤啓氏(左)と塚本竜也氏(右)

3月に訪韓した6名の日本人は、いずれも若者の自立支援を職業としています。若者の自立支援、という言葉を聞きなれない人もいるかもしれませんが、簡単に言うと、ニートや引きこもりなど、自立できない状態にある若者が自立するためのプログラムの実施です。

工藤氏と塚本氏の自己紹介があり、その後すぐに参加者の方に4つのグループに分かれていただき、「なぜ若者はニートになるのか」「ニート支援に税金を投入すべきか」という2つのテーマについて、自由に意見を言ってもらうグループワークを行いました。各グループは9名程度、20代から70代までの年齢もバックグラウンドも違う人たちが意見を言い合うのは難しいかと思いましたが、すぐに各グループで活発な議論が始まりました。

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4グループに分かれて自由に意見を出し合う参加者

30分間のグループワークを終えて、各グループの代表1名に、どんな意見が出たかを簡単に発表してもらいました。
「企業の雇用形態が変わったことが原因ではないか」
「受験戦争や詰め込み教育で若者のコミュニケーション能力が失われたのだと思う」
「引きこもる経済的余裕があるのが問題。これ以上若者を甘やかすな」
「正しい方法での支援なら税金を投入してもよいと思う。このままだと将来の日本が大変」など、
様々な意見が出ました。また、20代の女性から、
「まさに『ニート』の世代である20代の人がこの場に少ないことに驚いた。そのこと自体問題だと感じる」
という発言もありました。

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4グループに分かれて自由に意見を出し合う参加者

このグループワークは、正しい答えを求めるものではありません。ニートに対して知識のある人も、ない人も、同じテーマについて考えてもらい、他の人の意見を聞いてもらうことで、積極的にイベントに参加をしてもらうためのものでした。また、参加者の方々がどんなことに興味があるのかということもわかります。

グループワークの後に、10分間の休憩をとりました。話したことで打ち解けたのか、休憩中も韓国のお茶やお菓子をつまみながら、会話に花が咲いていました。後半は、日本で若者の自立支援に携わる工藤啓氏と塚本竜也氏から、日韓のニートの現状と、それに対する支援がどのように行われているかが語られました。

日韓のニートの現状と支援状況

まず、「ニートとは何の略か?」「何万人いるのか?」という話から始まりました。
ニート(NEET)とは、Not in Education Employment or Trainingの頭文字を組み合わせたもの。つまり、教育を受けているわけでも働いているわけでも、職業などの訓練を受けているわけでもない状態を指します。2007年の調査では62万人いるといわれています。(一般定義である15歳から34歳までで計算した場合)

それから、ニートが生まれる2つの原因が語られました。それは「景気」と「学歴」です。景気が悪くなると、学歴の低い人から正規雇用されなくなっていくことがデータで実証されているそうです。たとえば、今の日本は5年前に比べれば、学歴の低い人や中退者が雇われる可能性はかなり高くなっています。しかし、将来はどうでしょうか。景気が悪くなると状況は変わるでしょう。

こうした日本の状況が、韓国で訪問した団体の紹介と同時に語られました。韓国は現在、景気は悪くありませんが、非正規雇用者の増加が深刻な社会問題になっています。韓国は日本以上に過酷な学歴社会、競争社会です。その中で、特に1998年のIMF危機以降、雇用に対する不安が増大し、公務員などの職に就く安定志向が強まっているそうです。

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後半は写真などを見ながら訪韓の様子を聞いた

受験を勝ち抜き、公務員試験に合格するための全寮制の「村」には、富裕層ではない地方出身の若者が集まり、2畳ほどの部屋で寝起きしながら勉強して、試験合格を目指しているという話には、参加者から驚きの声があがりました。それでも合格するのは10人に1人。残りの9人に対するフォローはされていないそうです。

その一方で、17歳、18歳の青年を支援して起業させるプロジェクトが進められていたりと、国民性によるのか、起業や独立を応援する風土も強いという一面も紹介されました。また、今回訪問した韓国の団体は、実は昨年同じように日本を訪れています。そのときに、日本のNPO、コトバノアトリエの代表である山本繁氏(今回の事業にも参加)が、始めたインターネットラジオ『オールニートニッポン』に感銘を受けた韓国の団体が、『ペクス(=白い手、韓国語でニートのこと)放送局』というFMラジオを始めました。こうしたフットワークの軽さも韓国の特徴といえるでしょう。

日韓の若者の状況は似通っていますが、支援の仕方には違いがあるそうです。一番大きな違いは、日本の支援団体が事業を自主経営しているのに対して、韓国の団体にはほとんどそういった発想がないことです。行政または企業から資金を助成してもらって事業を行うのが当たり前で、そのため資本金やスタッフの数は日本よりはるかに大きな規模です。しかし、それは、不況になって企業の支援がなくなったらどうするかという不安と常に背中合わせでもあります。 

最後に、工藤氏から、ニートの問題は経済不況だけでなく、不登校や非行の問題と根はつながっているという話がありました。学校に行かなくなった子どもが教育を受けられる年齢を超えて、ニートという存在になってしまったという構造は今まさに韓国が抱えている問題と同じなのだそうです。いろいろな原因があると思いますが、日本がたどってきた経済成長優先の道を韓国がたどり、それに伴う弊害が起こっているという状況がなんとなく見えてきました。そしてそれは、アメリカや欧米が経験してきた道でもあります。

アジアの中でも早く先進国となった日本と韓国が協力し合い、この問題に向き合うことは、これから発展してくる他のアジア諸国への貢献にもなるのではないでしょうか。若者だけ、日本だけの問題ではなく、グローバルな視点で考えなければいけない、と感じさせられた、活気のあるイベントでした。

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質疑応答でもたくさんの質問が出た

プレゼンター

工藤 啓 (くどう けい)

《プロフィール》
特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科中退、米国ベルビューコミュニティーカレッジ卒業。青少年就労支援NPO「育て上げ」ネットを設立し、2004年特定非営利活動法人化。現在、同法人理事長として若年者就労支援に携わる。著書に「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)、「育て上げ」(駿河台出版)。

塚本 竜也 (つかもと たつや)

《プロフィール》
大学卒業後の1999年、米国・シアトル市で開催される6カ月間の環境NGOリーダー育成ワークキャンプに参加。帰国後、特定非営利活動法人NICE(日本国際ワークキャンプセンター)職員になる。2003年、事務局長に就任。2005年から、厚生労働省若年無業者就労支援事業「若者自立塾・栃木」副塾長を兼任。2008年、米国Conservation Corps調査研究委員会設立。

工藤 啓 特定非営利活動法人「育て上げ」ネット 理事長
古賀 和香子 たちかわサポートステーション センター長
塚本 竜也 特定非営利活動法人NICE 事務局長/若者自立塾・栃木副塾長
山本 繁 コトバノアトリエ 代表理事
磯田 浩司 good! 代表
山本 正登 K2インターナショナル オーストラリア統括責任者

訪問団体

  • 失業克服国民財団、希望庁、クムト学校、WE CANセンター、延世大学江西自活後見機関青少年自活支援館、ハジャセンター、ノリダン、ソウル代案教育センター

(情報センター)

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